2026年9月27日日曜日

大日本物産圖會その98

P98 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P98_1

(読み)

羽後 國 養 蠶 之圖七

うごのくにようさんのずなな


蚕(カヒコ)春で尓繭(マユ)と奈り五六 日 目

  かいこ すでに  まゆ となりごろくにちめ


与りハ糸 を取るなり是 も国 々

よりはいとをとるなりこれもくにぐに


尓与りて流  義多 し當 国 ニてハ糸 取

によりてりゅうぎおおしとうごくにてはいととり


女  の左  の方 へ竈(カマド)を置き鍋(ナベ)の

おんなのひだりのほうへ  かまど をおき  なべ の


湯沸騰ると起ま由一 升  を四

ゆたぎるときまゆいっしょうをし


五度本ど尓鍋 へ入連加減(可个゛ん)与く

ごどほどになべへいれ   かげ ん よく


煮(ニ)多るとき箸 を以  可き交(マゼ)

  に たるときはしをもってかき  まぜ


糸 口 をとり奈べの縁(ヘリ)尓馬

いとぐちをとりなべの  へり にうま


の尾或  ハ女  の髪(カミ)の毛をちひ

のおあるいはおんなの  かみ のけをちい


さ起輪(ワ)尓し之 を結(ユヒ)付 此 穴 尓

さき  わ にしこれを  ゆい つけこのあなに


糸 を通 し篗(ワク)尓巻(マキ)てとる也

いとをとおし  わく に  まき てとるなり

(大意)

略

(補足)

「羽後國」、秋田県の大部分と山形県の北部の一部とに相当。

「篗」、『わく【籰・篗】〔「枠(わく)」と同源〕紡いだ糸を巻き取る道具。二本または,四本の木を対にして横木で支え,中央に軸を設けて回転するようにしたもの。おだまき』。

 養蠶之圖が七になって、物産図会の品で同じものでは一番の紹介数かもしれません。明治初年以降生糸の輸出が爆発的に増加してゆくまさにその時代でありました。

 2台の篗(ワク)で巻き取っている御婦人ふたり、ひとりは娘さんぽく、姉さんかぶりしているもうひとりはチト色っぽい。手回している部分に歯車が二枚見えています。

 窯焚きしている男の背中の「萬」は版元の東京日本橋錦栄堂萬屋大倉孫兵衛の意匠。胸元が開いた長煙管をすっている女となにやら色っぽいはなしでもしている様子。

 柱に金具をつけて巻き取った生糸を引っ掛け、全体を整えている男はザンバラ髪、足元には大きい和鋏とヘチマのような形のものがあります、なんでしょうこれ?

 馬の鞍が大きくて丈夫そうなのは、右のほうにある生糸がつまった荷物をこれからのせようとしているところのよう。「この大きな荷物ふたつ運んでください、これくらい大丈夫だよね?」「へい、旦那様。うちの馬はそれくらいなんともありゃしませんや、まかしておくんなさい」。

 

2026年9月26日土曜日

大日本物産圖會その97

P97 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P97_1

(読み)

越 前  國 奉 書 紙製 之圖

えちぜんのくにほうしょしせいのず


紙 ハ當 國 大 瀧(タキ)。新在家(しんさいか)。定(サタ)

かみはとうごくおお  たき      しんさいか    さだ 


友(トモ)。不老(フロウ)の諸 村 与り産

  とも     ふろう のしょそんよりさん


春゛楮(コホズ)を蒸(ムシ)して皮(カワ)を去

ず   こほず を  むし して  かわ をさ


里水 尓さらし打 こと数

りみずにさらしうつことすう


回(クハ)にして水 尓和し簀

  かい にしてみずにわしす


の子尓て漉(ス)き場板 尓張 て

のこにて  す きばいたにはりて


乾(ホシ)上 る也 大 廣 五寸 廣 大

  ほし あげるなりおおひろごすんひろだい


中  小  奉 書 色 奉 書 等

ちゅうしょうほうしょいろほうしょとう


の諸 品 あり

のしょしなあり

(大意)

略

(補足)

「越前國」、ほぼ福井県中・北部に相当。古名,こしのみちのくち。

 ここにあげられた村名は福井県越前市(旧今立町)にある「越前和紙の里・五箇(ごか)地区(大瀧(おおたき)、新在家(しんざいけ)、定友(さだとも)、不老(おいず))」で、もうひとつは岩本(いわもと)。こんな案内板がありました。

「奉書紙」、『ほうしょがみ【奉書紙】〔多く奉書に用いたことから〕上質の楮(こうぞ)で漉(す)いた,純白でしわのないきめの美しい和紙。杉原紙に似るが,やや厚手で簾目がある。越前奉書が有名。ほうしょ』。奉書は『① 天皇・将軍などの意向や決定を下知する文書。院宣・御教書の類』とあって、時代劇で偉いお侍さんが「上意である」と伝えながら白い封筒みたいのを突き出す場面がよくありますが、あの白いのが奉書です。

 詞書きのとおり、楮苧の刈り取りから出荷まですべての工程を一望できる物産図会の手法です。ひとつひとつの工程を丁寧に見ていくとおもしろいですね。

 和紙に関する史料に「紙漉重宝記(かみすきちようほうき)」があります。わたしのBlogにも掲載していますので暇つぶしにご覧ください。

 埼玉県小川町が家から約1時間のところにあり、小川和紙or細川紙が有名です。昨年訪れたときに、便箋の冊子になっている和紙を購入しました。きれいでなめらか、筆を持ってササッと書けば気持ちそさそう♫

 

2026年9月25日金曜日

大日本物産圖會その96

P96 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P96_1

(読み)

越 前  國 海膽取 之図

えちぜんのくにうにとりのず


海膽(ウニ)は當 國 并  尓薩摩(サツマ)尓

   うに はとうごくならびに   さつま に


て取るものを名 品 と須その

てとるものをめいひんとすその


肉(ニク)微少(スコシ)なる毛のに天膏(アブラ)

  にく    すこし なるものにて  あぶら


阿り刺(ハリ)多(オホ)くして栗(クリ)の毬(イカ)

あり  はり   おお くして  くり の  いが


尓似(ニ)たり漁人(リヤウシ)干泻(ヒカタ)の

に  に たり   りょうし    ひがた の


岩 間尓もとめ肉 を採(ト)り

いわまにもとめにくを  と り


桶 尓収(オサ)め塩(シホ)に和(クワ)し天

おけに  おさ め  しお に  わ  して


諸 國 耳出須楚の味

しょこくにだすそのあじ


甚  多佳奈り

はなはだかなり

(大意)

略

(補足)

 潮がひき磯があらわれ、その手前に湿った浜がひろがっています。この浜の質感の描写がうまい。両手ですくって湿った砂の感触がつたわってきそうです。

 わたしが若かりし頃さんざんとりまくったウニはその地域ではカゼとよんでいました。カゼがとれるのは詞書きにもあるように岩間つまり磯です。浜にはいません。潮がひかずとも磯で2m前後ももぐればいくらでもとれました。道具は大工道具で使うかすがいです。それでカゼを岩からはがします。そしてバケツに何杯もとったあとは、カゼの口に火箸を二本差し込んで割って実をスプーンですくい取り、水ですすいでゴミをとります。白いご飯にたっぷりウニをのせてわさび醤油をかけてウニ丼のできあがり。うまかったぁ。

 浜や磯に打ち寄せる波の色がきれい。沖にいくにしたがって波の色の濃淡が上手です。


 

2026年9月24日木曜日

大日本物産圖會その95

P95 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P95_1

(読み)

加賀 國 菅 笠 ヲ造 ル圖

かがのくにすげがさをつくるず


菅笠(スゲガサ)ハ石 川 郡 金 沢 ニて薹(カサスケ)

   すげがさ はいしかわぐんかなざわにて  かさすけ


を以 て造(ツク)り諸 國 へ出すこと夥

をもって  つく りしょこくへだすことおびただし


頭(カシラ)尓被(カブ)りて日 光 を遮(サヘギ)り雨 雪

  かしら に  かぶ りてにっこうを  さえぎ りあめゆき


を防(フセ)き民用(ミンヨウ)を奈すこと西 洋

を  ふせ ぎ   みんよう をなすことせいよう


仐(カサ)の右 尓出(イヅ)る薹   ハ水 田

  かさ のみぎに  いず るかさすけはすいでん


尓植(ウエ)る草尓て 茅(チカヤ)尓似(ニ)

に  うえ るくさにて  ちがや に  に


て色 青 く長 さ四五尺  者゛

ていろあおくながさしごしゃくば


可里那り之 を刈干(カリホシ)て白

かりなりこれを   かりほし てしろ


くさらし竹骨(ホネ)尓縫(ヌヒ)付 て其

くさらしたけ ぼね に  ぬい つけてその


形 ち皿 のことく或  ハ鉢 の如

かたちさらのごとくあるいははちのごと


く造 る也 多 く女  の職業(シヨクゲ ウ)と須

くつくるなりおおくおんなの   しょくぎょう とす

(大意)

略

(補足)

「薹(カサスケ)」、『かさすげ【笠菅】カヤツリグサ科の多年草。水辺や湿地に群生する。高さ約1メートル。茎は三角柱状。葉は広線形で長く,ざらつく。晩春,雄花穂を頂生し,その下に数本の雌花穂を斜出する。葉で蓑(みの)・笠・縄などを作る。スゲ』。この漢字「薹」は『とう たう【薹】〔形が塔に似ているところからいうか〕アブラナ・フキなどの花茎』です。「艹」+「吉」+「冖」+「至」。

「出すこと」「奈すこと」、この「こと」は合字。「より」の合字のフォント「ゟ」はありますが「こと」はまだなさそうです。

 紫の暖簾が美しい。木版なのに布生地そのままの肌さわり感(テキスチャー)があります。白く抜いてある文字は「菅笠志奈\/(すげがさしなじな)」。上部の中央は「𠆢」+「万」、これは昨日の画の右枠外に「出版人大倉孫兵衛」、版元の萬屋の意匠。その左側は版元の「万」があることから予想すると「者ん元(はんもと)」かな?

 暖簾の上の瓦屋根、左側から右に流れるように、瓦の凹みの影というか波が遠近感がでるように少なくなるようにしていて、手がこんでいます。うまいね♫

 店先にはいつもより派手に文明開化開眼男の登場。和装ですが身につけているものは洋傘・鞄・靴、それに帽子姿です。

 帳場の奥は蔵に直結です。

 

2026年9月23日水曜日

大日本物産圖會その94

P94 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P94_1

(読み)

加州  熊 并  ニ膽ヲ取ル図

かしゅうくまならびにいをとるず


熊 ハ多 く大樹(タイボク)の洞中(ドウチウ)尓住(スム)

くまはおおく   たいぼく の   どうちゅうに  すむ


ものなり猟師(カリウド)枝 の付 多る

ものなり   かりうど えだのつきたる


木を持 て窠穴(ソウケツ)を突探(サグ)れ者゛

きをもって   そうけつ を   さぐ れば


熊 木を引 入 んとして両  手を掛

くまきをひきいれんとしてりょうてをかけ


て引く猟 師 斧(ヲノ)を以 て熊 の

てひくかりうど  おの をもってくまの


手を断切(キル)也 或  ハ鎗(ヤリ)尓てつき

てを   きる なりあるいは  やり にてつき


皮(カハ)を解剖(サキテ)して膽(ヰ)を登る

  かわ を   さきて して  い をとる


春奈ハち當 国 を上  品 とす

すなわちとうこくをじょうひんとす


黒様(クロデ)豆粉様(マメロデ)琥珀様(コハクデ)の三

   くろて     まめろで     こはくで のさん


種(シユ)あり就中(ナカンヅク)琥珀様 を上

  しゅ あり   なかんずく こはくでをじょう


等 と須

とうとす

(大意)

略

(補足)

「加州」、『かが 【加賀】① 旧国名の一。石川県南部に相当。加州。賀州』

「膽」、『たん 【胆(膽) 】① 内臓器官の一。「胆汁」「胆石」「胆囊(たんのう)」「臥薪嘗胆(がしんしようたん)」』。

「くまのい【熊の胆】」① 胆汁を含んだままの熊の胆囊(たんのう)を乾燥させたもの。苦みが強い。利胆・消炎・鎮痙・強壮などの目的で用いる。熊胆(ゆうたん)。

 この画をみて一番最初に目がいくのが熊の表情と赤い舌、そして振り上げられた三本の青光りする斧。鉄砲は急所をはずすとかえって熊が凶暴になって襲ってくるので難しい。それよりも確実な斧なのだろうけど、大同小異、胆がすわってないとできません。

 鈴木牧之(すずき ぼくし)という人がいて、江戸時代後期に越後国塩沢(現・新潟県南魚沼市)で活躍した商人・随筆家。豪雪地帯の実態を描いた名著『北越雪譜』の作者です。その中に雪の様々な風景を描いているのですが、相手は白、どうやって表現するかが大変でした。

 ここでも雪に陰影をつけたり黒い細い線で凹凸や稜線を描いていて、上手です。こんな雪深いところでも右隅に山奥の風景の定番である小川を付け足すことを忘れていません。常緑樹の松の緑がはえています。


 

2026年9月22日火曜日

大日本物産圖會その93

P93 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P93_1

(読み)

同 國 津軽 昆 布採 之圖

どうこくつがるこんぶとりのず


昆布(コンブ)ハ當 國 北 郡 今別(イマベツ)及

   こんぶ はとうごくきたぐん   いまべつ およ


び津輕(ツガル)辺  より出づ海 中  の

び   つがる あたりよりいずかいちゅうの


岩 間の石 尓着(ツイ)て生  須゛その

いわまのいしに  つい てしょうず その


幅(ハゞ)一 尺  尓春ぎ長 サ数丈(スチヤウ)尓

  はば いっしゃくにすぎながさ   すじょう に


い多る淡黄(ウスキ)色 尓してその

いたる   うすき いろにしてその


邊(ヘ)り青 黒 なり古連を

  へ りあおぐろなりこれを


刈(カ)り干して他邦(タハウ)尓出須

  か りほして   たほう にだす


俗 尓煮(ニ)て食  春れバ面(カホ)に

ぞくに  に てしょくすれば  かお に


瘡(カサ)を生  ぜ須゛といふ是 古昔(ムカシ)

  かさ をしょうぜず というこれ   むかし


の和方 奈り

のわほうなり

(大意)

略

(補足)

「同國」、陸奥国。

「一尺尓春ぎ」、『すぎ【過ぎ】① 時間・年齢などを表す語の下に付いて,その時間や年齢をすでにすぎていることを表す。「七時―に帰る」「四〇―の女性」』。現在では長さに使うことはあまりなさそうです。

「和方」、『わほう ―はう【和方】漢方に対して,日本古来の医方。日本古来の医術』

 この版では「画工」、「出版人」、「御届」がはっきり記されています。

 柄の長い鉤竿(かぎさお)をもつ漁師が着ているのはアイヌ人が着用しているガウンのように見えます。ごく普通に交流があったものとおもわれます。

 昆布漁をする所は沖からすぐ峻険な山になるところが漁場なので、浜は満潮になればなくなってしまうくらいのところ多い。ここでもわずかばかりの浜に干していますし屋根の向こうに物干し竿にぶら下げています。

 磯場に入って舟を操るのは命がけで、波にあおられて和船を岩にぶつければ砕けて沈没です。


 

2026年9月21日月曜日

大日本物産圖會その92

P92 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P92_1

(読み)

陸奥 國 真錦 製 之圖

むつのくにまわたせいのず


真綿(マワタ)ハ絲(イト)尓取 可多き悪(ア)

   まわた は  いと にとりがたき  あ


しき繭(マユ)を撰(エリ)出しこれを

しき  まゆ を  えり だしこれを


上 灰汁(アク)尓てよく煮(ニ)夫 より

うわ   あく にてよく  に それより


水 尓漬(ツケ)さらして灰汁を出

みずに  つけ さらしてあくをだ


し指(ユビ)尓てひき延 し引 盤(バン)

し  ゆび にてひきのばしひき  ばん


尓加ける也 國 々 流義(リ ウギ)多 し

にかけるなりくにぐに   りゅうぎ おおし


夫 より清水 尓て引 のバし干

それよりしみずにてひきのばしほし


立 る処  ありまた綿 尓て水 尓漬

たてるところありまたわたにてみずにつけ


さら須処  もあり後 ニむしろ或

さらすところもありのちにむしろあるい


ハ縄(ナワ)尓つりて干 立 る奈り

は  なわ につりてほしたてるなり

(大意)

略

(補足)

「真綿」、『まわた【真綿】糸にできない屑繭(くずまゆ)を引き伸ばし乾燥した綿。軽くて強く,暖かい。引き綿・布団綿としたり,紬糸(つむぎいと)の原料とする。絹綿。』

 赤いタスキに手ぬぐいの頬かむりは働く婦人の定番。真綿ののばし方がいろいろ描かれていておもしろい。現在でも真綿をつめる蒲団屋さんでは画のように杭棒に引っ掛けて四角くのばして形を整えているようです。