2026年9月3日木曜日

大日本物産圖會その74

P74 東京都立図書館蔵

P74_1

(読み)

播 磨 國 赤穂 塩 濱 之図

はりまのくにあこうしおはまのず


塩(シホ)ハ當 國 赤穂(アカホ)尓て製(セイ)

  しお はとうごく   あこう にて  せい


春るを国 内 第 一 等 の品 と須

するをこくないだいいっとうのしなとす


晴天(セイテン)尓潮(ウシホ)を汲(ク)ミ砂上(スナノウヘ)尓蒔(マキ)

   せいてん に  うしお を  く み   すなのうえ に  まき


砂 の乾(カハ)くを待(マツ)て是 をあつ

すなの  かわ くを  まつ てこれをあつ


免水 に漉(コ)し志たゝる

めみずに  こ ししたたる


志保を平釜(カマ)尓天煮(ニ)

しおをひら がま にて  に


俵(タハラ)尓徒くる又 や起塩(シホ)者奈

  たわら につくるまたやき  しお はな


塩 等 の種々(しゆ\゛/)ありて其 色

しおとうの   しゅじゅ  ありてそのいろ


潔白(ケツハク)奈ること雪 のごとし

   けっぱく なることゆきのごとし

(大意)

(補足)

「国内」、「国」のくずし字は最頻出。筆順は「ふ」とおなじ。

「あつ免」、変体仮名「免」(め)。よくでてきます。

「志たゝる志保」、変体仮名「保」(ほ)、超初心者のとき、読めなくて苦労しました。

「徒くる又や起塩者奈塩等」、変体仮名がいくつもでてきてます。

「種々(しゆ\゛/)」、いままで「しゅしゅ」と濁らずに使ってました。

「潔白」、『けっぱく【潔白】① 心やおこないが正しいこと。うしろぐらいところがないこと。また,そのさま。「清廉(せいれん)―な人」「身の―を明らかにする」② 清くて白いさま。「―ナウツワモノ」〈和英語林集成〉』。②の使い方を知りませんでした。

 時代がいっきに数千年戻ったようで、縄文時代の竪穴住居のよう。縄文人も塩は必須だったのできっとこんなふうにとっていたのかも。

 松を手前に大きくもってくるのは広重一派定番の技法。松の樹皮の色合いが微妙、松葉の緑が開ききった扇子のようです。

 藁葺き小屋から立ち上る煙を透き通して見えるよう濃淡をつけてます。銭湯の壁絵にしてもよさそう、どこかホッとする画。

 

2026年9月2日水曜日

大日本物産圖會その73

P73 東京都立図書館蔵

P73_1

(読み)

播 州  姫 路革 店 之図

ばんしゅうひめじかわてんのず


姫路革(ヒメヂカハ)ハ飾磨(シカマ)郡 姫 路に

    ひめじかわ は   しかま ぐんひめじに


て製 須獣(ケモノ)の皮(カワ)をさらし揉(モミ)

てせいす  けもの の  かわ をさらし  もみ


て種々(しゆ\〃/)の色 尓染(ソメ)め奈し

て   しゅじゅ  のいろに  そめ めなし


草 木 花果鳥 虫 等 の

そうぼくかかとりむしとうの


もやうを写(ウツ)し金 銀 彩

もようを  うつ しきんぎんさい


色  して巾着(キンチヤク)莨入(タバコイ)連

しょくして   きんちゃく    たばこい れ


ドル入 文 庫硯  筥 其 外

どるいれぶんこすずりばこそのほか


種 々 の器物(キブツ)を夥(オビタゞ)しく造(ツク)る

しゅじゅの   きぶつ を  おびただ しく  つく る


美麗(ビレイ)尓して最(イト)堅強(ケンカ ウ)奈り

   びれい にして  いと    けんきょう なり

(大意)

(補足)

「飾磨郡」、かつて兵庫県(播磨国)に存在した郡。

「金銀彩色」、「彩」が「粉」のようにも見えます。この二つをごっちゃにして「采」+「分」となって、まちがえたのでは。

「文庫革」、『明治初期から姫路で親しまれてきた皮革伝統工芸品。真っ白になめした牛革に型押しをし、一筆一筆彩色を施した後,真菰(まこも)という植物の粉をふりかけ古びをつける』。

「最(イト)堅強(ケンカ ウ)」、「最」を「イト」と当て字で読ませる、ここまでくれば笑えます。

 左隅、金槌を持つ二人の職人さんはなめした皮をピンと張って天日干しで固定しているところ。右側には和傘を持つ若者と洋傘を置いて小僧にお茶を振る舞われている丁髷姿のおじさん。店の中は丁髷と断髪して七三分けした使用人がいて、文明開化が進行中。

 店頭看板に「革細工品々ひめじや」。「姫路革却うり」、米相場で使われる言葉に「却(かえ)うり」があるようですけど、よくわかりませんでした。

 ひめじやの暖簾(のれん)が、厚い木綿生地に藍色で染めてその風合いや生地の質感がでていて、いつもうまいもんだなぁと感心してしまいます。その上の瓦の灰色も濃淡をつけて奥行きが、これまたうなります。

 

2026年9月1日火曜日

大日本物産圖會その72

P72 東京都立図書館蔵

P72_1

(読み)

同 西瓜 畑  之圖

どうすいかばたけのず


葛 飾 千葉の両  群 尓て

かつしかちばのりょうぐんにて


お本く畑  尓作 る蔓草(ツルクサ)

おおくはたけにつくる   つるくさ


尓して実の大  さ冬 瓜

にしてみのおおきさとうがん


のことく七 八 月 のころ熟(シユク)

のごとくしちはちがつのごろ  じゅく


し其 そと皮 ハ青 黒 色  ニ

しそのそとかわはあおぐろしょくに


志て中 ハ紅 色 奈りま多

してなかはべにいろなりまた


外 皮 白 青 色 尓して中

そとかわしろあおいろにしてなか


黄奈るものあり水 多 くし

きなるものありみずおおくし


て味 甘 し暑熱(シヨネツ)を消(セ ウ)す

てあじあまし   しょねつ を  しょう す


もの那り

ものなり

(大意)

(補足)

「同」、下総国。『しもうさ しもふさ 【下総】千葉県北部と茨城県の南西部にあたる。しもふさ。しもつふさ』

 スイカ畑。関東ロームの黒色を耕した土ではなく、水はけの良い砂地のように見えます。投げ上げている西瓜が枠をはみだしそう。この大きさだとここまでの高さに放り上げることは難しいというかできません。やったことがあるのでわかります。

 話題に取り上げた品々はなんでも誇張して大きく、または極端な遠近法を用いたりするのが浮世絵・錦絵の定番。でも下に落ちて割れているのは、そんなこともあったでしょうから、こどもは食べようと小走りに、大人はとっくにかじっています。

 畔道の木陰にお稲荷さんがあって、西瓜が供物にされていそう。天秤棒で前後に二個ずつ下げて、これは重たい。西瓜農家は何をするにも力仕事です。それにしても西瓜を見上げる二人の表情がほがらかでうまいなぁ。

 西瓜もすっかり高級品となてしまって、手が出なくなりました。

 

2026年8月31日月曜日

大日本物産圖會その71

P71 東京都立図書館蔵

P71_1

(読み)

同 鰤 磯 場之圖

どうぶりいそばのず


網 磯 近 く奈るとき数 百  人

あみいそちかくなるときすうひゃくにん


あつまりて網 を引 あげ網

あつまりてあみをひきあげあみ


中 尓群(ムラガ)る魚 を打 鎰(カキ)或(アルヒ)盤

なかに  むらが るうおをうち  かき   あるい は


手どり尓して砂上  へ投(ナゲ)あげ

てどりにしてさじょうへ  なげ あげ


腹(ハラワタ)をぬき大 桶(ヲケ)耳以連天

  はらわた をぬきおお  おけ にいれて


塩 づけとなし又 志本を

しおづけとなしまたしおを


腹 中  にミ多し土中  耳

はらぢゅうにみたしどちゅうに


うづミてむしろをふせ

うずみてむしろをふせ


て水 気を去(サ)りふ多ゝび

てみずけを  さ りふたたび


塩 を本どこし薦(コモ)尓包(ツゝミ)て

しおをほどこし  こも に  つつみ て


諸邦(シヨハウ)尓出す

   しょほう にだす

(大意)

(補足)

「同」、丹後国。

「群る」、「君」と「羊」の位置が上下になってます。偏と旁が上下になるのは古文書でよくあります。

「打鎰(カキ)」、「鎰」は『重さの単位。二十両。また、二十四両。かぎ。錠前のかぎ。』の意。ここでは『漁業における「打鉤(うちかぎ)」とは、長い木の柄の先端に鋭い鉄製のカギ(鉤)を取り付けた道具、およびそれを使って魚を捕獲・引き揚げる手法のこと』。

「或(アルヒ)盤」、変体仮名「盤」(は)、ほとんどが変体仮名「者」(は)ですけど、この「盤」もたまにでてきます。

 手づかみで鰤を浜に投げ上げる漁師たちの動作も表情も一人ひとりことなっていていいですねぇ。その上では網を綱引きのように引き上げてますが、やはりみなさん一人としておなじふうに描かれていません。

 題名は鰤でそれが主役のはずですが、やはり漁師たちでした。

 

2026年8月30日日曜日

大日本物産圖會その70

P70 東京都立図書館蔵 

P70_1

(読み)

丹 後 國 鰤(ブリ)追 網 之圖

たんごのくに  ぶり おいあみのず


鰤(ブリ)ハ丹 後 國 与謝(ヨサ)の入 海 に

  ぶり はたんごのくに   よさ のいりうみに


とるものを上  品(ヒン)と須魚 つ年

とるものをじょう  ひん とすうおつね 


尓此(コゝ)尓あそび長  ずるに及(オヨン)で

に  ここ にあそびちょうずるに  およん で


出んとする時 をう可ゞひ追(オヒ)

でんとするときをうかがい  おい


網(アミ)を以 て捕(ト)る網 ハうミの

  あみ をもって  と るあみはうみの


入 口 尓者り数 十 艘 ふ年を

いりぐちにはりすうじっそうふねを


奈らべ舳(フナバタ)をたゝき魚 をおひ

ならべ  ふなばた をたたきうおをおい


いれ尚 魚 のもれざる多め三

いれなおうおのもれざるためみ


重尓あミを可け轆轤(ロクロ)にて

えにあみをかけ   ろくろ にて


ひ起阿けるなり

ひきあげるなり

(大意)

(補足)

「丹後」、『京都府の北部に相当』。現在のこのあたり。

 遠近で轆轤をまわす様子を描く、これも広重の遠近画法の一種でしょう。近接の漁師たちの表情がことなっていて、力の入れ具合がわかるというもの、こちらもう〜んとうなってしまう。網の一方では遠くの浜で轆轤をまわす全体の様子が見えます。

 旭日旗のようなおひさまは朝日か夕日か、まぁ漁のならいで朝日でしょうね。

 鯨漁やこのような大規模な漁では必ず采配を振るう漁師がいて細かな指示を与えていました。

 浜の漁師たちを題材にした絵描きさんはたくさんいましたが、この一枚もいいなぁ。

 

2026年8月29日土曜日

大日本物産圖會その69


P69 東京都立図書館蔵 

P69_1

(読み)

信 濃 國 氷  中  八ツ目鰻  採 ノ圖

しなののくにひょうちゅうやつめうなぎとりのず


八ツ目鰻(ウナギ)ハ信 州  諏訪(スハ)の

やつめ  うなぎ はしんしゅう   すわ の


湖(ウミ)尓採(ト)るものを名 産 とす

  うみ に  と るものをめいさんとす


上 下 の諏訪一 里計  のあひ多゛

かみしものすわいちりばかりのあいだ


湖水(コスヰ)氷  尓て張 つめ多る上

   こすい こおりにてはりつめたるうえ


尓小  家を営(イトナ)ミ漁 夫の休(イコ)

にしょうかを  いとな みぎょふの  いこ


ふ所  となし氷  上  耳薪(タキゞ)

うところとなしひょうじょうに  たきぎ


を積(ツミ)焚(タキ)て所  々  尓穴 を穿(ウガ)ち

を  つみ   たき てところどころにあなを  うが ち


延縄(ハヘナハ)尓共餌(トモエ)を付 て釣取(ツリトル)こと夥(オビタゞ)シ

   はえなわ に   ともえ をつけて   つりとる こと  おびただ し


又手(テ)操(久り)網(アミ)尓て石班魚(アカハラ)を採(トル)事

また て   くり   あみ にて    あかはら を  とる こと


お本し

おおし


(大意)

(補足)

「石班魚(アカハラ)」、『あかはら③〔繁殖期に腹部が赤くなることから〕ウグイの異名』。

 八ツ目鰻は母が昔、目に効くからと干からびた黒っぽい棒状のものを食べてましたが、鰻とは名前ばかりで、まったくうまくもなく、はたして目にもよいのかどうかも疑わしい。

 諏訪湖は御神渡りが有名で、中央高速で通りかかったとき偶然に目にしたことがあり、なるほど湖上を盛り上がった氷が裂け目のように走っていてギシギシと音が聞こえるような気もしました。

 画の右側では焚き火が激しく燃え上がっていますが、この程度の火ではあまり暖かくなりそうもありません。それにしても漁をするから体を動かしているとはいえ、皆、薄着で素手、動いていないと凍え死んでしまうとおもいます。網を氷の下に通すだけでも一仕事。


2026年8月28日金曜日

大日本物産圖會その68

P68 東京都立図書館蔵

P68_1

(読み)

信 州  蕎麦切 製 造 之図

しんしゅうそばきりせいぞうのず


蕎麦(ソハ)ハ諸國尓培養(バイヤウ)すといへ

   そば はしょこくに ばいよう すといえ


ども當 国 更 科 郡 を名産(メイサン)

どもとうごくさらしなぐんを   めいさん


とす葉ハ三稜(ミカド)にして薄(ウス)く

とすはは   みかど にして  うす く


小白 花 をひらき三稜 の実

こしろはなをひらきみかどのみ


をむすぶ初 秋  尓種 を下 し

をむすぶしょしゅうにたねをくだし


冬 尓い多りて刈 とり磑(カラウス)尓て

ふゆにいたりてかりとり  からうす にて


ひ起殻(カラ)を去り絹(キヌ)ふるひ尓

ひき  から をさり  きぬ ふるいに


可けて末 粉 をなし湯に

かけてすえこなをなしゆに


て凌(コネ)ひら目にのへ天細

て  こね ひらめにのべてほそ


奈可゛くきり熻(ユカキ)天食  用 に

なが くきり  ゆがき てしょくように


供  須

きょうす

(大意)

(補足)

「三稜」、『さんりょう【三稜】① かどが三つあること。また,三つのかど。三角』。蕎麦の葉はハート型です。実は三角錐の底辺同士をくっつけたような形で、めちゃくちゃ硬い。

「からうす」、『からうす【唐臼・碓】① 臼を地中に埋め,柄の端を足で踏み,杵(きね)を上下させて穀類を搗(つ)く仕掛けのもの。踏み臼。かるうす』

「凌(こね)」、『しの・ぐ【凌ぐ】』。この漢字の意味はどうみても、粉をこねるという意味はなさそうにおもうのですが。

「熻」、『ゆがき(かわゆがき / かゆがき)」は、主にお粥(おかゆ)や雑炊などの、水分が多くて温かい食べ物を指す言葉』。「火」+「合」+「羽」。はじめてみる漢字です。

 絵の構図が、庭の奥と蕎麦をゆがいている二方向の2点透視図のようになっていて、絵師はその技巧をまだ修得イマイチの感じ。そば切りのところの灯り蝋燭の柱はふつうの角材、蕎麦を朱塗り漆器に盛っているところのは枯れた黄色の竹で、ちょっとおしゃれ。

 で、そのふたつの作業場をよ〜く見てみると、蕎麦をのばしている職人さんの影がうっすらとのし板に、そして蕎麦盛りのふたりの娘さんにも、ひとつは畳に、もうひとつは土壁に、これまたうっすらとこちらはなにげに見事であります。子どもをおんぶした御婦人はそば粉をふるいにかけています。

 手ぬぐいを掛けている青竹を吊るしてある(詞書きの巻物にかくれてしまってますが左の端にかけ紐がみえてる)ところや、蕎麦猪口の入れ物である桐の箱を置いたりと、なかなか手がこんで細かい。

 いやいやこんなところでひとすすりしてみたいものです。