2026年6月13日土曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その14

P26P27 国文学研究資料館蔵

(読み)

鯨  吹 レ氣 図

くしらふく きをつ

くじらきをふくず


鯨  潮 を吹 をけを吹 と云 也 是 を遠 見より見つけて相 図の

くしらし本 ふく             とをみ      あいづ

くじらしおをふくをけをふくというなりこれをとおみよりみつけてあいずの


志らせ阿れバ鯨  つき舟 を出してもり尓て突 とむる也 もりに

                     つき

しらせあればくじらつきふねをだしてもりにてつきとむるなりもりに


両  刃阿り一 方 ハ短  く一 方 ハ長 し上 へむけて奈ぐる時

里やう者                            とき

りょうばありいっぽうはみじかくいっぽうはながしうえへむけてなぐるとき


下 へ於ちさ満尓鯨  尓阿多る

したへおちざまにくじらにあたる


也 鯨  驚  きて者袮まハる尓従  ひてもりハ深 く者いると也

     おとろ        し多可     ふ可

なりくじらおどろきてはねまわるにしたがいてもりはふかくはいるとなり


鯨  舟 十  六 艘 頭  舟

          そう可しらふね

くじらふねじゅうろくそうかしらふね


二そう先 尓立 也 舟 一 艘 尓人 数 十  四人 づゝ頭  を於き

にそうさきにたつなりふねいっそうににんずうじゅうよにんずつかしらをおき


やいと云 もりつきを者多゛しと云

やいというもりつきをはだ しという


舟 一 そう尓ともろ一 丁  王きろ一 丁  其 外 一 方 に

ふねいっそうにともろいっちょうわきろいっちょうそのほかいっぽうに


三 丁  徒゛ゝ以上  八 丁  一 丁  尓二 人可ゝり也

さんちょうず ついじょうはっちょういっちょうにふたりがかりなり

(大意)

(補足)

 表題の「吹」と「氣」の間にある「レ」はレ点。

鯨のお目々がかわいらしい。潮吹きの画は見事!そのまま植木鉢に入れれば何か植物の画にもなりそうです。

 以前、米国のサンノゼからすぐのところモンレーの港で、ホエールウオッチングツアーに参加したことがります。ツアー前日まで数日間嵐で、当日は絶好のツアー日和。ブルーホエール(シロナガスクジラ)を何頭も間近で見ることができました。なにしろデカイ!ちょうど25mプールくらいの長さがあります。そして潮吹きの迫力がこれまたすごかった。あたりに悪臭とまではいかないけど、磯の匂いが腐ったような臭気が当たり一面に漂いました。あんな巨大な生き物を小型舟と銛でしとめるのだから、命がいくつあってもたりません。

 

2026年6月12日金曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その13

P24P25 国文学研究資料館蔵

(読み)

鯨   遠 見

くしらのとを見

くじらのとおみ


古来 より絵尓書 来 るくじらハ本 式 尓阿ら須゛今 図する

こらい  ゑ          本んしき     いまづ

こらいよりえにかききたるくじらはほんしきにあらず いまづする


所  ハ画 工 長谷川 光 信 海 邊尓て真  の鯨  を見天

ところ ぐハこうハせ可ハミ川のぶうミべ  まこと くしら

ところはが こうはせがわみつのぶうみべにてまことのくじらをみて


其 躰  をう川せり尤   正  とすべしくじら取 ハ山 の手尓小屋をつくり

その可多ち         せ う

そのかたちをうつせりもっともしょうとすべしくじらとるはやまのてにこやをつくり


遠 目鏡 にて塩 をふくを見て采 をふり舟 手へ志ら春る也 くじら尓

とをめ可年  し本      ざい

とおめがねにてしおをふくをみてさいをふりふなでへしらするなりくじらに


五種 有 。ざとう。小くじら。ま川こう。せミ。奈可゛せと云 奈可゛せハ鯨  の

ごし由                                くじら

ごしゅあり ざとう こくじら まっこう せみ なが せというなが せはくじらの


㐧 一 尓て三 十  三 尋 有 此 くじらハ見つけてもとらぬ可゛

             ひろ阿り

だいいちにてさんじゅうさんひろありこのくじらはみつけてもとらぬが


鯨  取 能作法 也

      さ本う

くじらとりのさほうなり

(大意)

(補足)

「遠見」、「見」のフリガナが「ミ」でも「み」でもなくなぜか「見」です。

この頁から最後まですべて鯨の項目となります。司馬江漢「西遊旅譚」に生月島の鯨漁について詳しい話が記されています。しかしこの本はそれよりも約百年前の出版です。

 遠眼鏡を使っているひとの奥にやかんを乗せた火鉢があります。火鉢というと現在はほとんどが七輪やボール状のものになってしまっています。ここのように手前をくりとったものは見かけなくなりました。

 

2026年6月11日木曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その12

 

P22P23 国文学研究資料館蔵

(読み)

赤 鱏(ゑきれ)

あ可ゑい

あかえいえきれ


これを取 尓ハ漁 人 舟 尓のりて舟 者゛らを多ゝけバゑい

       ぎよじん

これをとるにはぎょじんふねにのりてふなば らをたたけばえい


多 くう起出る也 これをもり尓てつき取 奈りゑいの

おおくうきでるなりこれをもりにつきてとるなりえいの


尾尓て人 をさせ者゛即 時尓人 死春といへりこれ尓樟  脳 を付 てよし

を         そくじ   し        せ うのう

おにてひとをさせば そくじにひとしすといへりこれにしょうのうをつけてよし


海 参

奈まこ

なまこ


奈まこ虎 子共 云 漁 人 これを取 尓ハくじらの油  をちょくに

   とらごともいふ               あぶら

なまことらごともいうぎょじんこれをとるにはくじらのあぶらをちょくに


いれてこより尓徒けて海 へ入るれハ海 水 そこま天゛見え

いれてこよりにつけてうみへいるればかいすいそこまで みえ


春くなり其 時 長 きかい多゛ま尓て春くひ取 也 かい多゛満ハ

すくなりそのときながきかいだ まにてすくいとるなりかいだ まは


柄の付 多る小網 也

ゑ      あミ

えのつきたるこあみなり

(大意)

(補足)

「ゑきれ」、エイヒレのこと。

磯に近い岩場での漁なので、危険と隣り合わせです。

 

2026年6月10日水曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その11

P20P21 国文学研究資料館蔵

(読み)

鰮  網

いハしあミ

いわしあみ


い者しあミハ大 小  二網 奈り大 をま可せと云 

                       いふ

いわしあみはだいしょうにあみなりだいをまかせという


小  を者ちだと云 此 二

          この

しょうをはちだというこのに


あミを一里四方 へ引 也 其 うけをあ者゛と云 うけづ奈の中 程 尓

   ちりよ本う ひく  その              奈可本と

あみをちりしほうへひきなりそのうけをあば といううけづなのなかほどに


舟 二そうつけてあミの一 所 へよりぬやう尓

ふねにそうつけてあみのいっしょへよりぬように


両  方 へかぎ尓て引 也 網 舩 の

里やう本う         あミふ年

りょうほうへかぎにてひくなりあみふねの


先 尓立 舟 ハまあミさ可阿ミとて二艘 也 其 舟 尓けん保゛うとていハしを

さき 多川             そう

さきにたつふねはまあみさかあみとてにそうなりそのふねにけんぼ うとていわしを


ぬけぬやう尓後 へ追 者 四五人 有 ◯伊与の宇和嶋 い王し多 し関  東

      あと おふ毛の          う王しま      くハんとう

ぬけぬようにあとへおうものしごにんあり いよのうわしまいわしおおしか んとう


尓てハ総 州  銚 子浦  より多 く出る丹 後より出るいハし

        て うしうら

にてはそうしゅうちょうしうらよりおおくでるたんごよりでるいわし


名 物 也 風 味よし

      ふうミ

めいぶつなりふうみよし

(大意)

(補足)

「けん保゛う」、『つきんぼう ―ばう【突きん棒】海面を泳いでいるマグロ・カジキなど大形の魚を銛(もり)で突き刺してとる漁法。また,それに用いる銛をつけた棒。「―漁」』のことではないかとおもいます。

 2艘の舟の艫(とも)に鳥居の形に似たものがありますが、どんなふうにつかったのでしょう?

 ちょうどイワシのうまい時期になってきました。入梅いわしなどといわれてます。脂がのって身がふっくらとして、刺身を生姜醤油で食べます。

 

2026年6月9日火曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その10

P18P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

梭 魚兒

可ますこ

かますこ


かま須といふ魚 の子也 又 ハい可奈ご共 云 

      うを こ         ともいふ

かますといううおのこなりまたはいかなごともいう


摂 州 尼  崎 兵  庫

せつしうあまがさきひやうご


の浦 尓て多 く取 也 是 を取 網 ハ春べあミと云 外 まハり

 うら              あミ        そと

のうらにておおくとるなりこれをとるあみはすべあみというそとまわり


ハ索 尓てあミ其 次 ハ藁 蕊 尓てあミ真 中 ハ苧網 也 徒奈十  四筋

 奈ハ         王らしべ    まん奈可 を          すじ

はなわにてあみそのつぎはわらしべにてあみまんなかはおあみなりつなじゅうしすじ


人 数 十  四人 まあミさ可阿ミとて綱 舟

にんずうじゅうよにんまあみさかあみとてつなぶね


二艘 あり外 尓舟 二そう付

 そう  本可      つくる

にそうありほかにふねにそうつくる


也 四 艘 の舟 にもやいをつけ四方 取 まハして綱 を入るゝ也 かま須

                し本うとり

なりよんそうのふねにもやいをつけしほうとりまわしてつなをいるるなりかます


ごを煎 じ油  を取 其 せんじがらを市 へ出してかますごとて賣 也

  せん あぶら           いち だ        うる

ごをせんじあぶらをとりそのせんじがらをいちへだしてかますごとてうるなり

(大意)

(補足)

「可ますこ」、『かますご【叺子】〔関西で叺に入れて出荷するからとも,魳(かます)の子に似ているからともいう〕いかなご。こおなご』。『かます【叺】わらむしろを二つ折りにして作った袋。穀物・塩・石灰・肥料などを入れる。かまけ。』

「王らしべ」、『わらしべ【藁稭】稲の穂の芯(しん)。わらすじ。わらすべ。みご。また,わらのくず』。ついでに『わらしべちょうじゃ ―ちやう― 【藁稭長者】昔話の一。一本のわらしべから次々と価値の高いものに交換して,ついに長者になるという話。「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」にも収められており,全国に類似の話が残っている』

「苧」、『お を 【麻・苧】① アサの古名。「―の畠あり」〈宇治拾遺物語•12〉② アサやカラムシの繊維を紡いだ糸。「―をよりて」〈土左日記〉』

「四艘の舟にもやいをつけ」、『もやいぶね もやひ―【舫い船】互いにつなぎとめた船。また,岸につなぎとめた船。むやい船』。『もやいづな もやひ―【舫い綱】船と船,あるいは船を岸につなぐ綱。遣手(やりて)。手安綱(てやすづな)。もやい』

 なかなかの大作です。漁の様子がよくわかります。おしむらくは、網の目を通して透けるように刷ってほしかった。とても残念😢

 すべ網を全部細かい麻糸や木綿糸で編んで部屋に吊るせばかや『【《蚊帳》 ・蚊屋】蚊を防ぐために寝床を覆う寝具。目の粗い麻・木綿などの布で作り,四隅をつって覆う。かちょう。「―を吊(つ)る」季夏「起きて見つ寝て見つ―の広さかな」浮橋』になります。

 

2026年6月8日月曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その9

P16P17 国文学研究資料館蔵

(読み)

海人

あま

あま


海士とも蜑 と毛書 也 世尓ハ蜑 といへバ女  尓限 り多るやうに

あま  あま  可く           おん奈 可ぎ

あまともあまともかくなりよにはあまといえばおんなにかぎりたるように


思 へども男  あまも有 也 海人と書 ハ男 女 能通 称  なり

おも   おとこ   ある             つうせ う

おもえどもおとこあまもあるなりあまとかくはだんじょのつうしょうなり


者多゛可尓て海 中  へ飛 入 鮑  貝  を取 也 籠 尓奈王を徒けて海 底

      可いち う とびいりあハび可゛い     可ご       うミそこ

はだ かにてかいちゅうへとびいりあわびが いをとるなりかごになわをつけてうみぞこ


へ持 行 あハび貝 を取 入 ゝ也 あま海 上  尓あ可゛れバ

 もちゆき               可いしやう      

へもちゆきあわびがいをとりいるるなりあまかいじょうにあが れば


則   奈ハを引 て

す奈ハち   ひき

すなわちなわをひきて


其 籠 を舟 へ取 入るゝなり海人の身春ぎさ満\゛/有 舟 尓て釣 針

その可ご ふ年                   あり    つり者゛り

そのかごをふねへとりいるるなりあまのみすぎさまざ まありふねにてつりば り


尓て鯛 をも釣 奈りよ能つ年ハ鯛 ハ網 尓て取 又 釣 尓も能かゝる奈り

  多い  つる          あミ          よく

にてたいをもつるなりよのつねはたいはあみにてとるまたつりにもよくかかるなり

(大意)

(補足)

「よ能つ年ハ鯛ハ網尓て取又釣尓も能かゝる」、変体仮名「能」(の)と「能(よく)かゝる」では形が異なっていて使い分けています。

 昨日、鴨居の鯛の話をしました。わたしは若かりし頃、その鴨居の鯛釣りの名人漁師の手ほどきを受けたことが何度かあります。鯛の一本釣りです。この画では釣り竿をつかってますが、一本釣りでは腕に釣り糸をもって手繰るようにして糸を上下させます。まさしく一本勝負。釣り上げるとすぐに注射といって針で鯛の浮袋をさします。そして急いで濱の組合の生け簀に全速力で戻ります。舟の生け簀では弱ってしまうのです。

 また、漁師はそれぞれ自分のポイントというものを秘密にして持っています。なので他の漁師が後をつけてくると、そのポイントには行きません。親子でも教えません。一代限りのポイントなのです。海上ですからポイントに着くには昔ながらの方法でした。いわゆる三角測量です。東京湾ですから、たいていの漁師は三浦半島で一番高い山である大楠山、今では年に何回しか見えませんが、昔はたいてい見えていた筑波山、それと観音崎灯台など、それらで位置決めをしていたそうです。今ではGPSで一発。

 鯛が赤いのは、海老が好物で食べるからですね。名人も海老で釣ってました。海老は鴨居の対岸である千葉は富津などでから仕入れてきてました。この海老、食ってもうまく天ぷらでもフライでもほんとにうまかったなぁ。

 海女さんが左手に持っているのはあわびおこしなどといわれているものでしょう。岩場に引っ付いている鮑をこれで引っペがします。チャンスは一回限りで、ヘマをすると鮑は岩に強力にくっついてしまって、はがすのが困難になるし、無理にはがそうとすると鮑の身を痛めてしまいます。

 わたしは大工道具のかすがいを使ってました。カゼ(ウニのこと)をとるにも必需品でした。

 

2026年6月7日日曜日

日本山海名物圖繪巻之五 その8

P14P15 国文学研究資料館蔵

(読み)

章魚

たこ

たこ


大 だこ小だこ小八梢魚。望 潮魚。百距     阿り

       くもだこ いひだこ て奈可゛多゛こ

おおだここだこくもだこ いいだこ てなが だ こあり


播 州  明 石たこの名 物 也

     あ可し

ばんしゅうあかしたこのめいぶつなり


但 馬の大 だこ甚  多大 奈り牛 馬 を取 夜 舟 の中 へ手をさしのべて

たじま             うしむま とるよるふ年

たじまのおおだこはなはだだいなりうしむまをとるよるふねのなかへてをさしのべて


人 の有 無 をさぐるといへり◯たこを取 尓ハ

   ある奈き

ひとのあるなきをさぐるといへり たこをとるには


たこ壺 をいくつも徒奈尓つけて桐 の木

  つ本           きり き

たこつぼをいくつもつなにつけてきりのき


の切 口 をうけ尓つけて降  置 一 日 一 夜過 て引 あぐれバ

 きりくち       おろしおき      やすぎ ひき

のきりくちをうけにつけておろしおきいちにちいちやすぎてひきあぐれば


つ本゛の内 尓たこ入 て居る也

    うち      ゐ

つぼ のうちにたこいりているなり


海 中  尓て人 尓すゐ徒けバ者奈れず人 の徒者゛けを以 て

可いち う                      もつ

かいちゅうにてひとにすいつけばはなれずひとのつば けをもって


於とせバよく於徒るといふ

おとせばよくおつるという

(大意)

(補足)

「徒者゛け」、『つば・く 【唾く・唾吐く】

つばきをはく。「其の玉器に―・き入れたまひき」〈古事記•上訓〉』

 明石は鯛も名産です。東では三浦半島は鴨居の蛸と鯛が有名で、江戸時代は鴨居の鯛は大奥に献上されたといわれています。

 近年では蛸もすっかり高級品となってしまい、国内産の蛸を店頭で見かけることはほとんどなくなってしまいました。