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2021年11月9日火曜日

桃山人夜話巻二 その43

 

P27 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ミ楚゛い多゛し

みぞ いだ し


ある貧 人 の死し多るを春べきやう奈け連バつゝらに入 天

  ひんしん し                 いれ

あるひんじんのししたるをすべきようなければつづらにいれて


捨 多りしに骨 と皮 とおのづ可ら別  天白 骨 つゞらを

春て    本年 可王      王可れ 者くこつ

すてたりしにほねとかわとおのずからわかれてはっこつつづらを


破 里天おどりくる比しと楚゛

やふ

やぶりておどりくるいしとぞ


(大意)

溝出(みぞいだし)

ある貧乏人が死んだとき、葬式もあげることができなかったので、つづらに入れて

捨てたところ、骨と皮がしぜんとわかれて白骨がつづらを

破って踊り狂ったということだ。


(補足)

 原画はもちろん彩色されています。白壁とつづらの(画像では白くみえているところ)縁まわりの色が同色で、薄く淡い桃色です。気味悪さが伝わってくる色です。しかしつづらの蓋を破って顔をだしている髑髏はどこかひょうきん。

 変体仮名を学び始めた頃は、変体仮名「王」(わ)と変体仮名「里」(り)を間違えることはそれほどなかったのですが、最近はアレッとおもうことたびたびであります。

「くる比し」、変体仮名「比」(ひ)。

「溝出」の題名がどうもひっかかりますけどわかりません。


2021年11月8日月曜日

桃山人夜話巻二 その42

P26後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

尻  ハむ奈い多へ三 寸  斗   抜 出 多り所  ハ由井の浦

志゛り      さん春゛ん者゛可りぬきいで  ところ ゆゐ うら

じ りはむないたへさんず んば かりぬきいでたりところはゆいのうら


辺尓天過 し比 家来 可゛死骸  を負 櫃 尓入れて

べ  春ぎ ころけら以  し可゛い 於ひびつ い

べにてすぎしころけらいが しが いをおいびつにいれて


捨 多る所  奈り登其 比 人 の語 りしと楚゛恐 るべ

春て  ところ   そのころひと 可多     於曽

すてたるところなりとそのころひとのかたりしとぞ おそるべ


きハ人  霊 の祭  葬 尓し天崇   べきハ先祖  の塚 也

  志゛ん連以 まつりごと   阿可゛む   せん曽゛ つ可

きはじ んれいのまつりごろにしてあが むべきはせんぞ のつかなり


(大意)

矢じりは胸板へ三寸ばかり抜き出た。その場所は由井の浦

辺で、かって家来の死骸を負櫃に入れて

捨てたところであったと、その当時、人々が語っていたとのことである。恐るべ

きは人の霊を鎮める祭葬であり、崇めるべきは先祖の塚なのである。


(補足)

「三寸斗」(さん春゛ん者゛可り)、変体仮名「春」(す)と変体仮名「者」(は)はパッと見ためがにていて間違いやすそう。わたしはよくあれっとおもうことが何度もあります。 変体仮名「春」(す)は「す」+「て」or 「十」+「て」のようなかたちで、変体仮名「者」(は)は「む」の最後が右下に流れるようなかたち。

 どんな人てあろうと死んだらきちんとお葬式をして魂を鎮め、その後もお墓参りをちゃんとしなさいよというお話でした。

 この本文のお題は「溝出」(みぞいだし)なのですが、本文の内容とどのような絡まりがあるのかがピンときません。うーん・・・

 

2021年11月7日日曜日

桃山人夜話巻二 その41

P26前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

以ハつゞくこと能 ハ須゛し天時 行 ハ者や見うし奈ひ

            あ多     ときゆき   ミ

いはつづくことあたわず してときゆきははやみうしない


残 る八 郎 を免可゛け天き多奈し可へせと聲 可ける

のこ 者ちらう              こゑ

のこりうはちろうをめがけてきたなしかえせとこえかける


尓逃 多川足 の止 らバこ楚ましくらん尓走 れる

 尓げ  あし と満          者し

ににげたつあしのとまらばこそましくらんにはしれる


阿と与り残 んの麁矢を切 て者奈天バ阿や満多

    のこ  曽や きり

あとよりのこんのそやをきりてはなてばあやまた


天゛戸根可゛阿げ巻 の阿多りをのぶ可尓射て矢

  と袮    まき         ゐ

で とねが あげまきのあたりをのぶかにいてや


(大意)

(船田の軍)勢は追いつくことができず、時行をすでに見失っていた。

残る八郎めがけて「ひきょうもの。引き返せ」と声をかけた

が、逃げ立つ足が止まるわけがない。まっしぐらに走っている

(八郎の)うしろから、(船田の軍勢が)残りの(征矢(そや))矢をはなてば、ねらいどおりに

戸根(の八郎)の揚巻(鎧の房)のあたりを深く射抜き、


(補足)

「こと」、合字。

「残」のくずし字の旁部分「戔」は「お」のようなかたち。2行後にもあります。

「逃多川足の止らバこ楚」、変体仮名「川」(つ)。平仮名「こ」が読めませんがながれから判断。

「ましくら」、現在では「まっしぐら」。

「麁矢」、これは辞書にありませんでしたが「征矢」(そや)のことでしょう。矢の先に矢じりをつけて殺傷能力を高めたもの。

「あげ巻」(揚巻)、鎧の後ろ側にある房のようなもの。

「のぶか」(篦深)、射た矢が深く突き刺さるさま。

 

2021年11月6日土曜日

桃山人夜話巻二 その40

P25後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ぎゆく八 郎 も共 尓従    天時 行 可゛馬 尓つゞく

   者ちらう とも 志多可゛ひ ときゆき  う満

ぎゆきはちろうもともにしたが いてときゆきが うまにつづく


尓船 田 可゛軍 兵  阿まさじ登馬 越並 べ天おつ

 ふ奈多゛  ぐんべ う     う満 奈ら  

にふなだ が くんぴょうあさまじとうまをならべておつ


可くるされども時 行 可゛馬 ハ無双 の逸 物 尓て

       ときゆき  う満 ぶさう いちもつ

かくるされどもときゆきが うまはぶそうのいちもつにて


飛鳥  の如 く雲 越霞  尓可ける尓曽゛船田  可゛せ

ひて う ごと くも 可春ミ       ふ奈多゛

ひちょうのごとくくもをかすみにかけるにぞ ふなだ が せ


(大意)

(急)いだ。八郎も共に従って時行の馬に続いた

ところ、船田の軍兵が取り逃がすまいと馬を並べて追い

かけてきた。しかし時行の馬は並ぶものがないほどの名馬であったので

まるで飛ぶ鳥のように一目散に駆けていってしまった。船田の軍勢は

(補足)

「従天」(したがいて)、当時の人もこの振り仮名のないくずし字は読めなかったのでは?前後の文章の流れから察するしかなさそうだけど、それでも・・・

「阿まさじ」。「あま・す」辞書に『④ 討ち残す。取り逃がす。「先にこそもらすとも,今度は―・すな,もらすな」〈平治物語•中〉』とありました。

「飛鳥」、「鳥」のくずし字が変体仮名「多」ににていますが、鳥のほうは下の部分が「る」。変体仮名「多」のほうは下の部分が「〆」のようなかたち。

「雲越霞」、『いっさんに走って姿を隠してしまうさまにいう。くもかすみ。「―と逃げ去る」』

 さぁ〜、ここからは講談師、口調もはやくなり両眼拡張紅顔口角泡飛ばし熱がはいってくるところ。さぁさぁどうなるかぁ〜。ペペンペンペン。

 

2021年11月5日金曜日

桃山人夜話巻二 その39

P25前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

戸根の八郎  ハ船 田 入  道 可゛手勢 をくひとめんと

と袮 者ちらう ふ奈多゛尓 うどう  てせ以

とねのはちろうはふなだ にゅうどうが てぜいをくいとめんと


天由井可゛濱 のニ町  者゛可里こ奈多尓時 行 が陣

 ゆゐ  者満 尓て う        ときゆき ぢん

てゆいが はまのにちょうば かりこなたにときゆきがじん


を可満へ多る中 尓交 り天居多りし可゛極 楽 寺の取

      奈可 まじ  ゐ     ごくらくじ とり

をかまえたるなかにまじりていたりしが ごくらくじのとり


手も崩 れ天敵 ハ山 の内 迄 乱 入  し多りと聞

て くづ  てき や満 うちまでらん尓 う    きく

てもくずれててきはやまのうちまでらんにゅうしたりときく


与り時 行 馬 を引 可へし天山 の内 をさして急

  ときゆきう満 ひき    や満 うち    いそ

よりときゆきうまをひきかえしてやまのうちをさしていそ


(大意)

戸根の八郎は船田入道の手勢をくいとめようとし

て由比ヶ浜の二町(約200m)ばかり手前で時行が構えた

陣の中に交じっていたのだが、極楽寺の砦

もくずれて、敵は山ノ内まで乱入したと聞くやいなや

時行は馬を引き返して山ノ内に向かって急(いだ。)

(補足)

 なんだか講談調になってきました。

「こ奈た」、ここでは手前の意。人代名詞として使われるときは一人称二人称三人称のどれにも使われるのでチトめんどう。

「陣」のくずし字で「車」が「東」のくずし字になってます。調べてみたら同じでした。

「取手」(とりて)、何のことかとおもったら「砦」でした。

「聞」のくずし字は特徴的。「門」は冠になり、「耳」は「メ」。

講談では〽ちょうど時間となりましたぁ〜〽と唸って、一番良いところで終わるのが通例。

さて時行が馬、山ノ内へ向けてどうなるかぁ〜。

 

2021年11月4日木曜日

桃山人夜話巻二 その38

P24後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

天ひら可せミる尓潮 水尓され多る白 骨 奈り个れバ

        うし本     者つこつ

てひらかせみるにうしおにされたるはっこつなりければ


寺 尓持多せ来 り天袮んごろ尓葬  り个る尓曽の

天ら も  き多       本うむ    

てらにもたせきたりてねんごろにほうむりけるにその


後 ハ何 ごとも奈可里しと楚゛曽れ与り後 尓い多り

のち 奈尓              のち

のちはなにごともなかりしとぞ それよりのちにいたり


天新 田義 貞  高 時 越攻 鎌 くら尓入 个る時

 尓つ多よしさ多゛多可とき せめ可満   いり  とき

てしったよしさだ たかときをせめかまくらにいりけるとき


(大意)

(行)って開けさせてみたところ、潮水にさらされた白骨であった。

寺に持ってこさせて丁寧に葬ったところ、その

後は何事もなかったという。それより後のこと

新田義貞が北條高時を攻めて鎌倉に入るとき

(補足)

「寺」、「ち」の最後に「。」をつけたようなくずし字。

「ごと」、合字「こと」に「゛」。

「奈可里しと楚゛」、変体仮名「里」がわかりにくですけど、まぁなんとか読めます。

 

2021年11月3日水曜日

桃山人夜話巻二 その37

P24前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

鎌 倉 尓天戸根の八 郎 と云 毛の有 家来 の

可満くら  と袮 者ちらう いふ  阿りけらい

かまくらにてとねのはちろうというものありけらいの


死多る越負 櫃 といふ毛の尓入れ天由井の浦

し   於ひびつ      い  ゆゐ うら

したるをおいびつというものにいれてゆいのうら


奈る海 底 尓捨 多り个る可゛其 後 もとの所  へ浪 の

  可以て以 春て      曽のゝち   ところ 奈ミ

なるかいていにすてたりけるが そののちもとのとろこへなみの


うち上 天負 櫃 の中 与り唄 越う多ふ聲 の志

  阿げ 於ひびつ 奈可  う多    こゑ

うちあげておいびつのなかよりうたをうたうこえのし


个る越極 楽 寺といふ寺 の僧 の聞 つけ天行

   ごくらくし   天ら 曽う きゝ   ゆき

けるをごくらくじというてらのそうのききつけてゆき


(大意)

鎌倉に戸根の八郎というものがいた。家来が

死しんでしまい負櫃というものに入れて由井の浦

の海底に捨てたのだが、その後もとのところへ波で

打ち上げられた。この負櫃の中より歌声が聞こえて

きたのを極楽寺という寺の僧が聞きつけて行(って)


(補足)

「鎌」のくずし字は当分読めそうにもありません。

「由井の浦」、由比ヶ浜のこと。

「もの」と続けて使われるときは変体仮名「毛」は「こ」+「ち」のようなかたちなってます。

「負櫃」。「棺桶」というように亡くなった人は桶(or樽)に座るようにおさめられました。それを背負って運ぶこともあったそうです。

 

2021年11月2日火曜日

桃山人夜話巻二 その36

P23後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

霊 を止 免多る所  奈れバ多とへ其 下 尓屍    ハ奈くとも

連以 とゞ   ところ      曽の志多 志可者゛年

れいをとどめたるところなればたとえそのしたにしかば ねはなくとも


古墳 ホ の石 越取 べ可ら須゛ま多人 ハ万  物 の霊 ニて

こふんとう いし とる       ひと 者゛んもつ 連以

こふんとうのいしをとるべからず またひとはば んもつのれいにて


乞 食 非人 多りとも死多る越葬  る尓い多りてハ麁

こつじきひ尓ん    し   本うむ       曽

こつじきひにんたりともしたるをほうむるにいたりてはそ


忽 尓い多須べ可ら須゛と有 昔  北 條  高 時 の比 本ひ

こつ          阿りむ可し本うぜ う多可とき ころ

こつにいたすべからず とありむかしほうじょうたかときのころおい


(大意)

霊をとどめたところなので、たとえその下に屍がなくても

古墳などの石を取るべきではない。また人は万物のなかでもっともすぐれたものであるから

乞食や非人であっても死んでしまって葬ることになっても

礼を失することなく行わなければならないという。昔、北條高時の頃

(補足)

「多とへ」、「さ」の「ー」がない変体仮名ではなく「多」の形が残っているほうのものです。この部分は強調して発音するとか何か使い分けがあるのでしょうか。

「非人」、「非」のくずし字が「飛」に似ていますが、「飛」のほうはこのくずし字の上に「ユ」のような形のものがのります。

「北條」、「北」のくずし字「⺗」は古文書入門で必ず学びます。でもくずし字というより当時の人達は「⺗」を漢字として「きた」と学んだのではないかと想像します。なので当時の人達は「北」を「きた」と読めないかもしれません。

「比本ひ」(ころほひ)、「頃おい」です。文語的な言い方。

 

2021年11月1日月曜日

桃山人夜話巻二 その35

 

P23前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  八 溝  出

多゛以志゛う者ちミ曽゛い多゛し

だ いじゅうはちみぞ いだ し


古 き塚 古 き石 碑ホ ハ決  而阿者゛き退    る毛のニ

ふる つ可ふる せきひとう 个つして    志り曽゛く

ふるきつかふるきせきひとうはけっしてあば きしりぞ くるものに


天ハ阿らざる奈り可奈ら須゛王ざハひをま袮くこと

てはあらざるなりかならず わざわいをまねくこと


昔  与り其 多めし春く奈可ら須゛い可尓と奈連バ人 の

む可し  曽の                 ひと

むかしよりそのためしすくなからず いかにとなればひとの


(大意)

第十八溝出

古い塚や古い石碑などは決して掘り起こしたり取り除いたり

してはならない。(そのようなことをすると)必ず災いを招くこと

昔よりその例が少なくない。なぜかというと人の

(補足)

「決而」は偏と旁の左右に部品が分かれてますが、くずし字は上下になってます。次の「る」にみえるようなくずし字は「而」(て)。

「毛の」、この組み合わせで使われるときはこの変体仮名「毛」(も)が多い。

 大都会の高層ビル街には今でも、たった数坪の社や古跡のためにビルの形をいびつにしたり数メートルずらしたりしているところを必ず目にすることができます。その費用はどう少なく見積もっても数億円(〜数十億円)はくだらないでしょう。やはり将来のことを考えるとそうせざるを得ないのでしょう。


2021年10月31日日曜日

桃山人夜話巻二 その34

P22後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

父 といさ可ひし天親 越追ふとき爪 づき天石 尓天

ちゝ       於や 於   つま   いし

ちちといさかいしておやをおうときつまずきていしにて


膝 越うちや婦゛り曽れ与りし天人 面 て うとハ奈り

ひざ             尓んめん

ひざをうちやぶ りそれよりしてにんめんちょうとはなり


多ると楚゛俗  尓まゝくハふと云 難 病  奈り道 尓叶

     曽゛く       いふ奈んべ う  ミち 可奈

たるとぞ ぞ くにままくわうというなんびょうなりみちにかな


ハざるふるまひ春る時 ハい可奈る悪 病  を受 んも斗  可゛多し

         とき     あくべ う うけ  者可り

はざるふるまいするときはいかなるあくびょうをうけんもはかりが たし


(大意)

父と言い争いになって、親を追うときにつまずき、石に

膝を打ち付け怪我をしてしまった。そのために(その膝の傷が)人面疔になって

しまったということだ。俗に「ままくはう(飯をくおう)」という難病である。道に

はずれた振る舞いをするときは、どんな悪病を受けるかは予測しがいたいものなのだ。


(補足)

道からはずれたことをしてはいけませんよというお話なのですが、

もっと二口女の正体をいろいろかいてほしかった。

 

2021年10月30日土曜日

桃山人夜話巻二 その33

P22前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

こゑのひ曽\/と春れバ聞 耳 立 る尓王可゛心  得違

           きゝミゝ多つ     こゝろえ多可゛ひ

こえのひそひそとすればききみみたつるにわが こころえたが い


与り先 妻 の子越殺 せり阿や満てり\/   といひし

  せんさ以 こ ころ  

よりせんさいのこをころせりあやまりてあやまりてといいし


登楚゛誠  尓恐 るべきこと奈り个り万 治年 中  尓

   まこと 於曽         まんじ袮んぢ う

とぞ まことにおそるべきことなりけりまんじねんじゅうに


も人 面 疔  と天膝 尓口 阿る者 出 来 り天東 武の医

 尓んめんて う  ひざ くち  ものいでき多  とうぶ ゐ

もにんめんちょうとてひざにくちあるものいできたりてとうぶのい


家尓治療  を乞 しこと阿り是 ハ農 民 奈り个る可゛

可 ぢ里やう こひ     これ のうミん 

かにちりょうをこいしことありこれはのうみんなりけるが


(大意)

(のちには)ひそひそと話し声がするので、聞き耳をたてたところ「自分の間違った行い

で先妻の子どもを殺してしまった。すまなかった。すまなかった。」と言っていた

とのことだ。まことに恐るべきことである。万治年間(1658〜61)に

も人面疔という膝に口があるものが出てきて、東武(江戸)の医

者に治療を乞うたことがあった。これは農民であったが


(補足)

「こゑのひ曽\/と春れバ」、「こゑ」がわかりにくいですが、続けて読むと「ひ曽\/と」とあるので「声」とわかりました。

「聞」のくずし字、「門」は冠のようになってます。

「誠に」、「成」のくずし字が「斗」のような形になってます。

「恐」のくずし字は「心」の上が「旧」のようなかたち。「思」と区別。

 

2021年10月29日金曜日

桃山人夜話巻二 その32

P21後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

頭  王れ天血おび多ゞしく出 し可゛疵 口 さら尓癒 るこ

可しら   ち      いで   きづぐち   い由

かしらわれてちおびただしくいでしが きずぐちさらにいゆるこ


登奈く唇   の可多ちを奈し天骨 ハ出 天歯の如 く尓

   くちびる        本袮 いで 者 ごと

となくくちびるのかたちをなしてほねはいでてはのごとくに


奈り肉 つき上  りて舌 尓類 せり時刻 越とりてい多

  尓く  阿可゛  志多 る以  じこく 

なりにくつきあが りてしたにるいせりじこくをとりていた


むこと苦痛 多え可゛多く食  を入るゝ時 ハい多ミを

   くつう      志よく い  とき

むことくつうたえが たくしょくをいるるときはいたみを


和 らげ多り依 天両  口 阿る可゛ごとし後 尓ハ毛の云

や王    よつ 里やうくち       のち    いふ

わわらげたりよってりょうくちあるが ごとしのちにはものいう


(大意)

頭が割れて血がおびただしく出たが、傷口は少しも癒えるこ

となく、唇の形になってきて、骨が出て歯のように

なり、肉が盛り上がってきて舌のようなものになった。時によっては

痛み、その苦痛は耐え難く、(口のようなところへ)食べ物を入れるときは痛みを

和らげることができた。よって(頭の前後の)両方に口があるようであった。後には

(ひそひそという話し声)


(補足)

「時刻越とりて」、「と」の一画目が「ー」になっていてすぐにはわかりませんでした。この部分の意味も辞書を調べて悩みました。辞書に「 (「時にとって」「時にとりて」の形で)場合によって。時によって。「人,木石にあらねば,時に―・りて,物に感ずる事なきにあらず」〈徒然草•41〉」とあったのでこれを採用。

「上りて」、こちらの「上」のほうがよほど平仮名「と」にみえます。

 二口は生まれながらにあったのではなく、このような子どもいじめ殺しがあって、その後の事故によってできた傷口が原因でした。現代でもありそうなことです。

 

2021年10月28日木曜日

桃山人夜話巻二 その31

P21前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

食  を阿多へ須゛遂 尓病  登奈りて餓 死尓し多り其

志よく      つい やまひ    うへじ    曽の

しょくをあたえず ついにやまいとなりてうえじにしたりその


後 四十 九日 目 尓当 りて其 家 尓天薪  を割 个る可゛

のち志ゞ うく尓ちめ 阿多  曽のいゑ  多きゞ 王り

のちしじゅうくにちめにあたりてそのいえにてたきぎをわりけるが


男  の与き越ふり上 多るうし路越其 妻 の通 り可ゝり

をとこ      阿げ      曽のつま とを

おとこのよきをふりあげたるうしろをそのつまのとおりかかり


し越志ら須゛し天過   て妻 可゛頭  のうしろ尓阿て多り

        阿やまち つま  可うべ   

しをしらず してあやまちてつまが こうべのうしろにあたりて


(大意)

(子に)食事を与えずついには病気になって餓死してしまった。

その後、四十九日目に当たる日のこと、その家で薪を割っている

男が斧を振り上げたちょうどそのときに妻がうしろを通りかかった

ことに気づかず、過って妻の頭のうしろに斧を当ててしまった。

(補足)

「餓死尓し多り」、「餓」は振り仮名があるからと手抜きしたような感じ。「し」が虫食いと重なりました。

「四十九日目」、振り仮名「志」のほうに「゛」がついてしまってます。

「よき」、斧(おの)、手斧(ておの)

「通り可ゝり」、「ゝ」があります。

 

2021年10月27日水曜日

桃山人夜話巻二 その30

P20後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

業 病  登も云 べき可何 連尓もミづ可らの悪心  与り

ごうびやう  いふ   いづ        あくしん

ごうびょうともいうべきかいずれにもみずからのあくしんより


引 出  春病  奈り此 こと毛路こし尓もありむ可し

ひきい多゛ や満い  この      

ひきいだ すやまいなりこのこともろこしにもありむかし


日 本 尓も下 総 の国 千葉 という所  尓継 母 ありて

尓つ本ん  志もふさ く尓ち者゛   ところ まゝ者ゝ

にっぽんにもしもふさのくにちば というところにままははありて


己 れ可゛うミの子のミ越愛 し天先 妻 の子耳

をの          あ以  せんさ以  に

おのれが うみのこのみをあいしてせんさいのこに


(大意)

やはり業病と云うべきなのかもしれんない。いずれにしてもみずから悪いことを

しようという心より引き出される病である。この病は唐土(もろこし)にもあり、昔

日本にもあった。下総の国、千葉というところに継母がいて、

自分が産んだ子どもだけを愛して、先妻の子に

(補足)

「ミづ可らの」、「ミ」の三画目が流れています。

「毛路こし」、たびたび出てきているのでお馴染みです。

「先妻の子耳」、変体仮名「耳」(に)はあまりおめにかかりません。めずらしい。たいていは「尓」「丹」「仁」など。

 読んでいると「頭脳唇(ふたくち)」はもしかしたら、本当にいたのかもしれないと、いるのかもしれないと・・・でも女としているところが気になる。継父(ままちち)、ーーーこの読みは英語のママと日本語の父が一緒になっているのでニヤリとしてしまいますーーーだっているはずで、そうすると長い髪の毛が蛇のようになって食べ物をはこべなくなり、怖さが半減してしまう。このあとこの話はどう展開するのか?

 

2021年10月26日火曜日

桃山人夜話巻二 その29

P20前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  七 二 口 女

多゛以志゛うしちふ多くちをん奈

だ いじゅうしちふたくちおんな


頭脳唇 人 面 疔  ハ業 病  のごとく尓いひ奈せども古

ふ多くち尓んめんて う ごうびやう           ふる

ふたくちにんめんちょうはごうびょうのごとくにいいなせどもふる


き医書 尓も出 多りされども病  の起 りをきく尓多

 ゐしよ  いで      や満い をこ     於本

きいしょにもいでたりされどもやまいのおこりをきくにおお


くハ个んどん邪  見 無慙 放 逸 の輩    尓阿り志可らバ

      志゛や个んむざん本ういつ とも可゛ら  

くはけんどんじ ゃけんむざんほういつのともが らにありしからば


(大意)

第十七二口女

「頭脳唇(ふたくち)」と「人面疔(にんめんちょう)」は業病のように言われるが

古い医書にも出ている。しかし病の原因をきくと、多くはけちで欲深く意地悪くて恥知らずのだらしがない者にみられる。だから

(補足)

人面疔(にんめんちょう)、人面瘡(じんめんそう)とも。悪性のできものが人の顔をしている。

業病、悪いおこないの報いとしてかかるいわれる,なおりにくく,つらい病気。

 いきなり出だしから読めません。振り仮名「ふ多くち」は当て字なので漢字がわかりません。「頭脳唇」の漢字3文字とわかるとあぁなるほどとなるのですが・・・

「ごとく尓」、「尓」が「ふ」にみえます。

「个んどん邪見無慙放逸」、よくもまぁこれだけ人をこきおろす単語を並べたもの。それもいまではほとんど死語です。講談で使われそうな言い回しかな。

 

2021年10月25日月曜日

桃山人夜話巻二 その28

P19後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

い天死し多り旧  鼠よ奈\/尓来 り天猫 尓乳汁を

  し   きう 曽     き多  袮こ ちゝ

いてししたりきゅうそよなよなにきたりてねこにちちを


与 へ天五疋 共 尓育  川こと越得多り彼の旧  鼠其

あ多  ごひきとも 曽多゛    え  可 きう 曽その

あたえてごひきともにそだ つことをえたりかのきゅうそその


後 ゆく可多を志ら須゛余 り尓奇談  奈り登天志るし

のち         阿ま  き多゛ん  

のちゆくかたをしらず あまりにきだ んなりとてしるし


置 多るを写 し天曽良  といふ毛の誹 諧 師の芭

於き   うつ  曽里やう     者い可いし 者゛

おきたるをうつしてそりょうというものはいかいしのば


蕉  尓見せし尓猫 の鼠  を育   しことも阿りしと答  しと楚゛

せう  ミ   袮こ 袮づミ 曽多゛て        こ多へ

しょうにみせしにねこのねずみをそだ てしこともありしとこたえしとぞ


(大意)

(食らっ)て死んでしまった。年とった鼠は夜な夜なやってきて子猫に乳を

与え、五匹ともに育つことができた。かの年とった鼠はその

後、行方知らずになった。(これらのはなしが)あまりに奇談であるからと記して

あったものを曽良というものが写して、俳諧師の芭蕉

に見せたたところ、「猫が鼠を育てたこともあるよ」と答えたそうだ。


(補足)

「乳汁」、(ちちじる)ではなく、これで(ちち)。

「育川こと越得多り」、変体仮名「川」(つ)。「こと」は合字。

「彼の旧鼠」の次に「丶」があります。何でしょうか。

「曽良」、振り仮名が「そりょう」となっています。

最後の行に長い平仮名「し」が韻をふむように三つ続いています。

 狼が人の子をそだてたり、また実際に犬の背に子猿がしがみついて育てられるのをみたこともあります。いろいろなんですね。恐れ慎むべきは人の心なのでしょう。

 

2021年10月24日日曜日

桃山人夜話巻二 その27

P19前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

文 明 の比 那曾の和太郎 登天郷 士有 厩  のうへ尓旧

ぶんめい ころ奈曽 王多らう  ごうしありうまや    ふる

ぶんめいのころなそのわたろうとてごうしありうまやのうえにふる


き与り春む鼠  有 个る可゛害  奈き故 尓代  々 捨 置 多里

     袮づミ阿り    可゛い  ゆへ 多゛以\/春て於き

きよりすむねずみありけるが が いなきゆえにだ いだいすておきたり


夜 ハ表 家尓移 り天猫 と交  りを奈春尓猫 も更

よる 於もや うつ  袮こ まじハ     袮こ さら

よるはおもやにうつりてねことまじわりをなすにねこもさら


尓是 と争  ハ春゛此 猫 子越五 ツうミたる後 毒 越くら

 これ 阿ら曽   この袮ここ いつ     のちどく

にこれとあらそわず このねここをいつつうみたるのちどくをくら


(大意)

文明の頃、那曾の和太郎という郷士がいた。厩(うまや)の上に昔

から住む鼠がいたが、被害がないので代々そのままにしておいた。

鼠は夜に母屋にやってきて猫とともにすごすのだが、とくに猫も

いやがることはなかった。この猫は子を五匹生んだあと毒を食らって

(死んでしまった)


(補足)

 綴じ目にかかっていて振り仮名が読みづらいですがなんとか・・・

「比」(ころ)は「頃」もありますがこちらのくずし字は右側がもっとグニャグニャとしてます。

「郷士」、「郷」のくずし字だけで覚えようとしないで、「郷士」セットで覚えます。

「捨置多里」、ここも「捨置」セットで覚えたほうがよさそう。「置」のくずし字は6行あとにもあります。「多里」を「多らむ」と読んでしまいました。

「うミたる」、平仮名「た」。

 

2021年10月23日土曜日

桃山人夜話巻二 その26

P17 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

P18 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

P17

旧  鼡

きう そ

きゅうそ


P18

ふ多口 おん奈

   くち

ふたくちおんな


まゝ子を尓くミて食  物 を阿多え春゛

  こ     しよくもつ 

ままこをにくみてしょくもつをあたえず


して殺 し个連者゛継 母 の子産 れし

  ころ     まゝ者ゝ こうま

してころしければ ままははのこうまれし


より首 筋

  くび春じ

よりくびすじ


の上 尓毛

 うへ

のうえにも


口 阿り天

くち

くちありて


食  をくハんと

しよく

しょくをくわんと


いふを髪 の

   可ミ

いうをかみの


はし蛇 と奈り

  へび

はしへびとなり


て食  物 を阿多へ

 しよくもつ

てしょくもつをあたえ


ま多何 日 毛阿多へ春゛

  奈ん尓ち

またなんにちもあたえず


奈どしてくるしめ个る

などしてくるしめける


と奈んおそれつゝしむ

となんおそれつつしむ


べきハまゝ母 のそねミ

     者ゝ

べきはままははのそねみ


奈り

なり


(大意)

P17 略

P18

ふた口おんな

(まま母が)まま子を憎んで食べ物を与えずに

殺してしまった。すると継母に子が生まれて

から、継母の首筋の上にも口ができて

食をとりたいというと、自分の髪の毛の

端が蛇となって食べ物を与えた。

また何日も与えないことなどもして

苦しめたりしたという。

恐れ慎むべきは継母の嫉妬である。


(補足)

「旧鼡」の本文の途中ですが、両面に図を刷る関係のためでしょう、「旧鼡」と「ふた口おんな」の絵図が入ります。

P17

でっかい歳を経た鼠ですが、おおきい黒猫にみえなくもない。ことなるのは長細い尻尾のみ。子猫は何の不思議もなく母さんしたって育つはず。


P18

文字がかすれたりつぶれたりしているので、他の版を参考にしました。

「の上尓毛」、「尓」がわかりにくいですが、ここの「尓」は英小文字筆記体「y」のようなかたち。

「はし」、平仮名「は」はひさびさ。

「何日」(奈ん尓ち)、ここの振り仮名「尓」も先程と同じ「y」。

「くるしめ个る」、最後の「る」はわかりやすいですが、最初の「る」はちょっと悩みます。変体仮名「留」(る)。

 隣の部屋をのぞいて、こんな光景を見たらその場で卒倒、気を失うこと確実であります。

継母の着物が南天の葉のような柄で丁寧に描かれています。そしてなぜか左足の指先をのぞかせ左の太ももを持ち上げ気味にしてやや立て膝にしているような感じが不安を誘います。鉄瓶があってこれも五徳にのせなければならないところそれはなし、団子を食べるなら茶碗があってよいはずなのにそれもなし・・・緻密な竹の板の間を前に清楚さをただよわせ、にこやかに団子を口に運ぶ継母の「うふふ」というもれでる声と蛇となった黒髪こすれる音が聞こえてきます。

 

2021年10月22日金曜日

桃山人夜話巻二 その25

P16後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

旧 く奈りぬれバ同 じ太 平 広  記尓旧  鼡人 の娘  と契

ふる      於奈 多以へいくハうき きう 曽ひと む春め ちぎり  

ふるくなりぬればおなじたいへいこう きにきゅうそひとのむすめとちぎり


多りと有 鼡  ハ千 年 をへて白 く奈るとあれども近 来 の

   阿り袮づミ せん袮ん   しろ        きんら以

たりとありねずみはせんねんをへてしろくなるとあれどもきんらいの


鼡  ハ生 れ奈可゛ら尓白 し当 世 ハ何 ごとも早 手巡 し奈り

袮づミ う満      しろ 多うせ以 奈尓   者やでまハ

ねずみはうまれなが らにしろしとうせいはなにごともはやでまわしなり


出羽尓天猫 の子旧  鼡  の乳越呑 天育   しこと阿り

で王  袮こ こふるき袮づミ ち のミ 曽多゛ち   

でわにてねこのこふるきねずみのちをのみてそだ ちしことあり


(大意)

年をとってしまえば同じようなものなのである。『太平広記』に「旧鼠、人の娘と契

りたり」とある。鼠は千年を経て白くなるとあるが、近来の

鼠は生まれながらに白い。今は何事も早め早めに手をまわす世になってしまった。

出羽の国で猫の子が年とった鼠の乳を呑み育ったことがあった。

(補足)

「同じ」、「へのへの茂平爺」とおなじ「じ」で、この「同じ」もじっと見ていると四角四面の顔に見えぬこともない。2行後の「白し」も、その次の行の「育し」も大きい「し」。

「旧鼡」、振り仮名は「きう曽」ではなく「ふるき袮づミ」。

「きゅうそ」というと、最初に頭に浮かぶのは「窮鼠猫を噛む」です。ここでは猫も鼠も歳をとればそれほどの違いはなく、鼠が猫の子に乳を与えても別に不思議はないだろうというぬくもりあふれるお話。人の心が勝手に生き物を区別して犬猿にしているということなんでしょう。


 

2021年10月21日木曜日

桃山人夜話巻二 その24

P16前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  六 旧  鼡

多゛以志゛うろくきう 曽

だ いじゅうろくきゅうそ


昔  大和 の志貴尓鼡  有 毛の色 赤  黒  白 の三色 奈り

む可しやまと しぎ 袮づミありけ いろあ可くくろくしろ ミいろ 

むかしやまとのしぎにねずみありけのいろあかくくろくしろのみいろなり


常 尓猫 を取 喰 ふ華 夷攷 尓云 く猫  王 あり鼡

つ年 袮こ とりくら 可ハゐこう い王 びやうわう  袮づミ

つねにねこをとりくらうか いこうにいわくびょうおうありねずみ


をのづ可ら来  天死春ること数 十  と去 バ猫 も鼡  も

     き多り し    春 志゛う され 袮こ 袮づミ

をのずからきたりてしすることすうじゅうとさればねこもねずみも


(大意)

第十六旧鼠

昔大和の志貴に鼠がいた。毛の色は赤黒白の三色であった。

常に猫を捕り食らっていた。「華夷攷」に次のようにある。「猫の王がいた。

鼠はそこへおのずから来て死ぬこと数十であった」。つまり、猫も鼠も

(補足)

「赤黒白」の振り仮名が「あか(く)しろ(く)しろ」と(く)があります。

「来天」、振り仮名「き多り」の区切りを確かめるのが難しい。

「赤黒白の三色の鼡」って、三毛猫は馴染みがあるけど、三毛鼠がいたのかもしれません。年をとれば猫も鼠も区別はそんなにかわりはしないだろうから、うんいたのかも・・・

 と、そんなおもいを感じた隣の爺さんは、そんな馬鹿なことはあんめいよ、千年たとうが二千年たとうが、猫は猫、鼠は鼠にきまってんべぇ、ったくもう、おめえさんも耄碌したもんだ。と隣の壁に向かって口角泡飛ばしてました。