2024年4月30日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その34

P11P12 国文学研究資料館蔵

P12

(読み)

さんのごとし

さんのごとし


「此 女 中  岩 井喜代太郎 可゛

 このじょちゅういわいきよたろうが


ぶ多い可゛本ときて

ぶたいが おときて


うつくしき

うつくしき


うへ尓て可゛

うえにてが


多んとあれ

たんとあれ


バ男  能命

ばおとこのいのち


をけ川゛ること

をけず ること


つけぎや

つけぎや


のごとし

のごとし


「こんやハ又 うちでお可ミ

 こんやはまたうちでおかみ


さんとち王川ておそひ

さんとちわっておそい


の可へ多ゝしおぢらしかへ

のかえただしおじらしかえ


お可多じけ

おかたじけ


奈どゝい者れる

などといわれる


多び尓

たびに


命  可゛け

いのちが け


づ連る

ずれる

(大意)

(和中)散のようである。

「この女中は岩井喜代太郎の舞台での顔にそっくりで美しいうえに、あれやこれやたくさんの手練手管で、男の命を削ることなんて付木屋の薄い木片が燃やされるようにすぐやられてしまう。

「今夜はまた、家でおかみさんと仲良くして遅くなるのかい。それともただじらしているだけかい。ごちそうさまだね」などと言われるたびに、命が削れる。

(補足)

「此女中」は鉋で命を削っている男が入れあげている芸者で、場面(芸者が男の奥さんにヤキモチをやいて愚痴っている)はその芸者の部屋、大きな三味線が壁にかかり、こたつに火鉢と、とても豪華であります。また、こたつの上には読本があって、この芸者さん読み書きも達者なよう。こたつの裾にある黒い塊は猫?

「つけぎ」、『つけぎ【付け木】

松や檜(ひのき)の薄い木片の端に硫黄を塗りつけたもの。火を他の物につけ移すのに用いたが,マッチの普及後使用されなくなった。硫黄木。火付け木』

 

2024年4月29日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その33

P11P12 国文学研究資料館蔵

P11

(読み)

「さけで命  をけづるハこ可゛多

 さけでいのちをけずるはこが た


奈でけ川゛るやう奈もの奈れバ

なでけず るようなものなれば


ま多゛いのちのへる尓てま可゛とれ

まだ いのちのへるにてまが とれ


るけれど女  といふや川ハ男  の命

るけれどおんなというやつはおとこのいのち


をけ川゛るかん奈なれバざんじ能

をけず るかんななればざんじの


うち尓命  可゛へる奈りようじん春

うちにいのちが へるなりようじんす


べし女  ハ命  のて起やくなること

べしおんなはいのちのてきやくなること


あ多可も金 尓やきミそ奈め

あたかもかねにやきみそなめ


くじに志本水 くハ尓和ち う

くじにしおすい かにわちゅう


P12

さんのごとし

さんのごとし

(大意)

 酒で命を削るのは、小刀で削るようなものなので、まだ命を減らすのに時間がかかるけれど、女というやつは、男の命を削る鉋であるから、しばらくのうちに命を減らしてしまう。用心すべし。女は命の処方をまちがえると毒となる薬であり、それはあたかも「金に焼き味噌」、「なめくじに塩」、「スイカに和中散」のようである。

(補足)

「て起やく」、『てきやく【敵薬】処方によっては毒になる薬。「其病人とは大―」〈浄瑠璃・伊賀越道中双六〉』

「金尓やきミそ」、相性があわないたとえ。俗に焼き味噌をつくると金がにげるとされる。とありました。

「水くハ尓和ちうさん」、食い合わせのたとえ。「水くハ」は西瓜🍉。「和中散」は『わちゅうさん【和中散】日本で経験的に用いられている生薬処方。江戸時代の売薬の一。枇杷(びわ)の葉,縮砂(しゆくしや),桂枝など九種類の生薬より成る。食中(あた)りの際に用いられる』 

2024年4月28日日曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その32

P11P12 国文学研究資料館蔵

P11

(読み)

[酒 で命  をけ川゛る]

 さけでいのちをけず る


「命  をけ川゛ると志り奈可゛らどふ

 いのちをけず るとしりなが らどう


もさけ可゛やめら

もさけが やめら


れねへどう

れねえどう


春るもん多゛

するもんだ


のミやうじん

のみょうじん


さ満へでも

さまへでも


ぐ王ん可゛け

が んが け


を志やう可

をしようか


「さあいゝ可ん

 さあいいかん


多゛もふ一 つ

だ もうひとつ


のめ能王可

のめのわか


くさと志

くさとし


玉 へつぎ春

たまえつぎす


てられ多

てられた


可んざま

かんざま


しハあ

しはあ


け天

けて


志まふ

しまう


可゛いゝ

が いい


公(きミ)ハね

  きみ はね


さけのあぢ

ざけのあじ


志ら春゛多゛

しらず だ


「岩 田の〈春やまハよく

 いわたの すやまはよく


のめるぞ

のめるぞ


「もふのめねへ

 もうのめねえ


これ多゛\/

これだ これだ

(大意)

「命をけずると知りながら、どうも酒がやめられねえ。どうするもんだの明神様へでも願掛けしようか。

「さあ、いい燗だ(神田)。もう一杯飲めの若草とし給え。つぎたしたままの燗冷ましはあけてしまえ。公は寝酒の味知らずだ。

「岩田の『𠆢春』やまはうまいぞ

「もう飲めねえ、これだこれだ。

(補足)

「どう春るもん多゛のミやうじんさ満」とそれをうけて「さあいゝ可ん多゛」と続けて、神田明神様に引っ掛けた洒落か。

「のめ能王可くさと志玉へ」、俗曲文庫端唄及都々逸集○雉子〔地唄〕(三下リ)に「雉子(きぎす)鳴く、野辺の若草摘み捨てられて」とあり、そのもじり、とありました。

「公(きミ)ハねさけのあぢ志ら春゛」、いろいろ想像できますが、何でしょうねぇ?🤔

「岩田の〈春やま」、京都加茂の岩田醸造の銘酒『素山』とありました。ネットでググってもありませんでした。「や」は変体仮名「也」でしょうか。かたちが?

 

2024年4月27日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その31

P11P12 国文学研究資料館蔵

P11

(読み)

さけといふや川

さけというやつ


ハ人 の命  をけづ

はひとのいのちをけず


るこ可゛た奈なり

るこが たななり


ゆへにさけをの

ゆえにさけをの


むこと越けづる

むことをけずる


といふ可川本ぶし

というかつおぶし


のやせるもけ川゛

のやせるもけず


るゆへ奈りよう

るゆえなりよう


じの本そく

じのほそく


奈るもけ川゛る由へ

なるもけず るゆえ


なり松 い多のう春

なりまついたのうす


く奈るもけ川゛る由へ

くなるもけず るゆえ


なり可つ本ぶしも

なりかつおぶしも


やうじも松 のい多もかけ

ようじもまつのいたもかけ


可゛へあり人 の命  尓ハ

が えありひとのいのちには


可け可゛へ奈しけづ徒多だけハ

かけが えなしけずっただけは


うまること奈し

うまることなし

(大意)

 酒というやつは、人の命を削る小刀である。ゆえに酒をのむことを「けずる」という。鰹節が細くなるのも削るからである。楊枝が細るのも削るためである。松板の薄くなるのも削るからである。鰹節も楊枝も松板も替えがある。人の命は他のもので替えることができない。なくなった分だけを埋め合わせるものはない。

(補足)

 この頁は読みやすくなりました。

「けづ徒多だけハ」、変体仮名「徒」(つ)はひさしぶり。

 「命」という木工品をかかえ、小刀で削るしぐさ、ほんとうにどこかでやっていそう。

後ろの屏風(or襖絵)は、杜甫の飲中八仙歌「知章騎馬似乗舩」(知章が馬に騎(の)るは舩に乗るに似たり)。知章がうしろにややのけぞって、酔っ払って船をこいでいます。落款は山東京伝の「山」。

 

2024年4月26日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その30

P10 国文学研究資料館蔵

(読み)

「けいせいハ

 けいせいは


よ以可ら遍

よいからへ


びをつ可ひて

びをつかいて


よりつ可す

よりつかず


きやくハあ川

きゃくはあつ


くなりもふ

くなりもう


可へる\/ と

かえるかえると


いふところを

いうところを


奈ん多゛へ者゛可

なんだ へば か


らしいとあ

らしいとあ


多ま可ら能ん

たまからのん


でかゝる

でかかる


と可く

とかく


女  は男

おんなはおとこ


の命

のいのち


とり

とり


なり

なり

(大意)

「傾城は宵から蛇をつかって寄りつかず、客はまだかまだかとじれて、「もう帰る帰る」と言うところを、遊女は「何だえ、馬鹿らしい」と、頭からのんでかかる。このようにして、女は男の命とりとなる。

(補足)

「けいせい」、『けいせい【傾城・契情】

① 〔漢書外戚伝「一顧傾二人城一,再顧傾二人国一」から。君主がその色香に迷って城や国を滅ぼす,の意〕美人。美女。「矢おもてにすすんで―を御らんぜば」〈平家物語•11〉

② 遊女。近世には太夫・天神などの高級な遊女をさす』

「遍びをつ可ひてよりつ可す」、のらりくらりと時間をかせぐことをいう、とありました。

 「帰る帰る」はもちろん客を蛙にみたてて、蛇である遊女がそれを頭からのんで、客を見くびることを洒落ています。うまいシャレ。蛙は蛇にのまれてしまうので、命とりとなる。

 

2024年4月25日木曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その29

P10 国文学研究資料館蔵

(読み)

「春可ぬことをハ

 すかぬことをば


い王志やん春い可尓奈可゛

いわしゃんすいかになが


れのミしやとてもこゝろ

れのみじゃとてもこころ


にふ多川ハ奈い王い奈と

にふたつはないわいなと


ふるへごゑ尓奈川天本ろ\/

ふるえごえになってほろほろ


とひざのうへゝこ本゛し多る

とひざのうえへこぼ したる


奈ミ多゛ハあ多可もへびの多満ご能ごとしそこでつひ尓ハ

なみだ はあたかもへびのたまごのごとしそこでついには


男  能命  をとりお和んぬ奈ん本゛う可おそろしき物語(もの可多り)尓て候

おとこのいのちをとりおわんぬなんぼ うかおそろしき   ものがたり にてそうろう

(大意)

「『いやなことを言わないでくださいませ。いくらこんな身であっても、あなたはかけがえのないひとよ』と震え声になって、ほろほろと膝の上にこぼした涙は、まるで蛇の卵のようである。そこでとうとう男の命をとってしまうのである。とても恐ろしいことでございます。

(補足)

「お和んぬ」、『おわん◦ぬ をはん― 【畢んぬ】(連語)〔動詞「おわる」の連用形に完了の助動詞「ぬ」の付いた「おわりぬ」の転〕多く動詞の連用形に付いて,動作の完了したことを表す。…し終わった。…してしまった。「省略せしめ候ひ―◦ぬ」〈平家物語•11〉〔漢文の「畢」「了」「訖」などの訓読に基づく語〕』

「奈ん本゛う可おそろしき物語(もの可多り)尓て候」、謡曲「道成寺」などや、御伽草子にもよくみえる、物語の最後につける常套文句、とありました。

「本ろ\/とひざのうへゝこ本゛し多る奈ミ多゛ハあ多可もへびの多満ご能ごとし」、ここもなかなかに痺れる文句にて候。

 三枚蒲団に上等な掛け布団、すべて旦那の出費で、床入前の大事な儀式です。

蛇の柄といい、掛け布団の柄といい、こんな細かい彫りをよくもまぁ。

 

2024年4月24日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その28

P10 国文学研究資料館蔵

(読み)

[命  とり]

 いのちとり

 

女  ハ志 うねんのふ可起もの尓て

おんなはしゅうねんのふかきものにて


へびと奈りじやとなりし多め

へびとなりじゃとなりしため


しお本く多゛う志゛やう寺(じ)のゑん

しおおくど うじ ょう  じ のえん


ぎでもミ奈さ満ごそんじのこと

ぎでもみなさまごぞんじのこと


奈り女  の一 心 のへびめ可゛べ丹ちよく

なりおんなのいっしんのへびめが べにちょく


を奈め多ねこのやうにくれ

をなめたねこのようにくれ


奈ひの志多をべろり\゛/と

ないのしたをべろりべろりと


多゛し可けぬり多゛ん春の

だ しかけぬりだ んすの


びやう能やう奈めを

びょうのやうなめを


飛可らせと起春て多

ひからせときすてた


まるぐけのやう尓の

まるぐけのようにの


多川て男  の命  を

たっておとこのいのちを


とらんと春る

とらんとする


かる可゛ゆへ尓う

かるが ゆへにう


つくしき女  を

つくしきおんなを


本めて命  とり

ほめていのちとり


めとハ申 春奈り

めとはもうすなり

(大意)

 女は執念深きものであり、へびとなり蛇となる例が多い。道成寺縁起で、皆様ご存知のことである。思い詰めた女の蛇めが紅猪口をなめた猫のように、紅(くれない)の舌をべろりべろりと出しかけ、塗り簞笥の鋲のような眼を光らせ、ときほどいた帯締めのようにのたって、男の命をとろうとする。そのようなわけで、美しい女をほめて、「命取り女(め、眼)」と申すのである。

(補足)

「べ丹ちよく」、『べにちょく【紅猪口】

紅を入れた杯のような入れ物。指先で溶いて唇に塗る。べにちょこ』

「まるぐけ」、『まるぐけ【丸絎け】

芯(しん)を入れて,断面が丸くなるように絎けること。また,そのひもや帯。特に,帯締め』

「かる可゛ゆへ尓」、『かるがゆえに ―ゆゑ―(接続)〔「かあるがゆえに」の転〕

それゆえに。そういうわけで。「硫黄といふ物みちみてり。―硫黄が島とも名付けたり」〈平家物語•2〉』

「女の一心のへび〜男の命をとらんと春る」、まるぐけ(帯留め)をのたうつ蛇に見立てているのに、しびれました。

 上の画像では、泣く女を見上げる男の両目がいたずら書きされてますが、実際はこちら。

 京伝、いかにも命を取られそうな男の顔にしたか!?

 

2024年4月23日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その27

P9 国文学研究資料館蔵

(読み)

「金 尓うらミ可゛か川\/ごさ

 かねにうらみが かずかずござ


るおやの金 をつ可ふと起ハ

るおやのかねをつかうときは


かきやうむち うとひゞく

かぎょうむちゅうとひびく


奈りおの可金 をつ可ふと起

なりおのがかねをつかうとき


ハ志じ う滅亡(めつ本う)と

はしじゅう   めつぼう と


ひゞく奈り正

ひびくなりしょう


じき里ち

じきりち


ぎの帳  あ以

ぎのちょうあい


ハ可くべつき

はかくべつき


らくとかせく

らくとかせぐ


奈りきひて

なりきいて


おどろく人

おどろくひと


もなし

もなし

(大意)

 金に恨みが数々ござる。親の金を使うときは、家業夢中と響くなり。おのが金を使うときは、始終滅亡と響くなり。正直律儀の帳合は格別気楽と稼ぐなり。聞いて驚く人もなし。

(補足)

 とても読みにくく、文章の理解も難しい。

「つ可ふと起ハ」、「ふ」は前後の文字から類推。

「おの可金をつ可ふと起」、ここの「つ可ふと起」も判読しにくいが、二行前と同じようなので、ここも類推。

「滅亡(めつ本う)」、「滅」はつぶれてしまって読めませんがふりがなからなんとか、このふりがなもつぶれてしまっています。

「里ちぎ」、「里」が二文字のようにみえて、悩みどころ。

「可くべつきらく」、「く」がわかりずらい。

「おどろく」、「ど」のかたちがいまひとつ不明。

 この部分は『京鹿の子娘道成寺の歌詞〽鐘に恨みは数々ござる 初夜の鐘を撞く時は 諸行無常と響くなり 後夜の鐘を撞く時は 是生滅法と響くなり 晨鐘(じんじょう)の響きは生滅滅己(しょうめつめついいりあい) 入相は寂滅為楽(じゃくめついらく)と響くなり 聞いて驚く人もなし』の替え歌。初夜の鐘は午後8時、後夜は午前4時に撞く鐘のこと。

 替え歌の内容は何を言わんとしているのか、悩みます。ウ~ン🤔

 

2024年4月22日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その26

P9 国文学研究資料館蔵

(読み)

命  可゛てあしに可らむ

いのちが てあしにからむ


「王し可゛て以志由ハ

 わしが ていしゅは


水 く王しうりで

みずが しうりで


こ可゛奈し\/  といつ

こが なしこがなしといっ


てうりあるき

てうりあるき


とふ\/子可゛奈く

とうとうこが なく


て王し可゛この

てわしが この


さ満尓奈りまし多

さまになりました


「命  とつり可゛へ尓せねハ

 いのちとつりが えにせねば


可ねもち尓ハ奈られ

かねもちにはなられ


ぬ多とへ命  尓可へて

ぬたとえいのちにかえて


も多ゞ本しいものハ

もただほしいものは


可年多゛の大 可゛ら

かねだ のおおが ら


くり多

くりだ

(大意)

[金が手足にからむ]

「わしの亭主は水菓子売りで、こがなしこがなしといって売り歩き、とうとう子がなくて、わしがこのような様になりました。

「命と取り替えにしなければ、金持ちにはなられぬ。たとえ命にかえても、ただ欲しいものは、金田の大からくりだ。

(補足)

「こ可゛奈し」、『こが‐なし【空閑梨・古河梨】

〘名〙 ナシの歴史上の品種。現在では、大古河(おおこが)という品種が知られ、九月中旬に熟し、大果で帯緑黄赤色、果肉は色が白く緻密で柔軟。

俳諧・犬子集(1633)二「ちればわが身をこがなしの花々哉〈貞継〉」』

「可年多゛の大可゛らくり」、『竹田人形は古い歴史を持ち、寛分年間(1660年頃)に竹田近江掾が大阪の道頓堀に人形芝居の櫓を上げたのが始まりといわれています。この竹田人形は、糸繰りとカラクリ人形として評判をとり、いつも大入り満員を続けた民衆的な人形芝居でした』とあり、金田と洒落ている。

 ばあさまの手足にからむ命のしっぽがちと怖い。

 

2024年4月21日日曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その25

P9 国文学研究資料館蔵

(読み)

[金 は命  とつり可゛へ]

 かねはいのちとつりが え


よの中 尓命  本ど多゛い

よのなかにいのちほどだ い


じ奈ものハ奈けれども

じなものはなけれども


そのいのちとつり可゛へ

そのいのちとつりが え


奈ものハ可年なり

なものはかねなり


か年といふやつ可゛ゑて

かねというやつが えて


ハ命  尓もおよふもの尓て

はいのちにもおよぶものにて


か年尓いのちをとられ多

かねにいのちをとられた


ことのむかしからかぞへつく

ことのむかしからかぞえつく


し可゛多し

しが たし


「命  ハ奈可゛い本ど可゛よ个れ

 いのちはなが いほどが よけれ


どもとしよりて子奈く

どもとしよりてこなく


かゝろふ志まも奈起ミ尓

かかろうしまもなきみに


てへん\゛/と奈可゛い起春る

てべんべ んとなが いきする


も又 ミじめ奈もの奈り

もまたみじめなものなり


これハひ川きやう

これはひっきょう


命  尓てあしを

いのちにてあしを


からめられる

からめられる


多゛うり奈り

ど うりなり

(大意)

 世の中に命ほど大事なものはないのだが、その命と釣り合うものは金である。金というやつが、とかく命にも及ぶものであり、金に命をとられてしまった例は、昔からいくらでもある。

 命は長いほどよいのだが、歳をとって子がなく、世話になる頼りもなく、便々とただ長生きするのもまたみじめである。これは結局、命に手足をからめとられているというわけなのだ。

(補足)

「つり可゛へ」、『とりかえること。引き替え。「未だ金銭を功名と―にした例(ためし)はないですな」〈社会百面相•魯庵〉』

「かゝろふ志まも奈」、「志ま」は『しま(接尾)① 名詞その他,状態を表す語に付いて,そのような様子であることを表す。さま。「思はぬに横―風のにふふかに覆ひ来ぬれば」〈万葉集•904〉』。「かゝろふ」は『「掛かる」は“ぶら下がる。ひっかかる。作用が及ぶ。行動に移る”の意などに広く用いられるが,仮名書きも多い。「壁に絵が掛かる」「魚が網に掛かる」「迷惑が掛かる」「暗示に掛かる」「修理には大金が掛かる」「これがすんだら仕事に掛かる」』

 平仮名「か」、「な」、「け」などとその変体仮名が混在して使われています。とくにその使われ方の法則はなさそうです。

 京伝はよく天秤棒の絵を使います。「九替十年色地獄」でも花魁と千両箱を巨大な天秤棒にのせてその落籍の値段をはかりました。今回、この命は千両也。

 

2024年4月20日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その24

P7P8 国文学研究資料館蔵

P8

(読み)

「梅 可゛枝も

 うめが えも


や川多王いナア

やったわいなあ


と志らてい王ぬハ志ち

としらでいわぬはしち


ハよつ本゜どおくまし起

はよっぽ どおくまじき


ものとミへ多り

ものとみえたり


「命  を能者゛す」

 いのちをのば す


「け ふハよくいのち可゛

 きょうはよくいのちが


のびやし多志多可゛

のびやしたしたが


おまへももふ五十

おまえももうごじゅう


ぢ可いせへ可

ぢかいせえか


ところ\゛/いのち

ところどころいのち


尓志王可゛より

にしわが より


やし多

やした


ひのしを

ひのしを


可け

かけ



しやう

しょう


「と川さんおめへの

 とっさんおめえの


命  ハ

いのちは


あめの

あめの


やう多゛

ようだ


本゛う尓

ぼ うに


くん奈\/

くんなくんな

(大意)

「梅が枝もやったことだと、そのまま言ってしまうと、質はよほどでなければ入れるものではないと考えるのだけれど。

「命を延ばす」

「今日は命がよく延びました。けど、お前ももう五十近いせいか、ところどころ命にシワがよりました。火熨斗(ひのし)をかけましょう。

「とうちゃん、おめえの命は飴のようだ。オレにくんなくんな。

(補足)

「梅可゛枝もや川多王いナア」、「ひらがな盛衰記」の中の文句。ネットのHPから無断借用すると、『四段目―神崎の廓に身を沈め、傾城梅が枝(うめがえ)と名乗る千鳥は、源太の出陣に必要な産衣(うぶぎぬ)の鎧を請戻す金の工面に心を砕き、無間の鐘をついても三百両を得たいと思い詰める。来合わせた延寿がそれと言わずに金を与える。梶原父子を親の敵と狙う姉お筆も、延寿の情ある計らいに心解け、源太は出陣する』、とありました。

「志らてい王ぬ」、ありのまま飾り気なく言うこと、とありました。

 「梅可゛枝〜ものとミへ多り」の解釈がよくわからないながらも大意のようにしました。左の頁の鰹を買うのに上田の袷を質にいれた(曲げて)ことをうけての文句だとおもうのですけど、ウ~ン🤔

 この部分も文字がかすれていたりかけたりで読みづらい。「梅」などつぶれてしまっていて読めません。

 命のあたまを棒にひっかけ延ばしている男の嫁さんが右手に持っているのが火熨斗、アイロンです。ほんの数十年前まで使われていたし、いまでも職人さんたちに使われています。その子どもが延びている様が飴の棒のようなので、なめたいわけ。

 ところで火熨斗をもつ奥さんの着物の裾がぞろぶいていますが、家の中では身分にもよりましたが、このような着方が普通だったようで、多くの絵に残っています。長屋のかみさんなどはしなかったでしょうけど。

 

2024年4月19日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その23

P7P8 国文学研究資料館蔵

P8

(読み)

ありせ川ちんの満ど可ら

ありせっちんのまどから


梅 可゛ゝを志多いこいふ年て

うめが かをしたいこいぶねで


月 見をし土用 まへ尓本とゝ

つきみをしどようまえにほとと


ぎ須をきゝ本ん須起尓

ぎすをききぼんすぎに


者つ可川をゝくひせ可き

はつがつおをくいせがき


ふ年の夕 春ゝミ日 れんき

ぶねのゆうすずみにちれんき


の志者゛ゐ个んぶつせつ多い

のしば いけんぶつせったい


ぢやを春ゝり奈可らや起

じゃをすすりながらやき


多んこをしてやりこ者多゛の

だんごをしてやりこはだ の


こぶま起でどひろくをひ

こぶまきでどぶろくをひ


つ可けても多のしミ尓二

っかけてもたのしみにふた


いろハ奈しこゝろさへ

いろはなしこころさえ


や春けれバいのちの能び

やすければいのちののび


ることあ多可も小む(す)めの

ることあたかもこむ す めの


せ多け多ぬきのきん玉

せたけたぬきのきんたま


南  風 尓あて多るあめ

みなみかぜにあてたるあめ


能ごとし

のごとし

(大意)

 (あり)雪隠の窓から梅の香りを楽しみ、肥(人糞)を運ぶ船で月見をし、土用前にホトトギスを聞き、盆過ぎに初鰹を食い、施餓鬼(霊を弔う)船で夕涼み、日蓮忌に芝居見物をし、接待茶をすすって焼団子を食い、小鰭(こはだ)の昆布巻でどぶろくをひっかけ、そんなことをしても、楽しいことにかわりはない。

 心さえ穏やかならば、命が延びることはあたかも、小娘の背丈(あっというまに背がのびる)、狸の金玉(八畳敷にのびる)、南の風にあたる飴のようである。

(補足)

 この部分は難しい。ややかすれているうえに、濁点が省略されているのでさらにわかりにくい。やっと読めても意味がちんぷんかんぷん。何度も音読するもつっかえつっかえになってしまいます。

 ここであげている二つの対比はそれら二つがどれも時期がずれていたり、ふさわしくない組み合わせであったりする事柄になっています。

「南風」、南のくずし字は基本で、東西南北といっしょにおぼえます。なかでも「北」が特に特徴的。

 小鰭の昆布巻きが、この当時からあったのですね。こんな上等な旨いものを食うなら、どぶろくなんぞではなく、上等な下り酒を飲みたいところ。

 

2024年4月18日木曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その22

P7P8 国文学研究資料館蔵

P8

(読み)

「命  をの者゛さんとて

 いのちをのば さんとて


きん\/をふん多゛んに

きんぎんをふんだ んに


つ可以うへ奈起多のしミ

つかいうえなきたのしみ


をしても志りのつまら

をしてもしりのつまら


ぬことあれバ能者し多

ぬことあればのばした


命  可へつて十 そう者゛い尓

いのちかえってじっそうば いに


ちゝまることありく者ず

ちじまることありくわず


ひんらくといふこと王さも

ひんらくということわざも


ありせ川ちんの満ど可ら

ありせっちんのまどから

(大意)

 命を延ばそうと金銀をふんだんに使い、これ以上ないような楽しみ方をしても、そのあとの始末をきちんとしなければ、延ばした命はかえって十数倍にも縮まることがある。

 くわず貧楽という諺もある。雪隠の窓から

(補足)

 この頁も全体に読みづらい。

「うへ奈起多のしミ」、「う」は変体仮名「可」とも読めて、意味も通じてしまいます。変体仮名「多」の上半分が欠けてます。

「そう者゛い」、『そうばい 【層倍】(接尾)助数詞。数を表す漢語について,その倍数だけあることを表す。「倍」を強めた言い方。「くすり九―」「今投資すると何―ももうかる」』

「く者ずひんらく」、『「食わず貧楽高枕」。生活は貧しくても、心は安らかに暮らしていることで、利益や名誉などを求めず、清貧に甘んじる境地をいう。たんに「食わず貧楽」だけでも用いる』

 

2024年4月17日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その21

P7P8 国文学研究資料館蔵

P7

(読み)

「と奈りてハ

 となりでは


者つ可川本で

はつがつおで


いきのびるつもり

いきのびるつもり


多゛可゛こつちハくハ

だ が こっちはくわ


春゛のま春゛者ら

ず のまず はら


よし者らでいのち

よしわらでいのち


をの者春おれ可

をのばすおれが


命  ハよくのひる

いのちはよくのびる


いのち多可゛と可く

いのちだが とかく


子ともら可゛奈

こどもらが な


尓可尓つ

にかにつ


けておや

けておや


のいのちを

のいのちを


ちゞめをる

ちじめをる


「かゝア尓者奈げを

 かかあにはなげを


の者゛春とち可゛川て

のば すとちが って


命  を能者春ハてま可゛

いのちをのばすはてまが


とれる

とれる


「いのちとおもふ阿

 いのちとおもうあ


王せ志ちやへゆく

わせしちやへゆく

(大意)

「隣では初鰹で命を延ばすつもりだが、こっちは食わず飲まず、節約して命を延ばす。俺の命はよく延びる命だが、とかく子どもらが何かにつけて親の命を縮める。

「カカアに鼻毛を伸ばす(甘くなる)のとはちがって、命を伸ばすのは手間がかかる

「命とおもう袷質屋へ行く」

(補足)

「者つ可川本で」、「可川を」のようにみえますが、変体仮名「本」です。

「者らよし者らで」、吉原に行ってちゃ金も貯まらず命も延ばせないので、行った気になって節約しての意味でしょうか、よくわかりません。

「こつちハくハ春゛」、「ハ」が判別しにくい。「く」は変体仮名「久」かも。

「と可く」、前後のつながりからなんとかよめそう。

 命の棒を頁をまたいで引っ張りのばす男の絵はなかなかしゃれてます。

袷質屋へ行く姉さんは「質之道」、すぐ右脇のセリフ「うへ多゛のあハせをまげて」にひっかけたのでしょう。

 

2024年4月16日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その20

P7P8 国文学研究資料館蔵

P7

(読み)

「七十五日いきのび

やうとおもつてかふ尓

可多ミとハき尓かゝる

思ひき川て一本゜ん

可うべい


「せにを可むやう奈可川本多゛

一トきれ可゛や可川て百尓

つひている百まても

い起やうか


「おれ可゛命と

思ふ此うへ多゛のあハせ

をまげて可う可川本多゛

まけさ川せへ奈


「それごらふじろ

いきてゐるい本多゛

(大意)

「七十五日長生きしようとおもって買うのに、片身とは気にかかる。思い切って一本買うべい。

「食べるのがもったいないような鰹だ。一切れだけ買っても百まで長生きできそうだから、一本買いすれば必ず百まで長生きできるだろう。

「俺が命とおもっているこの上田の袷(あわせ)を質に入れて買う鰹だ。まけさっせへな。

「そらこれを御覧じろ、生きている魚だ。

(補足)

 今回の会話部分が字がボケているような感じなのは摺りを重ねた版木での版だったからでしょうか。キレがわるく読みづらい。

「七十五日」、『しちじゅうごにち しちじふご―【七十五日】

① 初物(はつもの)を食べると長生きするという日数。「なすびの初なりを,目籠に入れて売り来たるを,―の齢(よわい),これ楽しみの」〈浮世草子・日本永代蔵2〉』

「せにを可むやう奈可川本多゛」、「せにを可むやう奈」がなんのことかとサッパリ?「銭を噛むような」(高価な食べものを食べること、高価で食べるのがもったいないこと)でした。

「まげて」、『⑤ 〔「質(しち)」と発音が同じ「七」の第二画がまがっていることからか〕品物を質に入れる。「当分いらぬ夏綺羅―・げて七十両」〈浮世草子・好色旅日記〉』

「い本」、『いお いを 【魚】さかな。うお。「白き鳥の…水のうへに遊びつつ―をくふ」〈伊勢物語9〉』

「一トきれ可゛や可川て百尓つひている百まてもい起やうか」、よくわからない部分なのですが大意のようにしました。

 褌一丁の魚屋さんの座り方が独特です。曲げも粋にしたのかこれも独特。棒手振りで売っているので右側にも桶が見えています。

 

2024年4月15日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その19

P7P8 国文学研究資料館蔵

P7

(読み)

いのちといふものハ

いのちというものは


てお起可゛多いし奈り

ておきが だいじなり


一 心 のてを起可゛和るひと

いっしんのておきが わるいと


い可本ど奈可起命  を

いかほどながきいのちを


さづ可りても王れと

さずかりてもわれと


王がで尓ちゞめること

わがでにちぢめること


ありい可り者ら多

ありいかりはらた


ち丹くい可ハいゝよ

ちにくいかわいいよ


ろこび可奈しミおし

ろこびかなしみおし


い本しいの多ぐひ

いほしいのたぐい


ミ奈いのちをちゞ

みないのちをちぢ


めるやくしや奈り

めるやくしゃなり

(大意)

 命というものは手入れが大切である。細やかな手入れがいきとどかないと、どれほどの長い命を授かっても、自分自身で縮めてしまうことがある。怒り・腹立ち・憎い・かわいい・喜び・悲しみ・惜しい・欲しいのたぐい、これらみな命を縮める役者(張本人)である。

(補足)

 一読しただけでは、読みづらく、区切りもどこか判別するのに難しい。何度も音読するのが一番。全体に変体仮名「可」がよみずらい。

「てお起」、『常に心がけて取扱うこと』。

「一心のてを起」、「一心」が一文字「正」のように見えてしまいます。

「王れと王がで尓」、『わ‐が‐でに【我がでに】《「でに」はそれ自身での意》自分自身で。 みずから』。

「い可り〜おしい本しい」、区切りが難しいところ。

 命を延ばす工夫をあれもこれも描いているのが楽しくおかしい、がこんなバカバカしいことをわれわれは日々やっているのですよと、京伝ニヤリとわらってながめている。

 

2024年4月14日日曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その18

P6 国文学研究資料館蔵

(読み)

「命  を可へ春

 いのちをかえす


者んごん可う御

はんごんこうご


用 奈ら此 あい多゛

ようならこのあいだ


そりやそこで

そりゃそこで


もいのち可゛

もいのちが


おしいとお川

おしいとおっ


しやるあそ

しゃるあそ


こても命  可゛

こでもいのちが


おしいとお川

おしいとおっ


しやるこりや

しゃるこりゃ


やつこう可\/

やっこうかうか


していのちを

していのちを


本゛う尓ふる奈

ぼ うにふるな


「者いやい

 はいやい


さやうで

さようで


こざい

ござい


「いのち

 いのち


の可満

のかま


尓ハ

には


心  のお

こころのお


もり

もり


あり

あり


「きどあ以らくといふや川可゛かさ

 きどあいらくというやつが かさ


奈るといのちをあぶなく春る

なるといのちをあぶあくする


どうぐ

どうぐ


なり

なり


命  を本゛う尓ふる

いのちをぼ うにふる


命  ハあやういもの

いのちはあやういもの

(大意)

「命を返して見せる反魂香、お求めならばこの(居合抜きの)あいだに、そりゃそこでも命が惜しいとおっしゃる。あそこでも命が惜しいとおっしゃる。こりゃ、奴(やっこ)、うかうかして、命を棒にふるな。

「はいやい、さようでござい。

 命の鎌には心のおもりがある。喜怒哀楽というやつが重なると、これらはくずれやすくなって命を危なくする道具となる。

命を棒にふる。

命はあやういもの。

(補足)

 このあたりの文章は、前後がつながっている部分が多く、やや判読しにくい。

「者んごん可う」、『はんごんこう ―かう【反魂香】

〔漢の武帝が李夫人の死後この香をたいてその面影を見たという故事から〕

火にくべると,煙の中に死者のありし日の俤(おもかげ)を見せるという香』。

 看板に「返魂香」とあり、香炉の絵に煙が立ち上っています。その脇に「李夫人?方」。

 当時、松井源水が大道芸居合抜きで見物人を集め、そこで反魂丹(はんごんたん)という食傷や撹乱に効く丸薬を売った。これに引っ掛けてのはなしとありました。

「こりややつこう可\/して」、「やつこ」が「奴(やっこ)」とわかって、区切りがわかりました。

 鎌は大道芸の道具のひとつ。心のおもりが付いています。

 命を、喜怒哀楽の台を重ねてたうえに不安定な足駄をはき、一瞬の技である居合抜きの刀の代わりに命の棒をもたせている様子にたとえているのがなるほどとうなってしまう。そして、命はあやういものとしゃれる。

命を棒にふる、これも文字通りのしゃれでうまい!

 

2024年4月13日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その17

P6 国文学研究資料館蔵

(読み)

多以じのいのちをこしに

だいじのいのちをこしに


さして多かいところへあ

さしてたかいところへあ


し多゛者いての本り

しだ はいてのぼり


奈可゛い命  をぬ以て

なが いいのちをぬいて


ふりまハ春やう奈

ふりまわすやうな


もの奈れバ命  本ど

ものあればいのちほど


あぶ奈起ものハ奈し

あぶなきものはなし


王るく春るとふミ

わるくするとふみ


者づしていのちを

はずしていのちを


うし奈ふことあり

うしなうことあり


ようじんせ春んバ

ようじんせずんば


あるべ可ら春゛

あるべからず

(大意)

 大事な命を腰にさして、高いところへ高下駄を履いてのぼり、長い命を抜いて振り回すようなものであるので、命ほど危ないものはない。悪くすれば踏みはずして命を失う事がある。用心しなくてはならない。

(補足)

「あし多゛」、『足駄〔「足板(あしいた)」の転か〕① (雨の日などにはく)高い二枚歯のついた下駄(げた)。高(たか)下駄』

 ここまでいろいろな長いの短いの太いの細いの「命」をみてくると、本当にどこかで売っているように気になってきました。

「こしに」、「こ」がわかりずらい。平仮名「に」は久しぶりの登場。

 

2024年4月12日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その16

P6 国文学研究資料館蔵

(読み)

者゛くや可゛つるぎも毛ちて尓

ば くやが つるぎももちてに


よる奈可゛い以のちをさづ可り

よるなが いいのちをさずかり


て毛もちての手をきが

てももちてのてをきが


王るけれバち うとでおれ

わるければちゅうとでおれ


多りさ起をちゞめ多りする

たりさきをちじめたりする


ことありこれミ奈いつ心 の

ことありこれみないっしんの


もちやうあしくま多ハふ

もちようあしくまたはふ


やうじやう奈る可由へ奈り

ようじょうなるがゆへなり


いのちといふものハ多とハゞ

いのちというものはたとわば


いあ以ぬき能可多奈のごとし

いあいぬきのかたなのごとし

(大意)

 莫耶が剣(名刀)も持ち手により切れ味がことなる。長い命を授かっても、持ち手の使い方が悪ければ、中途で折れたり、先が欠けたりすることがある。これはみなひたすら心の持ちようが悪いか、または不養生のためである。

 命というものは、たとえると、居合抜きの刀のようなものである。

(補足)

 出だし「者゛くや」から、つっとって、そのあともどこで区切ったらよいのか何度も音読するもよくわからず。それが数行続きました。なかなかやっかい。

「者゛くや」、『【莫耶】① 名剣のこと』『かんしょうばくや かんしやう―【干将莫耶】

〔「呉越春秋」から。中国の春秋時代に,呉の刀工干将が呉王闔閭(こうりよ)の頼みで剣を作るとき,妻莫耶の髪を炉に入れて作り,できあがった二振りの名剣に「干将」「莫耶」と名付けたことから〕名剣のこと』

「つるぎも毛ちて尓よる」、変体仮名「も」が二種類つづいています。

「もちやうあしくま多ハ」、「あしく」を「尓天」と間違えました。「ま」は二画目の横棒の左側が欠けているだけで、惑わされてしまう。

 

2024年4月11日木曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その15

P5 国文学研究資料館蔵

(読み)

本うそ可命  ハくじらさし

ほうそがいのちはくじらさし


尓て七 百  丈  可゛んく王い可゛い

にてななひゃくじょうが んか いが い


のちハ可川゛さもめん

のちはかず さもめん


尓てじやう奈し

にてじゃうなし


奈可いも

ながいも


あれバ

あれば


みじ

みじ


可以も

かいも


あるハ八百や

あるはやおや


のゑんのし

のえんのし


多と人 の

たとひとの


命  奈り

いのちなり


「おれ可゛いのちを

 おれが いのちを


やりに多とへ多ハ命

やりにたとえたはいのち


を多゛以じ尓志ろやり者゛奈し尓春る奈と

をだ いじにしろやりぱ なしにするなと


いふこと多゛

いうことだ


命  ハ多゛以じの多゛うぐ

いのちはだ いじのど うぐ

(大意)

 彭祖(ほうそ)の命は鯨尺で七百丈、顔回の命は上総木綿で一丈にも及ばない。長いのもあれば短いのもあるのは八百屋の縁の下と人の命である。

(東方朔)「おれの命を槍にたとえたのは、命を大事にしろ、やり(槍)っぱなしにするなということだ。

命は大事な道具

(補足)

「本うそ」、『ほうそ はう― 【彭祖】

中国古代伝説上の長寿者。帝顓頊(せんぎよく)の玄孫。常に桂芝を食し,導引の術をよくし,夏(か)を経て殷(いん)末には七百余歳に達したという』

「くじらさし」、「可゛んく王い」、ここの「く」はほとんどカタカナ「ム」、このあとの「人の命奈り」の「人」とほとんど同じかたちでもあります。

「可゛んく王い」、『がんかい ―くわい 【顔回】

[前514〜前483]中国,春秋時代の魯(ろ)の学者。孔門十哲の第一。字(あざな)は子淵(しえん)。貧家に生まれたが,学問を好み孔子に重んじられた。早逝し,孔子を嘆かせた。顔淵』

「奈可いもあれバみじ可以もあるハ八百やのゑんの多」、ものの本には「もと深川遊里からはやりだした流行歌」とありました。この頃にはさつまいもがあったので、この芋(いも)を引っ掛けたのでは。

 

2024年4月10日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その14

P5 国文学研究資料館蔵

(読み)

「とう本゛うさく可゛

 とうぼ うさくが


命  ハやり能ごとし

いのちはやりのごとし


うらし満太郎 可゛

うらしまたろうが


命  ハ多゛以可゛さ能

いのちはだ いが さの


ことし三うら

ごとしみうら


のお本春け

のおおすけ


可゛命  ハ多

が いのちはた


て可゛さのごとし

てが さのごとし


此 三いろハおもて

このみいろはおもて


多ち多る大 せ川

たちたるたいせつ


奈多゛うぐ奈り

など うぐなり


いのちもま多

いのちもまた


人 の多め尓

ひとのために


大 切 奈多゛う

たいせつなど う


ぐ奈り可゛てん可゛

ぐなりが てんか


\/

がてんか

(大意)

「東方朔の命は槍のごとし。浦島太郎の命は台傘のごとし。三浦大介の命は立傘のごとし。

この三つの傘は、世間に知られる大切な道具である。命もまた人のために大切な道具であるのだ。おわかりか、おわかりか。

(補足)

「多゛以可゛さ」、『1 近世、大名行列などのとき、袋に入れ長い棒の先につけて、小者に持たせたかぶり笠。2 (台傘)傘袋に納めた妻折り傘。高位の人の外出の際に飾り傘として用いた』

「多て可゛さ」、『たてがさ【立て傘】① ビロードまたは羅紗(ラシヤ)などの袋に入れた長柄の傘。江戸時代大名などの行列の時,供の者に持たせた』

 これら三つの傘は、身分社会でしたので威儀をととのえるもの、要は格好つけです。武士階級が滅んでいく原因の一つでありました。京伝はそれを承知で皮肉ったのでしょうか。

 

2024年4月9日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その13

P5 国文学研究資料館蔵

(読み)

とう本゛うさく可゛命  ハ九  千 丈  うらしま太郎 ハ

とうぼ うさくが いのちはきゅうせんじょううらしまたろうは


八 千 丈  三浦 大 介 百  六 丈  ミ奈これ天 より

はっせんじょうみうらおおすけひゃくろくじょうみなこれてんより


さ多め玉 へる命  尓て可ミ本とけのおさ以

さだめたまえるいのちにてかみほとけのおさい


く尓毛のびちゞミので起尓くきもの

くにものびちじみのできにくきもの


ハいのち奈り志かし奈可゛ら善 を奈せ

はいのちなりしかしなが らぜんをなせ


バみじ可起も奈可゛く奈り悪 を

ばみじかきもなが くなりあくを


奈せバ奈可゛起もみじかく

なせばなが きもみじかく


なると可く一 心 のもちやう

なるとかくいっしんのもちよう


尓てのびちゞミも又

にてのびちじみもまた


奈起尓

なきに


あらず

あらず

(大意)

 東方朔がもつ命の棒は九千丈、浦島太郎は八千丈、三浦大介は百六丈、これらはみな天より定めたまわった命である。神仏でも伸び縮みの細工ができないのが命である。しかしながら、善をなせば短いものも長くなり、悪をなせば長いものも短くなる。いずれにしても、心の持ちようで、また伸びも縮みもないことではない。

(補足)

「丈」、『一〇尺。1891年(明治24)100メートルを三三丈と定めた』

「東方朔」、『[前154頃〜前93頃]中国,前漢の文人。字(あざな)は曼倩(まんせん)。武帝の側近として仕えた。奇言・奇行で知られ,後世,仙人的存在とされ,西王母の植えた桃の実を盗んで食べ八千年の寿命を得たなど種々の説話が残る。「答客難」「非有先生論」などの文章がある』

「三浦大介」、『みうらよしあき 【三浦義明】

[1092〜1180]平安末期の武士。相模三浦の人。大介と称す。頼朝の挙兵に応じたが平家方の畠山重忠に三浦衣笠城を包囲され,子の義澄らを脱出させて戦死』

 着物の柄、三浦と浦島は日本の伝統的ものですが、東方朔は唐風(襟も靴も)を意識しているので、柄がとても複雑です。これは彫師なかせであったでしょう。うまいもんだ。

 

2024年4月8日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その12

P4 国文学研究資料館蔵

(読み)

こくうそう本゛さつ

こくうぞうぼ さつ


「春いふん多けの奈可゛ひ

 ずいぶんたけのなが い


じやうぶ奈志満

じょうぶなしま


可゛ら能よいいのち

が らのよいいのち


可゛本しひ

が ほしい


「七 十  古来(こらい)まれ奈り

 しちじゅう   こらい まれなり


と申 せバ七 十

ともうせばしちじゅう


よりいしやうの

よりいじょうの


いのちハ多し

いのちはたし


奈うござり

なうござり


ま須

ます


「こくう

 こくう


ぞうさ満ハこ

ぞうさまはこ


くう尓おねぎり奈さるでこまるぞ

くうにおねぎりなさるでこまるぞ

(大意)

虚空蔵菩薩「ずいぶんと丈の長い丈夫な縞柄のよい命がほしい」。

「七十は古稀(古来稀なり)といい、七十以上の命は品不足でござります。

「虚空蔵様は、こくうに(むやみやたらに)お値切りになさるので困るぞ。

(補足)

虚空蔵菩薩と「水」の番頭のやりとり。

「たし奈う」、『たしな・い【足し無い】(形)《文ク たしな・し》

① 数・量が少ない。乏しい。「―・い船の中の淡水では洗つても〱」〈或る女•武郎〉』

「こくう」、『【虚空】(名•形動ナリ)

③ 深い考えがないさま。むやみやたらに。「日本人と見ると―に相撲を取りたがる」〈咄本・鹿の子餅〉』

「こくう」、ここの「く」は「ム」の「ヽ」がながれているので、間違えやすい。

 箱看板には「長寿屋」「壽命品々」「万左エ門」「大丈夫請合賣」とあります。「一」「力」を「万」としましたが、さて?

 

2024年4月7日日曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その11

P3 国文学研究資料館蔵

P4

(読み)

P3

「八 まんさ満おうま

 はちまんさまおうま


尓て可い尓き玉 ふ

にてかいにきたまう


「ふ个゛ん本゛さつきをつけ玉 ふ

 ふげ んぼ さつきをつけたまう


小象(こぞう)よそのさげている

   こぞう よそのさげている


命  を多゛以し尓もてふと

いのちをだ いじにもてふと


くじやうぶ

くじょうぶ


奈やうでも

なやうでも


本川き

ぽっき


りと

りと


おれ

おれ


類ぞ

るぞ


「者やの勘 平 尓さ

 はやのかんぺいにさ


づけるいのちハ三 尺

ずけるいのちはさんしゃく


尓多る可たら春゛

にたるかたらず


でよい志奈の

でよいしなの


やのお者ん尓さ

やのおはんにさ


づけるいのち

ずけるいのち

P4

を一 尺  四 寸

をいっしゃくよんすん


八百屋お七

やおやおしち


尓さづ个る

にさずける


いの

いの




一 尺  五寸

いっしゃくごすん


もらひ

もらい


多いと

たいと


ふどうさ

ふどうさ


ま者ん

まはん


ゑり可

えりか


そで口

そでくち


をかふ

をかう


きどり

きどり


奈り

なり

(大意)

 八幡様がお馬にて買いにいらっしゃった。

 普賢菩薩が、小象に注意あそばす。

「小象よ、その提げている命を大事に持て。太くて丈夫なようでも、ぽっきりと折れるぞ」。

「早野勘平に授ける命のは、三尺にたるかたらずでよい。信濃屋のお半に授ける命を一尺四寸、八百屋お七に授ける命を一尺五寸もらいたい」と不動様、まるで半襟か袖口を買うような様子である。

(補足)

 早野勘平(仮名手本忠臣蔵)は三十一歳で亡くなったので、三十になるかならずと引掛け。信濃屋のお半(浄瑠璃「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」)は十四歳で一尺四寸、八百屋お七は一五歳で一尺五寸ともじっている。

 半襟も袖口も汚れやすいところを防ぐために日常的に生地をあてて縫いかえたりするので身近な事柄。

 不動明王様のお顔は京伝の知り合いを似せて描いたような気がします。こんな挿絵でも、右手には煩悩を断ち切る剣をもち、左手には煩悩から吊り上げる縄を持たせ、きまりを守っています。

 

2024年4月6日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その10

P4 国文学研究資料館蔵

(読み)

春し八 十  八

すしはちじゅうはち


ハよねのまもり

はよねのまもり


とて人 可゛めで

とてひとが めで


多可る由へね多゛ん

たがるゆへねだ ん


高 直 奈り七 十  八

こうじきなりななじゅうはち


十  の命  もよい\/

じゅうのいのちもよいよい


尓奈りこし可゛ぬ

になりこしが ぬ


け多りてあし可゛

けたりてあしが


き可奈ん多りろう

きかなんだりろう


もう志多り春れ

もうしたりすれ


バいきている可ひも

ばいきているかいも


奈起ゆへ多とへいのち

なきゆへたとえいのち


可奈可゛くてもこれら

がなが くてもこれら


ハこれらハひけもの

はこれらはひけもの


尓てね多゛ん可くべ川

にてねだ んかくべつ


や春し

やすし

(大意)

(値段はや)すい。八十八は米(よね)の守りになり人がめでたがるので、値段は高値(たかね)になる。命も70、80になると、よいよいになり、腰が抜けたり、手足がきかなくなってきたりする。老いぼれになってしまうと、生きている甲斐もなくなってしまうので、たとえ命が長くても、これらは売れ残りとなり値段は格別に安い。

(補足)

「高値」、これは二文字セットで覚えたほうがよいくずし字です。よく出てきます。

「よい\/」、こんな時代から使われていたとは。

「ろうもう」、老耄ですが、〔「老」は七〇歳,「耄」は八,九〇歳の老人〕とは知りませんでした。

「ひけもの」、『ひけもの【引け物】

欠点があって,値引きしてある品物。「―の強売(おしつけうり)でもするやうに」〈二人女房•紅葉〉』

「ね多゛ん」、この変体仮名「多」は「さ」の一画目の横棒がないかたちとは異なるかたちのもの。

 

2024年4月5日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その9

P3P4 国文学研究資料館蔵

P4

(読み)

P3

「いのち者可

 いのちばか


りハうり可い

りはうりかい


尓奈らぬと

にならぬと


いふハも川と

いうはもっと


もなりいの

もなりいの


ちをうり可ひ

ちをうりかい

P4

尓志玉 ふハ

にしたもうは


可ミ本とけ

かみほとけ


者゛可り奈り

ば かりなり


「おとこのいのち

 おとこのいとち


ハ二十  五と四十  二

はにじゅうごとしじゅうに


女  の命  ハ十  九

おんなのいのちはじゅうく


と三 十  三

とさんじゅうさん


これらハ

これらは


やくどしと

やくどしと


いゝて人 可゛

いいてひとが


きらふゆへ

きらうゆへ


尓ね多んや

にねだんや


春し八 十  八

すしはちじゅうはち

(大意)

「命ばかりは売り買いにならぬ」というのはもっともなことである。命を売り買いされてるのは神仏ばかりである。

 男の命は25と42、女の命は19と33、これらは厄年といって、人が嫌うので値段は安い。

(補足)

「尓志玉 ふハ」、「ふ」の文字のかたちが不明です。

「やくどしと」、「ど」が「土」のくずし字のようにみえるのですが。

 店先の暖簾には「命」の現代風書体の意匠です。ひとつおいて「長寿や」とあります。

 

2024年4月4日木曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その8

P3P4 国文学研究資料館蔵

P3

(読み)

いのちといふものふとくじやうぶ尓ミへ

いのちというものふとくじょうぶにみえ


てもミじ可起あり本そくて

てもみじかきありほそくて


よ王\/志多る丹毛奈可゛き

よわよわしたるにもなが き


ありみ可け尓ハよらぬ

ありみかけにはよらぬ


もの奈り

ものなり


「一 代 の満もり本んぞん

 いちだいのまもりほんぞん


王可゛あ川゛可り能子の

わが あず かりのこの


うまれる多び尓いの

うまれるたびにいの


ちのとんやへき多り

ちのとんやへきたり


玉 ひそれ\/の

たまいそれぞれの


いんゑん尓志多可゛ひて

いんえんにしたが いて


あるいハ奈可゛くあるい

あるいはなが くあるい


ハミじ可起いのち

はみじかきいのち


を可いとりてさ

をかいとりてさ


づけ玉 ふ春こ

ずけたまうすこ


しもゑこひ

しもえこひ


いきハ奈され

いきはなされ


春゛と可く奈可゛

ず とかくなが


ミし可ハさ多゛

みじかはさだ


まれるいんゑん

まれるいんえん


奈り

なり

(大意)

 命というものは、太くて丈夫に見えても短いのもあり、細くて弱々しくしていても長いものがあり、見かけにはよらぬものである。

「人間の守り本尊が、おのれの預かりし子の生まれるたびに、命の問屋へおいでになって、それぞれの因縁に従って、長い命やあるいは短い命を買い取って授けられる。少しもえこひいきはなされず、いずれにせよ命の長短は定まった因縁なのである。

(補足)

「満もり本んぞん」、『人はそれぞれの生まれ年の干支によって、守り本尊が決まっていて』、ここに出てらっしゃた普賢菩薩は辰・巳、虚空蔵菩薩は丑・寅とありました。

「あるいハ奈可゛くあるいハミじ可起」、『② (「あるいは…あるいは…」の形で)同じような事柄を列挙して,さまざまな動作が行われたさまを表す。「―海山に遊んで休養をはかり,―勉学にいそしむ者もある」〔漢文訓読に由来する語法。古く「あるひは」と書かれることもあったが,「あるいは」が本来の形〕』

「よ王\/志多る丹毛」、ここの変体仮名「毛」(も)はこのあとのものとかたちがことなっていますが、両方とも同じように使われます。

 日除け暖簾に染め抜いてある字は「大丈夫請合」、P4の箱看板のと同じでした。

それにしてもにぎやかすぎる店前です。

 

2024年4月3日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その7

P2 国文学研究資料館蔵

(読み)

「日 月 の

 にちげつの


ものさし

ものさし


尓て命

にていのち


の奈かミし

のながみじ


可を者可る

かをはかる


「者んく王のちハ

 はんか のちは


人 のやう志゛やう

ひとのようじ ょう


可゛王るうござ

が わるうござ


れバ多ふんみ

ればたぶんみ


じ可い命  可゛

じかいいのちが


うれま春

うれます


と可く奈

とかくな


可゛い以のち

が いいのち


ハ以奈可

はいなか


む起で

むきで


ござり

ござり


ま須

ます

(大意)

「年月の長さを測る物差しで命の長短を測る

「人の集まるにぎやかなところは健康を保つのが難しくございますので、多分短い命が売れます。どちらかといえば長い命は田舎向きでござります。

(補足)

 「火」が測っているものさしは「鯨尺」のよう、いくらか長く命を測ることができそう。「木」「土」の二種類の羽織紐が丁寧に描かれています。

 

2024年4月2日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その6

P2 国文学研究資料館蔵

(読み)

◯木 火土

  もっかど


金 水 の五

きんすいのご


ぎやうハいの

ぎょうはいの


ち能者゛んとう

ちのば んとう


奈りこの五

なりこのご


人 尓ていのち

にんにていのち


をうけもち尓

をうけもちに


して志者い春る

してしはいする


ゆへ尓春べて人

ゆへにすべてひと


のいのちハ木 火

のいのちはもっか


土金 水 の者゛ん

どきんすいのば ん


とうもち奈り

とうもちなり


一 人可けても

ひとりかけても


いのちまつ多

いのちまった


から春゛

からず


「いのちの仕入

 いのちのしいれ


ふちやう可゛つ以て

ふちょうが ついて


可多奈かけのやう

かたなかけのよう


奈もの尓可けてある

なものにかけてある

(大意)

◯木火土金水の五行は命の番頭である。この五人で命を受け持ち支配するので、すべて人の命は、木火土金水の番頭がついていることになる。一人欠けても命は完全なものとはならない。

「仕入れた命が、商品札がついて刀掛けのようなものにかけてある。

(補足)

「志者い春る」、変体仮名「者」(は)だとおもうのですけど、かたちがなんか変、ことなる変体仮名?

「五ぎやう」、五行(説)のこと。『① 中国古来の哲理で,万物を組成する五つの元になる気。木・火・土・金・水の称。五行のおのおのを,兄(え)・弟(と)の二つずつに配してできたのが十干(じつかん)である』

「まつ多」、「待った」ではなく「全き(まったき)」。

 木火土金水の五人、目がみな同じで、五人で一組と納得。


2024年4月1日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その5

P1 国文学研究資料館蔵

(読み)

いのちハ人

いのちはひと


者゛可り尓あ

ば かりにあ


ら春゛ちやう

らず ちょう


るいちくるい

るいちくるい


う本むし

うおむし


けらさう

けらそう


もく尓

もくに


い多るまで

いたるまで


それらに

それらに


仕入 あり

しいれあり


つる可めの

つるかめの


奈が起いの

ながきいの


ちぶゆう

ちふゆう


のいちごの

のいちごの


みじ可起松

みじかきまつ


のちとせ

のちとせ


あさ可゛本のひ

あさが おのひ


とさ可りミ奈

とさかりみな


さ多゛満りのい

さだ まりのい


のちなり

のちなり

(大意)

 命あるものは人ばかりではない。鳥類・畜類・魚・虫けら・草木にいたるまでそれぞれに仕入れがある。鶴亀の長き命、蜉蝣(かげろう)の一生の短きこと、松の千年、朝顔の一盛り、これらみな定まりの命なのである。

(補足)

「あさ可゛本」、江戸時代に何度か朝顔人気が高まったそうで、品種改良も盛んに行なわれたとありました。