2026年7月8日水曜日

大日本物産圖會その17


P17 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P17_1

(読み)

尾張  國 有 松 纐 り之図

おわりのくにありまつしぼりのず


鳴(ナル)海纐(シ本)りと称(シヤウ)して愛(アイ)知郡

  なる み  しぼ りと  しょう して  あい ちぐん


有 松 尓て多 く産 す織(オリ)物

ありまつにておおくさんす  おり もの


を鹿(カ)の子立 しぼ八重(ヘ)た

を  か のこたてしぼや  え た


すき阿るひハ雲 竜  竹 尓虎

すきあるいはうんりゅうたけにとら


の類(ルイ)種(シユ)々 画もやうを纐纈(こうけつ)

の  るい   しゅ しゅえもようを   こうけつ


藍(アヰ)紅 とうにて染 あげ

  あい べにとうにてそめあげ


たるもの尓し天最(モツトモ)美也

たるものにして  もっとも びなり


綿 布を以 て染 たる物 を

めんぷをもってそめたるものを


浴衣(ユカタ)単衣(ヒトヘキヌ)ホ(トウ)にもちひ

   ゆかた    ひとえきぬ   とう にもちい


ま多絹(ケン)布尓て志ぼり

また  けん ぷにてしぼり


たるもの阿り

たるものあり


(大意)

(補足)

「鳴海纐」、『なるみしぼり【鳴海絞】鳴海付近に産する木綿の絞り染め。有松絞(ありまつしぼり)。鳴海』。「纐」のフリガナ、「シ」の次が読みは「ホ」or「ボ」なのですが、その変体仮名がよくわかりません。「ヲ」とも読めますけど、さて?

 ここの詞書き(ことばがき)にもあるように有名だったようです。葛飾北斎44才頃の作品「東海道 彩色摺 五拾三次」の「奈るミ」にもありました。 

 御婦人二人の背景にある浴衣の単衣、藍色と薄藍色に白の鶴か鳳凰のよう、このまますぐにヒョイと着ることができそうです。

 詞書き背景の色柄が変わりました。

 

2026年7月7日火曜日

大日本物産圖會その16


P16 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P16_1

(読み)

同 國 五色 砂 ニテ盆 石 飾

どうこくごしきすなにてぼんせきかざり


當 國 鳥羽尓産(サン)する砂(スナ)ハ其

とうごくとばに  さん する  すな はその


色 数種(スシユ)あり青 黄赤 白 黒

いろ   すしゅ ありあおきあかしろくろ


その他(ホカ)数 色  を製 す故 尓此

その  ほか すうしょくをせいすゆえにこの


砂 を以 て盆石(ホンセキ)盆 画を畫す

すなをもって   ぼんせき ぼんがをがす


る則   黒 塗(ヌリ)の盆 中  耳諸

るすなわちくろ  ぬり のぼんちゅうにしょ


國 々 名 所 花鳥  山 水 好 ミの

こくくにめいしょかちょうさんすいこのみの


如 く色 砂 を以 て彩色(サイシキ)し

ごとくいろすなをもって   さいしき し


床(トコ)の間乃  置 物 額面(ガクメン)或  ハ

  とこ のまおよびおきもの   がくめん あるいは


紙上  尓砂 を止 て掛 物 ホ ニ奈須

しじょうにすなをとめてかけものなどになす

(大意)

(補足)

「同國」、志摩国。

 隣の部屋から庭がのぞめます。石灯籠や築山もあって手入れされ、板塀の上にはどろぼう返しがあり、防犯体制もしっかりです。盆石楽しむ御婦人三人の着物もきれいです。

 

2026年7月6日月曜日

大日本物産圖會その15

P15 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P15_1

(読み)

志摩 國 荒 布刈 之圖

しまのくにあらめかりのず


荒布(アラメ)ハ其 形 ち昆布(コンブ)に似て

   あらめ はそのかたち   こんぶ ににて


薄(ウク)く柔   尓して黒 色 なり

  うす くやわらかにしてくろいろなり


當 國 鳥羽の海 底(テイ)其 他 所  々

とうこくとばのかい  てい そのほかところどころ


尓生  須゛土人鎌(カマ)を以 て海 底 尓

にしょうず どじん かま をもってかいていに


沈(シツ)ミ岩 尓付 多る荒 布乃

  しず みいわにつきたるあらめの


根を刈(カリ)て浮(ウカ)むあらめ浪(ナミ)の

ねを  かり て  うか むあらめ  なみ の


為 尓自然(シゼン)と陸(ヲカ)地へうち

ために   しぜん と  おか ちへうち


あげたるを取 まとめ乾(カハカ)

あげたるをとりまとめ  かわか


して諸 方 尓い多゛須

してしょほうにいだ す

(大意)

(補足)

 磯場に打ち寄せる波の様子がねんいりに描かれ、また岩場にからみ砕け散るさまも見事に彩色されています。右側に二人、海底の荒布をとる人もいます。

 昆布はツルツルですが、荒布はそれにくらべるとシワシワで厚みもあり、かみごたえもあってうまいです。

 摺師は濃淡だけで、磯場の潮風や空気感を表現し奥行きを与えています。うまいもんですねぇ。

 

2026年7月5日日曜日

大日本物産圖會その14

P14 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P14_1

(読み)

同 國 長鮑製  之圖

どうこくのしせいすのず


あハびの大 小  によりて数 葉

あわびのだいしょうによりてすうよう


を者可り横 よりうすき刃

をはかりよこよりうすきは


もの尓て薄 く\/ とま王し

ものにてうすくうすくとまわし


むきにして豊 後ごさ耳

むきにしてぶんごござに


志起ならへ天本すなり

しきならべてほすなり


故 尓おの\/むしろの目をお

ゆえにおのおのむしろのめをお


びたり本 末 のあるハ束 ぬる

びたりもとすえのあるはたばぬる


可゛由ゑなりさて是 をノシ

が ゆえなりさてこれをのし


といふハむ可し打 あハびと

というはむかしうちあわびと


いひて裁 切 て打 のバし食

いいてたちきりてうちのばししょく


料  となし多る故 也 又 干 飽

りょうとなしたるゆえなりまたほしあわび


うすあハびとも云 此 外 螺蠑 ノ

うすあわびともいうこのほかさざえの


シ海老ノシの種 るゐあり

しえびのしのしゅるいあり

(大意)

(補足)

「同國」、伊勢国。

「横より〜ま王しむき」、桂むき(かつらむき)のこと。

 変体仮名「安」(あ)がたくさんでてきてます。「お」に似ているようで形は異なります。「お」の変体仮名は「於」。

 左から二番目のノシ干しの男の笠や右端の斜めの網、摺りが透かしてあって、なにげに技を見せています。

 

2026年7月4日土曜日

大日本物産圖會その13

P13 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P13_1

(読み)

伊勢 國 鮑  採 之圖

いせのくにあわびとりのず


伊勢の國 和浦 御座浦 大 野

いせのくにわうらござうらおおの


の三 ヶ所 尓鮑(アハヒ)をとり二 見可゛うら

のさんかしょに  あわび をとりふたみが うら


北 塔 世尓て鮑(ノシ)を製 すあハびを

きたとうせにて  のし をせいすあわびを


とるハ必  ず女  海人の業 と須但 シ

とるはかならずおんなあまのわざとすただし


女  ハ呼吸(コキ ウ)長 き故 也 沖 ふ可く出

おんなは   こきゅう ながきゆえなりおきふかくで


るに親属(シンソク)を具してふ年を

るに   しんぞく をぐしてふねを


古可゛せ腰 尓小網 袋  を付 て

こが せこしにこあみぶくろをつけて


海 てい尓いり岩 尓つ起多る鮑

かいていにいりいわにつきたるあわび


を箟 尓て不意尓おこし腰

をのみにてふいにおこしこし


尓つけて泛 む奈り海 尓志づ

につけてうかむなりうみにしず


むハ五尋 より十 ひろ十  五尋

むはごひろよりじっひろじゅうごひろ


をかきりと須深 きところハ

をかぎりとすふかきところは


こし尓縄 を付 てしつむ也

こしになわをつけてしずむなり

(大意)

(補足)

「とるハ」、「と」が「乙」+「丶」のような形です。「と」の変体仮名「止」のようでもあります。

「泛」、うか・ぶ 【浮かぶ・泛かぶ】。

「尋」、『ひろ【尋】〔広(ひろ)の意〕両手を左右に広げたときの,一方の指先から他方の指先までの距離。長さの単位として用い,縄・釣り糸・水深をはかるのに用いる。江戸時代には一尋は五尺(約1.5メートル)または六尺(約1.8メートル)であったが,明治以降は六尺とする。』

 炭鉱の画より一転して、明るい開放的な磯となりました。詞書きの下地に紫色の柄があって、色がうつったものかと他の同じ画を調べましたがみな同じ箇所に付いているので、これは下地柄です。

 若き頃、磯場でかぜ(ウニ)を採っていたときに、鮑も採ったことがありました。カゼも鮑も、カスガイで岩から引っ剥がすのですけど、チャンスは一回限りで、失敗すると岩場にしっかりと吸い付いてはがせなくなります。また無理にはがそうとすると鮑もカゼも傷つけてしまって、台無しです。

 右側の海女さん、浮かび上がってきてピューっと声を出して息継ぎしているところ、口の先にその呼吸の様子が描かれています。細かいね。

 海女さんも小舟を岩場にぶつけないように操船する漁師も命がけです。

 

2026年7月3日金曜日

大日本物産圖會その12

P12 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P12_1

(読み)

同 國 石 炭 山 之圖

どうこくせきたんやまのず


石炭(セキタン)ハ長 野笠 取 兜  よ里

   せきたん はながのかさとりかぶとより


産 す砿属(クワウソク)にして其 色 漆(ウルシ)

さんす   こ うぞく にしてそのいろ  うるし  


の如 し山 中  深 く堀 入 て出

のごとしさんちゅうふかくほりいりてでる


こと金 山 とお奈じ其 用 木炭(スミ)

こときんざんとおなじそのよう   すみ


より火気倍(バイ)せるをもつて

よりかき  ばい せるをもって


蒸気(ジヨウキ)の力(チカラ)を用  る物 及 び

   じょうき の  ちから をもちいるものおよび


金 石 を鎔鋳(トラカシ)する物 尽(コト)\゛/く

きんせきを   とらかし するもの  こと ごと く


用 ひざる奈し又 油  を製 し

もちいざるなしまたあぶらをせいし


て燈火(アカリ)尓用 ゆ

て   あかり にもちゆ

(大意)

(補足)

「同國」、伊賀国(三重県)。

「長野笠取兜」、三重県伊賀市の笠取山(かさとりやま)周辺は、かつて良質な石炭(主に瀝青炭)の産地として知られていた。

 右側に版元「出版人日本橋通一丁目十九番地)大倉孫兵衛」、左側に「画工 大鋸町四番地 安藤徳兵衛」とあります。

 炭鉱労働者も漁師と同じ腰蓑をつけています。やはり坑道から出る水よけでしょう。酒の醸造所の職人たちも着ていました。

 手提げ箱みたいなものを二人がさげていますが、これ何でしょう?ランタン?

 

2026年7月2日木曜日

大日本物産圖會その11

P11 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P11_1

(読み)

伊賀 國 磨砂(ミカキスナ)

いがのくに   みがきずな


磨砂(ミカキスナ)ハ山 田郡 長  の山 より

   みがきずな はやまだぐんちょうのやまより


出す砿属(クワウゾク)尓して其 色 白 き

だす   こ うぞく にしてそのいろしろき


こと雪 の如 し其 用 銅鐵(ドウテツ)を磨

ことゆきのごとしそのよう   どうてつ をみが


き畳表(タ〃ミヲモテ)を製 するに用 由

き   たたみおもて をせいするにもちゆ


又 是 を篩(フルヒ)ひ香 具を和し

またこれを  ふるい いこうぐをわし


紅 をさして歯磨薬(ハミガキ)を

べにをさして    はみがき を


製(セイ)することおび多ゞし

  せい することおびただし


此 砂 ハ白 亜の稉  尓して

このすなははくあのうるちにして


粘  奈しといふ

ねばりなしという

(大意)

(補足)

「磨砂(ミカキスナ)」、『みがきずな磨き砂】① 金属製の器物などを磨くのに用いる,炭酸カルシウムを主とする白色の粉末。玄米の精白にも用いる。磨き粉。② 江戸時代,鉄漿(かね)を落とすための歯磨き粉。』

「山田郡」、『山田郡(やまだぐん)は、三重県(伊賀国)にあった郡』。

「稉」、『うるち【粳】一般に,炊いて飯にする,粘り気の少ない米。うるごめ。うるちまい』

 露天掘りです。露天掘りで、すぐに他のものがおもいうかぶのはセメントの原料、石灰石ぐらいです。日本で自給自足できるまれにみる製品がセメントです。