2020年11月30日月曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その20

P.12後半

(読み)

志どいめ尓

しどいめに


あハせしハ

あわせしは


いゝきみで

いいきみで


あつ多とさ

あったとさ


まこと尓あく人 本ろび

まことにあくにんほろび


ぜん人 のさ可へ▼

ぜんにんのさかえ


▼てめで多し\/\/

    てめでたしめでたしめでたい


(大意)

酷(ひど)い目にあわせたことは

いい気味だったとさ。

まことに悪人滅び

善人の栄えることは

めでたいことだ。

めでたしめでたし。


(補足)

「志どいめ尓」、「志」と「尓」は間違いなく自信があります。しかしあいだの3文字がよくわかりません。初心者はこういったときつらい。「ど」は「ハ」にもみえます、ちょうど左隣にある「ハ」と比べてもそっくりです。「め」は「わ」にもみえます。P1とP10に平仮名「わ」があるのですが、一画目の縦棒の最後がはねずにとめになってます。ここの「わ」ははねてますのでやはり「め」でしょうし、このあとの「めで多し」のところの「め」と比べても「め」に軍配があがります。

「しどい」として、辞書で調べてもヒットしません。江戸っ子だったら「し」が「ひ」になりますし、出版元は東京であります。ということでわからないことをよいことに「酷い目に」としました。はなしの流れにもあいますし・・・

 あらためて欲張りじじいの顔をアップしてみると、お縄をかけようとしている役人の顔に比べると何倍も思い入れをこめて丁寧に念入りに描いているような気がします。必死の形相にもどこか悲しさがあるのです。

 

2020年11月29日日曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その19

P.12前半

(読み)

よろこぶをよくふ可

よろこぶをよくふか


ぢゞい可゛まねをして

じじいが まねをして


者いをまくと

はいをまくと


とのさ満の

とのさまの


おやく

おやく


者いり

はいり


しを

しお


ごきん

ごきん


じよ可゛

じょが


(大意)

喜んでいるところを欲ふか

じじいがまねをして

灰をまくと殿様の家来が

入って(捕らえました)。

ご近所が


(補足)

 欲ふかじじいがお縄になっている図。役人は六尺棒を地面に、口に捕縄をくわえ正に縛り上げようとするところ、じじいの切羽詰まった表情がとてもリアルであります。

「とのさ満の」、変体仮名「満」(ま)は◯に☓のような形。

 

2020年11月28日土曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その18

P.11

(読み)

ひとゑ多゛

ひとえだ


さ可

さか


せて

せて


ミろ◆

みろ


◆とおゝせ尓

   とおおせに


者奈を

はなを


さ可せし

さかせし


ゆへ■

ゆへ


■ご

  ご


本うび

ほうび


をい多ゞ

をいただ


いて

いて


(大意)

花をひと枝咲かせてみろ」

と仰せになられました。

花を咲かせたので

そのご褒美をいただき


(補足)

 なんとも華やかな晴れがましい絵です。右手で灰を撒き散らし、そのかかげた手のひらのうしろからは後光がさしているようで、にこやか満ち足りた正直じいさんの顔の大きさと同じくらいにいっぱいに広げられています。読者の方にまで灰が降り掛かってきそうです。その手のひらより顔と上半身がやや奥にさらに下半身が奥まり、遠近感が感じられます。左脚は小枝にかけ、右脚は太ももまでしか描かれていません。脛(すね)と足は幹にしっかりと踏ん張り突っ張っている力具合が伝わります。こんなアクロバット的な態勢をとることができる爺さん、とても元気なのでした。

「ひとゑ多゛」、「ゑ」が変体仮名「志」(し)にもみえます。

 小林英次郎の特徴は太い黒線で輪郭線をはっきりしっかり描き、色も隅々にまでのせます。しかし花の部分はさすが輪郭線はありません。花の集まりを赤で塗り、小枝は細い黒線で数本、花は白を散りばめています。

P10P11見開き

 見開き中央の爺さんが左脚をかけている枝ぶりが奥に伸びているように描いています。画面中央がちょうど遠近点になっているような感じです。そしてさらにその右奥下のほうにやや小さくなった殿の一行を描き、奥行きを深めています。

奥の山の手前の青い部分は川に見えますが、なんでしょうね。

見開きで見ると一幅の絵であります。家の中に飾れば毎日花見ができます。いや〜かんしんかんしん。


 

2020年11月27日金曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その17

P.10後半

(読み)

とお多

とおた


つね尓

つねに


わ多くしハ

わたくしは


日本一の

にほんいちの


者奈

はな


さ可ちゞい

さかじじい


者奈を

はなを


かん

かん


しん

しん


\/

かんしん


(大意)

とお尋ねになり、

「わたくしは日本一の花咲じじい」

(殿は)「花を


感心感心


(補足)

 殿の一行から「かんしんかんしん」の声があります。感激しているさまを表現して記しているのか、一行の誰もが声高く言葉を発しているのか、どちらなのでしょう。

殿の一行は、木に登った花咲爺の視点から俯瞰しているように描かれているのでやや寸詰まりであります。

「かんしん」、平仮名「か」。

 

2020年11月26日木曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その16

P.10前半

(読み)

あるとき

あるとき


可れ起尓の本゛り

かれきにのぼ り


いるとこを

いるとこを


とのさ満おとおり

とのさまおとおり


尓て王れハ

にてわれは


奈尓もの多゛

なにものだ


(大意)

あるとき

枯れ木に登っているところを

殿様がお通りになり、

「おまえは何者じゃ」


(補足)

 絵全体の雰囲気が優しく薄い紙を一枚透かして見ているような感じになりました。

殿様が枯れ木に登る爺を見上げている図。うしろには幟が見えお供のものがたくさん連なっています。

文字はくっきり不鮮明なところはまったくありません。

「可れ起尓」、「おとおり尓て」、「尓」のかたちが異なっています。後者はほとんど英字筆記体「y」です。

「の本゛り」と終わりから4行目「日本一」の「本」、前者は変体仮名の「ほ」、後者は漢字の「本」です。使い分けで形が異なってます。

 

2020年11月25日水曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その15

P.9上段

(読み)

▼その

 その


者い

はい


奈りと

なりと


もらハんと

もらわんと


ざるをもつて

ざるをもちて


者いを

はいを


もら■

もら


■いて

  いて


たち可へり

たちかえり


个る

ける


(大意)

その灰だけでも

もらおうと

ざるを持ってきて灰をもらって

家へ帰りました。


(補足)

「もらハんと」、「ハ」は「わ」にも見えます。

「ざる」、「る」が普通の平仮名です。最後の「个る」も同じ。

「たち可へり」、変体仮名「多」ではなく平仮名「た」。

P8P9見開き

オイオイ嘆き悲しみ涙いっぱいの正直爺としらんプリンの欲張りじじいの対比が愉快です。

欲張りじじいの右足の親指が持ち上がっています。足裏を囲炉裏の火で温めながら親指を無意識に動かしていそうです。

蒸籠を燃してしまった囲炉裏の火力の立ち上がり方が凄まじい、キャンプファイヤー以上であります。鍋を吊るしている自在鉤・横木・鉤棒が正確に描かれています。

一部屋の土壁が正直爺の背景はやや明るい黄土色、欲張りじじいのは暗い青い色と、異なっています。爺の性格を反映させたのでしょうか。


 

2020年11月24日火曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その14

P.9下段

(読み)

ち起゛

じき


ちゞいハ

じじいは


奈げき

なげき


可奈

かな


しミ

しみ


せめて▼

せめて


(大意)

(正)直爺は

嘆き悲しみ

せめて


(補足)

下段から始まります。

背景の薄鶯色に字がかすれて読みにくいですが、なんとか読めそうです。

「奈げき」、「き」が整った平仮名です。おなじく「せめて」もきれいな平仮名。

囲炉裏の前で煙管をくわえ、すっとぼけた表情の欲張りじじい、体育座りしているのがちょっと愉快。

 

2020年11月23日月曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その13

P.8下段

(読み)

▲大 おこりて

 おおおこりて


せいろうを

せいろうを


こハ

こわ


して

して


いろりへくべて

いろりへくべて


もして

もして


志ま

しま


つ多と

ったと


きいて

きいて


せう

せい


(大意)

大変に怒って

蒸籠を壊して囲炉裏へ入れ

燃してしまいました。

正直爺はそのことをきいて


(補足)

文章のつなぐリズムなのでしょうか、「〜て」が3回出てきます。

「きいて」、「き」はたいてい変体仮名「起」なので、珍しいかもしれません。

手ぬぐいで涙を拭いながら激しく泣く姿、口周りがちゃんちゃんこの色柄になってしまっているのがちょっと残念。

正直爺さんのちゃんちゃんこ、ここまでに4回出てきています。全部色柄が異なっていて、いろいろあるものだと感心します。

 

2020年11月22日日曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その12

P.8上段

(読み)

かりて

かりて


もちをつく尓

もちをつくに


やつ者゛り

やっぱ り


奈可よりき多

なかよりきた


奈起もの可゛いでし

なきものが いでし


ゆへよく者゛り

ゆえよくば り


ちゞいハ▲

じじいは


(大意)

借りて餅をつきました。

ですがやはりなかからは

汚いものが出てくるだけでした。

そのため欲張りじじいは


(補足)

「かりて」、平仮名「か」です。

「やつ者゛り」(やっぱり)、半濁点「゜」を使っている場合もありますがあまりありません。たいていは濁点「゛」ですませています。

「奈起ものが」、ここの「も」は2行目の「も」と書き順と形が異なっています。

ここの文章は背景の渋黄色の土壁のためかくっきりで読みやすい。

右にみえる外の風景はP5の山奥の農村風景と同じです。

 

2020年11月21日土曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その11

P6P7見開き下段

(読み)

▲大よろこび

 大喜  び


でい多り

でいたり


しを

しを


よく

よく


ふか

ふか


ちゞい●

じじい


●また

 また


きゝつけ

ききつけ


可のせいろうを

かのせいろうを


(大意)

大喜びでいたところ

欲深ジジイがまたききつけて

その蒸籠を


(補足)

 いつも悩んでしまうのですが、ここでも「ひ」と「い」が似てます。前後の流れから読むことはできます。しかし「ひ」と「い」そのものを見比べると、違いはありますが悩むなぁ。「可」と「う」もそうなんですけどね。

P6P7見開き

 角張った石臼にどうしても目がいってしまいます。中は丸くしないと餅をつくのに不便ですからよいとして、外側はわざわざ丸く硬い石を削ることもない。でも下側はすぼめてかえって手のこんだ仕事をしてしまっています。きっと実際にこのような石臼があったのでしょうけど、ネットではヒットしませんでした。

 何色も使っていませんが、色にぎやかに感じます。


 

2020年11月20日金曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その10

P6P7見開き上段後半

(読み)

志多つて

したつて


こめをいれて

こめをいれて


いし

いし


うすへ

うすへ


あけれバ

あければ


奈可ゝら

なかから


こ者゛ん可゛

こば んが


多んと

たんと


いで

いで


しと▲

しと


(大意)

作って米を石臼へあけると

中から小判がたくさん出てきました。


(補足)

「志多つて」、仕立てる、だとおもいます。

P7

 蒸籠の木枠を松の木で作りホゾも正確に描いています。中はすだれのように竹を編んでいます。石臼に蒸し上がったもち米を入れている場面。赤い小判がザックザックです。石臼がおもしろい形をしています。

爺さんも婆さんに負けじと着込んでいます。

 

2020年11月19日木曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その9

P6P7見開き上段前半

(読み)

それを

それを


きゝいぬの

ききいぬの


ついぜん尓

ついぜんに


もちを

もちを


つ可んと

つかんと


可のまつ

かのまつ


でせい

でせい


ろうを

ろうを


(大意)

そのことを耳にして

犬の追善(ついぜん)に餅をつこうと

あの松で蒸篭(せいろう)を


(補足)

見開き全体で文章が展開してます。

「もちを」、「も」の筆の流れがわかります。「し」を書いてそのまま筆は左上へ、そこから右回りに円を書きます。

「可のまつで」、松の木の脇へ犬が埋められてしまったその松の木。

「せいろう」、蒸したりするするときに使う蒸篭、蒸籠です。いつも「せいろ」と発音してます。

P6

婆さんの後ろにあるのは竃(へっつい、かまど)、火がみえます。たすき掛け婆さん、それにしても着込んでいること!

 

2020年11月18日水曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その8

P.5下段

(読み)

▲松の木の

 まつのきの


王きへ

わきへ


うめて

うめて


志ま

しま


いけ

いけ


れバ

れば


正  ぢ起

しょうじき


ぢゝいハ

じじいは


(大意)

松の木のわきへ埋めてしまいました。

正直爺は


(補足)

「王きへ」、変体仮名「王」(わ)が見本のようにくっきりです。漢字の「已」のような形。

漢字が「松」「木」「正」。変体仮名が「王」(わ)「志」(し)「起」(き)。あまりまざりすぎると読むのが大変そう。

P4P5見開き。

犬が上顎を赤く見せ、キャンキャンと悲鳴が・・・。目は一筆で描いたのでしょうけどとても悲しそう。

見開きの中央に松の大木、その根元に犬、右に欲張りじじい、左に婆、奥は農村風景、配置が上手。

 

2020年11月17日火曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その7

P.5上段

(読み)

き多奈起

きたなき


ものや

ものや


いぬのふん可゛

いぬのふんが


多くさん

たくさん


いでし

いでし


ゆへ可の

ゆへかの


よく

よく


者゛り

ば り


ぢゝ

じじ


いハ

いは


おゝ

おお


おこりで

おこりで


いぬをぶち

いぬをぶち


ころして▲

ころして


(大意)

汚らしいものや犬の糞が

たくさん出てきました。

そのためあの欲張りじじいは

大変におこって犬を

打ち殺して、


(補足)

 赤い空の背景が少々文字を読みにくくしています。

「ものや」、「も」が「あ」にみえます。

婆さんが臭くて鼻をつまみのけぞる様が真にせまって臭ってきそうであります。こういった仕草を描くのが上手です。その婆さんの奥は、ずっと山奥のはずなのに、もうじき収穫時期の稲穂の黄金色、茅葺き屋根も見えます。

 

2020年11月16日月曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その6

P.4

(読み)

可りて

かりて


山へ

やまへ


由起

ゆき


し尓

しに


お志

おし


ゑぬ■

えぬ


由へ

ゆへ


だん\゛/

だんだん


山ふ可く尓▲

やまふかくに


▲奈つて

 なって


いぬ可゛

いぬが


ころ可゛る

ころが る


ところを

ところを


本る尓

ほるに


奈可より

なかより


いろ\/奈る■

いろいろなる


(大意)

借りて山へ行ったのですが

(犬が場所を)教えないので

どんどん山深いところへ入り込みました。

犬がくるくる回るところを掘ると

中よりいろいろな


(補足)

 欲張りじいさん鍬を振り上げ穴掘る姿が勇ましい。打ち鍬の柄、刃床(はとこ)部と刃、風呂(刃を挟んでいる部分)も描き分けています。刃の青みががっている部分がするどそう。

「由起」(ゆき)、「由」が◯に十のようにみえます。中段の「由」は「ゆ」にちかい。

「ころ可゛る」、そのまま「ころがる」と読み、犬が同じ場所でくるくる回ると理解しました。

ここの「る」は平仮名「る」と全く同じ、このあとの「る」は下半分だけでこちらのほうが多い。


 今朝の朝刊に、「明治22年の『國華』創刊号は1冊1円。かけそば100杯分の値段だった」との記事がありました。100銭で1円です。この豆本が1銭5厘ですから、かけそば1杯半、大盛りのかけそばとなります。

 

2020年11月15日日曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その5

P.3

(読み)

た可らものゝいでしを

たからもののいでしを


と奈りのよく者゛り

となりのよくば り


者゛ゞア可゛それ

ば ばあが それ


をミてこの

をみてこの


ことをぢゝい尓●

ことをじじいに


●者奈せバ

  はなせば


ぢゝいハ

じじいは


さつそく

さっそく


可のいぬを

かのいぬを


(大意)

宝物が出てきました。

それを見ていた隣の欲張りババアは

このことをジジイに話し伝えました。

ジジイはさっそくその犬を


(補足)

欲張りババアの袖からのぞく腕がたくましい。

木の幹を真っ直ぐに描かないところがミソでしょう。女性の立ち姿も少しくねらせて描くのと同じなのかな。着物の柄は三つ葉のような葉柄?

宝物が地面から少し見えます。壺のようなもの、ほかはよくわかりません。

「た可ら」、平仮名「た」です。

変体仮名「者」(は)がたくさんでてきてます。平仮名「む」の最後の平らな部分が右斜下に流れる感じ。

「このことを」、ここの「こ」「と」は区別がつきます。

「さつそく」「可のいぬを」、ちょうど同じ位置に「つ」と「い」が並んでいます。少しにてます。

P2P3見開き

 ここほれワンワンとおじいさんに教えいる犬、そうかそうかと犬にありがとよといっているおじいさん、その様子を木の陰からうかがっている欲張りババア。木の根元からは宝物が・・・

文章がなくても絵から物語が話しかけてきます。


 

2020年11月14日土曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その4

P.2

(読み)

者る可の山 へつれゆ起

はるかのやまへつれゆき


ちを本るゆへ▲

ちをほるゆへ


▲その

 その


ところを

ところを


本る尓奈可より

ほるになかより


いろ\/奈る

いろいろなる


(大意)

はるか遠くの山へ連れてゆきました。

(犬が)地面を掘るので

そこのところを掘ると

中からいろいろな


(補足)

「ところを」、「と」と「こ」がそっくりです。

犬はあまり描きなれてないのか、この角度からの描き方が苦手なのかやや稚拙であります。かわいらしいですけど。

爺さん肩にかつぐ鍬(くわ)がたいそう立派です。

 

2020年11月13日金曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その3

P.1

(読み)

む可し\/

むかしむかし


ま多く可し

またむかし


正  ぢ起

しょうじき


奈る

なる


ちゞい

じじい


ひご

ひご



いぬを

いぬを


あいすこと

あいすこと


わ可゛このごとく

わが このごとく


てう あい春れバ

ちょうあいすれば


可のいぬ

かのいに


ある日ちゞいの

あるひじじいの


そでをしき

そでをしき


(大意)

昔々、そのまた昔

正直なおじいさんがいました。

ふだんから犬を我が子のようにかわいがり

いとおしんでいました。

その犬がある日おじいさんの袖をひいて


(補足)

 じいさん庭の枝折り戸の前で、餌を与えようとしているようです。わんこは左前足をあげておあずけ姿勢をしています。尻尾がくるっと巻き上がってうれしそう。

でもじいさんの左手に持つ皿の上はなんとなく魚が2匹?にみえますけど・・・

じいさんの左足指が右足みたいにみえます。間違えたのかも。

平仮名「あ」は「お」に「丶」がないようなかたち。まるっぼくありません。

「てうあい」、寵愛(ちょうあい)。

 

2020年11月12日木曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その2

見返し

(読み)

者なさ可ぢゝい

はなさかじじい


北尾者ん

きたおはん


(大意)

花咲かじじい

北尾版

(補足)

表紙では「花さ起ぢゝい」となってましたが、ここでは「者なさ可」。

豆本の表紙の裏にはたいてい見返しがあります。

豆本の内容に関係ある絵のこともあるし、著者の思いつきのようなそのときどきに感じたのかもしれないような気分がなごみホッとするような絵もあります。

渋い橙色の臼と杵。欅でこのような色のものがあります。

もくもく雲の向こうには纏(まとい)のようなもの。

家の一隅にそっと飾っておきたくなります。

 

2020年11月11日水曜日

豆本 花さ起ぢゝい(小林英次郎)その1

表紙

(読み)

花 さ起ぢゝい

はなさきじじい


箴飛亭画

しんびていが


(大意)

花咲じじい

箴飛亭画


(補足)

 表紙は最初に目について、読者が手にしてくれるかどうかいちばん大切な頁ですが、全体が暗い。

小林英次郎らしさがありません。右上の花咲じいさんがそれらしいかもしれないのですが、ラベルがいまいましい。

鍾馗様のような赤い房たっぷりのブラシのような肩章、頭には羽飾りのようなわけのわからぬ冠、ふかふかのソファーに座って、そこにみえるは緑の手、不気味です。

 小林英次郎は通称で本名は小林幾英(こばやしいくひで)、号は飛幾亭、箴飛亭(しんぴてい)とありますが、筬飛亭(せいひてい)ともあります。それほど昔のことではないのに生没年不詳となっています。

出版は明治13年。

 

2020年11月10日火曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その18

裏表紙

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

何の変哲もない横縞柄です。

和綴じの糸こよりが茶色くなってますが、綴じ直しをせずに当時のまま劣化したままなのでしょうか。

佐藤新太郎版はサッパリさらっとしたどちらかというと和風、小林英次郎版は隅々まで描きこむこってりくっきり色づかいもメリハリたっぷりと洋風といったところ。

次回はその小林英次郎の「花さ起ぢゝい(小林英次郎)」となります。

 

2020年11月9日月曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その17

奥付

(読み)

御届明治十八年六月一日

めいじじゅうはちねんろくがつついたち


編輯画工兼出板人

へんしゅうがこうけんしゅっぱんにん


定價壱銭五厘

ていかいっせんごりん


東京日本橋區馬喰町二町目七番地

とうきょうにほんばしくばくろうちょうにちょうめななばんち


佐藤新太郎

さとうしんたろう


(大意)

(補足)

 明治10年の西南の役が終わってようやく明治時代らしさがはじまったなどとものの本にはあります。明治18年出版ですからそろそろ明治中期になる頃でも、読んできたとおりまだまだ江戸時代を引きずった書き言葉や表現があり、そう簡単になくなるものではないことがわかります。

「変体仮名とその覚え方」板倉聖宣著 仮説社 には次のようにあります。

p124_9.

文部省は明治33年にいったん変体仮名の教育を廃止したが、・・・

明治33年、文部省は、小学校令施行規則を定めて小学校での変体仮名の教育を廃止したが、そのとき「棒引き仮名遣い」もさだめたこともあって、猛烈な反対運動が起きて、明治41年に変体仮名の教育を復活した。そこで、第二期の国定国語読本には二六種の変体仮名を教えるようになった。小学校の教科書から変体仮名が完全に姿を消すのは、大正11年以後のこと。

 こんな教育事情でありますから、社会・文化に根強く根深く潜り込んでいるものを明治政府が強く指導しようとしてもなかなか手ごわいのでありました。

 この豆本壱銭五厘とあります。

日銀のHPには「1円未満の紙幣(お札)や貨幣(硬貨)については、1953年(昭和28年)に制定された「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」(いわゆる小額通貨整理法)により、発行が停止されました。また、それまでに発行されていた1円未満の紙幣や貨幣も、同年12月31日限りで通用力を失いました。」とあり、「現在、1円未満の紙幣や貨幣は通貨として使用できませんが、「銭」と「厘」は「1円未満の金額の計算単位」として、「銭は円の百分の一をいい、厘は銭の十分の一をいう」と定められています(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第2条第2項)。

したがって、現在も、利息や外国為替の計算などには1円未満の単位が使われています。」となってます。

後半の説明にあるように、日常の通貨紙幣としては使用できませんが利息・外国為替計算には使われているということであります。

明治39年石川啄木22才は岩手県渋民村尋常高等小学校で代用教員で月俸8円でした。

調べてみると

●東京国立博物館観覧料

明治5年 2銭  昭和56年 250円  →1銭≒125円

●銭湯入浴料

明治5年 1銭2厘 昭和62年 270円  →1銭≒225円

となって、ずいぶんと幅があります。他の料金との比較もありますが、わたしの感覚としては子どもが親戚や親にねだるなり、親などが買ってあげられる価格帯に設定するわけですから、壱銭五厘は現在の価格にすると200円〜300円くらいのような気がします。


 

2020年11月8日日曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その16

P.12

(読み)

奈してちやう

なしてちょう


あひ奈す

あいなす


こと可ぎり

ことかぎり


奈し

なし


めで

めで


多起者るを

たきはるを


む可い个ること

むかいけること


めて多し

めでたし


\/\/

めでたしめでたし


(大意)

して寵愛すること

限りがありませんでした。

めでたい春を迎えたこと

めでたいことである。

めでたしめでたし。


(補足)

「ちやうあひ奈すこと」「む可い个ること」、「こと」は合字。

「めで多起者るを」、「起者」が難しい。変体仮名「者」の上部が「起」の下部にくいこんでいます。

 波の絵柄はこの頃には葛飾北斎のような感じで描くのが定番になっていたのかもしれません。似てますよね。

船の舳先をを切っている構図がうまい。兎の赤い瞳、視線は狸憎しとにらめつけ、かたや赤フン狸はやられたぁ〜と、その目線はまた兎に向けられているよう。両者の脚絆、兎は灰色、狸は赤とお似合いです。浪の荒れようが凄まじい。


 

2020年11月7日土曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その15

P.11下段

(読み)

うミへうち

うみへうち


こみ

こみ


とふと可多きを

とうとかたきを


うちとり

うちとり


ぢゞ尓者奈し

じじにはなし


个連バちゞハ

ければじじは


よろこびいく

よろこびいく


者゛くぞ

ば くぞ


そ連ゟ

それより


可のうさ起゛

かのうさご


王可゛

わが


このごとく

このごとく


(大意)

海へ打ち込み

しっかりとかたきを討ち取りました。

ぢぢに(そのことを)話したところ

ぢぢの喜びようはどれほどであったことか。

そののち、かの兎は我が子のように


(補足)

 文章のほとんどがこたつの唐草模様の掛け布団を背景にして、文字もかすれやつぶれがあってわかりにくい箇所も多いです。

「とふと」、最初は「とうとう、やっと」の意だとおもったのですが、辞書には「しかと、ゆるぎないさま」とあり、こちらの意味と気づきました。

「可多きを」、この部分うっかりと「うさぎ」と読んでしまいそうです。それでは意味がおかしくなるのですが。

「ぢゞ尓者奈し」、読みづらい。次の「个連バちゞハ」も同様です。

「者゛くぞ」、「ぞ」がつぶれてしまって、「ぞ」とわかれば形をなぞれますが、あれこれ悩む箇所です。

「そ連ゟ」、「より」は合字「ゟ」、「このごとく」の「ごと」も合字。


P10P11見開き

 こたつに寄りかかり膝をくずし、胸筋も二の腕も太いのに、なよっているたぬきの姿がおかしい。

ふたつの場面をひとつの絵に盛り込んでいるのですが特に違和感は感じません。

 もう一度すりこ木とすり鉢あたりに目をやれば、その左側のお盆の中にある赤いもの3本は唐辛子と見ました。これをすりつぶして狸の背中に塗りつけたという訳?

こたつの高さが高いように感じますが、実際こたつの高さはもっと高いものが多かったようです。ほんとかうそか、向かいに座る人が見えないくらいのものもあったとか・・・

 

2020年11月6日金曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その14

P.11上段中段

(読み)

ふねハ

ふねは


つちぶね

つちぶね


ゆへ多゛ん\/

ゆえだ んだん


くづ連

くずれ


可ゝり

かかり


け連バ

ければ


うさ起

うさぎ


ハよろこび

はよろこび


ひごろの

ひごろの


あくじおもひ

あくじおもい


志連と

しれと


可ひを

かいを


もつて

もって


さん\/゛

さんざん


尓うち

にうち


多ゝき

たたき


(大意)

船は土船のため

だんだんとくずれだしので

兎は喜び、日頃の悪事をおもいしれと

櫂を持って散々に打ちたたき


(補足)

「ふねハ」と「つちぶね」の「ね」が異なってます。後者は変体仮名「禰」(ね)でしょうか。「根」かもしれません。

「くず連」「け連バ」「志連と」、変体仮名「連」(れ)。

「うさ゛起」、濁点をおくところを間違えたか。

「あくじ」、「くじ」が「乍」のようにみえます。

部屋の中は兎が狸に土船を造らせようと設計図を見せて説得している場面、狸は背中の大やけどをいたわるのか半身裸でこたつに入っています。こたつにかぶせてある布は唐草模様。

外では兎が細かく造り方を指示でもしているのか、狸は土壁を塗るときのようにコテ(鏝)と鏝板で左官屋さんのようです。



 

2020年11月5日木曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その13

P.10

(読み)

つく

つく


らせ

らせ


ふたりし

ふたりし


てうミへ

てうみへ


のり多゛し

のりだ し


多゛ん\/とゆく

だ んだんとゆく


本ど尓うさ起゛

ほどにうさぎ


のふねハきぶ

のふねはきぶ


ね多ぬきの

ねたぬきの


(大意)

造らせ二人して海へ乗り出しました。

だんだんと(沖へ)ゆくほどに

兎の船は木舟で、狸の


(補足)

「のり多゛し」、「り」の右側下がかすれてます。

「ふねハきぶね」、「ハ」と「き」の上下がやや重なって少しわかりずらい。

兎が何か紙を狸に見せつけています。船の設計図でしょうか。兎の衣裳が歌舞伎にでてくる役者さんのよう。右下にはすり鉢にすりこぎ棒。何に使うor使ったのでしょう。

 

2020年11月4日水曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その12

P.9後半

(読み)

多ぬき尓

たぬきに


奈け連バ

なげれば


奈を\/

なをなを


奈やミ

なやみ


くるしミ

くるしみ


个る可゛う

けるが う


さ起ふねを

さぎふねを


つくり

つくり


多ぬき尓

たぬきに


春ゝめつち

すすめつち


ぶねを

ぶねを


(大意)

(それを)狸に投げれば

いっそう、もだえ苦しんでいました。

兎は船を作り、狸には土船を作ることをすすめ


(補足)

「奈け連バ」、「け」に濁点がありませんが、よくあることです。変体仮名「連」(れ)は何度もでてきています。

「春ゝめ」、ここの変体仮名「春」(す)は「十」+「て」。

P8P9見開き

見開きで見るとなかなか迫力があります。忍者同士の戦いのよう。

狸の燃え盛っている柴の下の色が土の色と同じになってしまってます。


 

2020年11月3日火曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その11

P.9前半

(読み)

いゝけるバ

いいけるば


うち尓

うちに


もへ

もえ


あ可り

あがり


大 やけ

おおやけ


ど奈り

どなり


うさ

うさ



きゝて

ききて


よろ

よろ


こび

こび


ミまい

みまい


奈可゛ら

なが ら


とう

とう


がらしミそ

がらしみそ


もちゆき

もちゆき


(大意)

と答えたとたん

(柴の)内側に燃え上がり

(狸は)大やけどをしました。

兎はそれを聞いて喜び、見舞いに

唐辛子味噌を持ってゆきました。


(補足)

この頁、文章よりも先に兎の斬新な忍者装束のような姿に目が奪われます。一体この●の紺色、そのまわりに薄青のトゲトゲ、なんて奇抜な柄でありましょう。両手に持つは火打道具、これがカチカチの音のもとです。


「いゝけるバ」、「る」は「連」(れ)ではないのですね。

「うち尓」、「う」のカーブのところがかすれていて「こ」にもみえてしまいます。

「きゝて」、ここの「て」も先ほどの「う」と同じく、かすれてます。「と」にみえます。

「ミまい」、「ま」とわかってしまうとなんでもないですが、変体仮名「連」(れ)をちょっとかきそこなったようにもみえます。


 

2020年11月2日月曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その10

P.8

(読み)

「こゝハ

 ここは


かち

かち


\/

かち


や満

やま


奈り

なり」



(大意)

「ここはかちかち山だ」と

(補足)

前頁の狸の問に答えています。

「かち」、平仮名「か」です。

場所を示す杭には「かち\/山」「加知仝山」とあります。「仝」は繰り返し記号「\/」と同じで読みは(おなじ)(どう)。

紺地に白の格子縞の上下に地下足袋姿、背中の柴に火付けされおおあわてです。

 

2020年11月1日日曜日

豆本 かち\/山(佐藤新太郎)その9

P.7

(読み)

ひをうち可け連バ多ぬきい満のおと

ひをうちかければたぬきいまのおと


ハ奈んのおと奈りときけ者゛

はなんのおとなりときけば


(大意)

火を付けたところ

狸が「今の音は何の音か」と

聞いたので


(補足)

出だしの「ひ」の上に文字のようなもながあります。無視しても意味が通じますのでゴミと判断。

「い満のおと」、ややかすれているので読みにくい。

音はもちろん火付けに使う火打ち石です。

縁側の座面は竹でしょう。全体の作りも細部まで丁寧に描いています。

部屋の壁は豆本の定番でたいていヒビが入り一部はくずれています。

P6P7見開き

空の赤、黄土色の小山、緑の草木は色の調子を両頁で保っていますが、灰色の地面は爺さんのほうがややマットな感じで、兎のほうは筆でササッと左右に塗っています。

それにしても幸せ満面の食事から庭に崩れ落ちてしわくちゃの泣き顔、天国から地獄。