ラベル 豆本 昔噺し舌切春ゞめ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 豆本 昔噺し舌切春ゞめ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年6月10日木曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その13

P13

(読み)

つゞらをあけ

つづらをあけ


れバ奈可より

ればなかより


いろ\/奈者゛けものいてゞ

いろいろなば けものいてで


者ゝアを

ばばあを


さん\゛/尓

さんざ んに


くるしめ

くるしめ


多り

たり


めで

めで


多し\/  \/

たしめでたしめでたし


御届明治十九年九月廿九日

馬喰町二丁目十四番地

編輯兼出版人 綱島亀吉

定價弐銭

(大意)

葛籠をあけると

中より

いろいろな化け物が出てきて

ババアを散々に苦しめました。

めでたしめでたしめでたし

以下略

(補足)

「いてゞ」、「いでて」の意味でしょうけど、次行の「ばばあ」を「者ゝア」と記すことは頻繁にあるので大したことではないのでしょう。

 地面の三色は境界がはっきり摺られてますが空の紺と水色はボカシが入ってます。描き分けているところが職人らしい。

P12P13見開き

縄の蛇の顔は漫画チックでかわいらしい。どの化け物もどこかひょうきんです。

裏表紙

出版人の名前が亀吉なので亀を意匠にしたもの、でもそのまんま。そのまま風呂敷の柄になります。

 

2021年6月9日水曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その12

P12

(読み)

者゛ゝあハ

ば ばあは


よろこび

よろこび


可へりて

かえりて


(大意)

ババアは

喜び

帰って


(補足)

 化け物だらけ。全部で7人?ヤシの幹に見えるのは首。縄は次頁で頭があります。いやいや怖い怖い。

「よろこび」、ここの「よ」は平仮名。

 

2021年6月8日火曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その11

P11

(読み)

△ミやけをやらんと

 みやげをやらんと


いゝけれバよく者゛り

いいければよくば り


由へとしハとつても

ゆへとしはとっても


ち可ら可゛ある可ら

ちからが あるから


おもひのをもら

おもいのをもら


王んといふ

わんという


由へおもひ

ゆへおもい


つゞらを

つづらを


やりけれバ

やりければ


(大意)

みやげをやろう言いました。

欲張りなので

「歳はとっても力があるから

重いのをもらいましょう」

と言うので、

重い葛籠をやり


(補足)

「ミやけをやらんと」、「や」が「ゆ」のように見えてしまいます。3行目と7行目の「由へ」と比較してください。「や」の変体仮名は「也」。

「ち可ら可゛ある可ら」、「ら」「う」「可」がみなよくにてます。しかし先頭の「ち」は書き間違いのような気がします。

 ふすまの奥の部屋からこっそりのぞく二雀はお正月の羽織袴に振り袖と正装のよう。

P10P11見開き

見開きの中央、どうしても欲張りババアの表情に見入ってしまいます。いろいろな人に似て見えます。

 

2021年6月7日月曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その10

P10

(読み)

れハ志可多

ればしかた


奈し尓つ満ら

なしにつまら


奈いもの

ないもの


尓てお

にてお


さけを

さけを


のませ

のませ


者やく

はやく


可へさん

かえさん


とおもび△

とおもい


者゛ゝ

ばば


「まこと尓

「まことに


このあひ多゛

このあいだ


ハお起のどく

はおきのどく


をい多し

をいたし


まし多

ました


(大意)

(来たので)仕方なく

つまらないもので

お酒を飲ませ

早く帰そうとおもい△


ババ

「まことに

この間は

お気の毒を

いたしました


(補足)

この頁と次頁は色の発色がよく、文字も鮮明です。ふすまの柄、雀やババの着物、火鉢の側面の模様と鉄瓶などどこをみても細かく描きこまれています。ババの表情は拡大してみても見事です。

「お起のどくをい多しまし多」、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。


 

2021年6月6日日曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その9

P9

(読み)

いろ\/の多可らもの

いろいろのたからもの


いで多りぢゝいハ

いでたりじじいは


よろ

よろ


こび

こび


ける

ける


と奈

とな


りの△

りの


△けん

 けん


どん者゛ゝ

どん者゛ゝ


それを

それを


ミ天

みて


うら

うら


や満しくおもひ春ぐ尓春ゞ

やましくおもいすぐにすず


めを多つ年尓由起个る尓春ゞ

めをたつねにゆきけるにすず


めハけんどん者゛ゝ可゛多づ年き多

めはけんどんば ばが たずねきた


(大意)

いろいろな宝物が出てきて

爺は喜びました。

隣のケチなババアがそれを見ていて

うらやましくおもいすぐに

雀の家を訪ねて行ったところ

雀はケチなババアが訪ねてきたので

(補足)

白壁背景のところはくっきりはっきりですが、床の緑色背景は暗くて読みづらい。

「ける」と「个る」両方の表記が使われています。

「ミ天」(みて)、変体仮名「天」(て)は「く」の上に小さな「乙」のような形がつきます。

「多つ年尓」、変体仮名「年」(ね)は「◯」+「ヽ」のような「Q」に似た形になります。ここでは◯になっていませんけど。

 爺さんは部屋の中でもわらじを履いているように見えます。よほど嬉しかったのかあわててそのまま上がってしまったのか、それとも土間なんでしょうか。どうやら旅支度もとかずにお土産がたくさん入った葛籠を開けてしまった感じ。爺さんの旅支度の色合いがシックでいいです。

P8P9見開き

隅から隅まで手を抜くことなく描いています。

 

2021年6月5日土曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その8

P8

(読み)

いへハ王しハとし可゛

いへばわしはとしが


とつてち可ら可゛

とってちからが


奈い可ら可る

ないからかる


いの(可)よい

いの(が)よい


とて

とて


つゞら

つづら


を●


●せおひて可へり

 せおいてかえり


个るうちへ可へりつゞ

けるうちへかえりつづ


らいあけてミれバ

らいあけてみれば


(大意)

問われ、わしは歳を

とっているので力が

ないから軽いのがよい

とのことで葛籠(ツヅラ)を

背負って帰りました。

帰宅して葛籠をあけてみると


(補足)

二行目「よつて」なのか「とつて」なのかわかりません。どちらも違うかも。

「可るいの(可゛)よひ」、(可゛)を忘れたようです。

「つゞらいあけて」、途中の「い」は何でしょうか?

 欲張り婆さんが葛籠を開けているところをのぞいている図。両手の指をいっぱいに広げて驚いています。

 古びてしまった木の壁の下はちゃんと石の基礎が敷かれているところがなかなか細かい。

 

2021年6月4日金曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その7

P7

(読み)

き多りし可バ

きたりしかば


春ゞめおふ

すずめおう


ぜいよつておくへと本し

ぜいよっておくへとほっし


いろ\/とちそうして

いろいろとちそうして


春ゝめおどりを春る

すずめおどりをする


やらお本さ王き

やらおおさわぎ


このよハと満り

このよはとまり


あくるひ尓奈りけれ

あくるひになりけれ


バぢゝいれいをのべ可いらん

ばじじいれいをのべかいらん


といへハおミやげ尓可るい●

といえばおみやげにかるい


●つゞら可゛

 つづらが


よい可お

よいかお


もひの可゛よい可と

もいのがよいかと


(大意)

着いたところ

雀が大勢出迎えて奥へと案内され

いろいろと馳走してくれました。

雀踊りをするやら大賑わいとなり

この夜は泊まりあくる日になって

爺は礼をのべ帰ろうと言うと

お土産に軽い葛籠がよいか

重いのがよいかと


(補足)

 赤や青の背景に文章が読みづらいところがあります。変体仮名「可」(か)がたくさんあります。形は「う」と同じ。ベンツのマークみたいな形は変体仮名「満」(ま)です。

「おもひの可゛」、ここの「も」の筆順は下部から左回りに上がって、ちょうど「S」を下から上へ書くような流れです。

 爺さんの表情がとても幸せそう。袴の四角い柄がいいですね。

P6P7見開き

 朝からお土産をもたせるのにも大騒ぎで「重いのがよいですか、軽いのがよいですか」とピーチクパーチク聞こえてきそうです。


 

2021年6月3日木曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その6

P6

(読み)

それ

それ


与り

より


春ゞめ

すずめ


のうち

のうち


を多づ年

をたずね


由起

ゆき


尓????


春ゞめのうち尓

すずめのうちに


(大意)

それから

雀の家を訪ね行き

?????

雀の家に


(補足)

 背景の薄紺色に文字がかすれていて大変に読みづらい。拡大して判読しましたけど終わりから2行前が読めません。

「由起」が行間にあります。彫ってから後で付け足したような感じです。

絵は雀の親がお土産の葛籠(ツヅラ)を爺さんにわたしているところ。横縞の色柄がきれい。うしろの子どもはいかにもという娘らしい明るい柄模様。縁側の板も茶色一色にしてしまわずに白色で変化をつけています。

 

2021年6月2日水曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その5

P4

P5

P4P5panorama

(読み)

P5

志やうしき

しょうじき


ぢゝい春ゞ

じじいすず


めのうち

めのうち


尓由起て

にゆきて


ちそう尓

ちそうに


奈る

なる


(大意)

正直爺

雀のうちへ行き

馳走になる


(補足)

 綱島亀吉のこのシリーズの特徴は二丁と三丁が広がって4頁ぶんのパノラマになる仕掛けがしてあることです。歌舞伎舞台のように横広がりの大きな空間を豆本という手のひらにのるような小さな中に実現しています。

 三味線お囃子笛太鼓の姉さんがた4人が右側に、それに合わせて踊る芸人たちは脚が人間なので呼び寄せたのでしょう。そして雀の母娘とその家族。爺さんは火鉢を横に満ち足りて幸せそうです。縁側の奥には見事なお庭がのぞめます。賑やかさが聞こえてきそうですがどこか上品さが漂っています。

 背景が真っ赤な絵の説明書きは短いけど少々難しい。

「志やうしき」は次の行が「ぢゝい春ゞ」でなければ読めなかったかも・・・

「尓由起て」、変体仮名「由」(ゆ)は縦棒の下部が少し曲がるのが特徴です。

 

2021年6月1日火曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その4

P3

(読み)

由起多づね

ゆきたずね


し尓その

しにその


者奈しを

はなしを


きゝて

ききて


奈げき

なげき


「これハ\/ハ

「これはこれは


おぢいさんよく

おじいさんよく


おいで奈さい

おいでなさい


まし多

ました


(大意)

ゆき、尋ねたところ

その話をきいて

嘆き(悲しみ)ました。

「これはこれは

お爺さん

よくおいでなさいました。」


(補足)

文章の出だしの「由」が背景の竹やぶと重なって見落としそうです。

下部の会話文の文字が女性文字っぽく感じるのは気のせいでしょうか。

「よく」、「よ」の変体仮名は「与」。

出迎えた二人は奥様風と娘風の衣装で奥様風はぽっくりのような高下駄を履いています。両手をそろえてお辞儀するその白い指の長さが目立ちます。

P2P3見開き

 見開きで見ると、すずめのお宿は左のやや奥まったところにあって二人をやや小さく描き、それよりも大きく描かれたお爺さんは手前からそこへと歩いてゆく遠近感があります。

 

2021年5月31日月曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その3

P2

(読み)

と奈りのけん

となりのけん


どん者゛ゝ可せん

どんば ばがせん


多くせんとこゝ

たくせんとここ


のへお起多るのり

のへおきたるのり


を奈めける可゛者゛ゝ

をなめけるが ばば


お本ひ尓者らを

おほいにはらを


多ち者さミを

たちはさみを


もつて春ゝめの

もってすずめの


志多をきり

したをきり


尓可゛し个るぢゝい

にが しけるじじい


可へり春ゝめの

かえりすずめの


ミへぬ尓と奈り尓

みえぬにとなりに


「志多

「した


きり

きり


春ゞめ

すずめ


おやどハ

おやどは


どこ多゛

どこだ


(大意)

隣のけちで欲深なババアが

洗濯をしようと

ここに置いた糊(のり)を

(子雀が)なめてしまいました。

ババアは大いに腹をたて

ハサミを持って雀の

舌を切り逃しました。爺が帰って

雀がいないと隣の家に


「舌切雀

お宿はどこだ


(補足)

 文章全体が、背景の赤横縞に重なって少々読みづらい。

「けんどん」、漢字は「慳貪・倹飩」。つっけんどん。愛想のないこと。けちで欲が深いこと。などとあります。平仮名「け」がつかわれていますが、このあとには変体仮名「个」があります。

「こゝのへ」、「へ」は「辺」でしょう。この辺に置いておいた糊という感じ。

「お本ひ尓」、「不」のようにみえるのは変体仮名「本」(ほ)。

下部の「」部分、明治19年当時はこの歌詞の曲がもうあったのでしょうか。ついつい曲を無意識に重ねてしまいます。

 絵は丁寧で杖には竹の節が描かれています。爺さんの羽織や袴の柄や色合いも素敵です。

 

2021年5月30日日曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その2

P1

(読み)

明治十九年十一月十五日内務省交付1541

丸朱印 東京図書館印 TOKIO LIBRARY


む可し\/ あるや満ざと尓

むかしむかしあるやまざとに


正ち起゛ 奈るぢゝいありて可春可尓くらし

しょうじきなるじじいありてかすかにくらし


个る可゛あるひから須尓お王れし春ゝめの

けるが あるひからすにおわれしすずめの


こを多春け可ひお起し可゛ちゝいのる春尓

こをたすけかいおきしが じじいのるすに


(大意)

昔々ある山里に

正直な爺がひっそりと暮らしておりました。

ある日カラスに追われた雀の子を

助けて飼っていたのですが、爺の留守に


(補足)

 頁をめくったのっけから、衝撃的な絵であります。一体何が起きたのだろうと読者をつかみにかかります。意地悪婆さんの着物の縦縞の三色色柄がなかなかシックで素敵です。手にはでっかい和鋏(わばさみ)を持ち、ちと恐ろしい。

「や満」(やま)、「や」は変体仮名「也」、「つ」のながれで最後にクルッと右回り。

「正ち起゛」、濁点「゛」の位置がちがいますが「しょうじき」。「正」のくずし字が見慣れたものとことなりますが文章の流れから「正」でしょう。

「可春可」(かすか)(幽か・微か)、人けのないさま。物寂しいさま。

「から須尓お王れし春ゝめ」、変体仮名「須」(す)、変体仮名「王」(わ)、変体仮名「春」(す)。

「可ひお起し可゛」、変体仮名「起」(き)。

変体仮名「春」(す)が何度も出てきます。「十」+「て」のような形です。

 

2021年5月29日土曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その1

表紙

(読み)

昔噺し舌切春ゞめ

むかしばなししたきりすずめ


綱島藏版

つなしまぞうはん


(大意)

(補足)

 着物柄や編笠まで何から何までまるで鏡写しのような武者二人。しかし右手手のひら、ひとりはパッとひらき、もうひとりはギュッとにぎっている。まるで阿吽のよう。枠は花柄、色合いがなんとも渋い着物の鮫肌のような風合い。