2026年3月30日月曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その17

P25 国文学研究資料館蔵

(読み)

真鞴 大  工所 作

まぶき多゛いく

まぶきだ いくしょさ


満ぶ起といふハ銅 より白 め殻 実をぬきとりて正  味者゛

           しろ 可らミ

まぶきというはどうよりしろめからみをぬきとりてしょうみば


可り尓仕あげてう春銅 尓遍ぐ也 ふいごハ二挺  ふいごなり哥 ニ

かりにしあげてうすどうにへぐなりふいごはにちょうふいごなりうたに


満可゛ねふくとよめるハまぶきのことなりべし

まが ねふくとよめるはまぶきのことなりべし


古今 集  大 哥 所  の御 哥

こきんしゅうおおうたどころのおんうた


ま可ねふく吉備の中 山 帯 尓せる細 谷 川 乃音 のさやけき

まがねふくきびのなかやまおびにせるほそたにかわのおとのさやけき


吉備の中 山 ハ備 中  也 今 も備 中  より多 く鉄 を出せり

きびのなかやまはびっちゅうなりいまもびっちゅうよりおおくてつをだせり


たゝら可遍 ふいごハ壁 のうらに有

たたらかべ ふいごはかべのうらにあり

(大意)

歌「ま可ねふく吉備の中山帯尓せる細谷川乃音のさやけき」。

『鉄(くろがね)を精錬する煙が漂う吉備の中山、その山を帯のようにぐるりと巡って流れる細谷川の、水の音がなんと澄み切って清らかなことよ』。

 吉備の中山の麓をとりまくような煙のながれは、まるで川のよう。その下には細谷川がまるで煙をなぞるように静かに流ています。細谷川の静かな水の音の中にかすかにふいごの音がきこえます。

(補足)

表題「真ぶき」の漢字を鞴(ふいご)で代用。

「所作」、「作」のくずし字は特徴的で忘れません。

「白め」、『しろめ【白鑞・白目】

スズに鉛を少し混ぜた合金。スズの細工物の接合剤,銅容器のさび止めなどに用いた。しろみ。しろなまり。はくろう』。ここでは銅精製途中の不純物である錫や鉛のこと。

「殻実」、『スラグslag金属製錬の際,溶融した金属から分離して浮かび上がるかす。非鉄金属の場合は鍰(からみ)という。道路の路盤材,セメントの原料などにする。溶滓(ようし)(ようさい)。鉱滓(こうし)(こうさい)。のろ』

「まぶき」、『まぶき【真吹き】

中世後期に行われた製銅法。木炭粉末を粘土でこねて作った容器に銅の鈹(かわ)を入れ,羽口(はぐち)から風を吹き込み,溶融して不純物を酸化させ粗銅を得る』

「大歌所(おおうたどころ)の御歌(おんうた)」、『おおうたどころおんうた おほ― 【大歌所御歌】大歌所が収集・管理し,教習した歌。古今和歌集巻二〇に部立ての名の一つとして立てられ,その一部が収められている。宮中儀式で用いられた伝統的な歌謡(神楽歌、風俗歌、東歌など)』

「吉備の中山帯尓せる」、山と帯がくっついていて峯に見えてしまいます。

「音」のくずし字は難しい。

「たゝら可遍 ふいごハ壁のうらに有」、これらの様子は前頁「鉛」、前々頁「銅山床屋」にもありました。

 水銀、鉛、銅など諸金属精錬での人体への影響被害に対処するのは、つい最近である昭和の時代になってからでした。

 

2026年3月29日日曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その16

P23 国文学研究資料館蔵

(読み)

奈まり

なまり


説 文 にい者く鉛  ハ青 金 奈り錫 の類 と云々管 子尓い

        奈まり あを可ね  すゝ るい

せつもんにいわくなまりはあおがねなりすずのるいといいかんしにい


者く山 上 尓鉛  あれ者その下 尓銀 あり山 上 尓銀 あれ者゛

わくやまかみになまりあればそのしもにぎんありやまかみにぎんあれば


その下 尓丹 ありといへ里此 丹 ハ丹 砂 とてす奈者ち朱 砂 のこと也

                            し由しや

そのしもにたんありといえりこのたんはたんしゃとてしなわちしゅしゃのことなり


今 繪の具尓用 由る丹 ハ別 尓鉛  を焼 てこしら由る也

いまえのぐにもちゆるたんはべつになまりをやきてこしらゆるなり


又 白粉  も鉛  をやきて制 する奈り各 別 法 有り別 巻尓志る春

  おしろい

またおしろいもなまりをやきてせいするなりかくべっぽうありべっかんにしるす


◯鉛  ハ山 より本り出し湯尓王可して流 せ者゛竿 と成ル也

 なまりはやまよりほりだしゆにわかしてながせば さおとなるなり


土 形 をこしらへ底 尓筋 をつけて其 上 へ王可し多る鉛  を奈可゛春也

つちがたをこしらへそこにすじをつけてそのうえへわかしたるなまりをなが すなり


な満里竿 可ね てご 大 工

なまりさおがね てご だいく


(大意)

(補足)

「説文」、『せつもんかいじ 【説文解字】

中国の現存最古の字書。後漢の許慎の撰。100年頃成る。当時の九千余字の漢字を部首別に配列し,六書(りくしよ)の説により造字法・意義・音を解説したもの。中国文字学の基本的文献。説文』

「管子」、『かんし くわんし 【管子】

② 中国古代の政治論文集。管仲の著と伝えられるが,一人の作ではなく戦国時代から漢代にかけて成立したとみられる。現存七六編。経済政策や富国強兵策などを記す』

 方鉛鉱販売のHPからの借用です。

『方鉛鉱は鉛の鉱石としてもっとも重要な鉱物です。方鉛鉱の鉛含有率が86%と高く、鉛の融点が低いため、精錬技術の未発達な古代でも、たき火に方鉛鉱を放り込むだけで金属鉛が得れました。方鉛鉱は、閃亜鉛鉱を伴って、熱水鉱脈、黒鉱鉱床、ミシシッピバレー型鉱床、接触交代鉱床などに広く産出されます。銀白色で、6面体、8面体およびその集形の自由結晶を作っています』

 子どものころ、わたしの兄が所有していました。キラキラしてきれいでした。

また若かりし頃のこと妻の実家に遊びにゆくと、漁師の義父が漁に出れないとき、タコ漁の道具を作ってました。鉛の棒(竿)を、白雪鍋に入れて七輪で溶かし湯にします。それを木型に流しこんで重りをたくさんこしらえていました。

 奈満里竿かねを何本か束にまとめていますが、これは重いはずです。

白粉を鉛を焼いて作るとありますが、江戸時代の歌舞伎役者を始め、広く使われていましたから、鉛の中毒がひどく、江戸時代の乳幼児死亡率が高かった原因のひとつとされているとありました。

 

2026年3月28日土曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その15

P21 国文学研究資料館蔵

(読み)

銅 山 床 家

    とこや

どうやまとこや


釜 家にて焼 多るあ可ゞ袮を湯尓和可して丸 銅 尓仕あぐる所

  や

かまやにてやきたるあかがねをゆにわかしてまるどうにしあぐるところ


を床 家といふ也 銅 を湯尓王可春時 銅 うへ尓吹いで多るを

をとこやというなりどうをゆにわかすときどううえにふいでたるを


可王をりといひ又 そこ尓古り可多満り多るをとこ志゛りと云 て

かわおりといいまたそこにこりかたまりたるをとこじ りというて


二 品 あり又 石 土 の湯となり多るを可らみといふ又 どぶともいふ

ふたしなありまたいしつちのゆとなりたるをからみというまたどぶともいう


和可し多るあ可ゞ袮を飛や春所  をどぶ可゛といふ奈り

わかしたるあかがねをひやすところをどぶが というなり


たゝら壁  ねこ者ぐち 衣莚   まへでこ弐人  吹 大 工 二挺  ふいご

たたらかべ ねこはぐち いむしろ まえでこににん ふきだいく にちょうふいご


どぶ可゛銅 を飛や春所

どぶが どうをひやすところ

(大意)

(補足)

「二品」、「品」と「所」のくずし字はそっくりです。文章の流れから読むしかありません。

「石土」、「土」のくずし字も、こんなわずか3画の簡単な漢字なのに、わかりずらい。

「たゝら壁」、この「壁」、読めません。「土」の部分のくずし字が「土」にはみえます。

「衣莚」、読みは適当です。看板のように首からぶら下げて、防熱服のかわりです。

 5,6人の職人さんが諸道具のところで描かれていた道具を手にしています。

 

2026年3月27日金曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その14

P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

釜 家の繪図

可まや

かまやのえず


銅 山 より本り多゛し多る者く石 をく多゛起床 にて焼 釜 にて

どうざんよりほりだ したるはくいしをくだ きとこにてやきがまにて


やく也◯毛ろこし尓てハ銅 を重  宝 と春ること漢 書 尓見多り

やくなりもろこしにてはどうをちょうほうとすることかんしょにみたり


律 歴 志尓いハく凡  律 度量  尓銅 を用 由る者 ハ其 物 多ゝ至精 尓

りつれきしにいわくおよそりつどりょうにどうをもちゆるものはそのものただしせいに


して燥 湿 寒 暑 の多め尓節 を変 せ春゛霜 露風 雨の多め尓形  を

してそうしつかんしょのためにふしをへんぜず そうろふううのためにかたちを


あら多め春゛とあり古れ尓よ川て唐 船 売 買 交 易 尓あ可ゞねを

あらためず とありこれによってとうせんばいばいこうえきにあかがねを


多川とむと見へ多り

たっとむとみえたり


くちずミ 焼 木 尓可゛満 焼 可満

くちずみ やきぎ にが ま やきがま

(大意)

(補足)

「漢書」「律暦志」、『『漢書』律暦志(りつれきし)は、前漢の歴史書『漢書』の志(専門分野別の書)の一つ』。

「律度量」、『度は長短,量は多少,衡は軽重』。

「尓可゛満」、変体仮名の「尓」、「丹」のどちらにもみえますし、「舟」のくずし字にもにています。う〜ん🤔・・・、変体仮名の尓にしておきましょう。しかしどうも気になるので目次を確かめてみると、答えは「舟(ふ奈)可ま」でした。

 天秤棒とセットの重りを分銅ともいいます。「銅」を使っているわけですけど、その理由がここで述べられています。

 

2026年3月26日木曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その13

P17 国文学研究資料館蔵

(読み)

山  神 祭

やまのかみまつり


山 の神 ハ山 口 に所  をゑらびて社  を勧  請  春

                            やしろ く和んじやう

やまのかみはやまくちにところをえらびてやしろをか んじょうす


神 ハおの\/能願 ひ

かみはおのおののねがい


によりて定  り多ること奈しまつ里の日ハ京  大 坂 より芝 居見世物

によりてさだまりたることなしまつりのひはきょうおおさかよりしばいみせもの


奈どを取 よせいとに起゛や可にい者ひまつることなり近 邊 の

などをとりよせいとにぎ やかにいわいまつることなりきんぺん


在 \/村 \/より参 詣 の男 女 くんじ由春れ者゛物 う里諸 あきんど

ざいざいそんそんよりさんけいのだんじょくんじゅしれば ものうりしょあきんど


お保くあ川まりて其 にぎ者ひ諸 社 の大 神 事尓こと奈ら春゛

おおくあつまりてそのにぎわいしょしゃのおおしんじにことならず


神 前 尓て可奈らす神 事春まふ有 近 邊 のすまふ取 どもお保く

しんぜんにてかならずしんじすまうありきんぺんのすまうとりどもおおく


あ川まりて尓起゛や可なり祭  ハ九月 九  日奈り

あつまりてにぎ やかなりまつりはくがつここのかなり

(大意)

(補足)

「くんじ由」、『くんじゅ【群集・群衆】

(名)スル 〔「くん」は漢音。「くんじゅう」「ぐんじゅ」とも〕

人が群れをなして集まること。また,その人々。「人多く―したり」〈平家物語・2〉』

「春まふ」「すまふ」、『すま・う すまふ 【争ふ】

③ つかみあって争う。また,相撲をとる。「振離さんとて―・ひしかど」〈当世書生気質・逍遥〉』

 相撲取りのまわしの柄がことなっていておしゃれ。また当時のまわしはちいさな前掛けみたいな感じ(前垂れずっと小さくした?)でしめているのがわかります。さがりはありませんね。

 

2026年3月25日水曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その12


P15 国文学研究資料館蔵

(読み)

銀 山 淘 汰 の繪

ぎんさん可ねゆり

ぎんざんかねゆりのえ


銀 山 の鉑 石 上 の繪尓あらハ春ごとく打 く多゛起て粉 と奈して

ぎんざんのはくいしうえのえにあらわすごとくうちくだ きてこなとなして


水 尓てゆる也 金 山 の板 由りのごとし但  銅 ハ水 ゆ里尓春ること奈く

みずにてゆるなりかなやまのいたゆりのごとしただしどうはみずゆりにすることなく


直 尓焼 釜 にてやく也 淘 汰 の仕やうハ半 切 桶 尓水 を汲 入

すぐにやきかまにてやくなりかねゆりのしようははんぎりおけにみずをすいいれ


可奈め鉑 を鉢 尓い連水 にて由れハ土石 ハ皆 半 切 桶 の水 尓おちて

かなめはくをはちにいれみずにてゆればどせきはみなはんきりおけのみずにおちて


銀 ハ鉢 の中 にのこるなりたいていハ金 山 の板 ゆりと同 じこと奈り

ぎんははちのなかにのこるなりたいていはかなやまのいたゆりとおなじことなり

(大意)

(補足)

 金山諸道具の頁に可ねゆり板はありましたが半切桶はありませんでした。きっと大きなタライがそうだとおもいます。

 働いている御婦人たちみな前帯になっています。


2026年3月24日火曜日

日本山海名物圖繪巻之一 その11

 

P13 国文学研究資料館蔵

(読み)

鉑 石 く多゛く繪

者くいし


山 より本り出し多る鉑 石 をもち出してうちく多゛く

          者くいし

やまよりほりだしたるはくいしをもちだしてうちくだ く


これを可奈めといふ故 尓その槌 を可奈めつちと云 也

         由へ   つち       いふ

これをかなめというゆえにそのつちをかなめつちというなり


鉑をく多゛くハお保くハ女  の所 作なり鉑 を入 て背 負うつ者物 を

               志よさ        せへおふ

はくをくだくはおおくはおんなのしょさなりはくをいれてせ おうつわものを


ゑぶといふゑぶの正 字はいま多゛詳   奈ら春゛又 者くも鉑 の字正 字尓

               つまひら可

えぶというえぶのせいじはいまだつまびらかならず またはくもはくのじせいじに


あら春゛鉑 ハ金 鉑 銀 鉑 の者くなり字彙尓い者く鋛古猛切音硫金銀鉄

あらず はくはきんぱくぎんぱくのはくなりじいにいわく


璞也 とあり本 字ハ鋛奈るべし

 なりとありほんじは なるべし


可奈め槌

かなめつち

(大意)

(補足)

「字彙」、『じい じゐ 【字彙】中国の字書。一二集。他に首・末二巻。明の梅膺祚(ばいようそ)の撰。画引き字書の最初のもの』

「鋛古猛切音硫金銀鉄璞也」をDeepLに放り込むと代案として「鎚古は猛く音を刻み、硫黄・金・銀・鉄は未加工のままである」、「古の鋛、猛き音、硫黄、金、銀、鉄、未加工の石もまた然り」などとかえしましたが、どうも意味不明です。

 ここでも三人の職人さんたち、紋がそでや肩にあります。

ゑぶに満杯にしたら、40〜50kgはあるでしょうか。

腰につけているのは円座。手にしているのはてぶです。