2026年7月12日日曜日

大日本物産圖會その21

P21 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P21_1

(読み)

甲斐 國 白 柿 製 之圖

かいのくにころがきせいのず


柿(カキ)は當 國 処 々 より産(サン)須゛喬(キヤウ)

  かき はとうごくしょしょより  さん す   きょう


木 にして其 実(ミ)大 奈り四五月

ぼくにしてその  み だいなりしごがつ


頃(ゴロ)花 開(ヒラ)き九月 の頃 実熟(ジユク)

  ごろ はな  ひら きくがつのころみ  じゅく


す是 を摘(ツミ)皮(カハ)を剥(ハ)ぎてその

すこれを  つみ   かわ を  は ぎてその


蔕(ヘタ)をのこし縄(ナハ)尓者さミ

  へた をのこし  なわ にはさみ


て数 条  につらね乾(カハ)き天

てすうじょうにつらね  かわ きて


後 匣(ハコ)の中 尓列(ナラ)へ蓋(フタ)を掩(オホ)

のち  はこ のなかに  なら べ  ふた を  おお


ひ久 しきを経(ヘ)て白霜(シモ)を

いひさしきを  へ て   しも を


生  ず則  ち白柿(コロカキ)と称  須味(アヂ)

しょうずすなわち   ころかき としょうす  あじ


甘(アマ)くして甚  ダ佳(カ)奈り

  あま くしてはなはだ  か なり

(大意)

(補足)

「喬」、『きょう けう 【喬】たかくそびえる。「喬松」「喬木」』

「九月の頃実熟(ジユク)す」まさにこの画の時期で、庭のかたすみに赤い菊の花が咲いています。

 皮をむいた柿がたくさん籠に入っていて、その柿の色が、驚くくらい実際のむいた柿の色にそっくりで手にとって食べてしまいそう。

 大きな柿の木とたくさんの実を大胆に手前に配置して、これはもちろん錦絵のまね、でもきれい。その向こうでは部屋の中でなにやら歓談する男二人、また顔が半分隠れて男の子がいて、日常の中での柿むき作業という雰囲気をかもしだしています。

 茅葺きの濃淡といい、板壁の色むらの具合といい、上手だなぁ。

 

2026年7月11日土曜日

大日本物産圖會その20

P20 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P20_1

(読み)

駿 河半 紙漉 場ノ圖

するがはんしすきばのず


紙ハ菴原(イホハラ)郡 各所(カクシヨ)より産(サン)

かみは  いほはら ぐん   かくしょ より  さん


ず結香(ミツマタ)を以 て製 すといへ

ず   みつまた をもってせいすといえ


ども其 製 法 尓至 りてハ

どもそのせいほうにいたりては


諸 紙るゐと同 じ半 紙半

しょしるいとおなじはんしはん


切 薄 葉駿小(ンコ)のりい連

せつうすば   んこ のりいれ


其 外 数 種 の紙 を製 して

そのほかすうしゅのかみをせいして


全 國 尓輸出(ユウシユツ)す色 赤 く

ぜんこくに   ゆ しゅつ すいろあかく


して弱(ヨワ)しと雖  も價(アタヘ)廉(レン)奈る

して  よわ しといえども  あたい   れん なる


故 尓大  尓便用(ヘンヨウ)を奈せり

ゆえにおおいに   べんよう をなせり

(大意)

(補足)

「菴原(イホハラ)郡」、『1879年(明治12年)に発足した庵原郡(いはらぐん。いほはらのこおり)は、平成の大合併やその後の編入によって行政区画としては消滅した。現在の大半は静岡市清水区(新清水駅付近以南を除く巴川以北)、および静岡市葵区の一部(瀬名、瀬名川、長尾、平山など)に統合されている』。

「半紙・半切・薄葉・駿小(ンコ)のりい連」、みな紙の種類。

「價(アタヘ)廉(レン)奈る故尓大尓便用(ヘンヨウ)を奈せり」、大のときのトイレットペーパーとして用いたとも読めますが。まさかねっ。

 額縁からはみ出す富士山はやはり日本一‼️青空に紅葉でときは秋。紙を干すには絶好の日和。左の作業場では紙製造の一連の流れが示されています。ちなみに和紙の製紙に関しては「紙漉重宝記(かみすきちょうほうき)」に詳しい。

 干してある半紙の多さよりもそれらの干し板の枚数の多さに圧倒されます。日に当てなければなりませんから、板はいやおうなく反ってしまうはずで、その対策はどうしていたのでしょうか?

 

2026年7月10日金曜日

大日本物産圖會その19

P19 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P19_1

(読み)

駿 河 国 竹 細 工製 ノ図

するがのくにたけざいくせいのず


安部郡 静岡(シヅヲカ)の産 尓して

あべぐん   しずおか のさんにして


種々(シユ\/)の竹 を以 て製造(セイザウ)す

   しゅしゅ のたけをもって   せいぞう す


文房具(ブンハウク)酒具(シユグ)菓子(クワシ)者゛ち

    ぶんぼうぐ    しゅぐ    か し ば ち


茶器(チヤキ)及 び諸般(シヨハン)の器物(キフツ)笠(カサ)

   ちゃき および   しょはん の   きぶつ   かさ


の類(ルヰ)種 々 の細 工あり皆(ミナ)

の  るい しゅしゅのさいくあり  みな


精巧(セイコウ)尓して世尓称(シヨウ)せら

   せいこう にしてよに  しょう せら


るゝ故 尓駿 河細工(サイク)と称

るるゆえにするが   さいく としょう


せり

せり

(大意)

(補足)

 白い犬にのっている子どもの後ろには大きな車輪が見えていて、これは大八車ではなく人力車。その子どものとなりのお子様はお金持ちの家なのか靴をはいて手持ちの荷物はどことなく舶来風。店先をながめる旅人らしき方は洋傘をさしうしろに荷物持ちを従え、店の中ではそろばん片手に商談する番頭らしき人はザンギリ頭。どこもかしこも文明開化です。

 暖簾の「竹」の字は、竹の節をいれてこった意匠にしています。「するかや」さんの看板「細工志奈\/」(さいくしなじな)の上が読めません。「細」の上は「駿」or 「筋」?


 

2026年7月9日木曜日

大日本物産圖會その18


P18 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P18_1

(読み)

尾州  名古屋扇  折(ヲリ)の図

おしゅうなごやおおぎ  おり のず


扇  ハ愛知(アイチ)郡 名古屋耳

おおぎは   あいち ぐんなごやに


て多 く出須由ゑに名古

ておおくだすゆえになご


屋扇  の名あり支那(ナ)製

やおおぎのなありし  な せい


尓倣(ナラヒ)て薄(ウス)竹 骨 尓て造(ツク)り

に  ならい て  うす だけほねにて  つく り


紙 絹(キヌ)を張(ハ)る本 骨 ハすゝ

かみ  きぬ を  は るほんぼねはすす


竹 朱 丹 黒 丹 象牙(ソウゲ)の

だけしゅたんこくたん   ぞうげ の


類 尓て製(セイ)し塗骨(ヌリホネ)ま起ゑ

るいにて  せい し   にりぼね まきえ


金 銀 のぞうがんを以連

きんぎんのぞうがんをいれ


鳥 虫 山 水 など雕刻(チ ウコク)して

とりむしさんすいなど   ちょうこく して


最 美なり

さいびなり

(大意)

(補足)

「尾州」、尾張国。

「朱丹黒丹」、紫檀、黒檀のこと。

 たて縞に透かし柄模様の着物は涼しそう。庭の菖蒲を花瓶にさしてる少年はお姉さんたちに頼まれたのかも。鮮やかな黄色の板戸はよくみると茅(かや)のようなもののよう。その中央を抜き、また障子の向こうに池がみえるようにしていて、遠近法も使って奥行きと広がりをあたえています。そして赤い扇はむこうが透けて見えるようにしているという凝りよう。

 

2026年7月8日水曜日

大日本物産圖會その17


P17 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P17_1

(読み)

尾張  國 有 松 纐 り之図

おわりのくにありまつしぼりのず


鳴(ナル)海纐(シ本)りと称(シヤウ)して愛(アイ)知郡

  なる み  しぼ りと  しょう して  あい ちぐん


有 松 尓て多 く産 す織(オリ)物

ありまつにておおくさんす  おり もの


を鹿(カ)の子立 しぼ八重(ヘ)た

を  か のこたてしぼや  え た


すき阿るひハ雲 竜  竹 尓虎

すきあるいはうんりゅうたけにとら


の類(ルイ)種(シユ)々 画もやうを纐纈(こうけつ)

の  るい   しゅ しゅえもようを   こうけつ


藍(アヰ)紅 とうにて染 あげ

  あい べにとうにてそめあげ


たるもの尓し天最(モツトモ)美也

たるものにして  もっとも びなり


綿 布を以 て染 たる物 を

めんぷをもってそめたるものを


浴衣(ユカタ)単衣(ヒトヘキヌ)ホ(トウ)にもちひ

   ゆかた    ひとえきぬ   とう にもちい


ま多絹(ケン)布尓て志ぼり

また  けん ぷにてしぼり


たるもの阿り

たるものあり


(大意)

(補足)

「鳴海纐」、『なるみしぼり【鳴海絞】鳴海付近に産する木綿の絞り染め。有松絞(ありまつしぼり)。鳴海』。「纐」のフリガナ、「シ」の次が読みは「ホ」or「ボ」なのですが、その変体仮名がよくわかりません。「ヲ」とも読めますけど、さて?

 ここの詞書き(ことばがき)にもあるように有名だったようです。葛飾北斎44才頃の作品「東海道 彩色摺 五拾三次」の「奈るミ」にもありました。 

 御婦人二人の背景にある浴衣の単衣、藍色と薄藍色に白の鶴か鳳凰のよう、このまますぐにヒョイと着ることができそうです。

 詞書き背景の色柄が変わりました。

 

2026年7月7日火曜日

大日本物産圖會その16


P16 国立国会図書館デジタルコレクション蔵

P16_1

(読み)

同 國 五色 砂 ニテ盆 石 飾

どうこくごしきすなにてぼんせきかざり


當 國 鳥羽尓産(サン)する砂(スナ)ハ其

とうごくとばに  さん する  すな はその


色 数種(スシユ)あり青 黄赤 白 黒

いろ   すしゅ ありあおきあかしろくろ


その他(ホカ)数 色  を製 す故 尓此

その  ほか すうしょくをせいすゆえにこの


砂 を以 て盆石(ホンセキ)盆 画を畫す

すなをもって   ぼんせき ぼんがをがす


る則   黒 塗(ヌリ)の盆 中  耳諸

るすなわちくろ  ぬり のぼんちゅうにしょ


國 々 名 所 花鳥  山 水 好 ミの

こくくにめいしょかちょうさんすいこのみの


如 く色 砂 を以 て彩色(サイシキ)し

ごとくいろすなをもって   さいしき し


床(トコ)の間乃  置 物 額面(ガクメン)或  ハ

  とこ のまおよびおきもの   がくめん あるいは


紙上  尓砂 を止 て掛 物 ホ ニ奈須

しじょうにすなをとめてかけものなどになす

(大意)

(補足)

「同國」、志摩国。

 隣の部屋から庭がのぞめます。石灯籠や築山もあって手入れされ、板塀の上にはどろぼう返しがあり、防犯体制もしっかりです。盆石楽しむ御婦人三人の着物もきれいです。

 

2026年7月6日月曜日

大日本物産圖會その15

P15 国立国会図書館デジタルコレクション蔵 

P15_1

(読み)

志摩 國 荒 布刈 之圖

しまのくにあらめかりのず


荒布(アラメ)ハ其 形 ち昆布(コンブ)に似て

   あらめ はそのかたち   こんぶ ににて


薄(ウク)く柔   尓して黒 色 なり

  うす くやわらかにしてくろいろなり


當 國 鳥羽の海 底(テイ)其 他 所  々

とうこくとばのかい  てい そのほかところどころ


尓生  須゛土人鎌(カマ)を以 て海 底 尓

にしょうず どじん かま をもってかいていに


沈(シツ)ミ岩 尓付 多る荒 布乃

  しず みいわにつきたるあらめの


根を刈(カリ)て浮(ウカ)むあらめ浪(ナミ)の

ねを  かり て  うか むあらめ  なみ の


為 尓自然(シゼン)と陸(ヲカ)地へうち

ために   しぜん と  おか ちへうち


あげたるを取 まとめ乾(カハカ)

あげたるをとりまとめ  かわか


して諸 方 尓い多゛須

してしょほうにいだ す

(大意)

(補足)

 磯場に打ち寄せる波の様子がねんいりに描かれ、また岩場にからみ砕け散るさまも見事に彩色されています。右側に二人、海底の荒布をとる人もいます。

 昆布はツルツルですが、荒布はそれにくらべるとシワシワで厚みもあり、かみごたえもあってうまいです。

 摺師は濃淡だけで、磯場の潮風や空気感を表現し奥行きを与えています。うまいもんですねぇ。