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2024年7月22日月曜日

莫切自根金生木 その47

P29 国文学研究資料館蔵

(読み)

そのゝち

そののち


ふう婦ハ

ふうふは


こゝろを

こころを


あら多め

あらため


王可やへ

わがやへ


可ゑりハ

かえりは


かへつ多れど

かえったれど


金 で

かねで



どころの

どころの


奈き

なき


本ど

ほど


めで

めで


多く

たく


む可ふ

むかう


者るの

はるの


者るい

はるい


志由こうも

しゅこうも


御王らひ

おわらい


くさそうしと

くさそうしと


御者つ可しく

おはずかしく


唐 来 参 和印

とうらいさんな印


千代女 画

ちよじょが

(大意)

 そののち、夫婦は心をあらためわが家や帰るには帰ったのだけれど、金で居所のない程でありました。めでたく迎える春の春い(悪いのひっかけ)趣向もお笑い草双紙とお恥ずかしく。

唐来参和印

千代女画

(補足)

 金との縁に心乱れ、あらん限りの散財を試みるもかえって財を爆富みさせてしまい、そんなわが運命を受け入れた萬々と妻、万両箱の隙間に体育座りする萬々の顔はどこかすっきりした表情に。

 絵師も万両箱を整然と並べ積み重ね、夫婦の心のありようを上手に描きしめくくっています。

 

2024年7月21日日曜日

莫切自根金生木 その46

P27P28 国文学研究資料館蔵

(読み)

王しらハ御可げで

わしらはおかげで


可年もち二奈り

かねもちになり


まし多

ました


その

その


於ん

おん



王すれ

わすれ


させうとハ

させうとは


ふとい

ふとい


ひと多゛

ひとだ


御うけとり

おうけとり


奈されずハ

なされずば


こう遍ん二

こうへんに


い多して

いたして


御遍んさい

ごへんさい


申 す

もうす


P28

奈んでも

なんでも


うちへ

うちへ


ひき

ひき


徒゛つて

ず って


いつて

いって


金 を

かねを


ミ奈

みな


くゝし

くくし


付 る可゛

つけるが


いゝ

いい

(大意)

(借り手二)「わたしらはおかげで金持ちになりました。その恩を忘れさせようとは肝の太い人だ」

(借り手三)「お受け取りにならないのでしたら、表沙汰にしてご返済いたします」

(借り手四)「もう無理矢理にでも家へ引きずって行って、金を全部くくりつけるのが一番だ」

(補足)

「こう遍ん」、『こうへん【公辺】

② 表向き。表ざた。「―にいたして御返済申す」〈黄表紙・莫切自根金生木〉』

 左の頁、金を運ぶのに、手前は籠(かご)のようなつくりになっていて人が前後でかつぐようになっていますけど、重たすぎて無理なのでは。そのうしろは馬(たてがみが細かくきれい)がひいているようです。

 

2024年7月20日土曜日

莫切自根金生木 その45

P27P28 国文学研究資料館蔵

(読み)

ホンニ可年もちの女  本゛う尓ハ

ほんにかねもちのにょうぼ うには


何 可゛奈る可

なにが なるか


於きどころの奈い

おきごころのない


可年ハさ可さ尓して

かねはさかさにして


ふるつても

ふるっても


於きどころ

おきどころ




さらぬ

ざらぬ


元 利

がんり


そろへて

そろえて


御やどへ

おやどへ


遍んさい二

へんさいに


まいつ多ら

まいったら


P28

ちやんと

ちゃんと


るすを

るすを


つ可王つ

つかわっ


志やる可ら

しゃるから


これまで

これまで


於つ可けて

おっかけて


まいつ多

まいった

(大意)

(萬々妻)「ほんとうに、金持ちの女房には、なるものではないさ」

(萬々)「置きどころのない金は、逆さにして振るっても、置きどころはござらぬ」

(借りた人一)「元利そろえてお宿へ返済に参ったら、もう留守にしてらっしゃったから、ここまで追っかけてまいった」

(補足)

「さ可さ尓して」、「さ」は間違えて変体仮名「多」になってしまっています。

「ちやんと」、ここの意味は『⑤ すばやく。さっと。ちゃっと。「凭(もた)れ給へば―退き」〈浄瑠璃・傾城無間鐘〉』でしょうか。

「於つ可けて」、ここの「於」は拡大してみても「や」にしかみえません。女房のセリフの出だしの「於」と比べてみても。

 萬々のセリフ、もう少しよい言い回しがあると、喉元まででかかっているのですけど、うーん🤔金の置きどころがなくあふれるほどあるのだけど、すっからかんにしても、まだまだ金があふれてきてしまってどうしようもない、ということなんですが。

 返済を迫る金持ちの身なりは羽織袴の正装です。

 

2024年7月19日金曜日

莫切自根金生木 その44

P27P28 国文学研究資料館蔵

(読み)

さき尓

さきに


可り多る

かりたる


ひと\゛/

ひとびと


いまハ

いまは


可年もちと

かねもちと


奈り

なり


可り多る

かりたる


金 二利二

かねにりに


里をそへて

りをそえて

P28

もちき多り

もちきたり


むりむ多い二

むりむたいに


へんさい

へんさい


せんとて

せんとて


多つミ

たつみ


あ可り二

あがりに


奈り

なり


可年を

かねを


於つ

おっ


つける

つける

(大意)

 以前にお金を借りた人々がいまは金持ちとなって、借りたお金に利息を十分にうわのせして持って来た。萬々におかまいなく無理矢理に返済しようと荒々しく金を押し付けた。

(補足)

「多つミあ可り」、『たつみあがり 【辰巳上がり】

① かん高い声を出すこと。「―なる高咄し」〈浮世草子・日本永代蔵•3〉

② 言動の荒っぽい・こと(さま)。「―になり,金をおつつける」〈黄表紙・莫切自根金生木〉』

 萬々夫妻は旅装束、萬々はかっぱをはおり脚絆に草履、左手には三度笠のようなものがみえます。妻は上っ張りを引っ掛けています。旅につきものの振り分け荷物がみあたりませんがさて🤔

 

2024年7月18日木曜日

莫切自根金生木 その43

P27P28 国文学研究資料館蔵

P27

(読み)

すて多る

すてたる


きん\゛/

きんぎん


せけんの

せけんの


可年とひと

かねとひと


か多まり二

かたまりに


奈りて者゛い

なりてば い


まし二奈りて

ましになりて


とび可へり

とびかえり


けれバいまハ

ければいまは


うち尓も

うちにも


多ちきり

たちきり


可゛多く

が たく


ふう婦

ふうふ


もろとも

もろとも


志由つ本゜んして

しゅっぽ んして


のやまも

のやまも


王可ず

わかず


あるきし

あるきし


ところへ

ところへ

(大意)

 捨てた金銀が、世間の金といっしょになり、倍増になって飛んで戻って来たために、今では家にいても、金銀との縁を断ち切ることは難しくなってしまい、夫婦そろって出奔した。野山やどこでもへと歩いていると、

(補足)

 萬々は数人に囲まれ何か嫌がる仕草、妻はおいおい泣いてます。さて、どうしたことか?

 

2024年7月17日水曜日

莫切自根金生木 その42

P25P26 国文学研究資料館蔵

(読み)

ウン\/ ウン\/ ウン\/

うんうん うんうん うんうん


可年のう奈るこへを

かねのうなるこえを


者じめてきい多可

はじめてきいたが


奈る本どウン\/といふの

なるほどうんうんというの


於ふごん可゛

おうごんが


まじつて

まじって


くるハ多゛ん奈ハ

くるはだ んなは


大 ごんまり

おおごんまり


多゛ろう

だ ろう


むせ う二

むしょうに


やきミそを

やきみそを

P26

や可せる可゛

やかせるが


いゝ

いい


ウン\/ ウン\/ ウン\/ ウン\/\/

うんうん うんうん うんうん うんうんうん 

(大意)

 ウンウン、ウンウン、ウンウン

「金のなる声をはじめて聞いたが、なるほどウンウンというのぉ」

「黄金がまじって飛んでくるのは、旦那はおお困り(おおごん)だろう」

「どんどん焼き味噌を焼かせるがいい」

ウンウン、ウンウン、ウンウン、ウンウンウン。

(補足)

「やきミそをや可せる」、焼き味噌は贅沢品で、焼き味噌を焼くと金が逃げるといわれた。

 ウンウンやう〜んとうなるのはうなり声のひとつですが、「金がうなる」は中国の故事であるそうです。

 ところで屋根に登っている3人、なんで裸なんでしょうか?

 

2024年7月16日火曜日

莫切自根金生木 その41

P25P26 国文学研究資料館蔵

(読み)

あり多けの

ありたけの


きん\゛/のこらず

きんぎん のこらず


春ていまハこゝろ二

すていまはこころに


可ゝるくも者れ多りと

かかるくもはれたりと


よろこぶ於り可ら春て多る

よろこぶおりからすてたる


きん\゛/ひと可多まり尓

きんぎん ひとかたまりに


奈りてくうち うへとびあ可゛れバ

なりてくうちゅうへとびあが れば


このせい二ひ可れてせ可い中  の

このせいにひかれてせかいじゅうの


きん\゛/いつ志よ二あつまり

きんぎん いっしょにあつまり


まん\/可゛

まんまんが


可年ぐらさしてとびくるハめもあてられぬ

かねぐらさしてとびくるはめもあてられぬ


志多゛い尓て可奈いのものどもを可年くらの

しだ いにてかないのものどもをかねくらの


や年二あげて

やねにあげて


可年多゛まをふせ可゛せる

かねだ まをふせが せる

(大意)

 ありったけの金銀を残らず捨てて、いまは心にかかっていた雲も晴れたと、喜んでいるそのそばから、捨てた金銀がひとかたまりになって空中へ飛び上がると、その勢いにひかれて世の中の金銀がひとところにあつまり、萬々の金蔵をめざして飛んでくる様子には目もあてられぬ次第であった。家中のものどもを金蔵の屋根に上げて飛んでくる金玉を防がせた。

(補足)

 火の粉をはらうは火消し、そして屋根上がって纏(まとい)を振り回すは江戸の華「纏持ち」。ここではその火のかわりにとんでくる小判(金)を振り払う箒二本に蜘蛛の巣のような煤取りぼうき(でもこんなのはじめてみました)。誰しもおもう、うちにとんでこないかなぁ。

 大金持ち萬々の蔵の屋根は天守閣並みの立派な屋根であります。

 

2024年7月15日月曜日

莫切自根金生木 その40

P23P24 国文学研究資料館蔵

(読み)

P24

ま多゛於くの

まだ おくの


くらの

くらの


三 十  こまえ可゛

さんじゅうこまえが


て可゛つ可ぬ

てが つかぬ


ミん奈

みんな


可せひで

かせいで


すて多

すてた


\/

すてた


P23

いまゝで

いままで


可年二うらミ可゛

かねにうらみが


かす\゛/

かずかず


あつ多可゛

あったが


のふ

のう


\/

のう



し多

した


P24

のこらず

のこらず


春て多ら

すてたら


あとへ

あとへ


し保者゛奈を

しおば なを


ふらせ

ふらせ


ませ ふ

ましょう


コレ\/

これこれ


そこらへ

そこらへ


こ本れぬ

こぼれぬ


やう

よう


すてさつ

すてさっ


せへ

せえ

(大意)

(手代一)「まだ奥の蔵の三十以上が手がついてない。みんな頑張って捨てた捨てた」

(萬々)「いままで、金に恨みが数々あったが、これで気持ちが落ち着いた」

(妻)「のこらずすてたら、あとへお清めの塩をまきましょう」

(手代二)「これこれ、そこらへこぼれぬように捨てるんだ」

(補足)

「三十こまえ」、「まえ」の意味がよくわからのですが、「〜以下」ということはないので「〜以上」と理解しましたが。

「可せひで」、『かせ・ぐ【稼ぐ】⑤ 仕事などにはげむ。努力して…する。「此のおうぢも,若い時―・いだによつて,今楽をする」〈狂言・財宝〉』

「そこらへ」、「そこ」の判別が難しい。

 一番左端、絵の中から引っ張り出してすぐにそのまま使えそうな筵(むしろ)があります。異様に丁寧に描かれていますけど、かきあつめた小判をいれる風呂敷代わりのようにもみえますが何でしょうかねぇ🤔


 

2024年7月14日日曜日

莫切自根金生木 その39

P23P24 国文学研究資料館蔵

(読み)

まん\/

まんまん


ハこし可゛

はこしが


ぬけ

ぬけ


てより

てより


もつ

もっ


けの

けの


さい

さい


王い

わい








やう

よう


じょう


せん

せん



於もひの

おもいの


本可

ほか


けろ\/と

けろけろと


奈をり

なおり


けれバ

ければ


も者や

もはや


王可゛

わが


うんも

うんも


これまで

これまで


奈りと

なりと


く王ん

か ん


P24

ねんして

ねんして


王可゛やへ

わが やへ


多ち

たち


可へり

かえり


ちと

ちと


ふる

ふる


けれど

けれど


きん\/

きんきん


せん生

せんせい


のせん

のせん


可くの

かくの


とふり

とおり


くらの

くらの


きん\゛/

きんぎ ん


をのこらず

をのこらず


とり多゛し

とりだ し


可いち うへ

かいちゅうへ


春て

すて


させる

させる

(大意)

 萬々は腰が抜けてから、これはよい機会と本腰を入れて養生しようとおもったものの、おもいのほかケロッと治ってしまったので、もはや我が運もこれまでなりと観念し、わが家へ帰った。少し古いが金々(金銀)先生の前例にしたがい、蔵の金銀を残らずとりだし、海中へ捨てさせた。

(補足)

「ハこし可゛」、なかなか読めず、「ハ」が「は」とわかれば読めました。

「きん\/せん生のせん可くのとふり」、この黄表紙の六年前に出版された、恋川春町「金銀先生再寝夢(きんぎんせんせいまたねのゆめ)」のこと。

 もっこをかついでいる竿の奥に四角の小さな窓のようなものがあって、なんだろうと・・・

一番右側に目をやると、蔵の窓があってやはり同じような蜂の巣状のものがあります。これは金網ですね。

 ここでは蔵が三棟描かれていて、この三つをあわせるとちょうど蔵全体となるように描かれているような気がします。

 黒瓦の隙間には白の漆喰が埋め込まれ、端の瓦には立派な家紋のあるものとなっています。

 

2024年7月13日土曜日

莫切自根金生木 その38

P21P22 国文学研究資料館蔵

P22

(読み)

まだ\/

まだまだ


こん奈

こんな


可らうと可゛

かろうとが


二三 百  も

にさんびゃくも


ござり

ござり


ます

ます


いしの

いしの


可らうとで

かろうとで


百  万 両

ひゃくまんりょう


とつ多

とった


やう奈

ような


つらをして

つらをして


奈まけずと

なまけずと


てめへも

てめえも


いつて

いって


あとを

あとを


可つ

かつ


いで

いで


きや

きや


(大意)

(人夫一)「まだまだこんな唐櫃(かろうと)が二三百もござります」

(人夫二)「石の唐櫃(かろうと)で百万両掘り当てたようなつらをしてさぼってないで、てめえも行って、残りを担いでこい」

(補足)

 人夫たちの着ているもの、胸当ても半纏にも「萬」の字が染め抜かれていたりして金がかかっているのがわかります。

 背景の松並木をよく見ると、千両箱のようなものを運んでいたり、飛脚が描き込まれています。

 右の松は幹も太く見ごたえたっぷりですけど、左の松も手を抜くことなく丁寧。

 

2024年7月12日金曜日

莫切自根金生木 その37

P21P22 国文学研究資料館蔵

P21

(読み)

四百  四びやうのやまいより

しひゃくしびょうのやまいより


金(キン)本どつらい

  きん ほどつらい


ものハ奈い

ものはない


於れハマア

おれはまあ


どうし多

どうした


いんぐ王で

いんが で


このやう二

このように


金 二ゑん可゛

かねにえんが


ある可

あるか


あやまり

あやまり


いつ多

いった


ホンニ

ほんに


金 の

かねの


あるのハ

あるのは


くびの

くびの


ある二ハ

あるには


於とつ多

おとった


こと多゛

ことだ

(大意)

(萬々)「四百四病の病より金(きん)ほどつらいものはない。おれはまぁどうした因果で、このように金に縁があるのか、勘弁してくれ」

(手代)「ほんに、金のあるのは、首のあるに劣ったことだ」

(補足)

「四百四病より貧(ひん)ほど辛い物無し」(どんな病気より貧乏ほどつらいものはない)のもじり。ちゃんと金(きん)と貧(ひん)で韻をふんでいる。

「金のあるのハくびのある二ハ於とつ多こと多こと」、「金の無いのは首の無いのと同じ事」という言い回しをもじったものだろうけど、いまひとつです。

 絵師はかならず修行時代に松(並)をなんども練習するとおもいます。この松は松でも三保の松原の松。なので気合をいれたのか、幹の描き方も松の葉の一本一本、枝ぶりもうまい。

 

2024年7月11日木曜日

莫切自根金生木 その36

P21P22 国文学研究資料館蔵

P21

(読み)

よく

よく


じつ


さう

そう


朝  より

ちょうより


可年二

かねに


あ可して

あかして


ぢを可い

じをかい


人 ぶを

にんぷを


あ徒め

あつめ


あま多の

あまたの


松 を

まつを








なか


より

より


いし

いし




らう

ろう


とを

とを


本り

ほり


多゛し

だ し


あけて

あけて


ミけれバ

みければ


P22

ま多

また


可年

かね


ゆへ

ゆえ


きもを

きもを


つぶして

つぶして


こし可゛

こしが


ぬける

ぬける

(大意)

 翌日早朝より、金にものをいわせて地所を買い、人夫を集め、たくさんの松を掘らせると、なかより石の唐櫃(かろうと)を掘り出し、あけてみると、また金であったので肝をつぶし腰がぬけてしまった。

(補足)

「可らうと」、『かろうと からうと【唐櫃】』『からびつ【唐櫃】〔古くは「からひつ」〕

かぶせ蓋(ぶた)のついた箱で,四本または六本の脚のついたもの。衣服・文書などを入れるのに用いられた。平生は室内に置き並べ,また旅にも持って行った。からうづ。からうと。かろうと』

「さう朝」、「朝」のくずし字は基本ですが、それよりも「月」が基本中の基本のくずし字。

 萬々腰を抜かし手代に助けられながら松の根方にくずれるの図。

 その前にはおおきな石の唐櫃、中には千両とかかれた箱が八つも!

 ちゃんと石の大きな蓋があるのが絵師のこだわり。

 

2024年7月10日水曜日

莫切自根金生木 その35

P20 国文学研究資料館蔵

(読み)

奈んでも多可い本うへ

なんでもたかいほうへ


於とす可ら

おとすから


ぎ里やう一者゛い

ぎりょういちばい


徒可゛も奈く

つが もなく


多可゛く

たか く


つも里やれ

つもりやれ


入 ふ多の

いりふだの


ぎで

ぎで


ござり

ござり


ます

ます


可ら

から


ずいぶん

ずいぶん


もう

もう


ける

ける


やう二

ように



もり

もり


まし多

ました

(大意)

(萬々)「なんでもよいから高い方へ決めるので、精一杯とんでもなく高く見積もってくれ」

(請負人)「入札の決め事でございますから、できるかぎり儲けるように見積もりました」

(補足)

「徒可゛も奈く」、『つがもな・い(形)《文ク つがもな・し》〔「つがなし」を強めた語。近世語〕

① 途方もない。とんでもない。ばかばかしい。「はあ―・い,私は大坂者,半七が叔母で御座りんす」〈浄瑠璃・長町女腹切•上〉』

 かすれてわからないところも多く、いろいろ資料文献にあたって調べてなんとか。

請負人の脇にあるのは煙草盆?、切り株or木の瘤を加工したようなおしゃれな一品。

 

2024年7月9日火曜日

莫切自根金生木 その34

P20 国文学研究資料館蔵

(読み)

志よせん

しょせん


ひと

ひと


とふり

とうり


でハ

では


志ん代

しんだい


もま王る

もまわる


まじと

まじと


くつと

ぐっと


ちへを

ちえを


めぐらし

めぐらし


三本の

みほの


松 原 の

まつばらの


まつを

まつを


本らせ

ほらせ


ゑど

えど


まで

まで



うん

うん


ちん

ちん


可れ

かれ


これ

これ


この

この


いり

いり


やう

やう


でハ

では


よもや

よもや


かね


も奈く奈り

もなくなり


そふ奈ものと

そうなものと


まづ大 ぜいうけ於い

まずおおぜいうけおい


尓んをあつめ

にんをあつめ


いれふ多゛をさせる

いれふだ をさせる

(大意)

 しょせん、このような普通のやり方では、身代も使い尽くせないだろうと、ぐっと知恵をめぐらし、三保の松原の松を掘らせ江戸まで運ばせれば、運賃やあれやこれやと費用もかかり、これなら金もなくなりそうなものと、まず大勢の請負人を集め、入札をさせた。

(補足)

 旅から戻ったようで、今度は請負人3名(右端の人は右手に入札状を手にしている)と敷居をまたいでの入札懇談中。

 萬々は按摩に肩をもんでもらい、旅の疲れをとっているのか?

 

2024年7月8日月曜日

莫切自根金生木 その33

P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

これハ

これは


ま多

また


とん多゛

とんだ


事 多゛

ことだ


あ可゛りめ可゛

あが りめが


ミへ多奈ら

みえたなら


うらず二

うらずに


於けバ

おけば


ヱゝ二

ええに


ま多於れ二

またおれに


ふさ可゛

ふさが


せる

せる


御もつ

ごもっ


ともで

ともで


ござります

ござります


れども

れども


さき\/

さきさき


可ら

から


金 二

かねに


い多

いた


して

して


つき

つき


つけます

つけます


可らい多し

からいたし


やう可゛

ようが


ござり

ござり


ませぬ

ませぬ


こ者゛ん

こば ん


多゛もの多゛

だ ものだ


こまつ多もの多゛

こまったものだ


ときこへる可

ときこえるか

(大意)

(萬々)「これはまたとんでもないことだ。値が上がりそうになるのがわかったなら、売らずにおけばよかったのに。また俺を憂鬱にさせる」

(手代)「ごもっともでござりますけれども、先方から金を積み上げて突きつけますので、どうしようもいたしかたありませぬ」

(萬々)「小判だものだ。困ったものだときこえるか」

(補足)

 かすれていて読みづらいですが、前後のつながりからなんとか読むことができます。

 手代の足先をみるとつま先立ちで、あわてて書状をもって萬々に届けた様子が伝わります。絵師の細かい気遣い筆使い。

 萬々は胡座をかたむけて半分立膝、からだをのりだして書状に見入ります。座布団二枚でちっとも「ふさ可゛せる」なんてことはなさそう。

 

2024年7月7日日曜日

莫切自根金生木 その32

P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

このころ大 あめ

このころおおあめ


ふり徒ゞき

ふりつづき


川 \/も

かわかわも


徒可へ

つかえ


けれバ

ければ


志者゛らく

しば らく


里与

りょ


志由く二

しゅくに


とう

とう


里 うの

りゅうの


うち

うち


この大 あれ二

このおおあれに


可い於ゐ多る

かいおきたる


こめ

こめ


一 ど二

いちどに


ね可゛

ねが


あ可゛

あが


つて

って


もう

もう


け多る

けたる


よし

よし


志よ

しょ


じやう

じょう


つき

つき


ける

ける

(大意)

 この頃、大雨が降り続き、川々も川止めになってしまい、しばらく旅宿に逗留していると、この大荒れの天候で買い置きしてあった米が一度に値が上がって儲けたという書状が届いた。

(補足)

 旅宿に逗留しているので、仕切りの衝立のうらには荷物がまとめられています。またふすまもそれらしくみせるために少しずらして描いているところがなかなか。その奥の部屋の桶はなんでしょうか?

 

2024年7月6日土曜日

莫切自根金生木 その31

P17P18 国文学研究資料館蔵

(読み)

P17

モシあれ可゛

もしあれが


可年奈ら

かねなら


江のしま可ねくらと

えのしまかねぐらと


奈づけて

なずけて


くらを多つて

くらをたって


いれて於く可゛

いれておくが


ようござり

ようござり


ます

ます


このけしきハ

このけしきは


日本 多゛志可し

にほんだ しかし


奈ん多゛可

なんだ か


いやミ奈

いやみな


ひ可り可゛

ひかりが


さすぜへ

さすぜえ


ま多ゑて

またえて


ものでハ

ものでは


ねへ可

ねえか


うるさへこつ多

うるさえこった


P18

さき可ら

さきから


もつと徒゛つ

もっとづ づ


つと

っと


あび

あび


可つせへ

かっせぇ


ヤイ\/

やいやい


こらつ可い二

こらつかいに


者゛ち

ば ち


者゛らつ多

ば らった

(大意)

(手代)「もしあれが金なら、江の島金蔵と名付けて蔵を建てて、入れておくのがようござりましょう」

(萬々)「この景色は最高だ。しかしなんだか嫌味な光がさすぜぇ。また得手物(例のもの(お金)))ではねぇか。なんてぇこった」

(漁師)「先の方をもっとズズッと網を引かっせぇ」

(漁師)「???」(意味不明です)

(補足)

 ここの文章もかすれやかけが多く、前後の流れから推測しながらの読みとなります。

「ゑてもの」、『えて【得手】

③ (聞き手にそれと分かる事物・人物・場所などをさして)例のもの。例のこと。例のところ。「歩(あい)ばつし。―へ行つて,ももんぢいで四文(しもん)二合半(こなから)ときめべい」〈滑稽本・浮世風呂•3〉』

『えてもの 【得手物】

②  →えて(得手)3に同じ。「また―(=オ金ノ意)ではねえか」〈黄表紙・莫切自根金生木〉』

 地引網の先端付近から十本くらいの後光のような光の線が出ていますが、これが「いやミ奈ひ可り可゛さす」でしょう。

 最後の漁師の言葉はよくわかりませんが、網をしっかり引けと言われて、いや何かが引っかかってしまって網がバラけてしまいそうだ、のような意味合いでしょうか。三浦半島周辺から鎌倉逗子平塚小田原と、沿岸の漁師は独特の浜言葉があって陸のものにはわからない一種の方言があります。

 浜の中央では萬々手代がのんきに地引網を眺めています。

 

2024年7月5日金曜日

莫切自根金生木 その30

P17P18 国文学研究資料館蔵

(読み)

まん\/

まんまん


せん生 ハ

せんせいは


よき

よき


ついで

ついで


奈りと

なりと


江の

えの


志まへ

しまへ


さん

さん


けいし

けいし


ま多

また


可年の

かねの


いる

いる


奈ぐ

なぐ


さミを

さみを


於もひ

おもい


つき

つき


里やうし

りょうし


ども

ども


いち

いち


やうの

ようの


そろひの

そろいの


ゆ可多を

ゆかたを


そめて

そめて


きせ

きせ


ぢびき

じびき


をさせし二

をさせしに


あんの

あんの


本可

ほか


うミ川 へ

うみかわへ


P18

春多れる

すたれる


きん\゛/

きんぎん


うを二

うおに


まし

まじ


里て

りて


於び多ゞしく

おびただしく


あ可゛りしゆへ

あが りしゆへ


こゝろ

こころ


奈らずも

ならずも


ま多

また


可年可゛

かねが


ふへて

ふえて



まり

まり


ける

ける

(大意)

 萬々先生はこれはよい機会であると江の島へ参詣し、また金を散財する楽しみを思いついた。漁師どもに同じ柄のおそろいの浴衣を染めて着せ、地引網をさせると、意外なことに海や川へ捨てられた金銀が魚に混じって、おびただしいほどにあがってしまったので、心ならずもまた金が増えて困ってしまった。

(補足)

 地引網の様子は見たこともなければ描けません。この本の絵師喜多川千代女は当時のこんな絵をみていたかもしれません。

 放物線状に囲う地引網の頂点付近に等間隔で四角いものが5,6個網についています。浮きでしょうか。江の島の地引網のはずですが、江の島をおもわせるものが描かれてないのが残念。

 

2024年7月4日木曜日

莫切自根金生木 その29

P16 国文学研究資料館蔵

(読み)

て うど

ちょうど


金 川

かながわ


どまりで

どまりで


よう

よう


ござりませ う

ござりましょう


可奈川 ハ

かながわは


可年のゑん可゛

かねのえんが


うるさい可ら

うるさいから


日高 でも

ひだかでも


川 さ起へ

かわさきへ


とま

とま


ろふ

ろう


此 用

このよう


於金 を

おかねを


つけると

つけると


申  ハ

もうすは


むまの

むまの


多め尓

ために


御き

ごき


とう二

とうに


奈り

なり


ます

ます


四五十  里も

しごじゅうりも


多ゞ御於王せ

ただおおわせ


奈されてく多゛さりませ

なされてくだ さりませ

(大意)

(手代)「ちょうど金川(神奈川)泊まりでよろしいのではございませんか」

(萬々)「かな川は金の字がついて縁起が悪いから、まだ日は高いが、川崎へ泊まろう」

(馬子)「このようにお金を背負わせるということは、馬のためのご祈祷になります。四五十里も、ただで背負わせてくださりませ」

(補足)

 かすれていて読みにくい、読めないところが何箇所もあります。ネットや文献にあたって調べてなんとか・・・

 馬子にただでよいといわれて、萬々散財又々失敗。

 

2024年7月3日水曜日

莫切自根金生木 その28

P16 国文学研究資料館蔵

(読み)

と可く思 ふ

とかくおもう


やう二

ように


可年も

かねも


遍ら

へら


ねバ

ねば


ま多\/

またまた


志あんし

しあんし


きょう


大 阪

おおさか


可ら

から


やまと

やまと






こころ


さし

ざし


道\/ も

みちみちも


ついへを

ついえを


可ん可゛へ一 日 尓

かんが えいちにちに


二三 里

にさんり


ぐらひ

ぐらい


徒゛ゝ

ず つ


ふらり\/ と

ふらりふらりと


ゆきける

ゆきける

(大意)

 なにをやっても思うように金がへらないので、またまた考えをめぐらし、京大阪から大和めぐりすることをきめ、道中の費用を(なるべく減らすべく)考えて、一日に二三里ぐらいずつ、ふらりふらりと旅した。

(補足)

「遍らねバ」、変体仮名「遍」(へ)だとおもうのですが。

「道\/も」、「道」のくずし字は特徴的でおぼえやす。変体仮名「遍」にそっくりです。

「二三里ぐらひ徒゛ゝ」、前後のながれから「徒゛ゝ」としましたが、この部分だけを読めといわれたらわからないとおもいます。

 この時代の人たちはこの絵をひと目見てすぐにわかったのでしょうけど、というかわからなかったのはわたしだけかもしれませんが、一番左側にいるのは馬子で馬を引いている、一番後ろが旅のお供の手代、萬々は馬に背負わせたたくさんの金箱の上に腰掛けているという絵だとおもいます。馬はわざとかくして描かなかったのでしょうか?