2026年7月14日火曜日

大日本物産圖會その23

P23 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P23_1

(読み)

安房 國 水 仙 花

あわのくにすいせんか


安房(あ者)ハ北 面 上総(可づさ)の山脈(さんミやく)

   あわ はほくめん   かづさ の   さんみゃく


連(つら奈)り東 西 南  ハ海 尓接(せつ)ス

  つらな りとうざいみなみはうみに  せっ す


故(ゆゑ)土地暖(あ多ゝ)可奈るをもつて

  ゆえ とち  あたた かなるをもって


水 仙 花秋 の末(すゑ)より花

すいせんかあきの  すえ よりはな


阿り多 く海濱(かいひん)尓自(じ)

ありおおく   かいひん に  じ


生(しやう)して最美貌(もつともびゑん)なり四

  しょう して    もっともびえん なりし


葉(ゑふ)一 窠(か)尓して莖上(きやうじやう)耳

  よう いっ  か にして   きょうじょう に


花 を開  六 辨(べん)にして清(せい)香(かう)

はなをひらくろく  べん にして  せい   こう


阿り多く都下(と可)に出し

ありおおく  とか にだし


て挿(さし)花尓供(く う)す

て  さし ばなに きょう す

(大意)

(補足)

 さて、甲斐国の白柿、葡萄とつづいたあとは安房国の水仙花、画はやはり左半分を巨大な水仙にして、三枚とも同じ効果をねらったものとなっています。三浦半島の観音崎から鋸山がのぞめますが、その麓と周辺が鋸南町といって江戸時代後期から現在も水仙の産地であります。舟が浮かんでいるのは東京湾です。

 秋も末で、立ちがらしたのか刈り残したのか稲が黄金に輝いています。

「莖」、フリガナの「きやう」の「き」は変体仮名「支」か?

 

2026年7月13日月曜日

大日本物産圖會その22

P22 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P22_1

(読み)

甲斐 國 葡萄 培 養  図

かいのくにぶどうばいようのず


葡萄(ブドウ)ハ山 梨 郡 岩 﨑 村

   ぶどう はやまなしぐんいわさきむら


尓産(サン)ずるを殊(コト)尓好(ヨシ)と須

に  さん ずるを  こと に  よし とす


蔓草(ツルクサ)尓して春 花 を開 き

   つるくさ にしてはるはなをひらき


秋(アキ)実(ミ)を結(ムス)び垂(タレ)下 りて藤(トウ)

  あき   み を  むす び  たれ さがりて  とう


花(クワ)の如 し熟(ジユク)するに至(イタ)りて

  か  のごとし  じゅく するに  いた りて


雅客(ガキヤク)棚 下 尓あつ満り盃(サカツキ)

   がきゃく たなしたにあつまり  さかずき


をか多むけ其 席(セキ)空(シヤウ)尓阿

をかたむけその  せき   しょう にあ


る葡萄 を悉(コト\゛/)く求  る事 を

るぶどうを  ことご と くもとむることを


なさしむ又 近 年 多 くぶどう

なさしむまたきんねんおおくぶどう


酒(シユ)乾(ホシ)ぶどう月 の雫(シズク)ホ(ナド)を製 ス

  しゅ   ほし ぶどうつきの  しずく   など をせいす

(大意)

(補足)

「空(シヤウ)」、フリガナに「シヤウ」とあります。日本語の音読みにその音はありません。「空」はサンスクリット語では「sunya(śūnya)」で、「シューニャ」と読み、その音に少しにてないこともありません。

 自分たち三人が座っている緋毛氈の台敷の上の葡萄を指さして、アレが食いたい、あぁこっちのもと、悉く求め食い尽くす、との意味でしょうか。

「月の雫」、『つきのしずく ―しづく 【月の雫】② ブドウの実に白砂糖の衣をかけた菓子。山梨県の名産』

 この画も前頁と同じ手法で、全面に大きく極端なくらいにぶどうを強調しています。

現在でも甲府近辺ではぶどう狩りが盛んで食い放題いくらいくらなどと宣伝してます。着ているものが少々異なるだけで、その風景は驚くほどダブっています。

 秋とはいえ富士山にはまだ雪は積もっていないようです。

 

2026年7月12日日曜日

大日本物産圖會その21

P21 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P21_1

(読み)

甲斐 國 白 柿 製 之圖

かいのくにころがきせいのず


柿(カキ)は當 國 処 々 より産(サン)須゛喬(キヤウ)

  かき はとうごくしょしょより  さん す   きょう


木 にして其 実(ミ)大 奈り四五月

ぼくにしてその  み だいなりしごがつ


頃(ゴロ)花 開(ヒラ)き九月 の頃 実熟(ジユク)

  ごろ はな  ひら きくがつのころみ  じゅく


す是 を摘(ツミ)皮(カハ)を剥(ハ)ぎてその

すこれを  つみ   かわ を  は ぎてその


蔕(ヘタ)をのこし縄(ナハ)尓者さミ

  へた をのこし  なわ にはさみ


て数 条  につらね乾(カハ)き天

てすうじょうにつらね  かわ きて


後 匣(ハコ)の中 尓列(ナラ)へ蓋(フタ)を掩(オホ)

のち  はこ のなかに  なら べ  ふた を  おお


ひ久 しきを経(ヘ)て白霜(シモ)を

いひさしきを  へ て   しも を


生  ず則  ち白柿(コロカキ)と称  須味(アヂ)

しょうずすなわち   ころかき としょうす  あじ


甘(アマ)くして甚  ダ佳(カ)奈り

  あま くしてはなはだ  か なり

(大意)

(補足)

「喬」、『きょう けう 【喬】たかくそびえる。「喬松」「喬木」』

「九月の頃実熟(ジユク)す」まさにこの画の時期で、庭のかたすみに赤い菊の花が咲いています。

 皮をむいた柿がたくさん籠に入っていて、その柿の色が、驚くくらい実際のむいた柿の色にそっくりで手にとって食べてしまいそう。

 大きな柿の木とたくさんの実を大胆に手前に配置して、これはもちろん錦絵のまね、でもきれい。その向こうでは部屋の中でなにやら歓談する男二人、また顔が半分隠れて男の子がいて、日常の中での柿むき作業という雰囲気をかもしだしています。

 茅葺きの濃淡といい、板壁の色むらの具合といい、上手だなぁ。

 

2026年7月11日土曜日

大日本物産圖會その20

P20 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P20_1

(読み)

駿 河半 紙漉 場ノ圖

するがはんしすきばのず


紙ハ菴原(イホハラ)郡 各所(カクシヨ)より産(サン)

かみは  いほはら ぐん   かくしょ より  さん


ず結香(ミツマタ)を以 て製 すといへ

ず   みつまた をもってせいすといえ


ども其 製 法 尓至 りてハ

どもそのせいほうにいたりては


諸 紙るゐと同 じ半 紙半

しょしるいとおなじはんしはん


切 薄 葉駿小(ンコ)のりい連

せつうすば   んこ のりいれ


其 外 数 種 の紙 を製 して

そのほかすうしゅのかみをせいして


全 國 尓輸出(ユウシユツ)す色 赤 く

ぜんこくに   ゆ しゅつ すいろあかく


して弱(ヨワ)しと雖  も價(アタヘ)廉(レン)奈る

して  よわ しといえども  あたい   れん なる


故 尓大  尓便用(ヘンヨウ)を奈せり

ゆえにおおいに   べんよう をなせり

(大意)

(補足)

「菴原(イホハラ)郡」、『1879年(明治12年)に発足した庵原郡(いはらぐん。いほはらのこおり)は、平成の大合併やその後の編入によって行政区画としては消滅した。現在の大半は静岡市清水区(新清水駅付近以南を除く巴川以北)、および静岡市葵区の一部(瀬名、瀬名川、長尾、平山など)に統合されている』。

「半紙・半切・薄葉・駿小(ンコ)のりい連」、みな紙の種類。

「價(アタヘ)廉(レン)奈る故尓大尓便用(ヘンヨウ)を奈せり」、大のときのトイレットペーパーとして用いたとも読めますが。まさかねっ。

 額縁からはみ出す富士山はやはり日本一‼️青空に紅葉でときは秋。紙を干すには絶好の日和。左の作業場では紙製造の一連の流れが示されています。ちなみに和紙の製紙に関しては「紙漉重宝記(かみすきちょうほうき)」に詳しい。

 干してある半紙の多さよりもそれらの干し板の枚数の多さに圧倒されます。日に当てなければなりませんから、板はいやおうなく反ってしまうはずで、その対策はどうしていたのでしょうか?

 

2026年7月10日金曜日

大日本物産圖會その19

P19 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P19_1

(読み)

駿 河 国 竹 細 工製 ノ図

するがのくにたけざいくせいのず


安部郡 静岡(シヅヲカ)の産 尓して

あべぐん   しずおか のさんにして


種々(シユ\/)の竹 を以 て製造(セイザウ)す

   しゅしゅ のたけをもって   せいぞう す


文房具(ブンハウク)酒具(シユグ)菓子(クワシ)者゛ち

    ぶんぼうぐ    しゅぐ    か し ば ち


茶器(チヤキ)及 び諸般(シヨハン)の器物(キフツ)笠(カサ)

   ちゃき および   しょはん の   きぶつ   かさ


の類(ルヰ)種 々 の細 工あり皆(ミナ)

の  るい しゅしゅのさいくあり  みな


精巧(セイコウ)尓して世尓称(シヨウ)せら

   せいこう にしてよに  しょう せら


るゝ故 尓駿 河細工(サイク)と称

るるゆえにするが   さいく としょう


せり

せり

(大意)

(補足)

 白い犬にのっている子どもの後ろには大きな車輪が見えていて、これは大八車ではなく人力車。その子どものとなりのお子様はお金持ちの家なのか靴をはいて手持ちの荷物はどことなく舶来風。店先をながめる旅人らしき方は洋傘をさしうしろに荷物持ちを従え、店の中ではそろばん片手に商談する番頭らしき人はザンギリ頭。どこもかしこも文明開化です。

 暖簾の「竹」の字は、竹の節をいれてこった意匠にしています。「するかや」さんの看板「細工志奈\/」(さいくしなじな)の上が読めません。「細」の上は「駿」or 「筋」?


 

2026年7月9日木曜日

大日本物産圖會その18


P18 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P18_1

(読み)

尾州  名古屋扇  折(ヲリ)の図

おしゅうなごやおおぎ  おり のず


扇  ハ愛知(アイチ)郡 名古屋耳

おおぎは   あいち ぐんなごやに


て多 く出須由ゑに名古

ておおくだすゆえになご


屋扇  の名あり支那(ナ)製

やおおぎのなありし  な せい


尓倣(ナラヒ)て薄(ウス)竹 骨 尓て造(ツク)り

に  ならい て  うす だけほねにて  つく り


紙 絹(キヌ)を張(ハ)る本 骨 ハすゝ

かみ  きぬ を  は るほんぼねはすす


竹 朱 丹 黒 丹 象牙(ソウゲ)の

だけしゅたんこくたん   ぞうげ の


類 尓て製(セイ)し塗骨(ヌリホネ)ま起ゑ

るいにて  せい し   にりぼね まきえ


金 銀 のぞうがんを以連

きんぎんのぞうがんをいれ


鳥 虫 山 水 など雕刻(チ ウコク)して

とりむしさんすいなど   ちょうこく して


最 美なり

さいびなり

(大意)

(補足)

「尾州」、尾張国。

「朱丹黒丹」、紫檀、黒檀のこと。

 たて縞に透かし柄模様の着物は涼しそう。庭の菖蒲を花瓶にさしてる少年はお姉さんたちに頼まれたのかも。鮮やかな黄色の板戸はよくみると茅(かや)のようなもののよう。その中央を抜き、また障子の向こうに池がみえるようにしていて、遠近法も使って奥行きと広がりをあたえています。そして赤い扇はむこうが透けて見えるようにしているという凝りよう。

 

2026年7月8日水曜日

大日本物産圖會その17


P17 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P17_1

(読み)

尾張  國 有 松 纐 り之図

おわりのくにありまつしぼりのず


鳴(ナル)海纐(シ本)りと称(シヤウ)して愛(アイ)知郡

  なる み  しぼ りと  しょう して  あい ちぐん


有 松 尓て多 く産 す織(オリ)物

ありまつにておおくさんす  おり もの


を鹿(カ)の子立 しぼ八重(ヘ)た

を  か のこたてしぼや  え た


すき阿るひハ雲 竜  竹 尓虎

すきあるいはうんりゅうたけにとら


の類(ルイ)種(シユ)々 画もやうを纐纈(こうけつ)

の  るい   しゅ しゅえもようを   こうけつ


藍(アヰ)紅 とうにて染 あげ

  あい べにとうにてそめあげ


たるもの尓し天最(モツトモ)美也

たるものにして  もっとも びなり


綿 布を以 て染 たる物 を

めんぷをもってそめたるものを


浴衣(ユカタ)単衣(ヒトヘキヌ)ホ(トウ)にもちひ

   ゆかた    ひとえきぬ   とう にもちい


ま多絹(ケン)布尓て志ぼり

また  けん ぷにてしぼり


たるもの阿り

たるものあり


(大意)

(補足)

「鳴海纐」、『なるみしぼり【鳴海絞】鳴海付近に産する木綿の絞り染め。有松絞(ありまつしぼり)。鳴海』。「纐」のフリガナ、「シ」の次が読みは「ホ」or「ボ」なのですが、その変体仮名がよくわかりません。「ヲ」とも読めますけど、さて?

 ここの詞書き(ことばがき)にもあるように有名だったようです。葛飾北斎44才頃の作品「東海道 彩色摺 五拾三次」の「奈るミ」にもありました。 

 御婦人二人の背景にある浴衣の単衣、藍色と薄藍色に白の鶴か鳳凰のよう、このまますぐにヒョイと着ることができそうです。

 詞書き背景の色柄が変わりました。