2026年9月30日水曜日

大日本物産圖會その101

P101 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P101_1

(読み)

同 國 鯖 釣 之圖

どうこくさばつりのず


鯖(サバ)ハ諸 國 の海 濱 尓鱲(トル)する

  さば はしょこくのかいひんに  とる する


と雖  も能登尓てとる物 を

といえどものとにてとるものを


名 品 と須春 夏 秋 の夜そら

めいひんとすはるなつあきのよぞら


曇(クモ)り潮(テ ウ)水 立 の本り海 上

  くも り  ちょう すいたちのぼりかいじょう


霞  多るを鯖 日和(ヒヨリ)と称  して

かすみたるをさば   びより としょうして


漁 舟  数 百  艘 打 並 び舟 毎

ぎょしゅうすうひゃくそううちならびふねごと


尓篝(カゝリ)を照 し方 火天 を焦(コガス)可

に  かがり をてらしほうかてんを  こがす が


如 し鉤 糸 ハ十 尋(ヒロ)計 り尓て

ごとしつりいとはじっ  ひろ ばかりにて


鰯(イワシ)鰕(エビ)奈どを餌 として手繰(クリ)ニ天釣 也

  いわし   えび などをえさとしてた  ぐり にてつるなり

(大意)

略

(補足)

「同國」、能登。

「鱲」、トルと振り仮名がありますが辞書にはそれに「子」をつけて『からすみ【〈鱲子〉 】ボラ・サワラなどの卵巣を塩漬けにし,圧搾・乾燥させた食品。形が唐墨(からすみ)に似て細長く平たいのでこの名がある』とありました。

「霞多るを」、霧か霞か悩ましいところですが、くずし字辞典で調べて「霞」に決定。

「十尋」、約18m。

「手繰」、いわゆる竿を使わない「一本釣り」で、鯛なども同様に釣ります。

 能登は現在でも、鯖寿司・鯖押し寿司・鯖棒寿司・焼き鯖寿司などどれもうまい‼️

松を大きく前面に持ってくるのは、広重一派の定番画法。「海上霞多る」遠くの漁舟は空に浮かび漂うよう。

 

2026年9月29日火曜日

大日本物産圖會その100

P100 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P100_1

(読み)

能登素 麺 製 造 ノ圖

のとそうめんせいぞうのず


素 麺 ハ備 後伊豫美 作 阿波

そうめんはびんごいよみまさかあわ


讃 岐大 和能登伊勢の各 州

さぬきやまとのといせのかくしゅう


尓て産 出  す五色 平(ヒラ)長(ナカ)太(フト)

にてさんしゅつすごしき  ひら   なが   ふと


白髪(シラカ)等 の諸 名 あり初

   しらが とうのしょめいありしょ


夏株 あげたる小麦 越

かかぶあげたるこむぎを


冬 尓い多りて目方 四 〆 五百

ふゆにいたりてめかたよんかんごひゃく


目を碓(ウス)尓て引 絹(キヌ)ぶるひ尓

めを  うす にてひき  きぬ ぶるいに


可け三 〆 目の白(コ)粉 を得る即

かけさんかんめの  こ ふんをえるすなわち


水 塩 等 を和して捏(ネリ)あハせ

みずしおとうをわして  ねり あわせ


麺棒(メンハウ)尓て壓延(オシノバ)し渦(ウツ)のごとく

   めんぼう にて   おしのば し  うず のごとく


切 廻  て曳(ヒキ)のバし細 く奈して掛産(ワク)尓

きりまわして  ひき のばしほそくなして   わく に


乾 上 適宜(ホドヨク)裁 て諸 国 尓出す

ほしあげ   ほどよく たちてしょこくにだす

(大意)

略

(補足)

「初夏」、ここの「夏」の漢字はフォントにありません。

 能登輪島がかっては素麺の一大産地であったことは知りませんでした。『輪島素麺(りんとうそうめん)は、室町時代から江戸時代にかけて石川県輪島地方で盛んに生産されていた、油を使わない手延べ製法の歴史ある素麺』とありました。

 この大日本物産図会の画工は安藤徳兵衛とあるのですが、これは親方または工房代表者のものであって、親方の指示に従って彫師が分担しているはずです。この画の詞書きは一見してわかるように、どことなくゴツゴツしていて彫師の個性というのではなく技量がいまひとつのよう。一行の文字列が右に左にとぶれたり文字の間隔が落ち着かない。まぁ読めることは読めるのですけど。

 左上部の枠近くに棒立ちしている男の人、視線は眼の前の二人の作業を見守っているのかとおもいきや、足元を見ると小山になった白いものが・・・足でこねていたのでした。

 奥の薄茶色にみえる畑は、小麦畑でしょうか。

 

2026年9月28日月曜日

大日本物産圖會その99

P99 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P99_1

(読み)

羽後秋 田欵冬之圖

うごあきたふきのず


秋 田郡 久保田辺  より出る蕗(フキ)

あきたぐんくぼたあたりよりでる  ふき


ハ尋常(ヨノツネ)の者 尓異(コト)奈り莖(クキ)の高

は   よのつね のものに  こと なり  くき のたか


さ一 丈  尓至(イタ)り葉(ハ)の大 キサ傘(カサ)

さいちじょうに  いた り  は のおおきさ  かさ


の如 し其 莖(クキ)徑(ワタ)り六 七 寸 心(シン)の

のごとしその  くき   わた りろくしちすん  しん の



孔 尓青魚脯(シン)二尾を容(イ)るゝ

あなにあお  しん にびを  い るる


ものありといふ其 葉を印(イン)し

ものありというそのはを  いん し


て諸 方 尓出すに唐 紙 二

てしょほうにだすにからかみに


枚 尓跨(マタガ)るといふその欵冬(フキノ)

まいに  またが るというその   ふきの


花(トウ)も大  サ蓮花(レンゲ)尓春起゛多り

  とう もおおきさ   れんげ にすぎ たり


茎花(クキバナ)並   食(クラ)ふべし然(シカ)連共

   くきばな ならびに  くら うべし  しか れども


其 味 ハ却(カヘ)て長  ぜざる所  也 と云

そのあじは  かえってちょうぜざるところなりという

(大意)

略

(補足)

「欵冬」、『おおば、おほば、かんとう【欵冬】植物「ふき(蕗)」の古名。また「つわぶき(橐吾)」の古名ともいう』。『漢字の意味: 「欵」は打ち叩く、「冬」は寒さや氷を表し、冬の氷や雪を破って芽を出す様子に由来します。七十二候: 二十四節気の大寒の初候に「欵冬華(ふきのはなさく)」があり、雪の下からフキノトウが顔を出す、春の訪れを告げる頃を指します』。辞書とAIによる概要にたよりました。

「秋田郡久保田辺」、JR秋田駅、秋田市のあたり。久保田城があります。

「青魚脯」、AIによる概要では『青魚脯(せいぎょほ / チンユーフー)とは、中国の淡水魚である「青魚(アオウオ)」を原料とした魚の干物』とあります。ここでは秋田沖でとれたニシンの干し魚でしょうね。

 蕗が森林のように描かれ、人が小人になってしまったように見えます。かって北海道に旅したとき、実際に自分自身より大きな蕗の葉と茎を見たときには信じられないおもいでした。雨傘よりも大きい葉なのでちゃんと雨をしのげますし、葉っぱにある毛が水をはじくので実際の傘よりも上等でした。

 畑仕事の帰り道、鋤をかつぐ近所の人が、蕗の葉の下で雨宿りする旅人に指を指しながら話しかけています。「影が馬みてぇじゃねぇか、ハハハ」。

 蕗の葉の裏表、茎はみな緑色ですが、濃淡だけで表現していてきれいで見事です。

 

2026年9月27日日曜日

大日本物産圖會その98

P98 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P98_1

(読み)

羽後 國 養 蠶 之圖七

うごのくにようさんのずなな


蚕(カヒコ)春で尓繭(マユ)と奈り五六 日 目

  かいこ すでに  まゆ となりごろくにちめ


与りハ糸 を取るなり是 も国 々

よりはいとをとるなりこれもくにぐに


尓与りて流  義多 し當 国 ニてハ糸 取

によりてりゅうぎおおしとうごくにてはいととり


女  の左  の方 へ竈(カマド)を置き鍋(ナベ)の

おんなのひだりのほうへ  かまど をおき  なべ の


湯沸騰ると起ま由一 升  を四

ゆたぎるときまゆいっしょうをし


五度本ど尓鍋 へ入連加減(可个゛ん)与く

ごどほどになべへいれ   かげ ん よく


煮(ニ)多るとき箸 を以  可き交(マゼ)

  に たるときはしをもってかき  まぜ


糸 口 をとり奈べの縁(ヘリ)尓馬

いとぐちをとりなべの  へり にうま


の尾或  ハ女  の髪(カミ)の毛をちひ

のおあるいはおんなの  かみ のけをちい


さ起輪(ワ)尓し之 を結(ユヒ)付 此 穴 尓

さき  わ にしこれを  ゆい つけこのあなに


糸 を通 し篗(ワク)尓巻(マキ)てとる也

いとをとおし  わく に  まき てとるなり

(大意)

略

(補足)

「羽後國」、秋田県の大部分と山形県の北部の一部とに相当。

「篗」、『わく【籰・篗】〔「枠(わく)」と同源〕紡いだ糸を巻き取る道具。二本または,四本の木を対にして横木で支え,中央に軸を設けて回転するようにしたもの。おだまき』。

 養蠶之圖が七になって、物産図会の品で同じものでは一番の紹介数かもしれません。明治初年以降生糸の輸出が爆発的に増加してゆくまさにその時代でありました。

 2台の篗(ワク)で巻き取っている御婦人ふたり、ひとりは娘さんぽく、姉さんかぶりしているもうひとりはチト色っぽい。手回している部分に歯車が二枚見えています。

 窯焚きしている男の背中の「萬」は版元の東京日本橋錦栄堂萬屋大倉孫兵衛の意匠。胸元が開いた長煙管をすっている女となにやら色っぽいはなしでもしている様子。

 柱に金具をつけて巻き取った生糸を引っ掛け、全体を整えている男はザンバラ髪、足元には大きい和鋏とヘチマのような形のものがあります、なんでしょうこれ?

 馬の鞍が大きくて丈夫そうなのは、右のほうにある生糸がつまった荷物をこれからのせようとしているところのよう。「この大きな荷物ふたつ運んでください、これくらい大丈夫だよね?」「へい、旦那様。うちの馬はそれくらいなんともありゃしませんや、まかしておくんなさい」。

 

2026年9月26日土曜日

大日本物産圖會その97

P97 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P97_1

(読み)

越 前  國 奉 書 紙製 之圖

えちぜんのくにほうしょしせいのず


紙 ハ當 國 大 瀧(タキ)。新在家(しんさいか)。定(サタ)

かみはとうごくおお  たき      しんさいか    さだ 


友(トモ)。不老(フロウ)の諸 村 与り産

  とも     ふろう のしょそんよりさん


春゛楮(コホズ)を蒸(ムシ)して皮(カワ)を去

ず   こほず を  むし して  かわ をさ


里水 尓さらし打 こと数

りみずにさらしうつことすう


回(クハ)にして水 尓和し簀

  かい にしてみずにわしす


の子尓て漉(ス)き場板 尓張 て

のこにて  す きばいたにはりて


乾(ホシ)上 る也 大 廣 五寸 廣 大

  ほし あげるなりおおひろごすんひろだい


中  小  奉 書 色 奉 書 等

ちゅうしょうほうしょいろほうしょとう


の諸 品 あり

のしょしなあり

(大意)

略

(補足)

「越前國」、ほぼ福井県中・北部に相当。古名,こしのみちのくち。

 ここにあげられた村名は福井県越前市(旧今立町)にある「越前和紙の里・五箇(ごか)地区(大瀧(おおたき)、新在家(しんざいけ)、定友(さだとも)、不老(おいず))」で、もうひとつは岩本(いわもと)。こんな案内板がありました。

「奉書紙」、『ほうしょがみ【奉書紙】〔多く奉書に用いたことから〕上質の楮(こうぞ)で漉(す)いた,純白でしわのないきめの美しい和紙。杉原紙に似るが,やや厚手で簾目がある。越前奉書が有名。ほうしょ』。奉書は『① 天皇・将軍などの意向や決定を下知する文書。院宣・御教書の類』とあって、時代劇で偉いお侍さんが「上意である」と伝えながら白い封筒みたいのを突き出す場面がよくありますが、あの白いのが奉書です。

 詞書きのとおり、楮苧の刈り取りから出荷まですべての工程を一望できる物産図会の手法です。ひとつひとつの工程を丁寧に見ていくとおもしろいですね。

 和紙に関する史料に「紙漉重宝記(かみすきちようほうき)」があります。わたしのBlogにも掲載していますので暇つぶしにご覧ください。

 埼玉県小川町が家から約1時間のところにあり、小川和紙or細川紙が有名です。昨年訪れたときに、便箋の冊子になっている和紙を購入しました。きれいでなめらか、筆を持ってササッと書けば気持ちそさそう♫

 

2026年9月25日金曜日

大日本物産圖會その96

P96 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P96_1

(読み)

越 前  國 海膽取 之図

えちぜんのくにうにとりのず


海膽(ウニ)は當 國 并  尓薩摩(サツマ)尓

   うに はとうごくならびに   さつま に


て取るものを名 品 と須その

てとるものをめいひんとすその


肉(ニク)微少(スコシ)なる毛のに天膏(アブラ)

  にく    すこし なるものにて  あぶら


阿り刺(ハリ)多(オホ)くして栗(クリ)の毬(イカ)

あり  はり   おお くして  くり の  いが


尓似(ニ)たり漁人(リヤウシ)干泻(ヒカタ)の

に  に たり   りょうし    ひがた の


岩 間尓もとめ肉 を採(ト)り

いわまにもとめにくを  と り


桶 尓収(オサ)め塩(シホ)に和(クワ)し天

おけに  おさ め  しお に  わ  して


諸 國 耳出須楚の味

しょこくにだすそのあじ


甚  多佳奈り

はなはだかなり

(大意)

略

(補足)

 潮がひき磯があらわれ、その手前に湿った浜がひろがっています。この浜の質感の描写がうまい。両手ですくって湿った砂の感触がつたわってきそうです。

 わたしが若かりし頃さんざんとりまくったウニはその地域ではカゼとよんでいました。カゼがとれるのは詞書きにもあるように岩間つまり磯です。浜にはいません。潮がひかずとも磯で2m前後ももぐればいくらでもとれました。道具は大工道具で使うかすがいです。それでカゼを岩からはがします。そしてバケツに何杯もとったあとは、カゼの口に火箸を二本差し込んで割って実をスプーンですくい取り、水ですすいでゴミをとります。白いご飯にたっぷりウニをのせてわさび醤油をかけてウニ丼のできあがり。うまかったぁ。

 浜や磯に打ち寄せる波の色がきれい。沖にいくにしたがって波の色の濃淡が上手です。


 

2026年9月24日木曜日

大日本物産圖會その95

P95 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

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(読み)

加賀 國 菅 笠 ヲ造 ル圖

かがのくにすげがさをつくるず


菅笠(スゲガサ)ハ石 川 郡 金 沢 ニて薹(カサスケ)

   すげがさ はいしかわぐんかなざわにて  かさすけ


を以 て造(ツク)り諸 國 へ出すこと夥

をもって  つく りしょこくへだすことおびただし


頭(カシラ)尓被(カブ)りて日 光 を遮(サヘギ)り雨 雪

  かしら に  かぶ りてにっこうを  さえぎ りあめゆき


を防(フセ)き民用(ミンヨウ)を奈すこと西 洋

を  ふせ ぎ   みんよう をなすことせいよう


仐(カサ)の右 尓出(イヅ)る薹   ハ水 田

  かさ のみぎに  いず るかさすけはすいでん


尓植(ウエ)る草尓て 茅(チカヤ)尓似(ニ)

に  うえ るくさにて  ちがや に  に


て色 青 く長 さ四五尺  者゛

ていろあおくながさしごしゃくば


可里那り之 を刈干(カリホシ)て白

かりなりこれを   かりほし てしろ


くさらし竹骨(ホネ)尓縫(ヌヒ)付 て其

くさらしたけ ぼね に  ぬい つけてその


形 ち皿 のことく或  ハ鉢 の如

かたちさらのごとくあるいははちのごと


く造 る也 多 く女  の職業(シヨクゲ ウ)と須

くつくるなりおおくおんなの   しょくぎょう とす

(大意)

略

(補足)

「薹(カサスケ)」、『かさすげ【笠菅】カヤツリグサ科の多年草。水辺や湿地に群生する。高さ約1メートル。茎は三角柱状。葉は広線形で長く,ざらつく。晩春,雄花穂を頂生し,その下に数本の雌花穂を斜出する。葉で蓑(みの)・笠・縄などを作る。スゲ』。この漢字「薹」は『とう たう【薹】〔形が塔に似ているところからいうか〕アブラナ・フキなどの花茎』です。「艹」+「吉」+「冖」+「至」。

「出すこと」「奈すこと」、この「こと」は合字。「より」の合字のフォント「ゟ」はありますが「こと」はまだなさそうです。

 紫の暖簾が美しい。木版なのに布生地そのままの肌さわり感(テキスチャー)があります。白く抜いてある文字は「菅笠志奈\/(すげがさしなじな)」。上部の中央は「𠆢」+「万」、これは昨日の画の右枠外に「出版人大倉孫兵衛」、版元の萬屋の意匠。その左側は版元の「万」があることから予想すると「者ん元(はんもと)」かな?

 暖簾の上の瓦屋根、左側から右に流れるように、瓦の凹みの影というか波が遠近感がでるように少なくなるようにしていて、手がこんでいます。うまいね♫

 店先にはいつもより派手に文明開化開眼男の登場。和装ですが身につけているものは洋傘・鞄・靴、それに帽子姿です。

 帳場の奥は蔵に直結です。