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2021年8月1日日曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その12

P12

P13

(読み)

P12下段

△けれ

 けれ


バうさ

ばうさ


ぎ多ぬ

ぎたぬ


きのふ

きのふ


年をふち

ねをぶち


こハし多ぬ

こわしたぬ


起ハ水 尓

きはみずに


P13下段

う起つ

うきつ


志づミつ

しずみつ


うちころ

うちころ


して可多

してかた


起をとり

きをとり


多りぢゝい

たりじじい


も大ひ尓

もおおい


与ろこび个る

よろこびける


めで多し\/\/

めでたしめでたしめでたし


(大意)

出たところ、うさぎは

たぬきの船をこわしてしまいました。

たぬきは浮いたり沈んだりしながら

溺れて殺し、かたきをとりました。

じじいも大喜びでした。

めでたしめでたしめでたし。


(補足)

 たぬきの座っている畳の色で文章が読みづらい。

「う起つ」、変体仮名「起」がかすれていますが、文章の流れからも、このあと5行目「起をとり」の「起」と同じ形です。

「うちころ」、「う」がにじんでしまってます。しかしよく見ると一行目の「う起つ」の「う」と同じです。

 唐辛子味噌を背中にぬられて、たぬきは背筋を伸ばし、両手もつっぱらかせています。しみて痛そう。赤いふんどしをのぞかせ、脱ぎかけた着物柄も簡単な柄ではないし、座布団はさらに縦横柄と手がこんでいます。そして左にみえる木の火鉢、木目も描いています。窓の外はたぬきの悶絶もどこ吹く風、凪いで静かに沖には帆掛け船が・・・

P12P13見開き

最後の頁まで大変に丁寧に描かれている豆本でした。

御届明治十九年九月廿日

馬喰町二丁目店十四番地

編輯兼

出版人 綱島亀吉


裏表紙はこのシリーズの池に遊ぶ亀。




 

2021年7月31日土曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その11

P12

P13

(読み)

P12上段

とう可゛らしミそを

とうが らしみそを


こしらへ奈春り

こしらえなすり


つけれバ奈本\/

つければなおなお


い多ミで

いたみで


くるしミ

くるしみ


P13上段

ける

ける


あるひ

あるひ


うさ起

うさぎ


きふ年

きふね


をこしらへ

をこしらえ


い多る尓

いたるに


多ぬきも

たぬきも


つちふ年

つちふね


をこし

をこし


らへ

らえ


可ハへいで△

かわへいで


(大意)

P12

とうがらし味噌を

作ってなすりつければ

ますます傷み苦しみ

P13

ました。

ある日、

うさぎは木舟を作ったところ

たぬきも土船を作って

川へ出た

(補足)

 話の流れが見開きの上段から下段となってますのでそれに従います。P12上段背景がやや読みずらい。

「奈本」の「奈」が「る」のように見えますが、このあとの「くるしミ」の「る」と比較してください。またP13出だし「ける」「あるひ」の「る」は上部の横棒がありません。変体仮名「留」(る)に近いです。

 P12唐辛子味噌調剤と治療の図がなかなか細かいです。まな板のようなところで唐辛子を刻み、すり鉢に入れてゴリゴリ、それを油紙の和紙に塗って、その薬も赤だけでなく黒いぶつぶつを描いています。すり鉢の奥には取っ手を上に薬箱「かうやく」の木目もきれいです。そのうしろの襖絵は赤い唐辛子が飛び散ったかのように花が咲いています。うさぎの着物も洒落てますね。

 

2021年7月30日金曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その10

P10

P11

(読み)

P10

本゛う\/峠

ぼ うぼうとうげ


是 ゟ かち\/山

これよりかちかちやま


P11

ひをうち可けれバ

ひをうちかければ


多ぬきのせ奈可へ

たぬきのせなかへ


もへつきお本やけど

もえつきおおやけど


を奈しうちへ可へり

をなしうちへかえり


うさ起尓く春り

うさぎにくすり


をもらい个る尓

をもらいけるに


「これ可゛

 これげ


可ち\/

かちかち


や満さ

やまさ


(大意)

P10

ぼうぼう峠

これよりかちかち山

P11

火をつけると

たぬきの背中へ

燃えつけて大やけどを

おわせました。

家へ帰って

うさぎに薬を

もらったのですが


「これが

かちかち山さ

(補足)

「もへつき」「もらい个る」、ここの「も」は長細い「の」のようにみえます。この「も」の筆順は下端で逆さ「?」マークのようにクルッと左回りに上がって途中から今度は右回りに回ってそのまま下へ流れます。

「う」と変体仮名「可」(か)は区別がつきませんので、文章の流れや意味から判断するしかありません。

 うさぎが両手に持つ火打ち石。よく時代劇などで見るのは両手ともに石ですけど、ここでは打ち付けられる左手の方はその石を木で挟んでいるように見えます。うさぎは青い忍者装束だけでは単調としたのか、赤い半纏に黄色の帯で見栄え良くしてます。

P10P11見開き

 江戸五街道は幹線道路でしたけど、おおかたはここの絵のような道だったに違いありません。

 

2021年7月29日木曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その9

P9

(読み)

き多りて者可゛ミを

きたりてはが みを


奈しくやし可゛りおちい

なしくやしが りおちい


さん王し可゛可多きを

さんわしが かたきを


とりま須可らそん

とりますからそん


奈尓お奈げ起

なにおなげき


奈さる奈と◯

なさるなと


◯それより

 それより


うさ起゛ハ志たく

うさぎ はしたく


奈し多ぬき尓可や

なしたぬきにかや


を多くさんせを

をたくさんせを


王せや満へつれ行 (由起)

わせやまへつれゆき(ゆき)


(大意)

来て、歯噛みをして

悔しがり、お爺さん

わたしが敵(かたき)を

とりますから、

そんなにお嘆きしないでください

(と言いました)

それから、

うさぎは仕度をして

たぬきに萱(かや)を

たくさん背負わせて

山へ連れてゆきました。

(補足)

 最後の「行」のくずし字がわかりにくいとおもったのか「由起」と振り変体仮名がふってあります。読本は誰にでも読むことができるように振り仮名のあるものが多く、初心者のわたしなどには大助かりであります。

 うさぎも右手に手ぬぐいを持っています。手ぬぐいはとても大切な小道具の一つ。

P8P9見開き

 文章と絵が一致しています。やはりそのほうが違和感がないです。


 

2021年7月28日水曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その8

P8

(読み)

あと尓て

あとにて


大 起尓お

おおきにお


どろ起可奈

どろきかな


しミける

しみける


ところへうさ起゛

ところへうさぎ

(大意)

その後

大変に驚き

悲しみました。

そこへうさぎが

(補足)

「おどろ起」、ここの「お」は平仮名より変体仮名「於」(お)にもみえます。

「可奈しミける」、たいていは「个る」ですが、ここでは平仮名「け」。

 爺さん左手に手ぬぐいを握りしめおいおい泣き溢れる涙をふいてもふいても・・・悲しみに打ち沈んでいます。

 部屋がずいぶん丁寧に描かれています。壁は単色でなく白をあしらい木壁らしく、縁側は竹でしょうか。その縁の下に(爺さんの背中後ろに)ひび割れたようなものがみえますが、これは蜘蛛の巣のよう。そしてその右側に二色で描かれているものがわかりません。なんでしょう、これ?

 

2021年7月27日火曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その7

P7

(読み)

◯多いをあらハし者゛ゝアくつ多

 たいをあらわしば ばあくった


志゛ゝゆい

じじ ゆい


奈王の

なわの


し多の

したの


本年を

ほねを


ミう

みう


やい\/

やいやい


とさん

とさん


\゛/

ざん


あく

あく


多いを

たいを


つき尓げ行 ける

つきにげゆきける


(大意)

(正)体をあらわし、ババアを食った

ジジイは結縄(ゆいなわ)の下に

ババアの骨を見つけました。

(狸は)さんざんにわめきちらしながら

悪態をついて逃げていってしまいました。

(補足)

「ゆい奈王の」、ここの「ゆ」はどうみても「や」なのですが、それでは意味がおかしいので「ゆ」としました。彫り間違いか?そのあとに「やい\/」とあり、これは「や」です。

 爺さんの箱膳が立派、三面図の見取り図のようにきちっと描かれています。

P6P7見開き

 縁側・障子・屏風など直線部分と奥行き感は上手ですが、お櫃・お盆など曲線部分はいまひとつで苦手そうです。

 しかしながら、屏風の繪といい、隅々までしっかり描いていますねぇ。

 

2021年7月26日月曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その6

P6

(読み)

可くとハ志ら春゛

かくとはしらず


ぢゝ゛可へり

じじ かえり


个れバ者ゝ゛ア

ければばば あ


ぜんを多゛し

ぜんをだ し


めしを

めしを


春ゝめ

すすめ


奈どし

などし


おのれも

おのれも


志多ゝ可

したたか


くらいて

くらいて


多ぬきの志やふ

たぬきのしょう(たい)



「さあ\/

 さあさあ


多くさん

たくさん


おあ可゛ん

おあが ん


奈さい

なさい


(大意)

そのようなこととは知らず

ジジイが帰ってくると

ババアは膳を用意し

飯をすすめたりしました。

自分もたくさんに

食って

狸の正体を

「さあさあたくさん

おあがんなさい


(補足)

「ぢゝ゛可へり」、「可」の上にもう一文字あるように見えますが汚れかもしれません。

「志多ゝ可」、「ゝ」が「く」に見えて、その次の「可」につながらず、悩みました。

「多ぬきの志やふ」、「志やふ」で切れてしまうと、なんのことかわかりません。

「さあさあ・・・」と口語体です。明治19年出版ですから今からおよそ135年前です。今と全然変わりません。ババア汁のはいった鉄鍋、ごはんのお櫃、婆さんの丸盆とこれらも今でも馴染みのあるものばかり。

 この狸は着物の色にあわせて尻尾の色も変えることができるみたいです。青い尻尾が右に左に動いているみたい。縁側や障子も細かく描かれています。

 

2021年7月25日日曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その5

P4

P5

P4P5パノラマ

(読み)

P5

うさきハ

うさぎは


者゛アの

ばばあの


可多きと

かたきと


多ぬきを

たぬきを


うちころ

うちころ


(大意)

うさぎは

ババアの

敵である

たぬきを

打ち殺す

(補足)

 説明書きの部分は赤地に白抜きの模様が入って洒落た手ぬぐいのよう。

たぬきの船が黒いぶつぶつのようになっているのは、泥舟のため。

 パノラマでは浜をあまねく照らす朝日のあまりに鮮烈な描写に目を奪われます。光線の激しさだけでやけどしそうです。でも、沖にはのどかに帆掛け船が数艘。汁になってしまった婆さんの敵をとってくれろと扇をふるって必死の応援をする爺さんの表情はどこか和やかです。

 

2021年7月24日土曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その4

P3

(読み)

おもひといて

おもいといて


やれバ多ぬき

やればたぬき


者゛ゝア尓くらい

ば ばあにくらい


つ起天

つきて


き年をとり

きねをとり


ふちころし

ぶちころし


おのれ者゛ゝア尓

おのれば ばあに


者゛けむ起゛を

ば けむぎ を


つ起ミそ

つきみそ


奈ぞ春り

なぞすり


者゛ゝアしるを

ば ばあしるを


こしらいおき个る

こしらいおきける


(大意)

思い(縄を)解いてやりました。が、狸は

ババアに食らいついて、杵を奪い

打ち殺してしまい、

自分がババアに

化けて麦を

ついて味噌などをすって

ババア汁を

作っておきました。

(補足)

 豆本ではよくあるのですが、後ろに倒れかけている婆さんの表情が真に迫ってやけにリアルなのです。拡大してみました。どうですか!?

 この頁の文章も切れ目が何度か目を通さないと分かりづらい。

P2P3見開き

 狸と婆さんの視軸が一直線でつながっています。杵を奪い取られ、後ろに倒され、その一瞬の婆さんの姿をとらえているのが見事です。

 

2021年7月23日金曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その3

P2

(読み)

志゛るを志て

じるをして


多べんとつるし

たべんとつるし


お起ぢゝ

おきじじ


よふ多し

ようたし


尓いで由起个る

にいでゆきける


者゛ゝアむ起をつき

ば ばあむぎをつき


い多りし可゛多ぬ起

いたりしが たぬき


といてもら王ん

といてもらわん


とさ満\/と

とさまさまと


奈げき

ねげき


个れバ者゛ア

ければばばあ


ふひん尓

ふびんに


(大意)

汁を作って

食べようと吊るして置きました。

爺は用事を片付けに

出かけてゆきました。

ババアは麦をついていましたが

狸は縄をといてもらおうと

あれやこれやいろいろと

哀願したところ

ババアは不憫に

(補足)

 文章の文字はかすれもなくクッキリなのですが、背景が暗青色で読みづらい。また何度か繰り返し読まないとどこが文章の区切りなのかも難しい。

「よふ多し」、用たし。

「もら王ん」、「王ん」のところに汚れがあって分かりづらいです。変体仮名「王」(わ)は「已」のようなかたち。

 この頁も隅々まで丁寧に描かれています。部屋や縁側と縁側の下の壁まで、また狸の着物のくずしかたもなかなか粋であります。

 

2021年7月22日木曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その2

P1

(読み)

明治十九年十一月二日内務省交付1367


む可し\/ ある可多い奈可尓

むかしむかしあるかたいなかに


ぢゝい者゛ゝア春ミ

じじいば ばあすみ


个る可゛あるひ

けるが あるひ


ぢゝい多ぬ

じじいたぬ


きをとり

きをとり


き多り多ぬき

きたりたぬき


(大意)

昔々ある片田舎に

爺と婆婆が

住んでいましたがある日

爺が狸を捕まえ

てきて、狸

(補足)

 とてもきれいです。色あせやズレはなく鮮明です。文章もかすれもなくクッキリ。

 狸は縛られ吊るされて顔を婆さんに向けて、なにやら語りかけている様子。婆さんは餅つきではなく麦つきをしています。下駄じゃ仕事がしづらいだろうに。絵の四隅に至るまで丁寧に描きこんでいます。

 

2021年7月21日水曜日

豆本昔咄しかち\/山 その1

表紙

表紙裏

(読み)

昔  咄 しかち\/山

むかしばなしかちかちやま


綱 島 藏 版

つなしまぞうはん


(大意)

(補足)

 うさぎが背負っていた薪に火をつけられて大やけどをするのですが、奥の男はその薪をタップリとかついでいます。手前の男の手には火付けの道具か?

 二人の身につけているもの、異なった柄模様で、さすが表紙だけに力込めて描いているのがわかります。

 見返しが朱印なんて寂しいです。