2020年3月31日火曜日

豆本 桃太郎噺 その12






 P.9 , P.10

(読み)
[つゝき]
おしやふり
おしやぶり

いぬさるきじも
いぬさるきじも

ともゞ ミ多連
ともどもみだれ

いり个んぞくの
いりけんぞくの

お尓をこゝ可しこへ
おにをここかしこへ

おひつめ多いじ
おいつめたいじ

奈し个る[次へ]
なしける


(大意)
押し破り、犬猿雉と一緒に乱れ入り
鬼の一族を、あちらこちらへと追い詰め
退治してしまいました。


(補足)
P.9 は文章はなく、背中にしょった旗指物(はたさいもの)の桃太郎の独壇場。
歌舞伎そのものです。
鬼から奪ったのか、金棒、右手にかかえ見栄をきり、「いよっ 桃太郎!」と聞こえてきそう。

 下に見えるは、白いカワウソではなく、お供の犬。たすき掛けにしている黄色の紐がきまってる。

色使いも賑やかだけど、しっかり描きこんでいます。

P.10 は松に猿と雉。
猿は紫色のたすき掛け、雉はなんやら首の周りに紫色の、これはなんでしょう?

「やふり」(やぶり)、読みにくい。
「多いじ」、「い」が?
「奈し个る」、「な」も上部が欠けてしまった?


P9,P10見開き。



 右上、桃太郎の背後の赤が強烈です。その対の左下にはお供の3匹。
そして、鬼ヶ島の崖上の松と、遠くに海。
遠近をうまく描いています。


2020年3月30日月曜日

豆本 桃太郎噺 その11




 P.8 下段

(読み)
△い可りさんゞ
 いかりさんざん

尓のゝ志り
にののしり

个連バもゝ
ければもも

太郎 も
たろうも

こらへ
こらえ

可年
かね

いし
いし

もん
もん




[次へ]



(大意)
怒り、散々にののしりました。
桃太郎はこらえきれずに
石門を


(補足)
「个連バ」(ければ)、この言い回しは、おなじ表現ですでに何度も出てきました。

「も」の変体仮名「毛」が2種類でてきてます。



「个連バもゝ」と「いしもん」の「も」は画像の右側、なかなか読みにくく、
「太郎も」の「も」は左側になり、こちらは現在の「も」と同じなのですぐわかります。

「可年」、「年」(ね)は古文書などでは、ほとんど○のようになります。


P7P8見開き。



 見開きでこの場面をながめると、お供にならんとする3匹の視線は黍団子に向いているかとおもいきや、ちゃんと桃太郎の視線と交わっています。


2020年3月29日日曜日

豆本 桃太郎噺 その10




 P.8 上段

(読み)
まもりい多り
まもりいたり

もゝ太郎 ち可
ももたろうちか

より大 おん尓
よりだいおんに

もん
もん













とよバ王り个連バ
とよばわりければ

お尓ども大起△
おにどもおおき


(大意)
守っていました。
桃太郎は近寄り大声で
「門を開け」と叫んだところ
鬼どもは大変に


(補足)
 桃太郎小岩に腰掛け、右手に黍団子がたくさん入った網袋を持ち、左手にひとつつまんで犬雉猿に与えているの図。
 わたしが同じことをするなら、右手に黍団子をつまんで家来に与えますが・・・
黍団子の網袋を強調するには左手に持たせるしかなかったのかもしれません。

 それにしても桃太郎の頭の天辺から足の爪先までにぎやかに色もたくさん使って描かれていること!
幟旗(のぼりはた)の「桃」の字、いいですねぇ。
そして、幟竿(のぼりざお)のてっぺんについている桃のお飾り、ヘタもあしらっていてすばらしい。

「ち可より」、「ち」が悩みました。
「大おん尓」、大きな音で、大声で。
「大起い可り」、大いに怒り、大変な怒りようで。

「もんを」の「を」の左側に○印がありますが、これにつながるところがありません。
「ひらけ」の「ひ」の右側に薄く○印があるようにもみえますが。

この「ひらけ」のところ、一行一文字で右から読むわけです。よく昔の有名人の書で額にして飾ってあるのがありますが、どちらから読んでよいのかわからないときがあります。
日本語の縦書きは右から左へ読みますから、一行一文字でも悩まずに右から読みます。




2020年3月28日土曜日

豆本 桃太郎噺 その9




 P.7

(読み)
[つゝき]きミ多んごを
     きみだんごを

多くさんあ多へ个連バ
たくさんあたえければ

いつ連も大 起尓
いづれもおおきに

よろこび个るもゝ
よろこびけるもも

太郎 ハいぬさるき
たろうはいぬさるき

じをひ起つ連
じをひきつれ

お尓可゛し満尓い多り
おにが しまにいたり

見王多せバ
みわたせば

者る可む可ふ尓
はるかむこうに

个んご奈るいし
けんごなるいし

もんを可まへ
もんをかまえ

个んぞくども
けんぞくども


(大意)
黍団子をたくさん与えたところ
いずれも大変に喜びました。
桃太郎は犬猿雉を引き連れ
鬼ヶ島へ到着しました。
島を見渡したところ
はるか向こうに
堅固な石門を構え
眷属どもを

(補足)
「見王多せバ」、平仮名や変体仮名のなかに、「見」のくずし字があるとわかりにくものです。
次の変体仮名「王」(わ)があるので、(みわたせば)と類推できます。

「个んぞく」(眷属)、一族。ここでは鬼の一族。

 雉の羽、猿の毛並み、犬のしっぽんなど、それなりに丁寧に描かれています。
雉は日本の国鳥です。
3匹のなかに選ばれたのはそれが理由かどうか?
さてさてどうなのでしょう。

 空の赤縞模様は2頁の桃が流れてくる場面と同じです。
3匹はもちろん次頁の桃太郎を見つめています。


2020年3月27日金曜日

豆本 桃太郎噺 その8




 P.6

(読み)
「お連ハお尓可し満へ
「おれはおにかしまへ

多可らものを
たからものを

とり尓ゆく
とりにゆく

「おこし
「おこし

尓さ
にさ

げ多る
げたる

ハ奈ん
はなん

でござり
でござり

ま春「こ連ハ
ます「これは

尓つ本゛ん一 のきミ
にっぽ んいちのきみ

多゛んご一 ツく多゛さいおとも
だ んごひとつくだ さいおとも

い多しま志ようといふゆへ[次へ]
いたしましょうというゆえ


(大意)
「おれは鬼ケ島(おにかしま)へ宝物をとりに行く」と答えました。
「お腰に下げているのは何でございましょうかと」問われ、
「これは日本一の黍団子」と答え、
「ひとつくださればお供いたしましょう」と言うので、


(補足)
 この頁の話は次頁の絵の内容になっています。
鎧兜(よろいかぶと)は身につけてないものの、立派な若武者姿に育ち凛々しい。
五月人形にありそう。

この部分の会話は童謡桃太郎の1,2,3番の歌詞と同じです。


 会話で使うカギカッコ「」ですが、最初の「 だけで終わりの 」がありません。
次の会話の始めの「 がそれもかねているのかもしれません。

桃太郎が「俺(おれ)」といっているのが、身近に感じます。

「尓つ本゛ん一のきミ多゛んご」、明治のこのときにはまだ半濁音の表記がなく「本゜」とはなってないようです。調べればすぐわかることなのですが。
「きびだんご」も「きミ」となってます。

「一ツく多゛さい」のところ、カギカッコ「 がありませんが、忘れたのかも。


 P5P6見開き。



 見開き全体でながめると、婆さんと桃太郎が視線をあわせ、爺さんはセッセと黍団子を丸めてます。3人の親密感が伝わってきます。




2020年3月26日木曜日

豆本 桃太郎噺 その7




 P.5

(読み)
[つゝき]多゛んごを
[つづき]だ んごを

こしらいやり
こしらいやり

个連バそ
ければそ

連を
れを

多づ
たづ

さへ可ど
さえかど

いでを
いでを

奈し个る
なしける

ミち尓ていぬ
みちにていぬ

さるきじき多り
さるきじきたり

「もゝ太郎 さんどこへ
「ももたろうさんどこへ

おいでゞおざりま春
おいででおざります


(大意)
団子をこしらえてやったところ、
それを持って家を出発しました。
途中、犬猿雉が来て
「桃太郎さんどこへ出かけるので
ございましょうか」
と問いかけました。


(補足)
「こしらいやり」、「や」の変体仮名「也」ですが、「ゆ」に見えてしまいます。
「个連バそ連を」、変体仮名「个」(け)。変体仮名「連」(れ)。

「可どいで」、現在は門出(かどで)。人世の門出を祝うなど。

「ミち尓て」、「尓」がアルファベット筆記体の「y」に似てます。

”「”が使われているのは、今まで見てきた豆本で、ここがはじめてです。

ジジババでセッセと黍団子を作るの図です。
石臼があり、また手に湿り気を与える水桶もきちんと描かれています。
きびだんごは大きなこね鉢に沢山あります。
この頁の背景も前頁とおなじで辛子色。


2020年3月25日水曜日

豆本 桃太郎噺 その6




 P.4

(読み)
○可ゝり个る
 かかりける

奈本ま多
なおまた

お多いき奈
おたいきな

可゛らきミ
がらきみ

多゛んご
だんご

を多く
をたく

さん
さん

こし
こし

らい
らい

く連よと
くれよと

いふ由へ
いうゆえ

そのゐ尓
そのいに

ま可せ[次へ]
まかせ


(大意)
かかりました。さらに、お手間をおかけするが
黍団子をたくさんこしらえてくれと言うので
その願いどおり


(補足)
上段○印から下段○印へつながりますは、頁をまたぐときは[次へ][つづき]と区別しているようです。

「お多いき」、「お大儀」。
「きミ多゛んご」、「ん」が「れ」にみえますが、変体仮名「无」(ん)を調べてもこのような形は見つかりません。

「く連よと」、「と」の一画目の「丶」がありません。


 P3P4見開きです。



 桃太郎の後ろの、弓矢の的みたいな紅白の丸いのは何でしょう?
頁をまたいで、桃が割れているさま。両頁を中位に閉じていると桃太郎は見えず、大きく開いてパカっと桃が割れて目に飛び込んでくる、今で言う飛び出す絵本の効果もねらったのでしょうか。



2020年3月24日火曜日

豆本 桃太郎噺 その5




 P.4

(読み)
もゝ太郎 と奈づけ
ももたろうとなづけ

てのうちの多満と
てのうちのたまと

やういくせし可
よういくせいか

本ど奈くせいじん
ほどなくせいじん

奈しもも太郎
なしももたろう

ふ多り尓いふ
ふたりにいう

やう王しハ
やうわしは

を尓可゛し満
おにが しま

へ王多りた
へわたりた

可らをとり
からをとり

可へりておふ
かえりておふ

多り尓よろこ者せん
たりによろこばせん

といふゆへそのやうゐ尓○
というゆえそのよういに


(大意)
桃太郎と名付け、手の内の玉として養育しました。
程なくして成人し、桃太郎は二人に向かって
「わしは鬼ヶ島へ渡り、宝を取って帰りお二人に喜んでもらいたい」
と言うので、その用意に


(補足)
1行目「もゝ太ろ」の「ろ」に見えるのは、「郎」のくずし字です。
5行目にも「もゝ太ら」とあり、今度は「ら」に見えるのが「郎」のくずし字です。

「てのうちの多満」、目に入れても痛くないくらい可愛がり愛すること。
「やういく」、旧仮名遣い。養育(よういく)。最後の行にも「やうゐ」(ようい)が出てきます。
「いふやう」、言うよう。言いよう。言う様。
「王しハ」「王多り」、変体仮名「王」(わ)、何度か出てきました、「已」に似てます。

「を尓可゛し満」、この文字の並びを見ても「鬼ヶ島」とはピンときません。

 今度はジジイがビックリしているところです。
七福神の誰かさんにちょっと似てます?

 胡座(あぐら)を組んでいるのか、足は見えませんが、手のひらを開ききり、
歌舞伎の驚きの場面の定石、一方の手を頭の斜め後方に引き、もう一方を斜め前方に出すという、そのままの絵になってます。
ちゃんちゃんこの渋赤の横縞がアクセントになってます。

 見開きの左側の頁で右端に見えるのは、桃の種が割れた片割れと、桃太郎の右足。


2020年3月23日月曜日

豆本 桃太郎噺 その4




 P.3

(読み)
[つゝき]せし可゛いつくより可
 つづき せしが いつくよりか

もゝひとつ奈可゛連き多る
ももひとつなが れきたる

ゆへうちへもち可へり
ゆえうちへもちかえり

ふ多りで多べんと王り
ふたりでたべんとわり

しところ奈可より
しところなかより

多゛いゝ とし多る
だ いだいとしたる

おとこの子む満
おとこのこむま

連し可バふ多りハ
れしかばふたりは

よろこびおふ
よろこびおお

可多奈ら須
かたならず

もゝより
ももより

いでしゆへ
いでしゆえ


(大意)
どこからか桃がひとつ流れてきましたので、
家へ持ち帰り二人で食べようと割ったところ
中より大きな男のが生まれました。
二人の喜びようは大変なものでありました。
桃より生まれたので、


(補足)
「より」が何度も出てきますが合字の「ゟ」は使ってません。

変体仮名「連」(れ)が2箇所あります。また変体仮名「多」は何箇所も出ています。

変体仮名「王」(わ)は「已」に似ています。

「む満連し可バ」、「生(う)まれる」は「むまれる」とも表記されるとありました。

「おふ可多奈ら須」、「大方ならず」。
辞書で調べました。「大方の予想通り」の例であっそうかとわかりましたが、
「大方ならず」は「非常に、なみなみならない」とあります。

 この頁は見開きの右側です。左側には驚いているじじいがいます。
生まれたばかりの桃太郎はまるで若力士そのもの。

ここでも婆さんの描きこまれ方がとても細かく丁寧です。
髪の毛の一本一本といい、たすき掛けの後ろのちょうちょ結び、
両手の指は開き、両足の指が床をしっかりとらえ、体を支えているさまは、金剛力士像みたい。

 背景の辛子色がきいています。


2020年3月22日日曜日

豆本 桃太郎噺 その3 




 P.2

(読み)
む可しゝ
むかしむかし

さるい奈可尓ぢゝいと
さるいなかにじじいと

者゛ゝアとふ多り春ミ
ば ばあとふたりすみ

个る可゛ある日者゛ゝアハ
けるが あるひば ばあは

川 尓せん多くして可へらんと[次へ]
かわにせんたくしてかえらんと


(大意)
昔々、ある田舎にじじいとばばあがふたり住んでおりました。
ある日、ばばあは川で洗濯をして帰ろうとすると


(補足)
 定価1銭5厘の豆本とはいえ、まったく手抜き感のない色刷りの絵です。
ばばあの「おやまぁ」と驚いている表情と両手の所作、頭髪の線、
洗濯桶にとめ輪も丁寧に描いています。川岸の凸凹も。
流れてくる桃は大きいけれどドンブラコ感があります。

「春ミ个る可゛」、変体仮名「春」は「す」+「て」のような感じ。
変体仮名「个」は「々」に似てます。
「る」は変体仮名「留」ですが、一画目の横棒がありません。

「者゛ゝア」、変体仮名「者」は「む」のような感じで書き出して、左の小さなクルッと丸をかいたあとは右下に適当に流れる。

「尓」は少し崩れると筆記体の「y」のようになります。

変体仮名「多」(た)は「さ」の一画目横棒がなくなった形。

 きれいな絵ですね。


2020年3月21日土曜日

豆本 桃太郎噺 その2




 P.1(見返し)

(読み)
桃太郎
ももたろう

者奈し
はなし

(大意)



(補足)
 左側の辛子色の小粒のへたのついたものは桃の種となんとなくわかりますが、
その隣の網に入ったものはわかりません。
しかし噺を読み進めると、桃太郎が犬猿雉3匹の前で黍団子(きびだんご)を与えている場面がでてきます。それがこの網袋に入っているのでした。

黍団子と桃の種の図。
なんともへんてこりんな取り合わせです。

2020年3月20日金曜日

豆本 桃太郎噺 その1




 表紙

(読み)
村井静馬 著
むらいしずま ちょ

桃太郎噺
ももたろうばなし


(大意)



(補足)
 今回からは豆本「桃太郎噺」です。やく12回を予定してます。

出版は明治9年10月5日(1876年)。
村井静馬は浮世絵師で歌川房種(うたがわふさたね)です。

表紙は錦絵摺りで歌舞伎のひと場面のよう、桃太郎は隈取をした若衆姿、鉄棒を振り上げ鬼をこらしめているの図。
桃太郎の左手の4本の指が力を込めて鬼の左腕を握りしめ、反りかえってます。

主役の桃太郎より、鬼が好き。
鬼の渦巻く頭髪、眉のあたりが引きつって悔しそうに恨めしく見上げる眼、うめき声が聞こえてきそうなさけた口、首周りからは押さえつけられながらも憤怒の炎が飛び散っているようです。

「噺」の「口」偏の下に「フ」のようにみえるのは、旁の「新」の「木」の左側です。


2020年3月19日木曜日

小学必携體操圖解 その36




 裏表紙

(読み)


(大意)


(補足)
「小学必携體操圖解」で検索すると、たくさんヒットします。
論文も多数発表されています。
どれに目を通しても、なかなか楽しめる内容です。

 古文書や版木の内容をとりあえずは読みたいという初心者ですので、全文を読んできてみるとそれなりの成果があったようにおもいます。

 地元の図書館から「小学必携体操図解」がのっているので、「近代体育文献集成 第8巻体操」を借りました。しかし翻刻も解説もなく単なる資料集だったので残念。
ただ、「小学必携体操図解」では図の説明がザンバラ髪の少年でしたが、着物姿の女性の図のものもあり、時代の変わり目を感じました。

「小学必携体操図解」は今回で終了です。

 都内の某大学にわたしの住む町の、かっての名主であった家の古文書が多数あるのですが、撮影にうかがおうかとおもっていたら、コロナ騒動で行けなくなってしまいました。

 次回からはまた豆本をはじめます。

2020年3月18日水曜日

小学必携體操圖解 その35




 P.28

(読み)
四 不落離子
よん ぶらんりんこ

ぶら里んこ春る尓ハ
ぶらりんこするには

よこ木尓こしをかけ阿しをのバし
よこぎにこしをかけあしをのばし

こし尓ち可ら越い連天あしを
こしにちからをいれてあしを

ひけバこ奈たへ
ひけばこなたへ

すゝミ
すすみ

のバしてち可らを
のばしてちからを

いるれバむ可ふへあ可む也
いるればむこうへあがむなり

このてうし をよくお本゛
このちょうしをよくおぼ

由連バうんどうハ
ゆればうんどうは

志ぜんと
しぜんと

奈るもの奈り
なるものなり


(大意)
四 不落離子
ブラリンコをするには
横木に腰をかけ脚を伸ばし
腰に力を入れて脚を
引けばこちら側に
進み、
伸ばして力を
入れれば向こう側へ上がる。
この調子をよく覚えれば
運動は
自然と
できるようになり続く。


(補足)
 子どものときに誰もが公園などで遊んだブランコの原型です。
はじめて知りました。

 項目名のフリガナには「ブランリンコ」とありますが、説明文では「ぶら里んこ」とあり、「リ」がなくなって、現在の「ブランコ」になったのでしょう。広辞苑では異なる説明がありました。

「ち可ら越い連天」、ここだけ変体仮名がたくさんです。

「いるれバむ可ふへあ可む也」の「あ可む也」が読みがよくわかりません。この部分の意味としては「上がる」があてはまると推測しました。

変体仮名「本゛」(ぼ)、「不」のような形です。

 前頁の図では遠近法の消失点は中央でしたが、ブラリンコでは消失点は右側にあるようです。
立体感があって力を入れて前方に漕ぎ出す感じがこちらも「ウ~ン」とうなりそう。

 「小学必携体操図解」は同じ著者(田邉)が、「新兵体術教練」を子ども向けに書き直し刊行したものですが、同じブラリンコは「新兵体術教練」ではこのような図になってます。



 明治新政府が兵式体操を学校教育に持ち込んだことを発端に、現在の小中学校、高校の体育教育に影響を及ぼしていることが、この「小学必携体操図解」を読むとよく理解できます。

 子どものときにブランコにのり、無邪気に力いっぱいこぎ、気持ちよくその浮遊感と風を切る快さは体に染み込んでますし、子どもを育てるときには喜びはしゃぐ息子たちの背中を押してやったものです。それが富国強兵をめざして将来の兵隊を育成するためのひとつの運動であったとは、心穏やかではなく、朗らかな笑顔は一転引きつってしまいます。
 心地よい運動は無邪気なまま楽しみたいものですし、そう願いたい。



2020年3月17日火曜日

小学必携體操圖解 その34




 P.27

(読み)
三 縄飛
さん つなとび

奈ハ尓つら連てとび由き
なわにつられてとびゆき

ま多こ奈多へかへらんと●
またこなたへかえらんと

●春ると起
  するとき

てを者奈し
てをはなし

とゞまる
とどまる

べし
べし


(大意)
三 縄飛
縄に吊られて飛びゆき
またこちら側へ戻ろうと
するときに
手を離し
着地する


(補足)
 項目名が「ツナ」となっています。しかし、説明文では「奈ハ」。

 前頁と同じく、飛び立つ前、空中、着地の3つの姿勢の描写が遠近感を使って上手です。

 ひととおり読みすすめてくると、だいたい変体仮名も出つくし、読めるようになってきます。
次回が最後の頁になります。



2020年3月16日月曜日

小学必携體操圖解 その33




 P.26

(読み)
  たうひ(とうひ)
二 棹飛
  さおとび

さをゝもちてとびあ可゛り
さおをもちてとびあが り

く多゛ると起ハさをゝ
くだ るときはさおを

者奈しつまさき△
はなしつまさき

△を
 を

ち尓つけて
ちにつけて

と満るべし
とまるべし


(大意)
二 棹飛
棹(さお)を持って飛び上がり
下るときは棹を
離し、つま先を
地につけて止まる


(補足)
 説明文の前半後半をつなげる△印があります。
江戸時代の黄表紙など草双紙のお話は、絵の隙間をあちらへ飛んだりこちらへと書きまくりました。
そのときに○△□●▲など簡単な記号で話をつなげる工夫をしてました。

 最初の「さぁ飛ぶぞっ」の意気込む構えが上手、空中の姿勢もよし、着地も成功。


2020年3月15日日曜日

小学必携體操圖解 その32




 P.25

(読み)
第五教 全身の運動
だいごきょう ぜんしんのうんどう

  ひやう(ひよう)
一 飛揚
  とびあがり

二三 どてをふりつまさきをげきしてを
にさんどてをふりつまさきをげきしてを

あげ奈可゛らとびあ可゛りく多゛ると起ハ
あげなが らとびあが りくだ るときは

つまさきをち尓つけて可可゛ミ奈可゛ら
つまさきをちにつけてかが みなが ら

と満るべし
とまるべし


(大意)
第五教 全身の運動
一 飛揚
2,3度手を振りつま先で力いっぱい蹴って、手を
あげながら飛び上がる。下るときは
つま先を地につけて屈(かが)みながら
止まる。


(補足)
 これまた上手な動作の図です。空中の飛び上がっている姿勢が跳躍感にあふれてます。
着地する瞬間も両腕をギュッと締めて呼吸をはいている様子がつたわります。

 話が飛びますが、昨(2019)年、暮れに鎌倉時代藤原定家筆なる源氏物語若紫の写本が発見されました。
写本は「わらはやみにわづらひたまひて」から始まってます。



 変体仮名で表記すると「わらハやミにわ須らひ堂まひて」でしょうか。

 わたしがウ~ンとうなるのは平安時代鎌倉時代から「ハ」や「ミ」がずっと明治時代まで変わらずに使われ続けてきたことです。別段他の平仮名が同じように使われているから驚くことにあたらないかもしれません。明治時代から学校教育で現代仮名遣いに改め始められ、この「ハ」「ミ」の表記はなくなってしまったのでいっそう目立つのかもしれません。


2020年3月14日土曜日

小学必携體操圖解 その31




 P.24

(読み)
九 側臥左右反轉
きゅう そくがさゆうはんてん

よこ尓ふし
よこにふし

てをくミ
てをくみ

ね可゛へり
ねがえり

春る奈り
するなり


(大意)
九 側臥左右反轉
横に伏し
手を組み
寝返りを
行う


(補足)
残り4頁となりました。
少年の動作図はどれも上手です。体の動きを少ない線で描いているのがとてもわかりやすい。

読みで難しいところはありません。


2020年3月13日金曜日

小学必携體操圖解 その30




 P.23

(読み)
七 鋸切運動
しち きょせつうんどう

のこぎりをつ可ふ
のこぎりをつかう

可゛ごとく尓奈須べし
がごときになすべし


八 仰臥半身起立
はち げうがはんしんきりつ(ぎょうがはんしんきりつ)

あをのけ尓
あおのけに

奈りこしからうへをねをきする
なりこしからうえをねおきする

なり
なり

(大意)
七 鋸切運動
鋸(のこぎり)を使うような運動をする

八 仰臥半身起立
仰向(あおむ)けになって
腰から上を寝起きする


(補足)
最初の図は前頁の斧伐運動。

「七鋸切運動」は鋸を持つ格好して、両手を引いたり押したりする運動でしょうか。
「ごと」は一つの字で合字(ごうじ)です。

「八仰臥半身起立」の説明図は次頁にあります。現在の腹筋運動と同じです。
「あをのけ」(仰け)は現在では「あおむけ」ですが、「あおむけ」は最近の言い回しのようです。


2020年3月12日木曜日

小学必携體操圖解 その29




 P.22

(読み)
五 直立前後曲折
ご どうぜんごきょくせつ

こぶしをむ年尓
こぶしをむねに

あてゝうしろへそりま多うで
あててうしろへそりまたうで

をのバしまへゝか可゛ミち尓つく
をのばしまえへかが みちにつく

まで尓奈須べし
までになすべし


六 斧伐運動
ろく ふばつうんどう

おのをもちて
おのをもちて

うつごとく奈須奈り
うつごとくなすなり


(大意)
五 直立前後曲折
拳を胸に
あてて後ろへ反り、また腕
を伸ばし前へかがみ、地につく
まで行う

六 斧伐運動
斧を持って
うつように行う


(補足)
変体仮名「年」(ね)がわかりづらいですが、特徴的なので覚えやすい。P.6でも出てきました。

少年の図では「こぶしをむ年尓あてゝ」ません。

拳の回転の動きを示す点線の方向が矢で描かれているのが時代がかってます。

斧で薪割りが普通だった時代、その動作の例えがこれまた、時代がかって愉快。

「ごと」は合字。

2020年3月11日水曜日

小学必携體操圖解 その28




 P.21

(読み)
三 直立左右傾側
さん ちょくりつさゆうけいそく

みぎひ多゛りへ
みぎひだりへ

こしをまげる奈り
こしをまげるなり

四 直立半身環囬
し ちょくりつはんしんかんかい

づのごとくまハ須
ずのごとくまわす

べし
べし


(大意)
三 直立左右傾側
右左へ腰を曲げる

四 直立半身環囬
図のように回す


(補足)
「ごとく」の「ご」と「と」が合わさってひとつの字になってます。
合字(ごうじ)といいます。「より」が「ゟ」となるのと同じ表記です。

 これらふたつの運動は、現在では誰もが年齢性別に関係なく、体が固まってしまったときにそれをほぐすときに行う動作でです。

 少年が左右に体を傾けている図の表情気持ちよさそうで、コキコキきこえてきそう。

 半身環囬の頭の動きの点線があります。
これって歌舞伎にある、なが〜い髪の毛をグルグルまわしてから、大見得を切る場面がありますが、それでしょうか?!


2020年3月10日火曜日

小学必携體操圖解 その27




 P.20

(読み)
二 直立仰俯
に ちょくりつぎょうふ

あしをまげづして
あしをまげずして

かゞん多゛りそつたり春る奈り
かがんだ りそったりするなり


(大意)
二 直立仰俯
脚を曲げずに
かがんだりそったりする


(補足)
「仰俯」(ゲイフ)、読みは(ぎょうふ)。
仰角(ぎょうかく、見上げる角度)、俯角(ふかく、見下げる角度)のように今でも使います。

最初の図は、全ページのもの。校庭で子どもたちが笑いをこらえて、こんな運動をしていたのかもしれないと想像すると、とても愉快になります。


2020年3月9日月曜日

小学必携體操圖解 その26




 P.19

(読み)
第四教 體の運動
だいよんきょう たいのうんどう

一 雙脚直立半身前後左右曲折
いち せききゃくちょくりつはんしんぜんごさゆうきょくせつ

か多あし尓たちど
かたあしにたちど

まりから多゛を
まりからだ を

まへゝい多゛し
まえへいだ し

多ち多る
たちたる

あし尓
あしに

おもミの
おもみの

つりあへの
つりあえの

あるを
あるを

志るべし
しるべし


(大意)
第四教 體の運動

一 雙脚直立半身前後左右曲折
片足に立ち止まり
からだを
前に出し
立っている足に
重みのつり合いを
感じること

(補足)
「立っている足に重みのつり合いを感じること」は平たく言えば
「立っている足で体のバランスをとる」ということです。

見出しの漢字12文字がその動作を直接表現しているとはいえ、やや笑えます。
少年の反り返って空を見上げている動作も。
空を見上げているから、その前は地面を見ている動作なのかとみると、正面を見ています。
からだを前後にする運動の図がありませんが、次頁にあります。

「體」は「体」の旧字、骨を豊かにする。

文章は、変体仮名は「尓」「多」「志」「留」だけであとは「ミ」でわかりやすい。



2020年3月8日日曜日

小学必携體操圖解 その25




 P.18

(読み)
十五 両足越杖
じゅうご りょうあしえつじょう

もちたるつえをふミ
もちたるつえをふみ

こしてのうちをうしろ尓もち可へ
こしてのうちをうしろにもちかえ

かしらをこしてハふミこして春ゝ
かしたをこしてはふみこしてすす

む奈り
むなり


十六 背挻両臂前挟行進
じゅうろく はいていりょうひぜんけふこうしん


つえをづの
つえをずの

ごとくもちてあ由む奈り
ごとくもちてあゆむなり


(大意)
十五 両足越杖
持っている杖を踏み
越し、手の内側を後ろに持ちかえ
頭を越しては、(また)踏込して
(の動作を繰り返し)進む

十六 背挻両臂前挟行進
杖を図のように持って歩む

(補足)
十五の動作がわかりにくいです。
両手で持った棒を片足ずつまたいで前に進んで行くのですが、実際にやってみても「かしらをこして」がわかりません。

十六、目次では「背挻両臂前挟左右曲折」とあり、
その次の「第四教 一 雙脚直立半身前後左右曲折」と混同してしまったようです。



2020年3月7日土曜日

小学必携體操圖解 その24




 P.17

(読み)
十三 伸脚行歩
じゅうさん しんきゃくきょうほ

ひざ越まげず
ひざをまげず

???もゝをおり阿由むべし
   ももをおりあゆむべし


十四 髙膝駈脚行歩
じゅうし かうしつくそくぎょうほ

ひざをた可く
ひざをたかく

あげてふミこミつまさきより
あげてふみこみつまさきより

ち尓つけかゝとをふミつくること
ちにつけかかとをふみつくること

奈く口 をとぢ者奈よりいきを
なくくちをとじはなよりいきを

つきひぢを者りてあしのてう
つきひじをはりてあしのちょう

し尓うご可須
しにうごかす


(大意)
十三 伸脚行歩
膝を曲げず
強いてももを折り歩む

十四 髙膝駈脚行歩
膝を高く
上げて踏み込み、つま先より
地につけ、かかとを踏みつけること
なく、口を閉じ鼻より息を
つき、肘をはって足の調子に
動かす


(補足)
十三の二行目のところがわかりません。
「しいて」(し比天 or し以天)のように見えますが、やはり不明。
そうだったとして、「しいてももをおり」の意味は?
「ももをおり」は?
「ももを伸ばす」ならわかりますが。

「を」の変体仮名「越」、次の行に「を」を使ってますが、使い分けは気分次第と理解しています。

十四の説明文は長いですが、読みやすい。

 少年の図が両方共に、背筋の伸び具合がよく描かれてます。
動きもよく理解できます。


2020年3月6日金曜日

小学必携體操圖解 その23




 P.16

(読み)
十二 同
じゅうに どう

つまさきとひざをち尓つけて
つまさきとひざをちにつけて

せ?まりたちあ可゛りちからあし
せ?まりたちあが りちからあし

をふむ奈り
をふむなり

(大意)
十二 同
つま先と膝を地につけて
??まって、立ち上がり力強く
地面を踏む


(補足)
十一の一躊一立と同じようにして、今度はつま先と膝をつけてから、立ち上がるという運動です。
十二の説明文二行目行頭「せ」の次は「く」、その次は「ゝ」だとおもうのですが、
「せくくまり」では意味がわかりません。

 「ちからあし」は力足でしょうか、足に力を入れること、力を込めることでしょう。
相撲の四股を踏むのと同じような力の入れ方かもしれません。


2020年3月5日木曜日

小学必携體操圖解 その22




 P.15

(読み)
十 両脚集立
じゅう りょうきゃくしうりう

里ようあしをいちゞ
りょうあしをいちじ

尓ふミよせてハひらく
にふみよせてはひらく

    うづくまる
十一 一躊一立
じゅういち いっそんいちりう

つまさきをふんでたち
つまさきをふんでたち

あ可゛りま多うづくまる奈り
あが りまたうずくまるなり


(大意)
十 両脚集立
両足を一時に
踏み寄せては開く

十一 一躊一立
つま先を踏んで立ち上がり
またうずくまる


(補足)
 最初の図は前頁九の説明。

 机の脚まわりがきちんと描かれています。

十の運動は、両足を軽くジャンプして寄せ、同様にして開くを繰り返すのでしょう。
軽く飛び上がるという表現ではなく、「いちゞ尓ふミよせ」がなんとも微妙な表現です。

「蹲る」(うずくま)る。わざわざ表題の左脇にフリガナがあります。


2020年3月4日水曜日

小学必携體操圖解 その21




 P.14

(読み)
うしろ尓おりを奈じうんどう
うしろにおりおなじうんどう

する奈り
するなり

八 前後投脚
はち ぜんごとうきゃく

か多あし尓てしよ
かたあしにてしよ

く尓毛多連から多゛ととも尓
くにもたれからだ とともに

ぜんごへふる奈り
ぜんごへふるなり

九 左右投脚
きゅう さゆうとうきゃく

お奈じく志天さ由
おなじくしてさゆ

うへふりだ春奈り
うへふりだすなり


(大意)
後ろに折り同じ運動をする

八 前後投脚
片足で机に
もたれ体とともに
前後へ振る

九 左右投脚
同じように
左右へ振り出す


(補足)
一行目「を奈じ」は九では「お奈じ」と「を」と「お」の使い分けはあまりなさそう。

八の「か多あし尓て」の次が「志よく尓」(しょくに)と読めるのですが意味がわかりません。
図からは机にもたれてるので机か何かでしょうか。

P.12の四で出だしが読めなかったのですが、ここに同じ文字がありました。
「毛多連」(もたれ)、の変体仮名「毛」(も)です。また変体仮名「連」(れ)もこの版木では特徴的です。

 版木でも古文書でもわからなかったら読みとばして、まずは全体の意味を理解するのが先決です。
それから前後関係などから読みを類推してゆきます。
 今回の場合のように、読みすすめてゆくうちに同じ文字があらわれることはよくあるので、不明だった文字が解決することも多いです。

九の説明文がこれまた、これ以前ではそうしているのにどうして単純な表記にしないのか、悩むところ。
「お奈じく志天」(おなじくして)、普通に平仮名の「して」にすればよいではありませんか。
ましてや、この教本は「小学必携体操図解」とあるように「小學」なのです。
と、不満たらたら述べてもどうしようもありません。


 八で左手の支えになっている机について。
脚の部分も立体的に描き、脚と幕板(まくいた)(机の天板or甲板(こういた)をのせている支えとなっている部分)の接合部分が留め(45度の接合)になっているのも正確に描いています。
木工セミプロとしては感心します。


2020年3月3日火曜日

小学必携體操圖解 その20




 P.13

(読み)
ろく ちょくりつしんきゃくちゅうちょうんどう

ふミつけかゝとをつくこと奈く
ふみつけかかとをつくことなく

かハるゞ  そのバ尓かけあしの
かわるがわるそのばにかけあしの

うんどうをする奈りひぢハ
うんどうをするなりひじは

あしと阿しのてう し尓志多可゛ふ
あしとあしのちょうしにしたが う

べし
べし

六 直立伸脚躊躇運動
てあしをのバしまへとおなじ
てあしをのばしまえとおなじ

うんどう春べし
うんどうすべし

七 後方曲脚躊躇運動
しち こうほうきょくきゃくちゅうちょうんどう

ひざを
ひざを


(大意)
六 直立伸脚躊躇運動
踏みつけ、かかとをつくことなく
かわるがわるその場で駆け足の
運動をする。肘(ひじ)は
脚と脚の調子に従うこと

七 後方曲脚躊躇運動
手足を伸ばし前と同じ運動をする

(補足)
 「かかとをつけることなく」と説明文通りに正確に図が描かれています。
現在のような走り方やあるき方が海外から入ってくる前は、ナンバ走り・歩きをしていたと言われます。
 右手が前に出ると右腰(右足)もそれにならって前に出し、左も同様の歩き方走り方をする動きです。現在の動きとは全く逆です。

 「肘は脚と脚の調子に従う」とあって、この少年の図を見ると、左足が上がっているときには左手を引いていますから、現在のような動きになっています。ナンバ歩きの動きではありません。

「あしと阿しの」、同じ「あ」なのに後の方は変体仮名「阿」です。使い分けている意味があるなら知りたいところです。


2020年3月2日月曜日

小学必携體操圖解 その19




 P.12

(読み)
四 同前方髙張
し どうぜんほうこうちょう

??よりおり
??よりおり

まへゝのバすべし
まえへのばすべし


五 直立髙膝躊躇運動
ご ちょくりつこうしつちゅうちょうんどう

ひざを
ひざを

た可くあげつまさきをさげ天
たかくあげつまさきをさげて

(大意)
四 同前方髙張
??よりおり
前へ伸ばす

五 直立髙膝躊躇運動
膝を
高く上げつま先を下げて、


(補足)
最初の図は前頁三の説明。

四の出だしの文字が読めません。「こと」の合字に似てますが、意味が通じません。
図より、つま先をしっかり伸ばしているのがわかります。

五の説明文の最後、「く」のように見えるのは変体仮名「天」(て)。


20200304 追記 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

四の出だしがわかりました。
P.12 に同じ文字があり、気づきました。
変体仮名「毛」(も)でした。
「ももよりおり」です。







2020年3月1日日曜日

小学必携體操圖解 その18




 P.11

(読み)
第三教 脚の運動
だいさんきょう きゃくのうんどう

一 雙脚向前屈伸
いち せききゃくきょうせんくっしん

か多あし尓とゞまり
かたあしにとどまり

か多(あし)をまへゝのバしま多ひざ
かた あし をまえへのばしまたひざ

よりおることづのごとし
よりおることずのごとし

二 同向後屈伸
に どうきょうごくっしん

うしろへ奈須べし
うしろへなすべし

三 雙脚囬環
さん せききゃくかんかい

か多阿しをまハ春
かたあしをまわす


(大意)
第三教 脚の運動

一 雙脚向前屈伸
片足にとどまり
片足を前へ伸ばし、また膝
より折ること図のごとし

二 同向後屈伸
後ろへ行う

三 雙脚環囬
片足を回す


(補足)
腕(臂)の運動から脚の運動に入りました。

「か多(あし)をまへゝのバしま多ひざ」、本文では「か多く」とあり「く」のように見えるところがわかりません。

「おること」、「る」と「こ」が重なってます。
「づのごとし」、「ごと」は合字。「より」が「ゟ」と表記されるのと同様です。

「カンカイ」を「囬環」と誤記してます。
ここでは「か多阿し」、一のところでは「か多あし」、明治7年ではまだ強力に読み書きの記述が統一されてませんでした。