2026年10月8日木曜日

大日本物産圖會その109

P109 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P109_1

(読み)

同 國 蜂 蜜 製 之圖

どうこくみつばちせいのず


蜂蜜(ハチミツ)ハ土 蜂 木蜂 山 蜂 ホ 有

   はちみつ はつちばちきばちやまばちなどあり


上  品 奈りと雖  も甚   少 し故

じょうひんなりといえどもはなはだすこしゆえ


尓家 蜜 と云 て箱 或  ハ桶 尓

にいえみつといいてはこあるいはおけに


數孔(アナ)を穿(ウカ)ち此 内 尓蜂 を

   あな を  うが ちこのうちにはちを


養(ヤシナ)ふ蜂 春 の末 より秋 の

  やしな うはちはるのすえよりあきの


末 尓至 る迄 外 辺 尓出て

すえにいたるまでがいへんにでて


花 の蜜 槽 を含(フク)ミ房中(バウチ ウ)尓

はなのみつそうを  ふく み   ぼうちゅう に


貯(タクハ)ふ秋 の末 尓至 りて筥 中

  たくわ うあきのすえにいたりてはこなか


の脾三 分 の二を採りて煎 じ

のひさんぶんのにをとりてせんじ


て熟蜜(シユクミツ)と須是 則   家 蜜 也

て   じゅくみつ とすこれすなわちいえみつなり

(大意)

略

(補足)

「同國」、丹波国。京都府中部と兵庫県中東部に相当。

江戸時代、丹波の国(現在の兵庫県北東部・京都府中部)は日本国内における主要な蜂蜜の産地の一つとして知られていたそうです。

 画全体が春の店先のにぎやかな様子で、子どもが蜂二匹におわれててんやわんや。

画の右下隅の竈(かまど)から立ち上がる煙が昇るにつれて透けて見えてくる職人さんの着物の色を変えているのが摺師のこだわり、うまいもんです。

 現在のような蜜柑箱みたいでの養蜂はいつごろからなのでしょうね。桶を使う方法はなかなか新鮮です。

 馬の鞍のしつらえが細かく描かれていて、こういったところも手を抜きません。

 

2026年10月7日水曜日

大日本物産圖會その108

P108 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P108_1

(読み)

丹 波 國 燧  石 切 出 之圖

たんばのくにひうちいしきりだしのず


燧石(ヒウチイシ)ハ氷上(ヒカミ)郡 の内 所 々 よ

   ひうちいし は   ひかみ ぐんのうちしょしょよ


里産 須゛土中  尓ある石 尓し

りさんす どちゅうにあるいしにし


て其 形 ち水晶(スヰシヤウ)のことし其 色

てそのかたち   すいしょう のごとしそのいろ


白 きあり鼠(ネズミ)色 あり金属(カネノルヰ)

しろきあり  ねずみ いろあり   かねのるい


を以て戛撃(タゝキ)すれば則火を

をもってたたきすればすなわちひを


発 す此 火を莔麻炭(ホクチ)尓うつし

はっすこのひを    ほぐち にうつし


て火を點(テン)ず故 尓火打 石 と

てひを  てん ずゆえにひうちいしと


称  して民 家尓用 ひざる処  奈し

しょうしてみんかにもちいざるところなし

(大意)

略

(補足)

「戛」、「かつ」と読み、「戛戛(かつかつ)『堅い物の触れる音を表す語。』」「戛然(かつぜん)『堅い物が触れて出る音のさま』」など熟語あり。なので「戛撃」は「かつげき」と読むのかな。

「莔麻炭(ホクチ)」、『ほくち【火口】① 燧(ひうち)を打ちつけて火をうつしとるもの。イチビの茎を炭にしたものや,茅花(つばな)(チガヤの花)やパンヤに焼酎・焰硝を加えて製したものを用いる。ほくそ。』

「莔麻」、『いちび【〈莔麻〉】① アオイ科の一年草。インド原産。高さ約1.5メートル。全体に軟毛が密生する。葉は心臓形。夏,黄色五弁の小花をつける。茎の皮から繊維を取り,ロープ・麻袋などに用いる。キリアサ。② 綱麻(つなそ)の別名。』

 詞書きのとおり、「土中尓ある石尓して其形ち水晶(スヰシヤウ)のことし其色白きあり鼠(ネズミ)色あり」ですので、石工さんたちが掘っているところだけ色がことなっています。そのまわりの黒ずんだ岩石の濃淡が上手。

 火打ち石は鉄などの金属で打ち付けたときに火花が散りますが、それは石から火の粉が出るのではなく、打ち付けた金属の粉が一瞬に酸化して火花になっているので、石どうしを打ち付けても火花はでません。

 この物産図会が出版される前後にマッチが製造されて、あっという間に火打ち石で火をつける習慣はなくなりました。現在ではアウトドアで使われています。

 

2026年10月6日火曜日

大日本物産圖會その107

P107 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P107_1

(読み)

佐渡金 堀 之圖

さどきんほりのず


金 尓砂金(サキン)石 金 其 外 数種(スシユ)

きんに   さきん いしかねそのほか   すしゅ


あり砂金 ハ山 谷土砂(ドシヤ)の中 に

ありさきんはさんや   どしゃ のなかに


生  春゛又 瓜子(ウリザネ)金 麩(ナスビ)金 と可

しょうず また   うりざね きん  なすび きんとか


阿り精煉(トラカシ)して熟(ジユク)金 と

あり   とらかし して  じゅく きんと


なす石 金 ハ岩 石 の間

なすいしかねはがんせきのあいだ


に混合(コンガウ)して方 言「シ

に   こんごう してほうげんし


ラマサ」といふ人 夫砿 中(アナ)

らまさ というにんぷこう  あな


の金脈(ツル)をつ多ふて堀 捕

の   つる をつたうてほりとる


毛の奈り

ものなり

(大意)

略

(補足)

 詞書きの題名に「堀」とあって、これは昨日も記したとおり現在では「掘」が⭕️。漢字の試験で「土」+「屈」をかいたら❌️になります。

赤札中央「カケヤ尓天孫八を打込む」、画を見ればあきらかで、カケヤは金掘大工が握っている大きな木槌、孫八は地面にある杭のようなもので「鑚(たがね)」。

左の2枚め「水ぬき」、この画ではところてんを押し出す器具ににて取っ手を上下にしてつかってますが、丸い筒状の水抜きもあって、それは手元でクルクルまわして使うものだったようです。

 お尻にあてている円形のものは「腰当(しりあて)カマス」。

 壁にさしてある灯りとりはサザエ殻のよう。

 佐渡金山の江戸時代の最盛期の金(銀等)の産出量は世界一だったそうです。現在は掘り尽くしたといわれていますが、現代の科学をもってすれば、付近の海底に金鉱脈を見つけることができるのではと夢想してしまいます。

 昨日の「佐渡國金山之圖」の元絵を広重としましたが、さらに広重は「日本山海名物図会巻之一 金山鋪口(かなやましきくち)NDL所蔵」を参考にしているようです。

 今日の元絵も同様です。「日本山海名物図会巻之一 金山鋪の中能繪(可奈やましきのうちのゑ)NDL所蔵」。

 わたしのBlogですでに「日本山海名物図会全5巻」をUPしてあります。

 鉱脈の中ですから手元や壁の灯り以外のところはほとんど真っ暗なはずですけど、金掘大工たちはそれぞれスポットライトをあびたように生き生きしています。

 最近『佐渡絢爛』(赤神諒・著)を読みました。面白かった。

 

2026年10月5日月曜日

大日本物産圖會その106

P106 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」



P106_1

(読み)

佐渡 國 金 山 之圖

さどのくにきんざんのず


皇国(クワウコク)金 を發見(ハツケン)せしハ

   こ うこく きんを   はっけん せしは


人 皇 四 十  六 代 孝謙(カウケン)天 皇 の

にんのうよんじゅうろくだい   こうけん てんのうの


御 宇始 めて陸奥 國 より献(ケン)

ぎょうはじめてむつのくにより  けん


納(ノウ)すと云(イフ)蓋(ケタシ)し當 國 盤

  のう すと  いう   けだし しとうごくは


諸 郡 より出春と雖 ども

しょぐんよりだすといえども


就中(ナカンツク)雑太(ザウタ)郡 相 川 西 見川

   なかんずく    ぞうた ぐんあいかわにしみかわ


金 北 山 より堀 出すこと最  も夥(オヒタ)シ

きんぼくさんよりほりだすこともっとも  おびただし


其 出  額 年 々 五十 〆 目余  ニ至

そのしゅつがくねんねんごじっかんめあまりにいた


れり実 尓盛  奈ること海 内 第 一 也

れりじつにさかりなることかいだいだいいちなり

(大意)

略

(補足)

 赤札が3枚あります。右から「風廻し口」、「四ツ留口」、「水抜口」。四ツ留口の入口上部には白い御幣を飾った額があり安全祈願。鉱山は水との戦いで、一日中ただひたすら水を桶で汲み上げる職人もいました。

「御宇」、『ぎょう【御宇】〔宇内(うだい)を統御するの意〕天子の治世の期間。御代(みよ)。「宇多天皇の―」』。

「金北山(きんぽくさん)」、『標高1171.9mで、佐渡島および大佐渡山地の最高峰』。

「堀出す」は「堀出す」です。詞書きの「堀」は「お城の堀」のホリ、土偏です。「扌」は「穴を掘る」のホル。まぁ細かいこと気にしないのがこの時代。

「海内」、『かいだい【海内】四海の内。国内。天下。「―無双」「―に御威光(ごいこう)輝き」〈自由太刀余波鋭鋒•逍遥〉』。

 3つの入口の岩の色の濃淡がちょっと不気味で怖い。

 先代広重の「六十余州名所図会 佐渡 金や満」、

 この画が元になっているようです。両方の画の明暗の差が気になるところです。

 

2026年10月4日日曜日

大日本物産圖會その105

P105 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P105_1

(読み)

越 後 國 鮭 洲走  を捕   圖

えちごのくにさけすばしりをとらえるず


當 國 の鮭(サケ)ハ初 秋  上 り北 海 を

とうごくの  さけ はしょしゅうのぼりほっかいを


出て千曲(クマ)川 阿加 川 尓沂(サカノボ)る㕝

でてち  くま がわあがのがわに  さかのぼ ること


凡  五十  四里 川尓ある事 五ヶ月

およそごじゅうしりかわにあることごかげつ


清 き流  水  の所  尓子を産 つけ

きよきりゅうひょうのところにこをうみつけ


后 海 尓皈 る鮞(ハラゝゴ)水 尓ある事

のちうみにかえる  はららご みずにあること


十  四五日 尓して魚 と化(ナル)春 尓至

じゅうしごにちにしてうおと  なる はるにいたっ


て海 尓入 生 長  して川 を登 ること前

てうみにいりせいちょうしてかわをのぼることまえ


のごとし鮭 網 あるを知り遁(ノカレ)んとして

のごとしさけあみあるをしり  のがれ んとして


河原 尓飛 上 り走 ること四五間 矢の

かわらにとびあがりはしることしごけんやの


如 く尓して水 尓飛 入る然 れども

ごとくにしてみずにとびいるしかれども


先 奈る魚 もの尓ふれて倒(タヲル)るゝこと

さきなるうおものにふれて  たおる るること


あれバ後 の鮭 皆 倒  て走 ら須゛奇魚

あればのちのさけみなたおれてはしらず きぎょ


と云 べし漁 夫これをとる事 多 し

というべしりょふこれをとることおおし

(大意)

略

(補足)

「㕝」、『事』。「皈」、『帰』。いつもながら見慣れぬ漢字多し。

 錦絵・浮世絵では主題になるものを大げさに巨大化して描くというのがお約束ですが、ここの鮭は漁師と比べてもほぼ実寸に見えます。産卵期に遡上してくる鮭に赤い斑点がありますがそれも忠実に描いています。手づかみで捕まえようとしている漁師の勢いが地をはい、浮かんでいるよう。

 州は水がひいて、砂浜や岩があるところですから表現するのは難しそうですが、雰囲気がでていて上手ですね。

 

2026年10月3日土曜日

大日本物産圖會その104

P104 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P104_1

(読み)

越 後國  雪 中  布 晒  之図

えちごのくにせっちゅうぬのさらしのず


縮(チゝミ)ハ越 後 国 柏  嵜 小千谷千 手

  ちじみ はえちごのくにかしわざきおじやせんじゅ


塩 沢 十 日町 よりい多゛す物 ハ皆

しおざわとおかまちよりいだ すものはみな


縞 或  ハ紺 可゛すり尓て島 堀 辺

しまあるいはこんが すりにてしまほりあたり


ハ白 縮  を専  らとし下(シモ)谷 辺  尓て

はしろちじみをもっぱらとし  しも たにあたりにて


苧麻(マヲ)を多 く養  ふ苧麻ハ

   まお をおおくやしなうまおは


麻 尓似てその葉桐 のごとし

あさににてそのはきりのごとし


夏 刈 とつて皮 を剥 石 灰 と稲

なつかりとってかわをはぎせっかいといな


灰 のあく尓てさらし煎 天

ばいのあくにてさらしいりて


細(コマカ)尓破(サ)き紡(ヨリ)を可けて布 に

  こまか に  さ き  より をかけてぬのに


織り晒 屋尓王多すさらしや

おりさらしやわたすさらしや


又灰汁(アク)尓てさらし降 積 雪 尓

また  あく にてさらしこうせつゆきに


敷 可さ年雪 尓うづミてさらす

しきかさねゆきにうずみてさらす


由ゑ尓白 き事 ゆきのことし

ゆえにしろきことゆきのごとし

(大意)

略

(補足)

 雪に晒している布に目がゆく前に、手前の大きく太い松が見事。松独特のひび割れた樹皮の様子や瘤(こぶ)、枝の張り具合、とがった松葉に積もる雪。その向かいの松の木はひょろっとさせて対比させようとしたのか、遠近がねらいか。

 山を描けば小川を入れるのはお約束で、ここでは川の水は流れているのか凍っているのか、凍っているものや氷を描くのは難しいはず、そういえば北海道の氷を輸出する物産図会がありました。

 働いていれば寒くないのか、重ね着している人はひとりもいませんね。

この画のもとは、鈴木牧之(すずきぼくし)の著書『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』(天保年間刊)「雪中晒縮図(せっちゅうちぢミをさらすづ)」によっています。

 

2026年10月2日金曜日

大日本物産圖會その103

P103 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P103_1

(読み)

越 中  滑  川 大 章魚之圖

えっちゅうなめりかわおおだこのず


當 國 冨山(トヤマ)滑(ナメリ)川 の大 鮹(タコ)ハ牛  馬

とうごく   とやま   なめり かわのおお  だこ はぎゅうば


を取 喰ひ漁 舟  を覆(クツカヘ)して人 を

をとりくいぎょしゅうを  くつがえ してひとを


取連り漁  人是 を捕(トラ)ふるに術(シユツ)奈

とれりりょうしこれを  とら うるに  じゅつ な


し故 尓舟 中  尓空寝(ソラネ)して待(マツ)

しゆえにせんちゅうに   そらね して  まつ


バ鮹 う可ゞひ与つて足 をのべ天

ばたこうかがいよってあしをのべて


舟 尓打 可ゝるを目早 く鉈(ナタ)を

ふねにうちかかるをめばやく  なた を


以 て其 足 を切 おとし速(スミヤカ)尓漕(コギ)可へ

もってそのあしをきりおとし  すみやか に  こぎ かえ


る其 危(アヤウ)きこと生 死一 瞬(シユン)の間  に

るその  あやう きことせいしいっ  しゅん のあいだに


関(カゝ)る右 足 を市店 の簷(ノキ)尓掛 れ

  かか るみぎあしをしてんの  のき にかけれ


バ長 く多れて地尓あ満る又 疣(イボ)一 ツ

ばながくたれてちにあまるまた  いぼ ひとつ


を服(フク)して一 日 の食  に足るといふ

を  ふく していちにちのしょくにたるという

(大意)

略

(補足)

 昨日の高岡、今日の滑川、富山湾の地図です。

「疣(イボ)一ツを服(フク)して一日の食に足る」、ウソっぽいけど、でもこれだけデカイ鮹なら、なんとなく信じてしまいます。それになにより、食べてみたい。

「目早く」、『めばや・い【目早い】(形)《文ク めばや・し》見つけるのが早い。すばやく見ぬく。めざとい。「上等らしいのを―・くえりわけて」〈俳諧師•虚子〉』。

「足」のこの形のくずし字は初めてかも、「豆」の上部の「一」をとった形。

 大鉈でまさにきらんとする漁師、よく見るとタコの右足に(八本もあるのに)切れ目が入っています。一度では切り落とせなかったよう。

 この版は摺りの最初のころのようで、詞書きの文字が鮮明ですし、画の描線の彫りの角がたっています。