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2021年9月27日月曜日

桃山人夜話巻一 その45

P25 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

周防 の大 蝦 蟆

春おうのお本可゛ま

すおうのおおが ま


周防  国 の山 奥 尓年 ふるき

春於うのく尓 やまをく とし

すおうのくにのやまおくにとしふるき


蝦 蟆ありて常 尓蛇 をとりて

可゛ま   つ年 へび

が まありてつねにへびをとりて


食  と奈須

しよく

しょくとなす


(大意)

周防の大蝦蟆

周防の国の山奥に年をとった

がまがいて、常に蛇をとって

食べている。


(補足)

 絵で見ると、立って歩くとありましたがこれは大きなガマガエルではなく、大きながま怪人です。単純に大きな蝦蟆よりもこちらのほうが何倍も不気味で怖い。立派な槍ももっているし・・・

「とりて」、「と」の2画目の出だしが流れているからでしょうか、「8」のようにもみえます。しかし、次行の「食と」の「と」はふつうの「と」。

 次回から「桃山人夜話巻二」になります。

 

2021年9月26日日曜日

桃山人夜話巻一 その44

P24後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

同 じもろこし燕 然 山 の苔 渓 ニ春む可゛満丈  余尓して人 越

於奈     えん袮んざん 多以个い      せう よ   ひと

おなじもろこしえんねんざんのたいけいにすむが まじょうよにしてひとを


喰 ふと阿り凡  可゛満の八 尺  尓充 る毛のハ多 くハ害  を

くら    於よ曽    者つしやく ミつ    於本  可゛い

くらうとありおよそが まのはっしゃくにみつるものはおおくはが いを


奈春登志るせりま多小  奈りといへども立 天あ由

         せう        多ち

なすとしるせりまたしょうなりといえどもたちてあゆ


む蛙  ハ必    害  越奈志毛の也 と兎床  談  尓記 し多り

 可王づ 可奈ら須゛可゛い        とせう 多゛ん 志る

むかわずはかならず が いをなすものなりととしょうだ んにしるしたり


(大意)

同じことである。燕然山の苔むした谷にすむがまは一丈(約3m)あまりもあって人を

食うとある。およそがまのうち八尺に足る大きさのものの多くは害を

なすと記されている。また小さくはあっても立って歩く

蛙は必ず害をなすものであると「兎床談」に記されている。

(補足)

「同じ」、少し角ばっていますが「へのへのもへじ」に見えないこともない。

「苔渓ニ」、「ニ」が右下にあるようにみえます。

 ちょうどこの桃山人夜話が出版された頃と一致するのでしょうか、忍者の児雷也が大蝦蟇にのったり化けたりして、宿敵大蛇丸(おろちまる)と戦う噺があります。作者は当然知っていたとおもいますが、文章にはそれを微塵も感じさせません。

 

2021年9月25日土曜日

桃山人夜話巻一 その43

P24前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  九周防  大 蟆

多゛いく春ハうの於本可゛ま

だ いくすおうのおおが ま


岩 国 山 の奥 尓八 尺  許   の可゛満有 日 中  尓虚空 越むき

い王く尓やま をく 者つしやく者゛可り    あり尓つちう  こくう

いわくにやまのおくにはっしゃくば かりのが まありにっちゅうにこくうをむき


天口 越開 バ虹 の如 き氣越者く此 氣ニふるる鳥  類 虫 ホ 者

 くち あけ 尓じ ごと き   このき    てう る以むしとう

てくちをあけばにじのごとききをはくこのきにふるるちょうるいむしとうは


皆 可゛満の口 尓入れり夏 者蛇 越喰 へり旧  鼠の猫 を者むニ

ミ奈    く千 い  奈つ へび くら  きう 曽 袮こ

みなが まのくちにいれりなつはへびをくらえりきゅうそのねこをはむに


(大意)

第九周防大蟆

(周防の国)岩国山の奥に八尺あまりの大がまがいた。日中何もない空を向い

て口を開ければ虹のような気を吐く。この気に触れた鳥類や虫などは

みな大がまの口に入ってしまう。夏は蛇を食ってしまうが、これは「窮鼠猫を噛む」と

(同じことである。)

(補足)

 歴史的仮名遣い(旧仮名遣い)と現代仮名遣いの表記の規則が、いまひとつというか、人に説明できるほど、恥ずかしいことに理解できていません。本で調べたり、現在ではネットでも簡単にあれこれ学ぶことができるのですが、ますます混乱するだけといった感じになってます。ともかく「周防」の振り仮名は「春ハう」となってます。

「開」、「門」(もんがまえ)は「冖」(わかんむり)になります。

「蟆」「虹」「蛇」、ふたつは「虫」偏なのに「中」、「虹」のほうは「丶」がないだけ。

「鳥」のくずし字が、「多」の変体仮名に似てます。

「春夏秋冬」はくずし字を学ぶときたいていは早い段階で学習します。久々に「夏」のくずし字をみるとさてこんなかたちであったかと・・・

「きゅうそ」は「窮鼠」でしょうけど、本文では「旧」(きゅう)とあてています。間違いか?

 

2021年9月24日金曜日

桃山人夜話巻一 その42

P23後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

袮ぶとりハ必    大 い

     可奈ら須゛於本

ねぶとりはかならず おおい


びきを可きて色 け奈く毛のごと尓徒けてさう\゛/し

      いろ

びきをかきていろけなくものごとにつけてさうぞ うし


个れバ愛 想 尽 る奈り袮ざうの阿しき女  ハ是 も変 化

   あ以さうつく          をん奈 これ へんげ

ければあいそうつくるなりねぞうのあしきおんなはこれもへんげ


のひとつ奈り奥 州  ニて袮ざう阿しき越寝肥  と云 也

      をう志う          袮ぶとり いふ

のひとつなりおうしゅうにてねぞうあしきをねぶとりというなり


(大意)

寝肥の女は必ず大いびきを

かき色気がなく、何事につけても雑で騒々しい

ので、愛想が尽きてしまう。寝相の悪い女はこれも化け物のうち

のひとつである。奥州では寝相の悪いことを寝肥というのである。

(補足)

 寝相の悪い男のことを何ひとつふれてないのが玉に瑕。寝相悪くいびきの轟音と寝返りの動きの激しさで、朝目覚めたら家が壊れていたという噺もあったとか・・・

「必」の振り仮名「ら」がわかりにくいけどちゃんとあります。

「毛のごと尓徒けて」、変体仮名「徒」(つ)は変体仮名「津」(つ)ににてます。

「尽る」、「る」は小さい「◯」のよう。

 

2021年9月23日木曜日

桃山人夜話巻一 その41

P23前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  八 寝肥

多゛以者ち袮ぶとり

だ いはちねぶとり


寝肥  ハ病  名 寝惚堕 也 女  の病  のひとつ奈り俗  尓寝

袮ぶとり びやうめい袮ぶとり  をん奈 やまひ      曽゛く 袮

ねぶとりはびょうめいねぶとりなりおんなのやまいのひとつなりぞ くにね


者ゞ可里とて袮ごきを戒   多る也 昔  奥 州  尓女  有 十布の菅

          いましめ    む可しをう志う  をん奈ありとふ 春げ

はばかりとてねごきをいましめたるなりなかしおうしゅうにおんなありとふのすげ


ごも尓己 れ七 布ニ袮天男  を三布尓袮可せり歌 尓ミちのくの十

   をの 奈ゝふ   をとこ ミふ     う多      と

ごもにおのれななふにねておとこをみふにねかせりうたにみちのくのと


布の春げごも七 布尓ハきミ越袮させ天王れハ三布袮ん登詠 多り

ふ     奈ゝふ            ミふ   よミ  

ふのすげごもななふにはきみをねさせてわれはみふねんとよみたり

(大意)

第八寝肥

寝肥の病名は「寝惚堕」である。女の病のひとつである。俗に

「寝はばかり」といい、寝ごき(寝坊)を戒める言葉である。

昔、奥州に女がいた。十布(とふ)の菅薦(すげごも)に、自分は七布に寝て、男を三布に寝かせた。歌に

「みちのくの十布の菅薦七布にはきみをねさせてわれは三布にねん」と詠んだ。

(補足)

「寝」の「宀」が「穴」になってます。「寝肥」は当て字です。「寝惚堕」も同じですけど、当て字度は「寝肥」のほうが断然高い。

「菅薦(すげごも)」は菅で編んだ莚(むしろ)。

変体仮名「尓」(に)や同じく英筆記体小文字「y」(に)やカタカナ「ニ」が大小出てきてます。

もしかしたら、大きさの違いは音読するときの声の大きさに準じているのでしょうか。小さい「に」はその前の文章の息継ぎのように声を抑えてはくように発声し、大きい「に」はその前の単語を強調するために強くはっきりと発声する。それを意識して音読するとなんとなく納得してしまいます。

 

2021年9月22日水曜日

桃山人夜話巻一 その40

P22 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

寐ぶとり

ねぶとり


む可し見めう川ら可奈る

むかしみめうつらかなる


おん奈阿りし可゛袮ふれる

おんなありしが ねぶれる


時 盤その身座敷 中

とき   ミざしきぢう

ときはそのみざしきじゅう


にふとりいびきのこゑ

にふとりいびきのこえ


車  能とゞろく可゛ごとし

くるま

くるまのとどろくが ごとし


これ奈ん世尓袮ぶとり

    よ

これなんよにねぶとり


といふものに古そ

というものにこそ


(大意)

寝ぶとり

むかし見目麗しい

女がいたが、眠る

ときはそのからだが座敷中

に太っていっぱいになり、いびきの声が

車の轟音のようであった。

これが世にいう寝ぶとり

というものである。


(補足)

 座敷にいっぱいになることをのぞけば、このような方々は性別に関係なくいらっしゃいます。今はペットでも・・・。なのでいっぱいになることをのぞいた部分を、世間にはなさそうな噺としてとりあげて「寝ぶとり」としたのでしょう。「寝いびき」では夜話になりませぬ。

「見めう川ら可」、「め」がパッとみため「あ」かと。変体仮名「川」(つ)、なんで縦三本が横長の一筆書きの「つ」になるのか?でも片仮名「ツ」は縦三本。

「時盤」、いつもは助詞「は」は変体仮名「者」(は)or片仮名「ハ」ですけど、ここでは変体仮名「盤」(は)。

「座敷」、「敷」のくずし字はよくわからないかたちですがよくでてきます。偏の「方」の上の部分だけが全体の上半分になって、「方」と「攵」(のぶん)がひとかたまりになって下半分になってます。

「いびき」、「ひ」が「き」に押されている感じ。「い」ではとおもいきや「い」に濁点はつきません。

「車能」、この変体仮名「能」(の)もよくでてきます。

「ごとし」、「こと」は合字でこれでひと文字。

「これなん」、この「なん」は辞書で調べても出てきません。「なむ」で調べます。高校の古文の授業みたい。

「古そ」、変体仮名「古」(こ)だとおもいます。

 就寝中のご婦人の寝顔と上半身裸の様子が不釣り合いで着ぐるみを着ているみたい。右腕を折り曲げて頭を支えています。その指が肩越しにのぞいているのですけど、それがなんとも不気味、親指の爪まで描いています。寝所の部屋はスッキリしていてきれい。行灯や枕屏風は簡素。寝具は掻巻布団が暑苦しそう。だから裸なのか。敷布団の角にある四角い箱はなんでしょう。

 

2021年9月21日火曜日

桃山人夜話巻一 その39

P21 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

野宿  の火

のし由く ひ

のしゅくのひ


きつね火尓毛あら春゛草 原  火尓て毛奈く

   び      さう个゛んび

きつねびにもあらず そうげ んびにてもなく


春 ハ桜  可゛り秋 ハ紅葉 可゛りせしあ登尓

者る さくら   あき もミち     

はるはさくらが りあきはもみじが りせしあとに


火もえあ可゛り人 の於本くさ王ぎう多唱 ふ

ひ      ひと         う多

ひもえあが りひとのおおくさわぎうたうたう


聲 のミ春るハ

こへ 

こえのみするは


野宿  の火と

のし由く ひ

のしゅくのひと


いふもの

いうもの


奈らん

ならん


(大意)

きつね火でもなく、草原火でもなく

春は桜狩り、秋は紅葉狩りをした跡に

火が燃え上がり、人が大勢騒ぎ、歌を唄う

声だけが聞こえてくるのは

野宿火というものであろう


(補足)

一行目に変体仮名「毛」(も)がふたつあります。最初のはわかりやすいですけど、次のがかたちがわかりにくい。前後の流れで読むしかなさそうです。

「あら春゛」、「ら」がながれて「し」のよう。最後の行「奈らん」の「ら」はまた異なる形。

「桜」が「櫻」でもなく、かたちがわかりません。

「さ王ぎ」、「王」と「き」の一画目が近くになっていてわかりずらい。

「声」は旧字「聲」でしょう。

「野」のくずし字が偏の「里」を「田」と「土」に分解して「土」を下部にもってきたようなかたちになってます。

 ただ火が燃え上がっているだけでは焚き火の残り火が再び燃え上がったように見えてしまうので(桜or紅葉の)木の枝にボロ布を幕にして風情をだしているともおもえませんが、まぁそれでも焚き火跡にしか見えないのはわたしの粗末な頭の限界であります。

 徒然草にいくつもでてくる噺のようでもありますけど、夜話の噺としてはいまひとつゾクッと感がありませんでした。

 

2021年9月20日月曜日

桃山人夜話巻一 その38

P20後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

後 何 連も毛の春ごし雨 の後 抔 尓燃 立 多るを木の間

のちいづ       あめ のち奈ど もえ多ち   こ ま

のちいずれもものすごしあめののとなどにもえたちたるをこのま


可゛くれ尓ミれ者゛人 のつどい天毛のいふさま奈ど尓こと奈

         ひと

が くれにみれば ひとのつどいてものいうさまなどにことな


ら春゛哀  尓物 春ごくして春さ満じきものハ野宿   火也

   あハれ 毛の             の志゛由くび 

らず あわれにものすごくしてすさまじいものはのじ ゅくびなり


(大意)

(去った)後など、いずれも不気味なものである。雨のあとなどに(ゆらゆら)と燃え上がっているのが木の茂みのあいだから見え隠れするのをみれば、人が集まって語らっている様子などと異なることはない。哀れで不気味で恐ろしいものは野宿火である。


(補足)

最初の「後」は楷書を少しくずした感じで読みやすいですが、「雨の後」のほうはくずれずぎて読めません。

「何連も毛の春ごし」、「も」の平仮名と変体仮名が連続してます。「ものすごし」は現在の意味の「物凄い」ではなく「なんとなく不気味そうな感じ」の意。2行後には「物春ごくして」と再登場。

「燃立多る」、「立」の振り仮名がかすれていますが(多ち)でしょう。「燃」が本文では「然」になってます。2行前でも。

「木の間」、「間」のくずし字は特徴的、頻繁に使われます。「門」(もんがまえ)が冠のように変化します。

「人のつどい天」、「い」が悩む。次の「毛のいふさ満」の「い」はOK。

「哀」、振り仮名がないとまず読めない。次に出てきても読めないとおもう。

「野宿火」、「野」は楷書風ですが「宿」は別物、「火」はまぁなんとかOK。

 焚き火を囲んでいた人たちが火を始末して立ち去った後も、木の茂みの間から消したはずの火がチョロチョロと立ち上がっている(ようなも)のを見ると、まるで立ち去った人たちがまだ焚き火を囲んでいるように見えてしまう。あぁなんと不気味なことだろう。また悲しくもあり恐ろしいことだ。というような感じなのでしょうか。わからないときのフィクションだのみであります。

 

2021年9月19日日曜日

桃山人夜話巻一 その37

p20前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  七 野宿   火

多゛以志ちの志゛由くび

だ いしちのじ ゅくび


田舎 道 ハ更 尓天街 道 山 中 抔 いづこ尓も阿り誰可゛焚

い奈可ミち さら  可いどうやま奈可奈ど       多  多き

いなかみちはさらにてかいどうやまなかなどいずこにもありたが たき


捨 多るとハ奈し尓人 奈き跡 尓本と\/と燃 上  りてハ消きえ

春て       ひと  阿と      もえあ可゛   き

すてたるとはなしにひとなきあとにほとほとともえあが りてはききえ


天ハ又 毛由志多゛し焚 志免多る本むろの消 天ハ燃 るを野

  ま多      多き        きえ  も由  の

てはまたもゆしだ したきしめたるほむろのきえてはもゆるをの


宿   火と云 乞 食 の暁   起 出 多る跡 遊山 尓人 の去 たる

志゛由くび いふこつじき あ可つき於きいで  阿とゆさん ひと さり

じ ゅくびというこつじきのあかつきおきいでたるあとゆさんにひとのさりたる


(大意)

第七野宿火

田舎道はいうまでもなく街道や山中などどこにでもある。誰が焚き

捨てたというわけではないが、人のいないところでほとほとと燃え上がっては消え、消え

てはまた燃える。少しずつ焚き上がってゆく炎の消えては燃えるのを

野宿火という。乞食が暁に起き出した跡や遊山の人が去った(後など)


(補足)

 妖怪ではなく野宿火という怪火のはなしです。

「本と\/と」、「\/」に気づけばわかりますが、初見では悩みます。「ほとほと」は辞書では、「ことこと」のように木製のものが何かにあたったり打たれたりしてたてる音とあります。

「燃上りてハ消きえ天ハ」、「消」(き)とありますが振り仮名に「え」をわすれたのか、それともわざと「え」を省略したのか?。次の行には「消天ハ」の振り仮名には(きえ)とあります。

「毛由」、ここで文章がきれるのが最初は気づきませんでした。

「志多゛し焚志免多る本むろの消天ハ燃る」、「しだし」がよくわかりませんが、チョロチョロと消えそうで消えない様をあらわしていることはわかります。

「野宿火」、ここの「野」のくずし字が古文書にはよく使われます。

 

2021年9月18日土曜日

桃山人夜話巻一 その36

P19後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

刃 傷  の場 越浄 めざれバ其 跡 をひき首 くゝ里多る

尓んせう  者゛ きよ    曽のあと   くび

にんじょうのば をきよめざればそのあとをひきくびくくりたる


樹を切 捨 ざれバま多の首 くゝり阿りと云 奈らハし心

き きり春て      くひ      いひ    志ん

きをきりすてざればまたのくびくくりありといいならわししん


中  奈ど同 じ所  尓阿るも皆 是 死春る時 の悪念  奈里

ぢう   於奈 ところ    ミ奈これし  とき あく袮ん 

じゅうなどおなじところにあるおみなこれしするときのあくねんなり


(大意)

刃傷のあった場所を浄めなければ、同じようなことがその跡で起こり、首つりのあった

樹を切り捨てなければ、また首つりがあると言い習わされている。

心中などが同じところであるのも、みなこれ死ぬときに悪心をもつがためである。


(補足)

「刃傷の場」、「傷」と「場」の旁は「ノ」「一」の違いだけですが、くずし字では同じになってます。

 画で死神が部屋に向かって死神波を送っている手振りのことを記しましたが、どうやらこれは送っているのではなく、「阿しき所へ引入る也」とあるようにこちらに引き込んでいるまたは引き寄せている手振りのようです。

 

2021年9月17日金曜日

桃山人夜話巻一 その35

P19前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  六 死 神

多゛以ろく志尓可゛ミ

だ いろくしにが み


俗  尓死 神  と云 ハ夭 孽  招 禍 と天悪 念 有 て果 多るもの

曽゛く 死尓可゛ミ いふ よう个゛つせうくハ  阿く年んあり 者て 

ぞ くにしにが みというはようげつしょうか とてあくねんありてはてたるもの


農氣又 悪 念 有 者 尓応 じて阿しき所  へ引 入る也 紙 谷治

 きま多阿く年んあるもの 於う     ところ ひきい   可ミやじ 

のきまたあくねんあるものにおうじてあしきところへひきいるなりかみやじ


兵衛の浄  瑠璃尓も死 神  の誘  出 してやと書 しハ作 者 農

へい ぜう るり  し尓可゛ミ さ曽ひ多゛    可き  さくしや

へいのじょうるりにもしにが みのさそいだ してやとかきしはさくしゃの


働 詞 也 心  尓死越思 ふ時 ハ忽   此 氣尓感 春゛る奈りされバ

者多らき  こゝろ し 於も とき 多ちまちこのき 可ん     

はたらきなりこころにしをおもうときはたちまちこのきにかんず るなりされば


(大意)

第六死神

俗に死神というのは妖孽招禍(ようげつしょうか)といって、悪心を持ったまま果てた者

の気が、また(同じく)悪心あるものに働きかけて悪しき所へ引き入れるのである。紙屋治

兵衛の浄瑠璃にも「死神の誘出してや」と書いたのは作者の

功績である。心に死を思うときにはたちまちこの気を感ずるものである。だから


(補足)

「妖孽招禍」、「招禍」は目にしますが「妖孽」(ようげつ)は初めて、本文のほうの「げつ」は「艹」+「避」の辶なし+「ホ」ですが、辞書のほうは「艹」+「追」の辶なし+「辛」+「子」です。どちらにしても聞いたことも目にしたこともありませんでした。漢字は部品を組み合わせて千変万化。

変体仮名「農」(の)が2箇所にあります。文章のながれで使い分けるのでしょうが、まぁ気分次第と理解しています。

「気」のくずし字は、4画目までの部分が冠になってます。よくある変形で「間」なども同様にくずされています。

「阿しき」、「し」を読み落としそう。

「書」のくずし字、「小」+「口」のようなかたちでよく出てきます。

「働詞」(はたらき)にちかいものを辞書で引くと「働き詞」(はたらきことば)があり、「用言」・「動詞」の旧称とありました。

「感」が「惑」とほとんど同じかたちです。

 

2021年9月16日木曜日

桃山人夜話巻一 その34

P18 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

死 神

し尓可゛ミ

しにが み


死 神  の一 度 見い連る

し尓可゛ミ ひと多び  

しにが みのひとたびみいれる


時 ハ必  春゛横 死乃難

とき      王うし 奈ん

ときはかならず おうしのなん


あり自害  し首 くゝ

  じ可゛い くび

ありじが いしくびくく


里奈ど春る毛ミ那

りなどするもみな


此 ものゝさそひ

この

このもののさそい


て奈須こと

てなすこと


那り

なり


(大意)

死神

死神に一度(ひとたび)みいられてしまったときは

必ず不慮の死の災厄がある。自害したり首を

くくったりなどをするのも、みな

この死神の誘い

でしてしまことなのである。


(補足)

「横」が「模」にみえます。

「里奈ど」、変体仮名「里」(り)が変体仮名「王」(わ)の「已」にみえます。

「春る毛」、ここの「も」は読みにくい変体仮名「毛」(も)。次の行には平仮名「も」があります。

「こと」は合字。これでひと文字。

 死神の体の向きと顔と両手を向けている向きが異なっています。まるで死神波を送っているよう。

 

2021年9月15日水曜日

桃山人夜話巻一 その33

p17 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

磯 那で

いそ

いそなで


西 海 尓於本く有

さい可い    あり

さいかいにおおくあり


其 可多ち鱶魚乃

その   ふ可

そのかたちふかの


ごとく尾越あげて

   を

ごとくおをあげて


舩 人 を奈で引 込

ふなびと   ひきこミ

ふなびとをなでひきこみ


てくらふとぞ

てくらうとぞ

(大意)

磯なで

西の海におおくいる。

そのかたちはフカに

似て、尾をあげて

船人をなで払い、海に引き込んで

食うという

(補足)

「な」はたいてい変体仮名「奈」(な)ですが、変体仮名「那」(な)もよく出てきます。この「那」は英文字筆記体「m」のようなかたちのもあります。

「ふか」で変換すると「鱶」(魚+養)になりますが、ここでは「鱣」(魚+亶)になっています。

 この漁師は磯撫に襲われているというより、磯撫狩りをしているような表情です。船の中には魚籠なのか、それとも持ち運びできる竈のようなものがみえます。やる気満々。

 

2021年9月14日火曜日

桃山人夜話巻一 その32

P16後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

鉄 の如 き針 逆   尓生  ぜり豊前 吹 手の濱 尓天旅 僧

てつ ごと 者りさ可しま せう   ぶぜん本つて 者満  里よ曽う

てつのごときはりさかしまにしょうぜりぶぜんほってのはまにてりょそう


王尓ゝとられしこと南 朝 咄   尓出 多るも此磯  奈での

         奈んてう者゛奈し いで   このい曽

わににとられしことなんちょうばなしにいでたるもこのいそなでの


こと奈るべし本 草 異考 尓巨 口 鰐  登出多るも此

      本んざうゐこう きよこう可゛く いで  この

ことなるべしのんぞういこうにきょこうがくといでたるもこの


磯 奈でのこと奈りといへり去 バ渡海 ホ ニハ心  を附 べき也

い曽           され と可いとう  こゝろ つく

いそなでのことなりといえりさればとかいとうにはこころをつくべきなり


(大意)

鉄のような針が逆さまに生えている。豊前の国、吹手の浜で旅の僧が

わににとらわれたことが「南朝咄」にでているが、これも磯撫の

ことだろう。「本草異考」に「巨口鰐」とでているのも、この

磯撫のことであるといえる。だから渡海するときなどには気をつけるべきである。

(補足)

 この話は妖怪ものではなく、海にでたときの心構えを説いているようです。実際に沢山の人が海で命を失われているのですから、だれしもうなずきながら読んだはずです。現代版のジョーズであります。「磯」と陸に接している海との境目の言葉を使っているのは、当時は沿岸での航行しか幕府が認めていなかったためであるかもしれません。

「王尓ゝとられしこと」、ひとつながりでかかれているので、切れ目を確認すると勉強になる。

「南」のくずし字は、「十」のあとそのまま右回りに筆を運びます。

「本草異考」、ここの「本」のくずし字は「大」+「十」。「草」は「単」のようなかたち。「己」+「大」は「異」の異体字。

 

2021年9月13日月曜日

桃山人夜話巻一 その31

P16前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  五磯 撫

多゛いごい曽奈で

だ いごいそなで


肥前 松 浦の沖 尓ハ北 風 荒 く吹 時 必    磯 撫 と云 魚 海 上 尓

ひぜんまつら 於き  き多可ぜあら ふくとき可奈ら須゛い曽奈で いふうを可いせう

ひぜんまつらのおきにはきたかぜあらくふくときかならず いそなでといううおかいじょうに


出 天暴   る也 此 時 船 通 りかゝ連バ可の魚 尾越以 天船 中

いで あ者゛る   このときふ年とを       うをを もつ せんちう

いでてあば るるなりこのときふねとおりかかればかのうおおをもってせんちゅう


の人 を海 へ撫 こミ喰 ふと曽゛形   ハ鱶 尓似天大  也 尾尓ハ

 ひと うミ なで  くら    可多ち ふ可 尓 於本い  を

のひとをうみへなでこみくらうとぞ かたちはふかににておおいなりおには


(大意)

肥前松浦の沖に、北風が荒く吹くとき、必ず磯撫という魚が海上に

出て暴れる。このとき船が通りかかれば、その魚が尾で船中の

人を海へ払い落とし食うという。かたちは鱶(ふか)に似て大きい。尾には


(補足)

「北」のくずし字はそのまま覚えるしかありません。

「と云魚」、よくみないとどこで字が切れるのかわかりません。

「上」、おおきな「と」にみえます。

「かゝ連バ」、ひらがな「か」はあまりつかわれない。

 

2021年9月12日日曜日

桃山人夜話巻一 その30

P15後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

日 程 を経天馬 の重 荷越負ふ可゛ごとき真似を

尓ち本ど へ うま 於も尓 於      ま袮

にちほどをへてうまのおもにをおうが ごときまねを


奈し天死し多り个り去れバ牛 馬 ホ ハ分 天人 の労 越

   し     され ぎうバ とう 王け ひと らう

なしてししたりけりさればぎゅうばとうはわけてひとのろうを


助  る毛の奈連バい多ハるべきこと奈り个り時俗  是 与り

多春く                  じ曽゛くこれ

たすくるものなればいたわるべきことなりけりじぞ くこれより


狼 狽 騒 ぐこと越長  次郎馬 天゛も呑 多゛可と云 習  せり

うろ多へさ王    てう じろうま   のん    いひ奈らハ

うろたえさわぐことをちょうじろうまで ものんだ かといいならわせり


(大意)

(百)日程経って、馬が重荷を背負うような格好を

して死んでしまった。さて、牛や馬はとりわけ人の労(働)を

助けるものであるから、いたわってやるべきである。世間ではこれより

狼狽し騒ぐことを「長次郎馬でも呑んだか」と言い習わすようになった。


(補足)

「百」のくずし字が「国」とほとんど同じです。

「経」のくずし字は次に出てきても読めないかも。くずし字辞典にものってませんでした。

「こと」+「゛」、「こと」は合字、これで一文字。2行あとと3行あとにもでてきます。

「分」のくずし字は「彡」+「ヽ」。

 日本の諸国には馬刺しで食する習慣のあるところがたくさんあります。まさしく「馬を食う」わけです。馬刺し食は近代になってからのことでしょうか。

 江戸後期になって西洋人がたくさん訪れるようになりますが、彼らの見聞録を読むと、日本人たちの馬の扱いがとても下手であるというのが共通しています。

 ここの話は実は馬を呑んだのではなく、馬に呑まれたというおはなしなのかもしれません。

 

2021年9月11日土曜日

桃山人夜話巻一 その29

P15前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

てハ出 ゆき个り此 霊 尓煩 らひ悩  せらるゝ其 苦 しミ

  いで    この連以 王づ  奈や満    曽のくる

てはいでゆきけりこのれいにわずらいなやませらるるそのくるしみ


毛の尓たとへ天い者ん可多奈く悪 口 雑 言 し天身尓

                       あつこうざうごん  ミ

ものにたとえていわんかたなくあっこうぞうごんしてみに


行  ひ多る悪 事ハ更 尓天阿るとあらゆる多王こと越

於こ奈   あくじ さら

おこないたるあくじはさらにてあるとあらゆるたわことを


吐 天三時 者゛かり苦痛 春ること日ヾ奈り医療  祈

者き ミとき    くつう    ひ   ゐ里やうき

はきてみときば かりくつうすることひびなりいりょうき


祷 術   を尽 し津連どもさら尓其 可ひ奈くし天百

とう志゛由つ つく        曽の      ひやく

とうじ ゅつをつくしつれどもさらにそのかいなくしてひゃく


(大意)

(悩まし)ては出ていった。この霊に煩い悩ませられるその苦しみは

ものにたとえていいあらわしようがなく、(まわりに)悪口雑言し、

更には自身の行った悪事もくわえ、ありとあらゆるたわごとを

吐いて、三時(6時間)ほど苦痛の日々を過ごした。医療や

祈祷術を尽くしたが一向にその甲斐もなく、

(補足)

 全体に漢字のくずし字も変体仮名も読みづらい頁です。

「悪口雑言」、まわりにあたりちらして。

「行ひ」、どうもこの漢字のくずし字は苦手です。

「悪事」、ここの「事」は異体字「古」+「又」。

「尽し津連ども」、「尽」のくずし字は「尺」+「丶」ふたつ、のように上下になってます。「津」としましたが「佐」とよんでも意味は通じます。

 

2021年9月10日金曜日

桃山人夜話巻一 その28

P14 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

塩 の長  次郎

志本 ちやうじらう

しおのちょうじろう


家 に飼 多る

いへ 可ひ

いえにかいたる


馬 を殺 して食 しより馬 の

うま ころ  くひ   うま

うまをころしてくいしよりうまの


霊 氣常 尓長  次郎 可゛口 を出入 奈須とぞ

れいきつ年 ちやうじらう  くち でいり

れいきつねにちょうじろうが くちをでいりなすとぞ


古乃事 ハむ可しよりさ満\゛/尓いひつ多へり

  こと

このことはむかしよりさまざ まにいひつたえり


(大意)

塩の長次郎


家に飼っている

馬を殺して食べてから、馬の

霊気が常に長次郎の口を出入りするという。

このことは昔より様々に言い伝えられている。

(補足)

 口に出入りする馬の霊気にしては、とてもとても実物そのものの馬の下半身であります。尻まわりなどのぞこうものなら、激しく蹴飛ばされそう。

「長次郎」(ちやうじらう)は本文のほうでは「長司」(てうじ)でした。

「霊気」、「霊」が「異」の異体字のようにみえます。

「古乃」、読みは「この」ですが、一瞬迷います。

「いひ」、どちらも似ている。

 

2021年9月9日木曜日

桃山人夜話巻一 その27

P13 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

狐者異

こ者ゐ

こわい


(大意)

(補足)

 説明文はありません。角提灯のような簡易卓の上には湯気のたっている小皿がふたつ、唐辛子でも入っているのか薬味入れみたいなものがひとつ。ところが、お化けのかぎ爪みたいな手にも卓上まわりにも箸が見当たりません。「うどん」と屋号「∧∧吉」(山吉)のある箱は箸入れかもしれないけど空っぽ。どうやって食えばいいのじゃとめんたま飛び出し、舌がうごめく。

 簡易食卓の造作といい、背景の腰壁は直線で簡潔丁寧。化け物には足も直線もありませぬ。


 

2021年9月8日水曜日

桃山人夜話巻一 その26

P12後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

る時 漬 多る肉 の尽 个れバ老 馬 の用 尓多ゝざるをうち

 ときつけ  尓く つき   らう者゛ よう 

るときつけたるにくのつきければらうば のようにたたざるをうち


殺 し天喰 ひし尓夢 尓其 馬 長 司 可゛咽尓くひつくと

ころ  くら   ゆめ 曽のうまてうじ  のど

ころしてくらいしにゆめにそのうまちょうじがのどにくいつくと


見し可゛其 日与り馬 越殺 せし時刻 と奈連バ老 馬 の

ミ   曽の   うま ころ  じこく    らう者゛

みしが そのひよりうまをころせしじこくとなればろうば の


霊 来 りて長 司 可゛口尓いり腹 中  越い多免奈や満し

連以き多  てうじ  くち   ふくちう  

れいきたりてちょうじがくちにいりふくちゅうをいためなやまし


(大意)

ある時、漬けておいた肉がなくなったので、年とって役に立たなくなった馬を打ち

殺して食ったところ、夢にその馬が出てきて長司の咽に食いつくのを

見た。そしてその日より馬を殺した時刻になると殺した老馬の

霊が来て、長司の口に入り、腹を痛め悩まして


(補足)

「肉の尽个れバ老馬の用」、「肉」の一画目がありません。「尽」、中の点々が下部に出てしまったような形のくずし字。「用」、肉同様一画目がなく「那」の偏のような筆順と形です。

「喰ひし尓」、「し」がわかりにくい。「し」は長くなったり短くしたり、文字の左側にかさなったりと変化自在。

「口尓いり」、「り」が形をなしていませんが、流れで理解。

「腹」、偏の「月」がこんな形のもあるんですね。

「奈や満し」、「し」をよみとばしそう。