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2023年2月21日火曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その14

 


P10 国立国会図書館蔵

(読み)

よ飛゛だし

よび だし


ゑひたい

えいたい


とのさ満より

よのさまより


ふちをいたゞきたり

ふつをいただきたり


めで多し

めでたし


\/  \/

めでたしめでたし


明治廿一年七月十日印刷同年七月廿二出版

日本橋區馬喰町三丁目十番地

印刷兼発行者 小森宗次郎


(大意)

呼び出し

その後ずっと

殿様より

俸禄をいただきました。

めでたしめでたしめでたし


(補足)

 赤が文章の背景だと読みづらい。

「よ飛゛だし」、変体仮名「飛」(ひ)は、かたちが派手なので覚えやすい。かたちに特徴のある変体仮名のほうが読み外すことは少ないようです。

「ゑひたい」、えいたいと読めてもなんだろうと不安です。辞書で「永代」とあり、なるほどと。変体仮名の超初心者から初心者ぐらいにはなったという自覚はあるのですが、読めても意味がわからないと不安になるのです。

平仮名「た」と変体仮名「多」(た)が混在しています。

ふすまと座布団の花がらはおそろいでしょうか。

 奥付が本文の隅にあります。節約したのでしょう。「七月廿二出版」と「日」も節約してしまいました。


2023年2月20日月曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その13

P9下段 国立国会図書館蔵

(読み)

とのさまの

とのさまの


め尓も者い

めにもはい


りし可バ

りしかば


古王ろうぜ

こわろうぜ


きとひどく

きとひどく


おやぢをと

おやじをと


りまきし

りまきし


尓おや

におや


ぢハい

じはい


つくへ尓にげうせ

つくへににげうせ


たり古れ尓よつて

たりこれによって


志よ ぢきぢゞ以を

しょうじきじじいを


[次へ]


(大意)

殿様の目にも入ってしまって

これは狼藉(ろうぜき)と

おやじのまわりをしっかりと、とり囲み

おやじはどこかへと逃げ失せてしまいました。

このことにより

正直爺を


(補足)

「とのさまの」、「と」が「Z」に「ヽ」のようで、悩みます。「の」の上部が薄く欠けているように見えてすぐ左の行の「い」と間違えそう。

「古王」、ともに変体仮名。学んでないとまず読めません。

「いつくへ尓」、「く」は「し」にも見えます。「へ」の最後が跳ね上がってますが、違う仮名でしょうか。

 小森宗次郎の人物の顔は歌舞伎の浮世絵の影響がこいのか、どの顔をみなしまってみえます。

 

2023年2月19日日曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その12

P9上段 国立国会図書館蔵

(読み)

[四ゟ]

 しより


のきよい尓

のぎょいに


おやぢハその

おやじはその


者ゐをまく尓

はいをまくに


いづれもともび

いずれもともび


とのめくち尓

とのめくちに


者いり者なを

はいりはなを


さくところ

さくところ



なくは

なくは


てハ△

ては


(大意)

仰せに

おやじはその灰をまいたところ

いずれもお供の目や口に入り

花を咲かせるどころ

ではなくなり

ついには


(補足)

 文章の背景が赤だと読みづらくなります。

「のきよい尓」、読みにくい上、読めても「きよい」?と悩みます。

「いづれもともびと」、ふたつめの「も」がわかりずらい。

「はては」、平仮名「は」はあまり目にしません。

 殿様の袴に白で柄をいれているところが、なかなかであります。

 

2023年2月18日土曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その11

P8下段 国立国会図書館蔵

(読み)

△をさ可せるおやぢ

 をさかせるおやじ


なりといへバ

なりといえば


志可れハ者奈を

しかればはなを


さ可せみよと[五へ]

さかせみよと ごへ


(大意)

(花)を咲かせるおやじででございます

と言うと

それならば、花を咲かせてみよと


(補足)

 着物の縦縞でからだの動きを描いているのがうまいものです。籠(かご)からこぼれた灰を描くのはなかなか悩むところだとおもうのですけど、いとも簡単にサラッとすましているところがなんとも・・・、白い部分は紙のもともと色で黒い三角の点を散らし、薄茶色を加えているだけ。

「志可れハ」、変体仮名「可」(か)はたくさん使われています。かたちは「う」とそっくりか同じかたちです。

 

2023年2月17日金曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その10

P8上段 国立国会図書館蔵

(読み)

[次ゟ]

とふざの

とうざの


本うび尓い多

ほうびにいた


だきける

だきける


それをよく者゛り

それをよくば り


ぢゞ以ミてその者い

じじいみてそのはい


を春古しもらいかれきへ

をすこしもらいかれきへ


の本りまつうち尓との

のぼりまつうちにとの


さまおとうり尓奈りし

さまおとおりになりし


をさい王い王れハ

をさいわいわれは


かれき尓者奈△

かれきにはな


(大意)

その場で褒美にいただいたのでした。

それをよくばりじじいが見ていて

その灰を少しもらい枯れ木へ

のぼり待っていると

殿様がお通りになるのを

これ幸いと

わたしは枯れ木に花(を咲かせる)


(補足)

「とふざの」、当座ですが、普段使っているのは② しばらくの間。当面。や、③ (あることから)しばらくの間。一時(いつとき)。や、⑤ 「当座預金」の略。です。しかし一番最初に① その場。即座。即刻。とありまして、これを採用しました。

「と」のかたちが意外と変化にとんでいて、読むのに悩まされます。

「ぢゞ以ミて」、カタカナ「ミ」の3画目が流れて「え」にみえてしまいます。

「春古しもらい」、簡単そうに見えてちょっと悩む箇所。

「おとうり尓」が「おとふり尓」ではなく、「とふざの」が「とうざの」でないのでややこしい。

 正直爺さんが登った木はさくらのようでしたが、よくばりじじいのは背後の赤い幹を見ると松のようで、これに花は咲きませぬ。

 

2023年2月16日木曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その9

P7 国立国会図書館蔵

P6P7見開き

(読み)

[三ゟ]

ぎよい尓その

ぎょいにその


者ゐをまくと

はいをまくと


たちまちいち

たちまちいち


めん尓者なの

めんにはなの


ひらき

ひらき



連バ

れば


との

との


さま

さま


おやし

おやし


き尓●

きに


よんで

よんで


そ古バく

そこばく


可袮[次 へ]

かね つぎへ


(大意)

おおせどおりに

灰をまくと

たちまち一面に花が咲きました。

殿様はお屋敷に爺を呼び

たくさんのお金を


(補足)

「ひらきけ連バ」、変体仮名「連」が変体仮名「春」(す)にみえます。

「そ古バく」、辞書に① いくつか。いくらか。② 多数。多く。たいそう。はなはだ。そくばく。とあり、ここは②を採用。

 P6の下部に紫(殿様の羽織と同色)の柵のような図柄やP7の背景にも同じようなものがあります。絵の隙間を雲のようなもので埋めるのは日本の伝統的な手法です。赤がたっぷりと使われていますが、これは明治赤といわれるもの。江戸後期より明治になって高価な赤の原料が外国から輸入されるようになって爆破的に広まりました。

 

2023年2月15日水曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その8

P6 国立国会図書館蔵

P6P7見開き

(読み)

[次ゟ]

ぢゞ以尓て

じじいにて


候   といゝけ連ハ

そうろうといいければ


志 うらハ

しゅうらは


者なを◯

はなを


◯さ可してミよ

 さかしてみよ


との[四へ]

との しへ


(大意)

じじいでございますと答えると

殿様たちは花を咲かせてみよ

との


(補足)

「候」のくずし字は、ここでは逆さ「N」のようなかたちですが、古文書などでは頻繁に使われるのでたくさんのかたちがあり、もっとも簡単なのが「ゝ」のような点で表されることもあります。

「志うらハ」、三河衆や若い衆のしゅう。

「さ可して」、変体仮名「可」(か)は平仮名「う」とほとんど同じかたちです。

 文中「かれき」とありますが、その幹をとても丁寧に描いていて、どうやら桜の幹のようです。木の幹をここまで丁寧に写実的に描いているのはめったにありません。

 P6P7見開きは爺さんの視点にから俯瞰している絵となっていて、遠近や奥行き感が出ています。

左下の殿様たちの後ろにあるのは殿様の籠(かご)。

 

2023年2月14日火曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その7

P5 国立国会図書館蔵

(読み)

[二ゟ]

 により


とのさ満おとふり

とのさまおとうり


王れハ奈尓もの

われはなにもの


なるとたづ袮△

なるとたずね


△しに王たくしバ

 しにわたくしは


かれき尓者な

かれきにはな


をさ可せる

をさかせる


[次 へ]

 つぎへ


(大意)

殿様がお通りになり

あなたは何者であるのか

と尋ねるので

わたくしは

枯れ木に花を

咲かせる


(補足)

P4P5は見開きになっています。頁の左枠外中央下に丁合の「三」があるとおり、P5とP6が三丁で一枚の紙に摺られているはずです。P4P3は二丁ですのでことなる紙に摺られていますが、P5とP4は同じような色合いで丁寧に摺られていて同じ摺師の仕事のように見受けられます。

 残念ながら、生け垣の隙間をすけて見える部分の婆さんを描くまでのことはしていません。しようとおもえば、いとも簡単にやってのけるぐらいの技量はあるにきまってますが、そこは1冊1銭5厘の豆本、それほど手をかけられません。

「奈尓ものなると」、同じ「な」でも変体仮名と平仮名、おなじ音(おん)を表す方法が何通りかあるのならば表現の幅を広げようとしているかのよう。次の行の平仮名「に」と変体仮名「尓」も同様。

 

2023年2月13日月曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その6

P4 国立国会図書館蔵

(読み)

[次 ゟ]

 つぎより


奈きふんのいでし可者゛おこりてう春をもしてしまい

なきふんのいでしかば おこりてうすをもしてしまい


たるをしよ ぢきぢゞいきゝてお本い尓

たるをしょうじきじじいききておおいに


なげきその者

なげきそのは


いを

いを


もら

もら


い天

いて


ざる尓

ざるに


いれ


かれき尓

かれきに


の本゛り

のぼ り


いるところへ

いるところへ


そのところの

そのところの


[三 へ]

 さんへ


(大意)

(きた)ない糞が出てきたので怒って

臼を燃してしまいました。

そのことを正直爺(じじい)は耳にして

大変に嘆いたのでした。

その灰をもらいうけ、笊(ざる)に入れて

枯れ木にのぼっているところへ

その国の


(補足)

「その者いをもらい天」、「もらい」とよみましたが、間違っているかもしれません。

この頁は仕上がりも上々です。臼にむしろを敷いているのがなかなか細かい。爺さんはたすき掛けならもっとそれらしくなったかもしれません。左利きの構えで杵(きね)を握っているのは絵師の約束事のようで、この構えで右利きにすると左手が前にきてしまって、顔や体全面が隠れてしまうからでしょう。

 

2023年2月12日日曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その5

P3後半 国立国会図書館蔵

(読み)

◯け連ハあま

 ければあま


たの可袮の

たのかねの


いでしを可

いでしをか


のよく者゛り

のよくば り


者゛ゞア

ば ばあ


み天▲

みて


▲ま多その

 またその


う春みてかり由き

うすみてかりゆき


もちをつきける尓きた[次 へ]

もちをつきめるにきた つぎへ


(大意)

(餅をつく)と、たくさんの

お金が出てきたのを

あの欲張りババアが見ていて、

また、その臼を借りて行き

餅をついたところ

きた(ない)


(補足)

「け連ハ」、変体仮名「連」(れ)がちょっとわかりにくい。

「可のよく者゛り者゛ゞアみ天」、変体仮名「可」がずいぶんとくだけています。変体仮名「天」(て)がお手本のよう。次の「みて」は平仮名になってます。

 小森宗次郎の豆本の人物の顔かたちは面長です。なのでちょっと現在の漫画や劇画の人物のよう。

 

2023年2月11日土曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その4

P3前半 国立国会図書館蔵

(読み)

[一 ゟ]

 いちより


し可バ者ら

しかばはら


たち

たち


いぬ

いぬ


をころし

をころし


ける志よ じき

けるしょうじき


ぢゞ以これをきゝて

じじいこれをききて


お本い尓なげきその

おおいになげきその


いぬを本うむりし尓

いぬをほうむりしに


そのよ可のいぬ由めま

そのよかのいぬゆめま


くら尓たち本ふむり阿る

くらにたちほおむりある


可たハらのまつのきをう春尓

かたわらのまつのきをうすに


こしらへもちをつけとみし

こしらへもちをつけとみし


由へさつそくう春

ゆえさっそくうす


をこしらへもち

をこしらえもち


をつき◯

をつき


(大意)

(犬の糞が出てきた)ので、腹が立ち

犬を殺してしまいました。

正直じじいはこれをきいて

大変に悲しみ、その犬を葬ってあげました。

その夜、あの犬が夢枕に立ち

葬ったそばの松の木で臼を

つくり餅をつけという夢をみて

さっそく、臼をこしらえて

餅をつく


(補足)

「そのよ可のいぬ由めまくら」、変体仮名「可」が「る」に見えないこともありませんが、「そのよ/可のいぬ/由めまくら」と区切ります。

 犬に殴りかかる岡っ引きのような格好で紺の縦縞、裏生地の赤が引き立ちます。婆さんの驚いた様子や、勢いよく犬に向かう態勢が上手。

 

2023年2月10日金曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その3

P2 国立国会図書館蔵

(読み)

[次 ゟ ]

 つぎより

 

本りし尓あま

ほりしにあま


たのた可らのいでしを

たのたからのいでしを


となりのよく者゛り

となりのよくば り


者゛ゞアみ天その

ば ばあみてその


いぬを

いぬを


可り

かり


由きいぬのたちどまり

ゆきいぬのたちどまり


たるミてそのとこ◯

たるみてそのとこ


◯ろを本り

 ろをほり


ける尓いぬ

けるにいぬ


のくそ

のくそ



いで[二へ]

いで にへ


(大意)

掘ったところ

たくさんの宝物が出てきたのを

隣の欲張りババアが見ていました。

その犬を借りて行き、犬の立ち止まった

ところを掘っていみると

犬の糞が


(補足)

 この小森宗次郎の豆本シリーズは書肆屋さんに並ぶことなく、おそらく初稿を図書館に納品したようにおもわれます。文字の角がたっていて画面全体の色も鮮やかですし、なにより摺り上がったばかりの勢いが感じられます。

「次ゟ」、「ゟ」(より)は合字。「よ」と「り」をつなげてかいて一文字にしたもの。

「者゛ゞアみ天」、変体仮名「天」(て)は変体仮名「久」(く)とかたちがほとんど同じです。

犬の後足まわりに、赤をおいたときに飛び散ってしまったような跡があります。摺師が分業して赤担当の摺師の腕がいまひとつだったのか?

 

2023年2月9日木曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その2

P1 国立国会図書館蔵

(読み)

本つたん

ほったん


む可し\/

むかしむかし


あるい奈可尓

あるいなかに


志よふ

しょう


じき

じき


なる

なる


ぢゞあり

じじあり


ひ古゛ろいぬを王可゛

ひご ろいぬをわが


古のごと久可王い可゛り

このごとくかわいが り


けるあるひそのいぬ

けるあるひそのいぬ


志きり者ぢを本る尓ぞぢゞいも●

しきりはじをほるにぞじじいも


●とも尓そのとこ

 ともにそのとこ


ろを[次へ]

ろを つぎへ


(大意)

はじまりはじまり〜

むかし昔、ある田舎に正直な爺(じじい)がいました。

日頃、犬を我が子のようにかわいがっていました。

ある日、その犬が何度も端を掘るので

爺もいっしょにそのところを


(補足)

「本つたん」、発端とわかるのにしばらくかかりました。講談師がパシッと卓をたたいてはじめるかのよう。

「志よふじき」、「じ」がよく読めなくて、ここも正直とはすぐにわかりませんでした。

「可王い可゛り」、同じ変体仮名「可」なのにかたちがまったくことなります。

 鋤の刃の部分と犬の柄の3色とが同じ色合いで丁寧ですし、爺のみなりの仕上がりもとてもきれいにできています。他の部分もほぼ完璧といってよいのに、赤だけが乱れているのはどうしてなのでしょうか。珊瑚の赤ははみだし、色こぼれして枠線をはみだし、爺の袖口や帯の部分も荒い。

 

2023年2月8日水曜日

花咲ぢゞ以(小森宗次郎)その1

表紙 国立国会図書館蔵

見返し

(読み)

花 咲 ぢゝ以

者奈さき

はなさきじじい


東京圖書館印 TOKIO LIBRARY

明治二一・七・三0・内交・


(大意)

(補足)

 小森宗次郎の表紙の背景はこのシリーズではみな同じと以前の豆本のときもかきました。ここでも麻の葉模様のようなひとでのような文様は同様です。背景の木版は同じ型を使っているのかどうかがふと気になりました。前にアップした豆本2冊とこの豆本の3冊を見比べてみました。吸盤のような白い丸を目安に調べると、3冊ともことなっていてどうやら同じ背景の模様でも彫っていたようにもみえますが、摺ったあとに筆で描き加えていたのかもしれません。

 木に登って灰をまく爺さんの顔ところちょうどにラベルを貼られてしまって、いやはやなんとも・・・

役者絵は見事、手を抜いている箇所などひとつもありません。