2026年9月4日金曜日

大日本物産圖會その75

P75 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P75_1

(読み)

東 京  錦  繪製 造 之図

とうきょうにしきえせいぞうのず


錦  繪ハ武州  東 京  の名 産 尓し

にしきえはぶしゅうとうきょうのめいさんにし


て奉書(ホウシヨ)或  ハ絹雁皮紙(キヌガンヒシ)ホ に刷(スル)

て   ほうしょ あるいは     キヌガンビシ などに  する


と雖(イヘト)も伊豫(イヨ)の国 西条(サイデ ウ)より出

と  いえど も   いよ のくに   さいじょう よりだ


す政紙(マサシ)尓て摺(スル)もの多 し板 ハ

す   まさし にて  する ののおおしいたは


櫻(サクラ)木を用 ひ一ト色 毎 尓一 枚

  さくら ぎをもちいひといろごとにいちまい


宛 を刻 し先墨板(スミイタ)より摺始(スリハシ)

ずつをこくしまず  すみいた より   すりはじ


めて色 毎 尓春り合 せ上  品 のものハ

めていろごとにすりあわせじょうひんのものは


三 十 篇 より四 十 篇 の色 を春り

さんじっぺんよりよんじっぺんのいろをすり


合 せ終(ツヒ)尓一 枚 の錦  繪と奈る宇ちハ

あわせ  つい にいちまいのにしきえをなるうちわ


ハ房刕(バウシ ウ)より出す処  の女竹 を凡  六

は   ぼうしゅう よりだすところのめたけをおよそろく


十  尓割(ワリ)て窓(マド)をあミ錦  繪を張 縁(ヘリ)を

じゅうに  わりて   まど をあみにしきえをはり  へり を


とる也

とるなり

(大意)

(補足)

赤札が3枚あって左より「ドウサ引の紙を掛ル」。ドウサとは『どうさ だう―【礬水・礬砂・陶砂】膠(にかわ)とミョウバンを溶かした水。紙などに引いて,墨・インク・絵の具のにじみ止めとする』。『どうさがみ だう―【礬水紙】絵の具がにじむのを防ぐために,礬水を引いた紙。書画に用いる』。次の赤札「ゑを摺」。3枚目「団扇張」その右上でははみ出た竹を押し切りで落としています。「縁(ヘリ)をとる」作業です。

 店の中の作業場から店頭というおもしろい構図、なので店頭に飾ってある浮世絵・錦絵は裏側が透けてます。錦絵を四隅でとめていますが、この頃は洗濯ばさみはなかったはずでどうやっているのでしょう?人力車が左奥に半分見えています。

「政紙」、『まさがみ。「柾紙」「正紙」とも書かれ上質な奉書紙の一種。特に上質のものは浮世絵の刷りなどにも用いられた』。

「墨板」、『墨板(すみばん)」とは、浮世絵などの木版画において輪郭線や黒色部分を表現するための最も基本となる版木(主版)のこと。この墨板をもとに色を重ねるための「色板(面)」が作らる』。

「凡六十尓割(ワリ)て窓(マド)をあミ」、『うちわの「窓」とは、日本三大うちわの一つである「房州うちわ」などで見られる、骨と骨の間隔を整えて糸で編んだ、紙が貼られていない格子状の部分(持ち手から扇面にかけて細かく(48〜64等分に)割いた竹の骨を、糸で美しく編み交ぜて作る)のこと』。天井にぶら下がって干してある団扇。

「房刕」、フォントがないので「刕」を使用。ここでは下の刀は「冫」とその裏返し。

 子どものころ、錦絵を張った房州団扇がいくつかありましたが、その価値も知らずに最後は竹の骨だけになってしまいました。

 

2026年9月3日木曜日

大日本物産圖會その74

P74 東京都立図書館蔵

P74_1

(読み)

播 磨 國 赤穂 塩 濱 之図

はりまのくにあこうしおはまのず


塩(シホ)ハ當 國 赤穂(アカホ)尓て製(セイ)

  しお はとうごく   あこう にて  せい


春るを国 内 第 一 等 の品 と須

するをこくないだいいっとうのしなとす


晴天(セイテン)尓潮(ウシホ)を汲(ク)ミ砂上(スナノウヘ)尓蒔(マキ)

   せいてん に  うしお を  く み   すなのうえ に  まき


砂 の乾(カハ)くを待(マツ)て是 をあつ

すなの  かわ くを  まつ てこれをあつ


免水 に漉(コ)し志たゝる

めみずに  こ ししたたる


志保を平釜(カマ)尓天煮(ニ)

しおをひら がま にて  に


俵(タハラ)尓徒くる又 や起塩(シホ)者奈

  たわら につくるまたやき  しお はな


塩 等 の種々(しゆ\゛/)ありて其 色

しおとうの   しゅじゅ  ありてそのいろ


潔白(ケツハク)奈ること雪 のごとし

   けっぱく なることゆきのごとし

(大意)

(補足)

「国内」、「国」のくずし字は最頻出。筆順は「ふ」とおなじ。

「あつ免」、変体仮名「免」(め)。よくでてきます。

「志たゝる志保」、変体仮名「保」(ほ)、超初心者のとき、読めなくて苦労しました。

「徒くる又や起塩者奈塩等」、変体仮名がいくつもでてきてます。

「種々(しゆ\゛/)」、いままで「しゅしゅ」と濁らずに使ってました。

「潔白」、『けっぱく【潔白】① 心やおこないが正しいこと。うしろぐらいところがないこと。また,そのさま。「清廉(せいれん)―な人」「身の―を明らかにする」② 清くて白いさま。「―ナウツワモノ」〈和英語林集成〉』。②の使い方を知りませんでした。

 時代がいっきに数千年戻ったようで、縄文時代の竪穴住居のよう。縄文人も塩は必須だったのできっとこんなふうにとっていたのかも。

 松を手前に大きくもってくるのは広重一派定番の技法。松の樹皮の色合いが微妙、松葉の緑が開ききった扇子のようです。

 藁葺き小屋から立ち上る煙を透き通して見えるよう濃淡をつけてます。銭湯の壁絵にしてもよさそう、どこかホッとする画。

 

2026年9月2日水曜日

大日本物産圖會その73

P73 東京都立図書館蔵

P73_1

(読み)

播 州  姫 路革 店 之図

ばんしゅうひめじかわてんのず


姫路革(ヒメヂカハ)ハ飾磨(シカマ)郡 姫 路に

    ひめじかわ は   しかま ぐんひめじに


て製 須獣(ケモノ)の皮(カワ)をさらし揉(モミ)

てせいす  けもの の  かわ をさらし  もみ


て種々(しゆ\〃/)の色 尓染(ソメ)め奈し

て   しゅじゅ  のいろに  そめ めなし


草 木 花果鳥 虫 等 の

そうぼくかかとりむしとうの


もやうを写(ウツ)し金 銀 彩

もようを  うつ しきんぎんさい


色  して巾着(キンチヤク)莨入(タバコイ)連

しょくして   きんちゃく    たばこい れ


ドル入 文 庫硯  筥 其 外

どるいれぶんこすずりばこそのほか


種 々 の器物(キブツ)を夥(オビタゞ)しく造(ツク)る

しゅじゅの   きぶつ を  おびただ しく  つく る


美麗(ビレイ)尓して最(イト)堅強(ケンカ ウ)奈り

   びれい にして  いと    けんきょう なり

(大意)

(補足)

「飾磨郡」、かつて兵庫県(播磨国)に存在した郡。

「金銀彩色」、「彩」が「粉」のようにも見えます。この二つをごっちゃにして「采」+「分」となって、まちがえたのでは。

「文庫革」、『明治初期から姫路で親しまれてきた皮革伝統工芸品。真っ白になめした牛革に型押しをし、一筆一筆彩色を施した後,真菰(まこも)という植物の粉をふりかけ古びをつける』。

「最(イト)堅強(ケンカ ウ)」、「最」を「イト」と当て字で読ませる、ここまでくれば笑えます。

 左隅、金槌を持つ二人の職人さんはなめした皮をピンと張って天日干しで固定しているところ。右側には和傘を持つ若者と洋傘を置いて小僧にお茶を振る舞われている丁髷姿のおじさん。店の中は丁髷と断髪して七三分けした使用人がいて、文明開化が進行中。

 店頭看板に「革細工品々ひめじや」。「姫路革却うり」、米相場で使われる言葉に「却(かえ)うり」があるようですけど、よくわかりませんでした。

 ひめじやの暖簾(のれん)が、厚い木綿生地に藍色で染めてその風合いや生地の質感がでていて、いつもうまいもんだなぁと感心してしまいます。その上の瓦の灰色も濃淡をつけて奥行きが、これまたうなります。

 

2026年9月1日火曜日

大日本物産圖會その72

P72 東京都立図書館蔵

P72_1

(読み)

同 西瓜 畑  之圖

どうすいかばたけのず


葛 飾 千葉の両  群 尓て

かつしかちばのりょうぐんにて


お本く畑  尓作 る蔓草(ツルクサ)

おおくはたけにつくる   つるくさ


尓して実の大  さ冬 瓜

にしてみのおおきさとうがん


のことく七 八 月 のころ熟(シユク)

のごとくしちはちがつのごろ  じゅく


し其 そと皮 ハ青 黒 色  ニ

しそのそとかわはあおぐろしょくに


志て中 ハ紅 色 奈りま多

してなかはべにいろなりまた


外 皮 白 青 色 尓して中

そとかわしろあおいろにしてなか


黄奈るものあり水 多 くし

きなるものありみずおおくし


て味 甘 し暑熱(シヨネツ)を消(セ ウ)す

てあじあまし   しょねつ を  しょう す


もの那り

ものなり

(大意)

(補足)

「同」、下総国。『しもうさ しもふさ 【下総】千葉県北部と茨城県の南西部にあたる。しもふさ。しもつふさ』

 スイカ畑。関東ロームの黒色を耕した土ではなく、水はけの良い砂地のように見えます。投げ上げている西瓜が枠をはみだしそう。この大きさだとここまでの高さに放り上げることは難しいというかできません。やったことがあるのでわかります。

 話題に取り上げた品々はなんでも誇張して大きく、または極端な遠近法を用いたりするのが浮世絵・錦絵の定番。でも下に落ちて割れているのは、そんなこともあったでしょうから、こどもは食べようと小走りに、大人はとっくにかじっています。

 畔道の木陰にお稲荷さんがあって、西瓜が供物にされていそう。天秤棒で前後に二個ずつ下げて、これは重たい。西瓜農家は何をするにも力仕事です。それにしても西瓜を見上げる二人の表情がほがらかでうまいなぁ。

 西瓜もすっかり高級品となてしまって、手が出なくなりました。

 

2026年8月31日月曜日

大日本物産圖會その71

P71 東京都立図書館蔵

P71_1

(読み)

同 鰤 磯 場之圖

どうぶりいそばのず


網 磯 近 く奈るとき数 百  人

あみいそちかくなるときすうひゃくにん


あつまりて網 を引 あげ網

あつまりてあみをひきあげあみ


中 尓群(ムラガ)る魚 を打 鎰(カキ)或(アルヒ)盤

なかに  むらが るうおをうち  かき   あるい は


手どり尓して砂上  へ投(ナゲ)あげ

てどりにしてさじょうへ  なげ あげ


腹(ハラワタ)をぬき大 桶(ヲケ)耳以連天

  はらわた をぬきおお  おけ にいれて


塩 づけとなし又 志本を

しおづけとなしまたしおを


腹 中  にミ多し土中  耳

はらぢゅうにみたしどちゅうに


うづミてむしろをふせ

うずみてむしろをふせ


て水 気を去(サ)りふ多ゝび

てみずけを  さ りふたたび


塩 を本どこし薦(コモ)尓包(ツゝミ)て

しおをほどこし  こも に  つつみ て


諸邦(シヨハウ)尓出す

   しょほう にだす

(大意)

(補足)

「同」、丹後国。

「群る」、「君」と「羊」の位置が上下になってます。偏と旁が上下になるのは古文書でよくあります。

「打鎰(カキ)」、「鎰」は『重さの単位。二十両。また、二十四両。かぎ。錠前のかぎ。』の意。ここでは『漁業における「打鉤(うちかぎ)」とは、長い木の柄の先端に鋭い鉄製のカギ(鉤)を取り付けた道具、およびそれを使って魚を捕獲・引き揚げる手法のこと』。

「或(アルヒ)盤」、変体仮名「盤」(は)、ほとんどが変体仮名「者」(は)ですけど、この「盤」もたまにでてきます。

 手づかみで鰤を浜に投げ上げる漁師たちの動作も表情も一人ひとりことなっていていいですねぇ。その上では網を綱引きのように引き上げてますが、やはりみなさん一人としておなじふうに描かれていません。

 題名は鰤でそれが主役のはずですが、やはり漁師たちでした。

 

2026年8月30日日曜日

大日本物産圖會その70

P70 東京都立図書館蔵 

P70_1

(読み)

丹 後 國 鰤(ブリ)追 網 之圖

たんごのくに  ぶり おいあみのず


鰤(ブリ)ハ丹 後 國 与謝(ヨサ)の入 海 に

  ぶり はたんごのくに   よさ のいりうみに


とるものを上  品(ヒン)と須魚 つ年

とるものをじょう  ひん とすうおつね 


尓此(コゝ)尓あそび長  ずるに及(オヨン)で

に  ここ にあそびちょうずるに  およん で


出んとする時 をう可ゞひ追(オヒ)

でんとするときをうかがい  おい


網(アミ)を以 て捕(ト)る網 ハうミの

  あみ をもって  と るあみはうみの


入 口 尓者り数 十 艘 ふ年を

いりぐちにはりすうじっそうふねを


奈らべ舳(フナバタ)をたゝき魚 をおひ

ならべ  ふなばた をたたきうおをおい


いれ尚 魚 のもれざる多め三

いれなおうおのもれざるためみ


重尓あミを可け轆轤(ロクロ)にて

えにあみをかけ   ろくろ にて


ひ起阿けるなり

ひきあげるなり

(大意)

(補足)

「丹後」、『京都府の北部に相当』。現在のこのあたり。

 遠近で轆轤をまわす様子を描く、これも広重の遠近画法の一種でしょう。近接の漁師たちの表情がことなっていて、力の入れ具合がわかるというもの、こちらもう〜んとうなってしまう。網の一方では遠くの浜で轆轤をまわす全体の様子が見えます。

 旭日旗のようなおひさまは朝日か夕日か、まぁ漁のならいで朝日でしょうね。

 鯨漁やこのような大規模な漁では必ず采配を振るう漁師がいて細かな指示を与えていました。

 浜の漁師たちを題材にした絵描きさんはたくさんいましたが、この一枚もいいなぁ。

 

2026年8月29日土曜日

大日本物産圖會その69


P69 東京都立図書館蔵 

P69_1

(読み)

信 濃 國 氷  中  八ツ目鰻  採 ノ圖

しなののくにひょうちゅうやつめうなぎとりのず


八ツ目鰻(ウナギ)ハ信 州  諏訪(スハ)の

やつめ  うなぎ はしんしゅう   すわ の


湖(ウミ)尓採(ト)るものを名 産 とす

  うみ に  と るものをめいさんとす


上 下 の諏訪一 里計  のあひ多゛

かみしものすわいちりばかりのあいだ


湖水(コスヰ)氷  尓て張 つめ多る上

   こすい こおりにてはりつめたるうえ


尓小  家を営(イトナ)ミ漁 夫の休(イコ)

にしょうかを  いとな みぎょふの  いこ


ふ所  となし氷  上  耳薪(タキゞ)

うところとなしひょうじょうに  たきぎ


を積(ツミ)焚(タキ)て所  々  尓穴 を穿(ウガ)ち

を  つみ   たき てところどころにあなを  うが ち


延縄(ハヘナハ)尓共餌(トモエ)を付 て釣取(ツリトル)こと夥(オビタゞ)シ

   はえなわ に   ともえ をつけて   つりとる こと  おびただ し


又手(テ)操(久り)網(アミ)尓て石班魚(アカハラ)を採(トル)事

また て   くり   あみ にて    あかはら を  とる こと


お本し

おおし


(大意)

(補足)

「石班魚(アカハラ)」、『あかはら③〔繁殖期に腹部が赤くなることから〕ウグイの異名』。

 八ツ目鰻は母が昔、目に効くからと干からびた黒っぽい棒状のものを食べてましたが、鰻とは名前ばかりで、まったくうまくもなく、はたして目にもよいのかどうかも疑わしい。

 諏訪湖は御神渡りが有名で、中央高速で通りかかったとき偶然に目にしたことがあり、なるほど湖上を盛り上がった氷が裂け目のように走っていてギシギシと音が聞こえるような気もしました。

 画の右側では焚き火が激しく燃え上がっていますが、この程度の火ではあまり暖かくなりそうもありません。それにしても漁をするから体を動かしているとはいえ、皆、薄着で素手、動いていないと凍え死んでしまうとおもいます。網を氷の下に通すだけでも一仕事。