2024年5月15日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その49

P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

「命  のちゞむ尓も

 いのちのちぢむにも


いろ\/あり女  ゆへ尓

いろいろありおんなゆへに


命  のちゞむを奈り

いのちのちぢむをなり


ひらちゞミといひ金

ひらちぢみといいかね


もちのいのちのちゞ

もちのいのちのちぢ


むをふくらちゞみ

むをふくらちぢみ


といひく以もので

といいくいもので


いのちのちゞむを

いのちのちぢむを


志たきりちゞミと

したきりちぢみと


いひちやじんのいのち

いいちゃじんのいのち


のちゞむを春起やちゞ

のちぢみをすきやちぢ


ミといひか春り者゛可り

みといいかすりば かり


とり多可゛る人 のいのち

とりたが るひとのいのち


のちゞむをゑちごちゞミ

のちじむをえちごちぢみ


といふきぬちゞミもめん

というきぬちぢみもめん


ちゞミ尓もそれ\/尓い王

ちぢみにもそれぞれにいわ


れあるべし

れあるべし

(大意)

 命の縮むのにもいろいろある。女ゆえに命の縮むことを業平ちぢみ(本所業平橋あたりでとれた名産のしじみ)といい、金持ちの命の縮むことをふくらちぢみ(ふくらすずめ)といい、食い物で命の縮むことを舌切ちぢみ(舌切雀)といい、茶人の命の縮むことをすきやちぢみ(数寄屋(茶室)造り)といい、かすり(ピンハネ)ばかり取りたがる人の命がちぢむことを越後ちぢみ(絣(かすり)を扱う有名どころの呉服屋のひとつ)という。絹縮・木綿縮にも、それぞれにいわれがあるいちがいない。

(補足)

 判じ物は「奢った報いでござる」だとおもいますけど、△の部分がどうしてそうなるのか考え中・・・

 

2024年5月14日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その48

P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

[命  可゛ちゞむ]

 いのちが ちぢむ


命  のせん多くも志春

いのちのせんたくもしす


ぐせバお本ミそ可尓

ぐせばおおみそかに


かけとり可゛やろう能

かけとりが やろうの


とう可゛んぶ年可五百

とうが んぶねかごひゃく


ら可んのげんぞく志

らかんのげんぞくし


多やうにつめ可けせ川

たようにつめかけせっ


かくひき能者゛し多

かくひきのば した


命  をい川と起尓ちゞ

いのちをいっときにちぢ


める

める

(大意)

[命がちぢむ]

 命の洗濯もしすぎてしまうと、大晦日の掛取りが、野郎の冬瓜船か五百羅漢が還俗したようにして詰めかけ、せっかく引き延ばした命をいっぺんに縮めてしまう。

(補足)

「やろう能とう可゛んぶ年可五百ら可んのげんぞく志多やうに」、掛取りたちのハゲ頭(といっても、ちょんまげの月代)を、船の上に積み上げられた冬瓜や五百羅漢の表情にたとえている。ここでは八人の冬瓜が集まってます。それぞれの表情も京伝工夫して変化させています。

 掛取りたちが持ってきた提灯の絵文字を右から読むと、「おごつ(た)」「むくい(手゛)」とつづき、最後はさてなんでしょうか?

 

2024年5月13日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その47

P17P18 国文学研究資料館蔵

P18

(読み)

う多

うた


「さても見事 や

 さてもみごとや


ふりもよし者多゛

ふりもよしはだ


可春可゛多能可ハ由ら

かすが たのかわゆら


しさ満の志め

しさまのしめ


多るふんどしハ

たるふんどしは


奈尓と申 スふん

なにともうすふん


どしぞ

どしぞ


「ちり可ら\/

 ちりからちりから


春多\/

すたすた


本゛う

ぼう 


(大意)

歌「さても見事や、振りもよし、裸姿のかわゆらし、様のしめたるふんどしは、なんと申す褌ぞ。

(二挺鼓の音)「ちりからちりから、すたすた坊主

(補足)

歌なので文句は七五調。

「ちり可ら\/春多\/本゛う春」、「九替十年色地獄 その58」では天女の二挺鼓でした。

こちらのはまったく実写のようで、実際のお座敷の様子のようです。

 当時は誰もが吉原で花魁と座敷で遊ぶなどということはできませんでしたから、このような出版物でその様子を知ることが多かっただろうし、あこがれもいだいたのでしょう。京伝もそれらのことを意識して、花魁の姿や部屋を特別美化することなく、見たままを丁寧に描き、紹介しているようにおもわれます。

 

2024年5月12日日曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その46

P17P18 国文学研究資料館蔵

P17

(読み)

「おや者゛可

 おやば か


らしい可ぜを

らしいかぜを


ひき奈んしやう

ひきなんしょう


尓へ

にぇ


「ゆやでふんどし

 ゆやでふんどし


のせん多く春る

のせんたくする


きどり多゛ぞ

きどれだ ぞ


「これ可゛本んの金 を

 これが ほんのかねを


ゆミ川゛のやうに

ゆみず のように


つ可うといふの多

つかうというのだ


奈んときつい可\/

なんときついかきついか


命  のせん多く

いのちのせんたく


とハいふものゝ

とはいうものの


志川ハふられ多

じつはふられた


者ぢを春ゝぎ

はじをすすぎ


多゛春のさ

だ すのさ

(大意)

「おや、馬鹿らしい。かぜをひきなんしょうにぇ。

「湯屋でふんどしを洗濯しているようであろう。

「これがほんとうの『金を湯水のように使う』ということなのだ。なんともたいしたものだ、すばらしい。命の洗濯とはいうものの、実はふられた恥を洗い流しているさ。

(補足)

「ふんどし」、ここの「と」は「Z」+「ヽ」のようなかたち。

「きつい」、ここの『きつい』は『⑥ 大したものだ。素晴らしい。「お娘御の三味線は―・いものでござる」〈咄本・鯛の味噌津〉』

 「命の洗濯に〜する」とはいまでも温泉湯治に行くときなど普通に使われていますが、この当時から、いやもっと時代は遡るのかもしれません。

 右隅のまだ小柄な女性は着物の裾も短く足がみえています。髷も小さい。禿(かむろ)です。

 

2024年5月11日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その45

P17P18 国文学研究資料館蔵

P17

(読み)

「こゝろに志ハ

 こころにしわ


ミのこらぬやう

みのこらぬよう


に命  のせん多く

にいのちのせんたく


を春るの多゛じゆ

をするのだ じゅ


者゛ん奈ら一 もん可゛

ば んならいちもんが


能りで春む可゛命

のりですむが いのち


のせんた

のせんた


く丹ハ

くには


小者゛ん金 で

こば んがねで


な个れバのり

なければのり

P18

可゛き可ねへ

が きかねえ

(大意)

「心にしわがよらぬように命の洗濯をするのだ。襦袢ならば一文の糊ですむが、命の洗濯には、小判の金でなければ糊がきかねぇ。

(補足)

 命を洗濯する男、身ぐるみ一式洗ってしまったのか、手ぬぐいを腰にまわしてかくしています。

 人物もですが、部屋の作りや細々した什器なども丁寧に描かれています。

 

2024年5月10日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その44

P17P18 国文学研究資料館蔵

P17

(読み)

[命  能せん多く]

 いのちのせんたく


命  といふや川可゛と起\゛/

いのちというやつが ときどき


せん多くせぬとよくあ可本゛ん

せんたくせぬとよくあかぼ ん


のうにけ可゛れてあぶらやの

のうにけが れてあぶらやの


ぞうきんのごとくよごれ

ぞうきんのごとくよごれ


つひ尓ハ命  可゛ねぐさるもの

ついにはいのちが ねぐさるもの


奈り志可しいのちのせん多く

なりしかしいのちのせんたく


もあらひ春ぐせバての可ハ

もあらいすぐせばてのかわ


をすりむき奈以しやう可゛

をすりむきないしょうが


本ころびて志んだ以のぢ

ほころびてしんだいのじ


あい可゛王るく奈る

あいが わるくなる


もの奈れバその

ものなればその


本ど\゛/を可ん可゛へ

ほどほど をかんが え


てせん多く春べし

てせんたくすべし


か奈らずあらひ

かならずあらい


春ぐ春べ可ら須

すぐすべからず

(大意)

 命というやつは、ときどき洗濯をしないと、欲・垢・煩悩にけがれて、油屋の雑巾のように汚れてしまい、ついには命が根腐ってしまう。しかし命の洗濯も洗いすぎれば、手の皮をすりむき、懐具合もさみしくなり、身代の具合も悪くなってしまうものなので、そのほどほどの加減を考え洗濯しなければならない。洗いすぎは厳にしてはならない。

(補足)

「よくあ可本゛んのう」、一読ではなんのことかわからず。わかってしまえば3つの語彙の連続でした。よくあることです。

 吉原の遊女屋の座敷の場面。遊女たちの髷が横に広がり、笄(こうがい)の飾りも派手で、うしろが大髷になっているのは当時の流行であったと、ものの本にありました。

 床の間横の棚に、囲碁一式があります。遊女の嗜みのひとつで、かなりの腕の花魁もいたそうです。

 

2024年5月9日木曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その43

P16 国文学研究資料館蔵

(読み)

「一 川べ川徒いの本そ起けふりの

 ひとつべっついのほそきけむりの


いとをも川てろめいをつ奈ぐハ

いとをもってろめいをつなぐは


千 ごくづミのふ年をきぬ

せんごくぶねのふねをきぬ


いとでつ奈ぐよりも

いとでつなぐよりも


奈本あやうし

なおあやうし


「おれハ奈可゛\゛/

 おれはなが なが


のらう尓んも

のろうにんも


のでハ奈以

のではない


な可゛いきの

なが いきの


ごう尓んもの多゛

ごうにんものだ


露命(ろめい)越つ奈ぐ

   ろめい をつなぐ

(大意)

 造り付けの竈(かまど)からの糸のように細い煙で露命をつなぐことは、千石船の船を絹糸でつないでおくことよりも、いっそう危ぶまれることである。

「おれはずっと浪人者であったのではない。長生きの厄介者だ。

[露命をつなぐ]

(補足)

「一川べ川徒い」、こんな単語は辞書にあるまいとおもって調べるとありました。

『ひとつべっつい ―べつつひ【一つ竈】

① ただ一つだけ,造り設けたへっつい。

② 歌舞伎の鬘(かずら)の一。剃髪(ていはつ)した者が再び髪を伸ばし始めてまだ髷(まげ)が結えないときの髪形で,月代(さかやき)と額だけを剃(そ)ったもの』

「ごう尓ん」、『ごうにん ごふ―【業人】

① 前世の悪業の報いをうける人間。また,悪業を行う人。

② 人をののしっていう語。業さらし。「やいここな運命つきの―め」〈浄瑠璃・用明天皇職人鑑〉』。ここでは浪人者にひっかけた洒落。

「露」のくずし字を調べてみると、ここのとはちょっと違っていました。

 浪人者の住居としては、造り付けの竃(見るからに立派)に薪もふんだんにあり、お茶碗や桶もあって、そこそこの生活をしていそう。団扇はあっても火吹き竹が見当たりません。