2026年8月15日土曜日

大日本物産圖會その55

P55 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P55_1

(読み)

阿波 國 藍 製 之圖一

あわのくにあいせいのずいち


夫藍(アヰ)ハ山 城 大 和河 内美濃

それ あい はやましろやまとかわちみの


両  野三 陸 播 磨四国 九  州  等

りょうやさんりくはりましこくきゅうしゅうとう


尓産 出  すといへども就中   阿

にさんしゅつすといえどもなかんずくあ


波の中 島 を上  等 と須その

わのなかじまをじょうとうとすその


あらまし先づ節 分 尓種 子

あらましまずせつぶんにしゅし


を下 し凡  廿   五日 過 て芽(メ)を

をくだしおよそにじゅうごにちすぎて  め を


生  ず後 七 十  五日 す起゛て苗 六

しょうずのちしちじゅうごにちすぎ てなえろく


七 寸 尓至 るを度として他 の

しちすんにいたるをどとしてほかの


園 尓栽 可へ後 七 十  五日 すぎて

えんにうえかえのちしちじゅうごにちすぎて


土用 の前 尓刈 込む奈りさ天

どようのまえにかりこむなりさて


二番 刈 込 ハ一 者゛んの刈 可ぶより

にばんかりこみはいちば んのかりかぶより


再  び生  じ多る物 尓して凡  三

ふたたびしょうじたるものにしておよそさん


十  日 を經て刈 とるもの奈り

じゅうにちをへてかりとるものなり

(大意)

(補足)

「両野」、『りょうや。上野国(こうずけのくに・群馬県)と下野国(しもつけのくに・栃木県)の両方を合わせた地域・地名の総称』。

「度として」、この本の詞書きでよく使われています。目処(めど)の「ど(度(漢字は異なりますけど))」で意味が通じます。

 画の下部に3枚の札があって右から順に「藍ヲ栽ル図」「虫ヲトル圖」「アヰカリノ圖」、藍の生育を一枚に収めてしまうのは画ならでは。鍬の質感がイイ。

 馬の鞍がどのように取り付けられているかが、この画でよくわかります。馬にも道中はわらじを履かせたそうですが、この馬はどうなのだろう?

 登場する人物全員、藍染めの着物や帯を身に着けています。馬も‼️

 背景がさみしいのは、藍の種まきから刈り取りまでを説明しているので、特定の時期を示す植物や樹木の様子を描くことを避けたのだとおもいます。

 

2026年8月14日金曜日

大日本物産圖會その54

P54 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P54_1

(読み)

同 鯛 網 之圖

どうたいあみのず


縄 の両  端(ハシ)へ各 舩 二艘 ツゝをつけ

つなのりょう  はし へかくふねにそうずつをつけ


網 舩 二艘 ハ先 尓進 ミて麾(ザイ)

あみふねにそうはさきにすすみて  さい


をふり又 一 艘 ハ縄 の沈(シヅ)まざる

をふりまたいっそうはつなの  しず まざる


多め真 中 を採(ト)り麾(ザイ)をふりて

ためまんなかを  と り  さい をふりて


号令(ゴウレイ)を下す 然 して魚  の集

   ごうれい をくだすしかしてさかなのあつまり


多るを見て先 尓進 ミ多る網 舟

たるをみてさきにすすみたるあみふね


後  尓廻 り網 を者れバ初  の二艘

うしろにまわりあみをはればはじめのにそう


縄 を放 つ網 舟 の二艘 港板(ミヨシ)をやり

つなをはなつあみぶねのにそう   みよし をやり


違(チガエ)て網 を志本゛る余 の舟 多満網 尓

  ちがえ てあみをしぼ るほかのふねたまあみに


て網 中 の魚  をとり小舟 うつす也

てあみなかのさかなをとりこぶねうつすなり

(大意)

(補足)

「同」、淡路国。

「麾(ザイ)をふり」、『き 【麾】① 軍隊を指揮する旗。「麾下」「麾扇」「麾兵」

② 指図する。「指麾」』。『「采を振る(さいをふる)」とは、采配を振る(采配を振るう) と同じ意味』。『さい【采】を振(ふ)る。人にさしずをする。指揮して物事を行なう。ざいを振る』。昨日の画で、ブリ綱の両端の舟で赤い旗を振っているのがこのこと。

「港板(ミヨシ)」、『みよし【水押・舳】〔「みおし」の転『みおし【水押・〈船首〉 】』〕① 船首先端の水を切る部材で,船体構成上の主要材。近世以来,水切りのよい一本水押が主用されて和船の特徴の一つとなった。みおし。によし。にょし。ねうし。 →和船② 〔 →1からの転〕船首。 ↔とも』

「多満網」、たも網、たものこと。

 大量の鯛を描くこともさることながら、漁師たち一人ひとりの顔の表情やそれぞれの作業の動きを絵師は描きたかったのではとおもいます。彼らの顔を拡大してみると皆必死で、大漁に胸躍っているのが伝わってきます。

「44備前国白魚漁之圖」でも空中の網の画が見事でしたが、ここでは海中に半分沈む網。それでも質感と遠近があり網目をとおして波が見えているところなど、絵師・彫師・摺師の技が見事であります。

 和船が舳先から艫(とも)まで細かく描くこと、これまた丁寧です。絵師たちの気持ちがこの画にたいして入れ込んでいるのがよくわかります。

 

2026年8月13日木曜日

大日本物産圖會その53

P53 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P53_1

(読み)

淡 路 國 鯛 ブリ網 之圖

あわじのくにたいぶりあみのず


鯛 ハ海 中  巌石(ガンゼキ)多 き処  尓

たいはかいちゅう   がんせき おおきところに


集  り是 をとる尓不便 奈

あつまりこれをとるにふべんな


る由ゑ尓「ブリ」といふて長 サ

るゆえに ぶり というてながさ


三 百  二三 十  尋 計 り奈る縄 へ

さんびゃくにさんじゅうひろばかりなるなわへ


糸 尓てうす板 を付 水 中  を

いとにてうすいたをつけすいちゅうを


ひけバ木(コ)の葉(ハ)の散乱(サンラン)する

ひけば  こ の  は の   さんらん する


古登久奈る可゛由ゑ耳魚

ごとくなるが ゆえにさかな


おそハれて中  流  尓たゞよひ

おそわれてちゅうりゅうにただよい


「ブリ」の真 中 尓あつまる此 縄

 ぶり のまんなかにあつまるこのつな


を引 尓舟 七 艘 尓して乗 人 卅    一 人 也

をひきにふねななそうにしてのりびとさんじゅういちにんなり

(大意)

(補足)

「尋」、『ひろ【尋】〔広(ひろ)の意〕両手を左右に広げたときの,一方の指先から他方の指先までの距離。長さの単位として用い,縄・釣り糸・水深をはかるのに用いる。江戸時代には一尋は五尺(約1.5メートル)または六尺(約1.8メートル)であったが,明治以降は六尺とする』。

「古登久奈る可゛由ゑ耳」、変体仮名のオンパレード。これをすらすら読めれば超初心者から初心者となります。

「魚おそハれて中流尓」、文章の流れから「さそわれて」があてはまりそうです。しかし「さ」の変体仮名をしらべると、この形に近いものはありません。この形の変体仮名に近いのは「お」です。ですので「さかなおそれて」のまちがいのような気がします。

 一番手前の5人の漁師がのっている小船、艫(艉(とも))の舵まわりも細かく描き、また漁師たちが旗に合わせて、きっと大声の掛け声も、漕いでいる様子が力強い。漁場の海の青の濃淡がきれい。

 

2026年8月12日水曜日

大日本物産圖會その52

P52 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P52_1

(読み)

同 北 湊  ヨリ輸出  之圖

どうきたみなとよりゆしゅつのず


幾(いく)百万(ひやくまん)能蜜柑(ミ可ん)越山畑(者多)よ

  いく    ひゃくまん の   みかん をやま ばた よ


里摘(とり)来(き)多り廷中(ていち う)尓天

り  とり   き たり   ていちゅう にて


大 小  越撰(ゑらミ)天箱(者こ)尓収(おさ)めて

だいしょうを  えらみ て  はこ に  おさ めて


家々(いへ\/)の印(しるし)越うつし北港(本くこう)

   いえいえ の  しるし をうつし   ほっこう


の波戸場(者とバ)へ輹(ふく)淃(そう)し其(その)

の    はとば へ  ふく   そう し  その


箱(者こ)越累積(るいせ起)春ること山

  はこ を   るいせき することやま


能ごとく皆(ミ奈)小舩(ぶ年)尓積(つミ)

のごとく  みな こ  ぶね に  つみ


天地(ち)の嶋(し満)尓掛(可ゝ)る蒸気(じやうき)

て  ち の  しま に  かか る   じょうき


阿るひハ大舩(ふ年)尓積(つミ)て諸(しよ)

あるいはおお ぶね に  つみ て  しょ


國(こく)尓い多゛須

  こく にいだ す

(大意)

(補足)

「同」、紀伊国。

「北湊(きたみなと)」、地元の観光案内のパネル(無許可で使用。ゴメンナサイ)。 

 場所はここの赤印。


  北湊での積み出しは河口なので、大型の蒸気船は入れなくて小舟に小分けにして、右奥の赤札「地ノ嶋」で積み込みます。大型船が直接、港や埠頭に横付けするにはもう少し時代がくだらないとできませんでした。

 それにしても、なんとも莫大な蜜柑の量。詞書きの背景はここでも蜜柑色。

 昨日の「紀伊國密柑山畑之圖」のところでのせるべきでしたが、今日この図を見つけましたので、ここに紹介しておきます。 

 ほとんど同じ構図です。「大日本物産図会」を出版するにあたって、それまでの古今の書籍にあたっているのがわかります。

 

2026年8月11日火曜日

大日本物産圖會その51

P51 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P51_1

(読み)

紀伊 國 密柑 山 畑 之圖

きいのくにみかんやまばたのず


蜜柑(ミ可ん)ハ枝(ゑ多゛)尓刺(者リ)阿りて旧  五月

   みかん は  えだ  に  はり ありてきゅうごがつ


の頃(ころ)尓白 花 越開(ひら)き其 匂(尓本)ひ

の  ころ にしろはなを  ひら きその  にお い


甚(者奈者)多゛香(可ん)者゛しく九月 尓い多

  はなは だ   かん ば しくくがつにいた


里実(ミ)青(あ本)く冬(ふ由)尓いたり天

り  み   あお く  ふゆ にいたりて


生(せい)熟(じゆく)春紀伊の國 の産(さん)盤

  せい   じゅく すきいのくにの  さん は


其(その)気味(きミ)甘美(可んび)なること他(多)尓比(ひ)

  その    きみ    かんび なること  た に  ひ


類(るい)なし実(じつ)尓柑(可ん)中(ち う)の冠(く者ん)多

  るい なし  じつ い  かん   ちゅう の  かん  た


りといふべし各(可く)郡(ぐん)夥(おひ多ゞ)しく

りというべし  かく   ぐん   おびただ しく


産(さん)春゛といヘども有田郡(あり多ご本り)越第 一

  さん ず といえども    ありたごおり をだいいち


等(登う)と春此(この)郡 より輸出(ゆしゆつ)春ること

  とう とす  この ぐんより   ゆしゅつ すること


凡  百  五十  万 箱(者こ)尓至(い多)連りとぞ

およそひゃくごじゅうまん  ばこ に  いた れりとぞ

(大意)

(補足)

 わたしのBlogの一番の目的は変体仮名の読みにありますので、この画の詞書き(背景に蜜柑色の飾りを入れていておしゃれ)は願ってもない練習文章になっています。変体仮名がたくさん使われています。

「山畑」、『やまばた【山畑】山にある畑。山地につくった畑。』

「夥しく」、フリガナは「おひ多ゞ」とあって、「ひ」が確認できません。

 画は緑がいっぱい。その濃淡だけで奥行や山腹の起伏を表現していてうまいなぁ。昔も今も収穫は手作業、大変です💦

 

2026年8月10日月曜日

大日本物産圖會その50

P50 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P50_1

(読み)

同 國 岩 蕈 採 之圖

どうこくいわたけとりのず


石 耳 ハ岩 上  の湿気(シツケ)ある

いわたけはがんじょうの   しっけ ある


所  尓自然 に生  する毛の

ところにしぜんにしょうずるもの


にして皆 山 上  の嶮 所 尓生

にしてみなさんじょうのけんしょにしょう


す形  木耳(ククラケ)尓似て甚  多゛ちひ

ずかたちき  くらげに ににてはなはだ ちい


さく松 の蘚(コケ)の如 し黒 色 尓し

さくまつの  こけ のごとしくろいろにし


て莖 奈し是 を採る尓ハ梯  を

てくきなしこれをとるにははしごを


可け縄 尓す可゛り或  ハ畚 にのり

かけなわにすが りあるいはふごにのり


木の枝 より釣 下 り其 危  き

きのえだよりつりさがりそのあやうき


こと猿 の木つ多ふ如 く奈り

ことさるのきつたうごとくなり

(大意)

(補足)

「同國」、周防国。山口県。

「畚」、『ふご【畚】① 物を運搬するために用いる竹や藁(わら)で編んだかご。もっこ。

② びく。釣った魚を入れるかご。』

 かごに乗っての岩茸採りは命がけ。籠の網目をとおして中が見えています。欲を言えば籠の向こうの崖まで見せてくれれば、ヒヤット感がましたかも。まぁ、籠の下は急流で深青の淵のよう、コワイ。

 地元JAで見かけるのはほとんどがキクラゲ(木耳)で、イワタケ(岩茸)はほとんどみませんねぇ。キクラゲは高価というわけではなくお手頃な価格で、オムレツに入れて食すとなんとなく豪華でおいしい。

 

2026年8月9日日曜日

大日本物産圖會その49

P49 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P49_1

(読み)

周防  國 香 蕈 製 之圖

すおうのくにしいたけせいのず


香 蕈 ハ柯樹の朽 多る材 より自

しいたけはしいのくちたるざいよりし


然 尓生  春゛ると雖  も世に給  するに

ぜんにしょうず るといえどもよにきゅうするに


たら須゛故 尓人 工 を以 て製 する

たらず ゆえにじんこうをもってせいする


事 夥   し則   柯樹檞  櫧 シデ等

ことおびただしすなわちしいかしわかししでとう


の材 を切り斧 を以 て傷 をつけ

のざいをきりおのをもってきずをつけ


捨 置 事 三 年 而  全 身 の朽  腐

すておくことさんねんにしてぜんしんのきゅうふ


を除 き林   中 尓列 へ建 架 おく

をのぞきはやしのなかにならべたてかけおく


時 ハ春  分 に至  て香 蕈 を発

ときはしゅんぶんにいたってしいたけをはっ


生 す是 を収  て後 材 を水 に

せいすこれをおさめてのちざいをみずに


浸 し取 出して木槌 ニて打 こと厳

ひたしとりだしてきづちにてうつことはげし


く再   列  置 時 ハ三 日を経て蕈   発 生 ス

くふたたびならべおくときはみっかをへてしいたけはっせいす

(大意)

(補足)

 目が覚めるほどに明るく発色が素晴らしい。鮮やか。初摺りで保存がよかったのかも。

「周防国」、『すおう すはう 【周防】旧国名の一。山口県南部・東部に相当。防州(ぼうしゆう)。周芳(すは)』

「香蕈」、『こうたけ。しいたけ(椎茸)の異名』とありますが、『こうたけ かう―【香茸・革茸・皮茸】担子菌類ヒダナシタケ目のきのこ。秋,山中の広葉樹林内に群生する。傘は径約15センチメートルにおよび,褐色の漏斗状で表に粗い鱗片,裏に針状突起を密生する。乾くと香りがよく,食用として珍重。近縁種のシシタケと混同される場合がある。カワタケ』ともあって、さてさて。「蕈」は「茜」+「早」。

「柯樹」、椎の木。「檞」、柏の木。「櫧」、樫の木。「シデ」、シデの木。

「捨置」、「置」や「直」のくずし字は頻出です。

 詞書きの巻物の上に赤い札「温室」とあって、この小屋で干し椎茸に加工したのでしょうか。

 現在ではドリルで穴をあけ、菌を埋め込んでまちますが、当時は斧で傷つけていたのですね。木槌で激しくたたいて刺激を与え3日で椎茸が発生するとあります。一説には、ホダ木のある林中に雷が落ちて、その箇所の椎茸が発生も速く大きな椎茸が取れてたことにより、様々な刺激を与えたそうであります。現在は電気刺激も使っているそう。椎茸が栽培される以前は、椎茸は高級品で松茸がたくさん出回っていて普通に食されていたそうです。

 一服する職人さんに火種を移している御婦人、裾を端折ってますがこれでは力仕事はできそうもありません。きっと温室の中で仕事をしている方で職人さんが一服するときに声をかけて火種を持ってきてくれるのでは。