2021年10月31日日曜日

桃山人夜話巻二 その34

P22後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

父 といさ可ひし天親 越追ふとき爪 づき天石 尓天

ちゝ       於や 於   つま   いし

ちちといさかいしておやをおうときつまずきていしにて


膝 越うちや婦゛り曽れ与りし天人 面 て うとハ奈り

ひざ             尓んめん

ひざをうちやぶ りそれよりしてにんめんちょうとはなり


多ると楚゛俗  尓まゝくハふと云 難 病  奈り道 尓叶

     曽゛く       いふ奈んべ う  ミち 可奈

たるとぞ ぞ くにままくわうというなんびょうなりみちにかな


ハざるふるまひ春る時 ハい可奈る悪 病  を受 んも斗  可゛多し

         とき     あくべ う うけ  者可り

はざるふるまいするときはいかなるあくびょうをうけんもはかりが たし


(大意)

父と言い争いになって、親を追うときにつまずき、石に

膝を打ち付け怪我をしてしまった。そのために(その膝の傷が)人面疔になって

しまったということだ。俗に「ままくはう(飯をくおう)」という難病である。道に

はずれた振る舞いをするときは、どんな悪病を受けるかは予測しがいたいものなのだ。


(補足)

道からはずれたことをしてはいけませんよというお話なのですが、

もっと二口女の正体をいろいろかいてほしかった。

 

2021年10月30日土曜日

桃山人夜話巻二 その33

P22前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

こゑのひ曽\/と春れバ聞 耳 立 る尓王可゛心  得違

           きゝミゝ多つ     こゝろえ多可゛ひ

こえのひそひそとすればききみみたつるにわが こころえたが い


与り先 妻 の子越殺 せり阿や満てり\/   といひし

  せんさ以 こ ころ  

よりせんさいのこをころせりあやまりてあやまりてといいし


登楚゛誠  尓恐 るべきこと奈り个り万 治年 中  尓

   まこと 於曽         まんじ袮んぢ う

とぞ まことにおそるべきことなりけりまんじねんじゅうに


も人 面 疔  と天膝 尓口 阿る者 出 来 り天東 武の医

 尓んめんて う  ひざ くち  ものいでき多  とうぶ ゐ

もにんめんちょうとてひざにくちあるものいできたりてとうぶのい


家尓治療  を乞 しこと阿り是 ハ農 民 奈り个る可゛

可 ぢ里やう こひ     これ のうミん 

かにちりょうをこいしことありこれはのうみんなりけるが


(大意)

(のちには)ひそひそと話し声がするので、聞き耳をたてたところ「自分の間違った行い

で先妻の子どもを殺してしまった。すまなかった。すまなかった。」と言っていた

とのことだ。まことに恐るべきことである。万治年間(1658〜61)に

も人面疔という膝に口があるものが出てきて、東武(江戸)の医

者に治療を乞うたことがあった。これは農民であったが


(補足)

「こゑのひ曽\/と春れバ」、「こゑ」がわかりにくいですが、続けて読むと「ひ曽\/と」とあるので「声」とわかりました。

「聞」のくずし字、「門」は冠のようになってます。

「誠に」、「成」のくずし字が「斗」のような形になってます。

「恐」のくずし字は「心」の上が「旧」のようなかたち。「思」と区別。

 

2021年10月29日金曜日

桃山人夜話巻二 その32

P21後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

頭  王れ天血おび多ゞしく出 し可゛疵 口 さら尓癒 るこ

可しら   ち      いで   きづぐち   い由

かしらわれてちおびただしくいでしが きずぐちさらにいゆるこ


登奈く唇   の可多ちを奈し天骨 ハ出 天歯の如 く尓

   くちびる        本袮 いで 者 ごと

となくくちびるのかたちをなしてほねはいでてはのごとくに


奈り肉 つき上  りて舌 尓類 せり時刻 越とりてい多

  尓く  阿可゛  志多 る以  じこく 

なりにくつきあが りてしたにるいせりじこくをとりていた


むこと苦痛 多え可゛多く食  を入るゝ時 ハい多ミを

   くつう      志よく い  とき

むことくつうたえが たくしょくをいるるときはいたみを


和 らげ多り依 天両  口 阿る可゛ごとし後 尓ハ毛の云

や王    よつ 里やうくち       のち    いふ

わわらげたりよってりょうくちあるが ごとしのちにはものいう


(大意)

頭が割れて血がおびただしく出たが、傷口は少しも癒えるこ

となく、唇の形になってきて、骨が出て歯のように

なり、肉が盛り上がってきて舌のようなものになった。時によっては

痛み、その苦痛は耐え難く、(口のようなところへ)食べ物を入れるときは痛みを

和らげることができた。よって(頭の前後の)両方に口があるようであった。後には

(ひそひそという話し声)


(補足)

「時刻越とりて」、「と」の一画目が「ー」になっていてすぐにはわかりませんでした。この部分の意味も辞書を調べて悩みました。辞書に「 (「時にとって」「時にとりて」の形で)場合によって。時によって。「人,木石にあらねば,時に―・りて,物に感ずる事なきにあらず」〈徒然草•41〉」とあったのでこれを採用。

「上りて」、こちらの「上」のほうがよほど平仮名「と」にみえます。

 二口は生まれながらにあったのではなく、このような子どもいじめ殺しがあって、その後の事故によってできた傷口が原因でした。現代でもありそうなことです。

 

2021年10月28日木曜日

桃山人夜話巻二 その31

P21前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

食  を阿多へ須゛遂 尓病  登奈りて餓 死尓し多り其

志よく      つい やまひ    うへじ    曽の

しょくをあたえず ついにやまいとなりてうえじにしたりその


後 四十 九日 目 尓当 りて其 家 尓天薪  を割 个る可゛

のち志ゞ うく尓ちめ 阿多  曽のいゑ  多きゞ 王り

のちしじゅうくにちめにあたりてそのいえにてたきぎをわりけるが


男  の与き越ふり上 多るうし路越其 妻 の通 り可ゝり

をとこ      阿げ      曽のつま とを

おとこのよきをふりあげたるうしろをそのつまのとおりかかり


し越志ら須゛し天過   て妻 可゛頭  のうしろ尓阿て多り

        阿やまち つま  可うべ   

しをしらず してあやまちてつまが こうべのうしろにあたりて


(大意)

(子に)食事を与えずついには病気になって餓死してしまった。

その後、四十九日目に当たる日のこと、その家で薪を割っている

男が斧を振り上げたちょうどそのときに妻がうしろを通りかかった

ことに気づかず、過って妻の頭のうしろに斧を当ててしまった。

(補足)

「餓死尓し多り」、「餓」は振り仮名があるからと手抜きしたような感じ。「し」が虫食いと重なりました。

「四十九日目」、振り仮名「志」のほうに「゛」がついてしまってます。

「よき」、斧(おの)、手斧(ておの)

「通り可ゝり」、「ゝ」があります。

 

2021年10月27日水曜日

桃山人夜話巻二 その30

P20後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

業 病  登も云 べき可何 連尓もミづ可らの悪心  与り

ごうびやう  いふ   いづ        あくしん

ごうびょうともいうべきかいずれにもみずからのあくしんより


引 出  春病  奈り此 こと毛路こし尓もありむ可し

ひきい多゛ や満い  この      

ひきいだ すやまいなりこのこともろこしにもありむかし


日 本 尓も下 総 の国 千葉 という所  尓継 母 ありて

尓つ本ん  志もふさ く尓ち者゛   ところ まゝ者ゝ

にっぽんにもしもふさのくにちば というところにままははありて


己 れ可゛うミの子のミ越愛 し天先 妻 の子耳

をの          あ以  せんさ以  に

おのれが うみのこのみをあいしてせんさいのこに


(大意)

やはり業病と云うべきなのかもしれんない。いずれにしてもみずから悪いことを

しようという心より引き出される病である。この病は唐土(もろこし)にもあり、昔

日本にもあった。下総の国、千葉というところに継母がいて、

自分が産んだ子どもだけを愛して、先妻の子に

(補足)

「ミづ可らの」、「ミ」の三画目が流れています。

「毛路こし」、たびたび出てきているのでお馴染みです。

「先妻の子耳」、変体仮名「耳」(に)はあまりおめにかかりません。めずらしい。たいていは「尓」「丹」「仁」など。

 読んでいると「頭脳唇(ふたくち)」はもしかしたら、本当にいたのかもしれないと、いるのかもしれないと・・・でも女としているところが気になる。継父(ままちち)、ーーーこの読みは英語のママと日本語の父が一緒になっているのでニヤリとしてしまいますーーーだっているはずで、そうすると長い髪の毛が蛇のようになって食べ物をはこべなくなり、怖さが半減してしまう。このあとこの話はどう展開するのか?

 

2021年10月26日火曜日

桃山人夜話巻二 その29

P20前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  七 二 口 女

多゛以志゛うしちふ多くちをん奈

だ いじゅうしちふたくちおんな


頭脳唇 人 面 疔  ハ業 病  のごとく尓いひ奈せども古

ふ多くち尓んめんて う ごうびやう           ふる

ふたくちにんめんちょうはごうびょうのごとくにいいなせどもふる


き医書 尓も出 多りされども病  の起 りをきく尓多

 ゐしよ  いで      や満い をこ     於本

きいしょにもいでたりされどもやまいのおこりをきくにおお


くハ个んどん邪  見 無慙 放 逸 の輩    尓阿り志可らバ

      志゛や个んむざん本ういつ とも可゛ら  

くはけんどんじ ゃけんむざんほういつのともが らにありしからば


(大意)

第十七二口女

「頭脳唇(ふたくち)」と「人面疔(にんめんちょう)」は業病のように言われるが

古い医書にも出ている。しかし病の原因をきくと、多くはけちで欲深く意地悪くて恥知らずのだらしがない者にみられる。だから

(補足)

人面疔(にんめんちょう)、人面瘡(じんめんそう)とも。悪性のできものが人の顔をしている。

業病、悪いおこないの報いとしてかかるいわれる,なおりにくく,つらい病気。

 いきなり出だしから読めません。振り仮名「ふ多くち」は当て字なので漢字がわかりません。「頭脳唇」の漢字3文字とわかるとあぁなるほどとなるのですが・・・

「ごとく尓」、「尓」が「ふ」にみえます。

「个んどん邪見無慙放逸」、よくもまぁこれだけ人をこきおろす単語を並べたもの。それもいまではほとんど死語です。講談で使われそうな言い回しかな。

 

2021年10月25日月曜日

桃山人夜話巻二 その28

P19後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

い天死し多り旧  鼠よ奈\/尓来 り天猫 尓乳汁を

  し   きう 曽     き多  袮こ ちゝ

いてししたりきゅうそよなよなにきたりてねこにちちを


与 へ天五疋 共 尓育  川こと越得多り彼の旧  鼠其

あ多  ごひきとも 曽多゛    え  可 きう 曽その

あたえてごひきともにそだ つことをえたりかのきゅうそその


後 ゆく可多を志ら須゛余 り尓奇談  奈り登天志るし

のち         阿ま  き多゛ん  

のちゆくかたをしらず あまりにきだ んなりとてしるし


置 多るを写 し天曽良  といふ毛の誹 諧 師の芭

於き   うつ  曽里やう     者い可いし 者゛

おきたるをうつしてそりょうというものはいかいしのば


蕉  尓見せし尓猫 の鼠  を育   しことも阿りしと答  しと楚゛

せう  ミ   袮こ 袮づミ 曽多゛て        こ多へ

しょうにみせしにねこのねずみをそだ てしこともありしとこたえしとぞ


(大意)

(食らっ)て死んでしまった。年とった鼠は夜な夜なやってきて子猫に乳を

与え、五匹ともに育つことができた。かの年とった鼠はその

後、行方知らずになった。(これらのはなしが)あまりに奇談であるからと記して

あったものを曽良というものが写して、俳諧師の芭蕉

に見せたたところ、「猫が鼠を育てたこともあるよ」と答えたそうだ。


(補足)

「乳汁」、(ちちじる)ではなく、これで(ちち)。

「育川こと越得多り」、変体仮名「川」(つ)。「こと」は合字。

「彼の旧鼠」の次に「丶」があります。何でしょうか。

「曽良」、振り仮名が「そりょう」となっています。

最後の行に長い平仮名「し」が韻をふむように三つ続いています。

 狼が人の子をそだてたり、また実際に犬の背に子猿がしがみついて育てられるのをみたこともあります。いろいろなんですね。恐れ慎むべきは人の心なのでしょう。

 

2021年10月24日日曜日

桃山人夜話巻二 その27

P19前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

文 明 の比 那曾の和太郎 登天郷 士有 厩  のうへ尓旧

ぶんめい ころ奈曽 王多らう  ごうしありうまや    ふる

ぶんめいのころなそのわたろうとてごうしありうまやのうえにふる


き与り春む鼠  有 个る可゛害  奈き故 尓代  々 捨 置 多里

     袮づミ阿り    可゛い  ゆへ 多゛以\/春て於き

きよりすむねずみありけるが が いなきゆえにだ いだいすておきたり


夜 ハ表 家尓移 り天猫 と交  りを奈春尓猫 も更

よる 於もや うつ  袮こ まじハ     袮こ さら

よるはおもやにうつりてねことまじわりをなすにねこもさら


尓是 と争  ハ春゛此 猫 子越五 ツうミたる後 毒 越くら

 これ 阿ら曽   この袮ここ いつ     のちどく

にこれとあらそわず このねここをいつつうみたるのちどくをくら


(大意)

文明の頃、那曾の和太郎という郷士がいた。厩(うまや)の上に昔

から住む鼠がいたが、被害がないので代々そのままにしておいた。

鼠は夜に母屋にやってきて猫とともにすごすのだが、とくに猫も

いやがることはなかった。この猫は子を五匹生んだあと毒を食らって

(死んでしまった)


(補足)

 綴じ目にかかっていて振り仮名が読みづらいですがなんとか・・・

「比」(ころ)は「頃」もありますがこちらのくずし字は右側がもっとグニャグニャとしてます。

「郷士」、「郷」のくずし字だけで覚えようとしないで、「郷士」セットで覚えます。

「捨置多里」、ここも「捨置」セットで覚えたほうがよさそう。「置」のくずし字は6行あとにもあります。「多里」を「多らむ」と読んでしまいました。

「うミたる」、平仮名「た」。

 

2021年10月23日土曜日

桃山人夜話巻二 その26

P17 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

P18 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

P17

旧  鼡

きう そ

きゅうそ


P18

ふ多口 おん奈

   くち

ふたくちおんな


まゝ子を尓くミて食  物 を阿多え春゛

  こ     しよくもつ 

ままこをにくみてしょくもつをあたえず


して殺 し个連者゛継 母 の子産 れし

  ころ     まゝ者ゝ こうま

してころしければ ままははのこうまれし


より首 筋

  くび春じ

よりくびすじ


の上 尓毛

 うへ

のうえにも


口 阿り天

くち

くちありて


食  をくハんと

しよく

しょくをくわんと


いふを髪 の

   可ミ

いうをかみの


はし蛇 と奈り

  へび

はしへびとなり


て食  物 を阿多へ

 しよくもつ

てしょくもつをあたえ


ま多何 日 毛阿多へ春゛

  奈ん尓ち

またなんにちもあたえず


奈どしてくるしめ个る

などしてくるしめける


と奈んおそれつゝしむ

となんおそれつつしむ


べきハまゝ母 のそねミ

     者ゝ

べきはままははのそねみ


奈り

なり


(大意)

P17 略

P18

ふた口おんな

(まま母が)まま子を憎んで食べ物を与えずに

殺してしまった。すると継母に子が生まれて

から、継母の首筋の上にも口ができて

食をとりたいというと、自分の髪の毛の

端が蛇となって食べ物を与えた。

また何日も与えないことなどもして

苦しめたりしたという。

恐れ慎むべきは継母の嫉妬である。


(補足)

「旧鼡」の本文の途中ですが、両面に図を刷る関係のためでしょう、「旧鼡」と「ふた口おんな」の絵図が入ります。

P17

でっかい歳を経た鼠ですが、おおきい黒猫にみえなくもない。ことなるのは長細い尻尾のみ。子猫は何の不思議もなく母さんしたって育つはず。


P18

文字がかすれたりつぶれたりしているので、他の版を参考にしました。

「の上尓毛」、「尓」がわかりにくいですが、ここの「尓」は英小文字筆記体「y」のようなかたち。

「はし」、平仮名「は」はひさびさ。

「何日」(奈ん尓ち)、ここの振り仮名「尓」も先程と同じ「y」。

「くるしめ个る」、最後の「る」はわかりやすいですが、最初の「る」はちょっと悩みます。変体仮名「留」(る)。

 隣の部屋をのぞいて、こんな光景を見たらその場で卒倒、気を失うこと確実であります。

継母の着物が南天の葉のような柄で丁寧に描かれています。そしてなぜか左足の指先をのぞかせ左の太ももを持ち上げ気味にしてやや立て膝にしているような感じが不安を誘います。鉄瓶があってこれも五徳にのせなければならないところそれはなし、団子を食べるなら茶碗があってよいはずなのにそれもなし・・・緻密な竹の板の間を前に清楚さをただよわせ、にこやかに団子を口に運ぶ継母の「うふふ」というもれでる声と蛇となった黒髪こすれる音が聞こえてきます。

 

2021年10月22日金曜日

桃山人夜話巻二 その25

P16後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

旧 く奈りぬれバ同 じ太 平 広  記尓旧  鼡人 の娘  と契

ふる      於奈 多以へいくハうき きう 曽ひと む春め ちぎり  

ふるくなりぬればおなじたいへいこう きにきゅうそひとのむすめとちぎり


多りと有 鼡  ハ千 年 をへて白 く奈るとあれども近 来 の

   阿り袮づミ せん袮ん   しろ        きんら以

たりとありねずみはせんねんをへてしろくなるとあれどもきんらいの


鼡  ハ生 れ奈可゛ら尓白 し当 世 ハ何 ごとも早 手巡 し奈り

袮づミ う満      しろ 多うせ以 奈尓   者やでまハ

ねずみはうまれなが らにしろしとうせいはなにごともはやでまわしなり


出羽尓天猫 の子旧  鼡  の乳越呑 天育   しこと阿り

で王  袮こ こふるき袮づミ ち のミ 曽多゛ち   

でわにてねこのこふるきねずみのちをのみてそだ ちしことあり


(大意)

年をとってしまえば同じようなものなのである。『太平広記』に「旧鼠、人の娘と契

りたり」とある。鼠は千年を経て白くなるとあるが、近来の

鼠は生まれながらに白い。今は何事も早め早めに手をまわす世になってしまった。

出羽の国で猫の子が年とった鼠の乳を呑み育ったことがあった。

(補足)

「同じ」、「へのへの茂平爺」とおなじ「じ」で、この「同じ」もじっと見ていると四角四面の顔に見えぬこともない。2行後の「白し」も、その次の行の「育し」も大きい「し」。

「旧鼡」、振り仮名は「きう曽」ではなく「ふるき袮づミ」。

「きゅうそ」というと、最初に頭に浮かぶのは「窮鼠猫を噛む」です。ここでは猫も鼠も歳をとればそれほどの違いはなく、鼠が猫の子に乳を与えても別に不思議はないだろうというぬくもりあふれるお話。人の心が勝手に生き物を区別して犬猿にしているということなんでしょう。


 

2021年10月21日木曜日

桃山人夜話巻二 その24

P16前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  六 旧  鼡

多゛以志゛うろくきう 曽

だ いじゅうろくきゅうそ


昔  大和 の志貴尓鼡  有 毛の色 赤  黒  白 の三色 奈り

む可しやまと しぎ 袮づミありけ いろあ可くくろくしろ ミいろ 

むかしやまとのしぎにねずみありけのいろあかくくろくしろのみいろなり


常 尓猫 を取 喰 ふ華 夷攷 尓云 く猫  王 あり鼡

つ年 袮こ とりくら 可ハゐこう い王 びやうわう  袮づミ

つねにねこをとりくらうか いこうにいわくびょうおうありねずみ


をのづ可ら来  天死春ること数 十  と去 バ猫 も鼡  も

     き多り し    春 志゛う され 袮こ 袮づミ

をのずからきたりてしすることすうじゅうとさればねこもねずみも


(大意)

第十六旧鼠

昔大和の志貴に鼠がいた。毛の色は赤黒白の三色であった。

常に猫を捕り食らっていた。「華夷攷」に次のようにある。「猫の王がいた。

鼠はそこへおのずから来て死ぬこと数十であった」。つまり、猫も鼠も

(補足)

「赤黒白」の振り仮名が「あか(く)しろ(く)しろ」と(く)があります。

「来天」、振り仮名「き多り」の区切りを確かめるのが難しい。

「赤黒白の三色の鼡」って、三毛猫は馴染みがあるけど、三毛鼠がいたのかもしれません。年をとれば猫も鼠も区別はそんなにかわりはしないだろうから、うんいたのかも・・・

 と、そんなおもいを感じた隣の爺さんは、そんな馬鹿なことはあんめいよ、千年たとうが二千年たとうが、猫は猫、鼠は鼠にきまってんべぇ、ったくもう、おめえさんも耄碌したもんだ。と隣の壁に向かって口角泡飛ばしてました。


 

2021年10月20日水曜日

桃山人夜話巻二 その23

P15後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

本らの肉 を食へバ長  寿 を得ると云 貝 ハ山 伏 のふく物

   尓く く  てう じ由 う  いふ可ひ や満ぶし   もの

ほらのにくをくえばちょうじゅをうるというかいはやまぶしのふくもの


なれ者゛実も食  し多る人 ハ有 べし本らをくひ天長  生 し多る人

    ミ 志よく   ひと ある        奈可゛いき   ひと

なれば みもしょくしたるひとはあるべしほらをくいてなが いきしたるひと


をき可須゛可く禍   春る物 越くひ天長  生 し多可゛る遍゛可ら須゛

       王ざ王ひ  もの    奈可゛いき     

をきかず かくわざわいするものをくいてなが いきしたが るべ からず


嘘 いふ毛の越本らふくと云 も可ゝる事 与りや出 个ん

う曽          いふ    こと   いで

うそいうものをほらふくというもかかることよりやいでけん


(大意)

ほらの肉を食えば長寿を得るという。貝殻は山伏が吹くもの

なので実も食した人はあるだろう。ほらを食べて長生きしたという人

を聞いたことがない。このような災(わざわ)いをもたらすものを食べて長生きしたがるものではない。嘘つくことを「ほらをふく」と云うのも、このようなことより出たのであろう。

(補足)

「実も食し多る」、「長生し多る」、「長生し多可゛る」、短いのとなが〜いのと中くらいの「し」。

「本らふくと云も」、切れ目を確認する練習になるところ。

 なんともおかしなはなしであります。法螺貝が災いをもたらすものであると確定的に正しいと信じていますがこれは嘘では。法螺貝の貝肉を食うと長寿を得るというのは嘘であるし、食った人が長生きしたということも聞いたことがない。要するに「法螺貝」にまつわることはすべて嘘なので「ほらをふく」が嘘を云うということのようです。う〜ん、なんか変だ。

 

2021年10月19日火曜日

桃山人夜話巻二 その22

P14 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

P15前半

(読み)

P14

出  世ほ羅

し由つせ

しゅっせほら


P15前半

第  十  五出  世螺

多゛以志゛うご志由つせ本ら

だ いじゅうごしゅっせほら


深 山 尓ハ本ら貝  有 天山 尓三 千 年 里 尓三 千 年 海 尓三

志んざん    可゛いあり や満 さんぜん袮んさと さんぜん袮んうミ さん

しんざんにはほらが いありてやまにさんぜんねんさとにさんぜんねんうみにさん


千 年 越経天龍  と成る是 越出  世の本らと云 昔  与り有

ぜん袮ん へ 里やう 奈 これ 志由つせ    いふむ可し  ある

ぜんねんをへてりゅうとなるこれをしゅっせのほらというむかしよりある


こと尓天遠 州  今 切 のわ多しも本らのぬけ多る跡 也 と云

    ゑん志 ういまぎれ            あと   いふ

ことにてえんしゅういまぎれのわたしもほらのぬけてるあとなりという


(大意)

P14

出世ほら

P15前半

第十五出世螺

奥深い山には法螺貝があって、山に三千年、里に三千年、海に三

千年を経て龍となる。これを「出世のほら」という。昔よりある

ことで、遠州今切の渡しもほらの抜けた跡であるという。


(補足)

P14

「ら」が変体仮名「羅」(ら)になってます。

色刷りの画ならば海の色(龍の爪の色と同じ)が鮮やかです。龍は法螺貝の中に入って、竜吐水のように海へ吐き出し荒海となっています。

 法螺貝は長寿とは関係なく(あるかも)、なかなか旨い貝です。法螺貝に似た貝にニシというのがあってこれもまた旨い。沢山とれたときは冷凍にします。上部な貝殻で実を取り出すのも大変です。乱暴な方法は金槌で割るのですが、この作業も大変で危険。そこで法螺貝やニシの蓋部分のところを紐でくくってぶら下げておくという気の長い方法があります。割るよりこちらのほうがはるかに良い方法。貝は自分の重みに耐えかねて、ぬるっと間延びして貝殻は抜けてきます。すかさず引っ張り出してメデタシメデタシ。

P15前半

「深山」、何度もこの用語は出てきましたが振り仮名は「ミや満」でした。

変体仮名「年」(ね)は「◯」に「丶」です。

「成る」、「柳女」の最後に出てきました。「求」のような感じ。

「わ多し」、変体仮名「和」(わ)ですが、カタカナ「ワ」にもみえます。

「と云」、ここでは二つがはっきり分かれていてわかりやす。

 

2021年10月18日月曜日

桃山人夜話巻二 その21

P13 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

讃岐 の手洗 ひ鬼

さぬき てあら 於尓

さぬきのてあらいおに


讃 州  高 松 より丸 亀  へかよふ

さんしう 多可まつ  まる可゛め

さんしゅうたかまつよりまるが めへかよう


入 海 阿り其 間   の山 々 三 里

いりうミ  そのあい多゛ やま\/さんり 

いりうみありそのあいだ のやまやまさんり


をま多げて手を阿らふ

     て

をまたげててをあらう


ものあるよし

ものあるよし


名ハい可ゞ尓や

なはいかがにや


知ら春゛たゞ

しらず ただ


讃岐 の

さぬき

さぬきの


手あらひ

てあらい


鬼 といふ

於尓

おにという


(大意)

讃岐の手洗い鬼

讃州高松より丸亀へつうじている

入海がある。その間の山々、三里を

またいで手を洗う

ものがあるという。

名は何というか

知らない。ただ

讃岐の

手洗い

鬼という。

(補足)

 昔、キャンプに行くとキャンプファイヤーを囲んで出し物や歌を楽しんだものです。そのときの定番ソングに「鬼のパンツ」というのがありました。昔話「桃太郎」の鬼退治でも鬼のパンツは見ることができますが、今まで見た中ではこの手洗い鬼のこのパンツが飛び抜けて一番であります。

上下逆さにしてみると、なおいっそうこのパンツに親近感が湧いてきます。

 海水をすくって飲もうとしている両手や岩に踏ん張る右足の指が阿吽の仏像の力強さをみるおもいがします。

綴じ目になってしまって「讃岐の手洗ひ鬼」のふりがなが読みづらいですが「さぬき てあら 於尓」です。

「州」のくずし字はここのは「刀」が三つ。

「かよふ」、ほとんどは変体仮名「可」(か)ですが、ここは平仮名。

「間」のくずし字は特徴的。「門」が「冖」のようになってます。

「ま」の中間がきれてます。

「たゞ」、「た」もたいていは変体仮名「多」(た)です。

題の「讃岐の手洗ひ鬼」や「手あらひ鬼」の「ひ」が「い」ににてますが、ちょうどすぐ左の行に「いふ」があります。比較すると「い」のほうが丸い感じ。

 

2021年10月17日日曜日

桃山人夜話巻二 その20

P12後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

へる大  太ハ五六 里づゝの嶋 越片 手尓持 冨士のい多ゞ

  多゛い多 ごろくり   し満 可多て もちふじ

えるだ いたはごろくりずつのしまをかたてにもちふじのいただ


き尓与り可ゝ里天海 を呑 と云 伝 へり白 隠 禅 師可゛

        うミ のむ いひつ多  者くゐんぜんし

きによりかかりてうみをのむといいつたえりはくいんぜんじが


大 太郎法  師の賛 尓「うミ越呑む茶 のこ可雪 のふじの山 これ

だい多ら本゛つち さん     の ちや   ゆき    や満

だいたらぼ っちのさんに「うみをのむちゃのこかゆきのふじのやまこれ


らの説 与り出 多り唐  土尓も莊 子と天虚の本 家有

  せつ  いで  もろこし  さうじ  こ 本んけあり

らのせつよりいでたりもろこしにもそうじとてこのほんけあり


(大意)

大太(だいた)は五六里ぐらいの島を片手に持ち、富士山の頂

きによりかかって、海の水を飲むと言い伝えれている。白隠禅師が

大太郎法師(だいたらぼっち)の絵の賛に「うみを呑む茶のこか

雪のふじの山」とあるのは、これらの説より出たものである。唐土

にも「莊子」という本にこの作り話のもとのになるものがのっている。

(補足)

「うみを呑む茶のこか雪のふじの山」、大太郎法師がうみを呑んでいる姿はまるでふじの山を茶うけにしているようだ。「茶の子」は茶菓子、茶うけ。これらはおなかにたまらないので、物事の容易なこと。そこから「お茶の子さいさい」の文句がでた。

「大太」、振り仮名は「だ」と変体仮名ではありませんがでもすぐ次は変体仮名「多」(た)。

「づゝ」、平仮名の「つ」としましたが、よくわかりません。ここの「ずつ」は同じ割合で分配するの意味ではなく、三枚ぐらいずつ分けるのように、「およそ」の意。

「嶋」、偏の「山」が冠になってます。漢字の部品があちらこちらにいどうすることはよく見られます。次の「片手」の「片」も同様で、一画の目「ノ」が偏のようになってます。

「持」、「村」ではありません。「寺」のくずし字はひらがな「る」のような形。

「与り可ゝ里天」、一語一語がどこで切れているか確認するのによい箇所。

「大太郎法師」(ダイダラボッチ)、日本昔ばなしにも出てくる日本全国にある巨人伝説。

「虚の」(こ)の、指示代名詞「この」としても意味は通じますが、ここではウソのでは言い過ぎなので作り話。

 

2021年10月16日土曜日

桃山人夜話巻二 その19

P12前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  四手洗  鬼

多゛以志゛うして阿らひ於尓

だ いじゅうしてあらいおに


手洗  鬼 ハ大 太郎 坊 登云 大  魔の仕 ハしめ尓して四

て阿らひ於尓 だい多゛ら本う いふ多゛以ま つ可      し

てあらいおにはだいだ らほうというだ いまのつかはしめにしてし


国 辺 の入 海 尓天三 里の山 越ま多ぎ大  海 尓天手を

こくへん いりうミ  さんり や満    多゛以可い  て

こくへんのいりうみにてさんりのやまをまあたぎだいかいにててを


洗 ふといへりい可なるき多奈きこと越い多して可手や洗

あら                     て あら

あらうといえりいかなるきたなきことをいたしてかてやあら


(大意)

第十四手洗鬼

手洗い鬼は大太郎坊(だいだらぼう)という大悪魔のつかわしたものであり、

四国あたりの入海で、三里の山をまたぎながら大海で手を

洗うという。どれだけ汚いことをして手を洗うのだろうか。

(補足)

「手洗鬼」、振り仮名「阿らひ」の「ら」は形がありません。

「大太郎坊」、「郎」のくずし字の脇ににじみがあります。くずし字は「戸」+「巾」のような形。

「仕ハしめ尓して」、ふたつの「し」が小さく長さが短いので注意。

この鬼は台風くらいの大きさか?!

 

2021年10月15日金曜日

桃山人夜話巻二 その18

P11後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

迄 も附 来 る俗  尓天 狗 のミあ可しとも老 人 の火共

まで つきゝ多 曽゛く てん久゛        らうじん ひとも

までもつききたるぞ くにてんぐ のみあかしともろうじんのひとも


いへり山氣 とも奇鳥  の息 也 ともいひ伝 へてい尓し

   さんき  きてう  いき      つた

いえりさんきともきちょうのいきなりともいいつたえていにし


へより何 と定   多るせう こも奈く里 民 も志らざる也

   奈尓 さ多゛め         さとひと

えよりなにとさだ めたるしょうこもなくさとびともしらざるなり


(大意)

(どこ)までも付いて来る。俗に「天狗の御明かし」とも「老人の火」とも

いう。また山中の気とも珍しい鳥の息であるとも言い伝えられていて、ふるく

よりこれが何ものであるのか確定する証拠もなく、里の人々もわからないのである。

(補足)

「附来る」の振り仮名(つきゝ多)の「ゝ」をよみおとしそう。

人魂や狐火など火にまつわる怪奇ものはたくさんあります。巻一には野宿火がありました。今回の火の名前は「老人」がつきます。このいわれを知りたいものです。


 

2021年10月14日木曜日

桃山人夜話巻二 その17

P11前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  三 老 人 の火

多゛以志゛うさんらうじん ひ

だ いじゅうさんろうじんのひ


信 州  遠 州  のさ可ひ奈る山 奥 尓ハ雨 の夜尓ハ多 く出 る也

志ん志 うゑん志 う      や満をく  あめ よ  於本 いつ

しんしゅうえんしゅうのさかいなるやまおくにはあめのよにはおおくいずるなり


魔の火尓し天人 尓さハること奈しといへども一 筋 ミち尓て

ま ひ   ひと             ひと春じ

まのひにしてひとにさわることなしといえどもひとすじみちにて


行 逢ふ時 ハ者き毛の越頭  尓い多ゞきて通 る尓火ハ

ゆきあ とき      可うべ      春ぐ  ひ

ゆくあうときははきものをこうべにいただきてすぐるにひは


脇 の可多へとびゆく奈り是 越驚   天逃 る時 ハいづ久

王き          これ 於どろき 尓ぐ とき

わきのかたへとびゆくなりこれをおどろきてひぐるときはいずく


(大意)

第十三老人の火

信州と遠州の境にある山奥に、雨の降る夜に多くでるのである。

これは魔の火であって人に害を及ぼすことはないとはいえ、一本道で

出会ったときは履物を頭にのせて通り過ぎれば、火は

脇の方へ飛んでゆく。これに驚いて逃げてしまうと、どこ(までも)

(補足)

「一筋ミち」、「筋」はなぜか「竹」と「助」が上下に離れて書かれることが多い。どうしてでしょうね。ここでも「一」と「竹」でひと文字のように見えてしまいます。

「行」、「彳」と「一」+「丁」なのに、そのおもかげがあまりありません。よく出てくるくずし字です。この形のまま覚えるのが一番。

「い多ゞきて」、変体仮名「多」の左側の曲線部分のふくらみがつぶれてしまっています。

「脇」、以前にも出てきました。「月」偏が通常の「月」のくずし字とは異なっています。

「いづ久」、ここの「く」は変体仮名「久」です。平仮名「く」の上にちょっと「丶」が付いています。変体仮名「天」(て)とそっくりなので注意。


 

2021年10月13日水曜日

桃山人夜話巻二 その16

P10 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

老 人 農火

らうじん ひ

ろうじんのひ


木曽の深山

きそ ミやま

きそのみやま


尓や老人  の火といふ

  らうじん ひ

にやろうじんのひという


物 あり是 越消さんと

もの  これ け

ものありこれをけさんと


春るに水 をも川天消 共゛

   ミつ    けせ

するにみずをもってけせども


更 にきへ春゛畜 類 の皮 を

さら     ちく   可王

さらにきえず ちくるいのかわを


以 て消 者゛老 人 ともに消 るといへ里

   けせ  らうじん   き由

もってけせず ろうじんともにきゆるといえり


(大意)

老人の火

木曽の山奥に

老人の火という

ものがある。これを消そうと

するのだが、水をかけて消そうとしても

少しも消えず、動物の皮で

消すと火とともに老人も消えてしまうという。

(補足)

摺りがやや不鮮明なので、鮮明な別の版を参考にしています。

「深山」(ミやま)、「ミ」の右上の「丶」はゴミです。

「尓や」、ここの「尓」は英小文字筆記体の「y」のようなかたち。2行後の同じ位置に平仮名「に」があります。

「水」のくずし字はこのままおぼえるしかありませんが、筆の運びは「水」とおなじような感じです。

「も川天」(もつて)、変体仮名「川」(つ)。

「共゛」、ちゃんと濁点があって「ども」。

「更に」、辞書に「 (下に打ち消しの語を伴って)少しも。全然。」とありました。

 老人の有様がシワだらけですさまじい。大地につく並んだ手のひらと足はどちらがどちらだかわからずぐらい単なる五本指になっている。火箸もなぜか途中で曲がっているというこった描きよう。

色付きの絵では背景の小川がとても清涼に流れています。

 

2021年10月12日火曜日

桃山人夜話巻二 その15

P9 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

柳  おん那

や奈ぎ

やなぎおんな


若 き女  の児をい多゛きて風 のは个゛しき日柳  の下 を通 り个る尓

王可 おん奈 こ      可ぜ      ひや奈ぎ し多 とふ 

わかきおんなのこをいだ きてかぜのはげ しきひやなぎのしたをとおるけるに


咽 を枝  尓ま可連て死し个る可゛其 一 念 柳  尓とゞまり夜奈\/

のど え多゛     し     そのいちねんや奈き     よ

のどをえだ にまかれてししけるが そのいちねんやなぎにとどまりよなよな


出 天口 をしや恨 めしの柳  やと泣 个ると奈ん

いで くち   うら   や奈ぎ  奈き

いでてくちおしやうらめしのやなぎやとなきけるとなん


(大意)

柳女

若い女が子を抱いて、激しい風が吹く日に柳の樹の下を通ったところ

首に枝がからまって死んでしまった。その無念のおもいが柳にとどまり、夜な夜な

女があらわれ「口惜しや恨めしの柳や」と泣くのだという。

(補足)

この版では文字がやや不鮮明で、鮮明な他の版を参考にしてます。

この頁の「柳」はすべてよくみるかたちです。平仮名「や」は現代と同じかたちです。

「通り个る尓」、「り」の部分に虫食いがありますが、他の版の鮮明な絵で確かめました。

「枝」がややつぶれてしまってわかりにくい。

「とゞまり」、「とゞ」がなやみます。

 柳の奥のほうから白い霞にのって柳の葉の下にあらわれた様子、右足指が着物からのぞいています。このころは幽霊はもうすでに脚がなかったはずですが、親指の爪まで丁寧に描かれています。女性の顔かたちがうりざね顔ではなくやや幅広であるのもちょっとめずらしい。

 

2021年10月11日月曜日

桃山人夜話巻二 その14

P8後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

幽 霊 の可い志きとハ志多る奈るべしされバ松 ハ猛 き

ゆう連以                 まつ 多け

ゆうれいのかいしきとはしたるなるべしさればまつはたけき


可多ち有 天武者 のうしろ多゛てと奈り柳  ハやさし

   阿り むしや          や奈ぎ

かたちありてむしゃのうしろだ てとなりやなぎはやさし


き姿   有 天女  の粧  ひ尓類 せり今 や其 風 姿の

 春可゛多ありてをん奈 よ曽於  るい  いま 曽のふうし

きすが たありておんなのよそおいにるいせりいまやそのふうしの


行 王多りて辻 君 迄 も此 樹のもと尓立 ことゝハ成 ぬ

ゆき    つじぎミまで このき    多つ   奈り

ゆきわたりてつじぎみまでもこのきのもとにたつこととはなりぬ


(大意)

幽霊の受け皿(かいしき)としたのではなかろうか。されば松は勇猛な

樹形をしているので武者の後ろ盾となり、柳は優しい

姿をしているから、女の粧いに似合うのだ。今やその風姿が

ゆきわたり、辻君までもがこの樹の下にたつことになってしまったのである。

(補足)

「かいしき」は「器に盛る食べ物の下に敷く木の葉。多く,ナンテン・カシワ・ユズリハなど常緑樹の葉を用いた」とあります。いまでも料理にいろいろな種類の葉を敷いたり添えたりします。ですので幽霊と柳が対になったとの意でしょうか。

「辻君」、辞書には「路傍に立って通行人を客とした下級の娼婦。夜鷹。立ち君。」とあります。

「朝」「有」の「月」のくずし字が同じようなかたちになってます。

「猛き可多ち有天」「やさしき姿有天」、左右「有天」が並びましたが、振り仮名は「阿り」「あり」となってます。

「此樹のもと尓」、「も」がおかしなかたちです。

「立ことゝハ成ぬ」、合字「こと」の次の「ゝ」を読み飛ばしそう。「成」は振り仮名がなければ読めません。次にお目にかかってもおそらく読めない。

 

2021年10月10日日曜日

桃山人夜話巻二 その13

P8前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  二柳  女

多゛以志゛う尓や奈ぎをん奈

だ いじゅうにやなぎおんな


女  を柳  尓多とへ柳  の女  尓化  ること毛路こし宗 の士捷  と

をん奈 や奈ぎ    や奈ぎ をん奈 者゛け       曽う しせう

おんなをやなぎにたとえやなぎのおんなにば けることもろこしそうのししょうと


いふ毛のゝ柳    尓くひ連天死し多るよりいひ習 ハせりわ可゛

           や奈ぎ           し       奈ら   

いうもののやなぎにくいれてししたるよりいいならわせりわが


朝  尓天もい尓しへ女  の柳  尓化し多ること阿り依天 柳  越

てう        をん奈 や奈ぎ け          や奈ぎ

ちょうにてもいにしえおんなのやなぎにけしたることありよってやなぎを


(大意)

第十二柳女

女を柳にたとえたり柳が女に化けることは、唐土(もろこし)は宋の士捷(ししょう)と

いうものが柳に食われて死んだことにいい習わされてきた。我が

国にても昔、女が柳に化けた例がある。よって柳を

(補足)

「柳」のくずし字をネットや辞書で調べました。ここの形はありませんでした。振り仮名「やなぎ」の「や」が現在の「ゆ」にみえます。変体仮名「也」(や)、変体仮名「由」(ゆ)の区別は「由」の縦棒がニョロニョロとゆらぎます。

「こと」、合字です。何箇所かでてきてます。

「毛路こし」、一度目にすれば次回からは即読めます。

「くひ連天」、ここの「ひ」はどうみても「わ」「ワ」には見えません。

「死し多る」、短めの「し」があります。変体仮名「多」(た)もわかりにくい。

「わが」、この「わ」はよく見ると左側が上下に筆をはこんだ様子があります。変体仮名「和」(わ)でしょうか。

「朝」、くずし字を学び始めると、必ず「朝昼晩」が出てきます。

「い尓しへ」、これでも「し」。

「化し多ること」、ここの「し」も先程の「死し多る」と同様、読み飛ばしてしまいそうです。

 

2021年10月9日土曜日

桃山人夜話巻二 その12

P7後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

天息 越吸ふ也 是 尓春ハるゝ時 外 尓天ミる人 阿連バ可奈

 いき 春   これ     とき本可    ひと

ていきをすうなりこれにすわるるときほかにてみるひとあればかな


ら春゛長 寿 也 ミる人 奈き時 ハ翌 日 死春と云 習 ハせり

   てうじ由    ひと  とき よくじつし  いひ奈ら

らずちょうじゅなりみるひとなきときはよくじつしすといいならはせり


是 可゛為 尓長  生 し多る人 も奈く死し多る人 も奈个れども山

これ  多め 奈可゛いき   ひと   し  ひと       や満

これが ためになが いきしたるひともなくししたるひともなけれどもやま


ちゝ登いへ者゛所  尓与りてハ恐 れざる毛のも奈かり个り

       ところ     於曽   

ちちといえば ところによりてはおそれざるものもなかるけり


(大意)

(近寄っ)てその息を吸うのである。これに吸われているところを見る人があればかな

らず長寿を得る。見る人がいないときは、翌日に死んでしまうと言われている。

この山地乳のために、長生きした人もなく死んだ人もないけれども

山地乳といえば、ところによっては恐れぬものはいないのである。


(補足)

「翌日」、「翌」のくずし字や異体字を調べましたが、ここのかたちはありませんでした。

こんな化け物は初めて聞きますが、夜就寝中の突然死はこのせいか・・・う〜ん。

 

2021年10月8日金曜日

桃山人夜話巻二 その11

P7前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  一 山地乳

多゛い志゛ういちや満ちゝ

だ いじゅういちやまちち


山地乳 と云 ハ蝙 蝠 の功 越へ天野衾  と奈り其 物 又 年

や満ちゝ    こうもり こう   のぶ春満   曽のものま多とし

やまちちというはこうもりのこうをへてのぶすまとなりそのものまたとし


を遍天怪  異の形  と奈り山 尓隠 れ春む故 山 ちゝと云 と

   く王いゐ 可多ち   や満 可く   ゆへや満   いふ 

をへてかい いのかたちとなりやまにかくれすむゆえやまちちというと


楚゛深山 尓ハさとりかひと天ひとの袮いき越う可ゞひ与り

  ミや満                

ぞ みやまにはさとりかいとてひとのねいきをうかがいより


(大意)

第十一山地乳

山地乳というのは蝙蝠が年の功をかさね野衾(ムササビorももんが)となり、さらにそれがまた年をへて化け物の姿となり、山に隠れ住むため山ちちと云うことである。深山では「さとりかい」といわれ、人の寝息をうかがい、

(補足)

「山地乳と云うハ」、「乳」の次が「ミ」にみえますが、「と」の次は「云」の一画目の短めの横棒につながってます。4行あとにも「死春と云習ハせり」と同じつながりで出てきてます。次行にも「と云と」がありますが、こちらははっきり「と」と「云」が区別できます。

「野衾」の漢字のイメージからは可愛らしいくて空を滑空するムササビやももんがと結びつきません。

「う可ゞひ」、「う」と変体仮名「可」(か)のかたちはほとんど同じなので、悩む箇所です。

 

2021年10月7日木曜日

桃山人夜話巻二 その10

P6 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

山 地々

やまちゝ

やまちち


このもの人 の寐

    ひと ね

このものひとのね


息 を春いあとに

いき 

いきをすいあとに


て其 人 の胸 を

 そのひと むね

てそのひとのむねを


多ゝくと飛としく

たたくとひとしく


死春ると那りされども

しするとなりされども


あい袮まの人 目を

     ひとめ

あいねまのひとめを


さませ者゛可へりて命

         いのち

さませば かえりていのち


奈可゛しといふ

なが しという


奥 州  にお本

於うしう

おうしゅうにおお


く居るよし

 い

くいるよし


いひつ多ふ

いいつたう


(大意)

山地々

このものは人の寝息

を吸い、そのあとで

その人の胸を

たたくやいなや

死んでしまうという。しかし

同室で寝ている人が目を

覚ましてしまうと、逆に命を

ながらえるという。

奥州におお

くいるとのことが

言い伝えられている。

(補足)

 なんとも珍妙な姿の「もの」です。手の指は3本、足の指はふたまたに分かれ、猿とも河童とも見えますが。このあとの本文にその謂われがでてきます。旅道中の旅籠の夜、吸われている若いお武家さんのような人の寝顔がなんとも気持ちよさそう。行灯が精緻に描かれています。

「あとに」、平仮名「に」の頻出頻度は平仮名「み」と同じくらいに少ない。

平仮名「く」の上に小さな「丶」があるようにみえます。変体仮名「久」(く)は「丶」+「く」のようなかたちなので、平仮名「く」との区別が難しいです。また変体仮名「天」(て)にもにています。

変体仮名「飛」(ひ)は特徴的なので覚えやすい。

「奥州」、「州」が「刀」三つで下の二つがくずれた形。

 

2021年10月6日水曜日

桃山人夜話巻二 その9

P5 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

豆 狸

まめ多゛ぬき

まめだ ぬき


小雨 ふる夜者

こさめ  よ

こさめふるよは


陰 嚢 を可つきて

ゐんのう

いんのうをかつきて


肴  を求 免尓

さ可奈 もと

さかなをもとめに


出 るといふ

いづ

いずるという


(大意)

豆狸

小雨の降る夜は

陰嚢をかついで

肴を求めに

あらわれるという。

(補足)

 画像は白黒なのでどことなく暗く感じますが、元絵は色彩画で陰嚢のうしろは淡紅色の花と緑鮮やかな葉であります。絵に悲壮感など微塵も感じられません。陰嚢のひだは花と同じ色が彩色され毛のいっぽん一本がとてもリアルでちと不気味といえば不気味。小雨の描き方は定番の方法(雨の筋をすべて平行には描かない)ではありません。

「夜」の次は変体仮名「者」(は)、変体仮名「盤」(は)のどちらでしょうか?

豆狸の持つ帳面は「又道通」のようにみえますがさて?

 

2021年10月5日火曜日

桃山人夜話巻二 その8

P4後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

天世尓伝 へり其角 可゛筆 の春さミ尓此 こと越

 よ つ多  き可く  ふで     この

てよにつたえりきかくが ふでのすさみにこのことを


書 し天志可も宝 普 斎 の者し書  越曽え多里

しよ     本う志んさい   可゛き 

しょしてしかもほうしんさいのはしが きをそえたり


魯山 可゛座しきと思 ひしハかの豆 狸  可゛陰 嚢 尓

ろさん  ざ   於も     まめ多ぬき  きん多満

ろさんが ざしきとおもいしはかのまめだぬきが きんたまに


志天発 句の脇 越附 多るも怪 し可り个る事 どもなり

  本つく 王き つけ   あや     こと

してほっくのわきをつけたるもあやしかりけることどもなり


(大意)

して世に伝えた。(俳諧師の)其角が筆の手慰みにこのことを

書いて、しかも宝普斎の名で端書きを添えている。

魯山が座敷とおもっていたのはかの豆狸の陰嚢で

あり、魯山の発句の脇を豆狸が附けたのも怪しい事どもである。

(補足)

「書」のくずし字は簡略化されすぎていて、このままおぼえるしかありません。

「かの」、平仮名「か」はたまに出てきますが、「み」はほとんどが片仮名「ミ」。

「事」は異体字「叓」、「古」+「又」。

 わたしもそんな座敷に招かれてお茶のひとつもご馳走になってみたい。

 

2021年10月4日月曜日

桃山人夜話巻二 その7

P4前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ハのけさ満尓大  地へ奈げら連所  ハ其 儘 野原と

      多゛以ぢ     ところ そのまゝの者ら

はのけさまにだ いちへなげられところはそのままのはら


奈り天彼 家 登覚  しきハ阿多り尓ミえ須゛婦し

   可のいゑ 於本゛        

なりてかのいえとおぼ しきはあたりにみえず ふし


ぎのこと尓思 ひ天同 じ里 の人 尓語 る尓豆 多゛ぬ

     於も  於奈 さと ひと か多  まめ

ぎのことにおもいておなじさとのひとにかたるにまめだ ぬ


き能所 為奈りといへりされども附 合 三 十  六 句の

  しよゐ          つ希あひさん志゛うろツく

きのしょいなりといえりされどもつけあいさんじゅうろつくの


こと越希有尓思 ひ天其 侭 尓志るし狸  歌仙 と

   けう 於も  そのまゝ    多ぬき可せん

ことをけうにおもいてそのままにしるしたぬきかせんと


(大意)

(魯山)はもんどりうって大地へ投げ出され、(八畳間の)ところはそのまま野原と

なり、かの家とおぼしきものはあたりに見あたらなかった。不思議な

ことだとおもって、同じ里の人に(このことを)語ったところ、それは豆狸

の仕業であると言った。しかし(連句)三十六句の附合が残っている

ことを珍しいとおもってそのままに記し、狸歌仙と


(補足)

「野原」、「野」のくずし字は「那」+「土」のようなかたち。

「こと」、これでひと文字で合字です。何箇所かこのあとにでてきます。

変体仮名「能」(の)は英語の発音記号「æ」に似ています。

「附合」の振り仮名がよくわからないので拡大してたしかめました。ここの「け」は変体仮名「希」(け)でしょうか。「あ」は変体仮名「安」(あ)のようにもみえますが、やはりよくわかりませんでした。

「三十六句」、振り仮名「ろつく」の「つ」は片仮名「ツ」にもみえますし、変体仮名「川」(つ)のようにもみえます。

 お釈迦様の手のひらならぬ狸の陰嚢(きんたま)座敷も大風呂敷をひろげたはなしで笑えます。連句のやり取りがあるので、お下品にはかろうじてならなそうなのがまぁ救い。

 

2021年10月3日日曜日

桃山人夜話巻二 その6

P3後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

火の氣の絶 天奈き故 春り火打 を出  し天

ひ け 多え   ゆへ  びうち い多゛

ひのけのたえてなきゆえすりひうちをいだ して


烟草  越吸 个る尓過  ち天ふきがら越畳  尓落

た者゛こ 春ひ   あや満       多ゝミ 於と

たば こをすいけるにあやまちてふきがらをたたみにおと


せし時 座しきの畳  越一 度尓満くり多てゝ魯山

  ときざ   多ゝミ いちど       ろさん

せしときざしきのたたみをいちどにまくりたててろさん


(大意)

火の気がまったくないので、摺り火打を出して

烟草を吸っていると、過って吸い殻を畳に落

としてしまった(その)とき、座敷の畳がいっぺんにまくれて、魯山

(補足)

「絶天」(多えて)、振り仮名をみてから「絶」とわかり、そのくずし字をみるとなるほどとおもうけど、逆は無理で、つぎにこのくずし字をみても読めない(とおもう)。

変体仮名「天」(て)、変体仮名「越」(を)がたくさんでてきます。

 風流を楽しみつつ一服してうっかり吸い殻を畳に・・・、はなしが雄大で広がりがあります。

 

2021年10月2日土曜日

桃山人夜話巻二 その5

P3前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

菊 の名尓酒 買ふ程 ハ銭 有 天 魯山

きく 奈 さけ可 本ど ぜ尓あり  ろさん

きくのなにさけかうほどはぜにありて ろさん


登㐧  三 越し多る尓主 人 又

 多゛ひさん     し由じんま多

とだ いさんをしたるにしゅじんまた


ワ春れてハ又 捨 多世越奈幾

     ま多すて よ

わすれてはまたすてたよをなき


登挙 句迄 出来个れバ魯山 ハいよ\/興  尓入 天

 阿げくまででき   ろさん     个う  いり

とあげくまでできければろさんはいよいよきょうにいりて


いつ迄 も此 家尓止  り天風 流  の多のしミせんもの

  まで このや とゞ満  ふう里う    

いつまでもこのやにとどまりてふうりゅうのたのしみせんもの


をと思 ひ个る可゛食  物 ハ阿多ゝ可奈る毛の有 个れ共

  於も     しよくもつ         あり  とも

をとおもいけるが hそくもつはあたたかなるものありけれども


(大意)

そして魯山が

  菊の名に酒買う程は銭ありて

 (菊の節句に酒を買って祝うくらいのお金は持ってますよ)

と第三を付けると、主人はまた

  わすれては又捨てた世をなき

 (菊の節句などと聞くと、また忘れてしまっていた捨てた世を思い出して泣けてしまします)

と挙げ句まで出来てしまった。魯山はいよいよ興にのってきて

いつまでもこの家にとどまって風流の楽しみをしたいもの

だと思った。しかし食べ物は温かいものが出されるのに

(補足)

「㐧三」、振り仮名は「多゛ひ」に見えますが「多゛以」かもしれません。

「ワ春れてハ」、片仮名「ワ」をひさしぶりにみると、はて?とおもってしまいます。

変体仮名「幾」(き)。普段でてくるのは変体仮名「起」(き)のほうがおおいとおもいます。

振り仮名がなければ読めそうもないではなく読めないくずし字がたくさん出てきています。

 

2021年10月1日金曜日

桃山人夜話巻二 その4

P2後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

里折 可ら八 畳  間の座しき奈り个れバ魯山 と里

 をり  者ちぜう ま ざ       ろさん

りおりからはちじょうまのざしきなりければろざんとり


阿へ須゛

あえず


八 畳  越月 尓目の里の春まひ可南

者ちせう  つき 免     

はちじょうをつきにめのりのすまいかな


登有 个れバ主 人

 あり   志由じん

とありければしゅじん


雨 の婦る家の阿き能造 作

阿免   や    ざうさく

あめのふるやのあきのぞうさく


(大意)

(おこなった。)折しも(ちょうどそこは)八畳間の座敷だったので、魯山はとり

あえず、

 八畳を月に目のりのすまいかな(この八畳間は月見ができてよいおすまいですね)

と(発)句を詠むと、主人は

 雨のふる家のあきの造作(雨が降ると雨漏りのする古家で、空き家同然の秋向きの造作ですよ)

(補足)

「と里阿へ須゛」、「と」がわかりにくい。

「月尓目の里の」、言葉の感じとして「月見をするのに」とはなんとなくわかりますが、文法的に解説するとなるとわかりません。

今まであまり目にすることのなかった変体仮名がたくさん出てきてます。「免」(め)、

「南」(な)、「婦」(ふ)、「能」(の)など。