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2020年4月18日土曜日

豆本 文福茶釜全 その15




 奥付

(読み)
明治九年十月五日出版御届定價壱銭五厘
南本所外手町十八番地
長崎縣士族
著者 村井静馬

馬喰町四丁目十八番地
東京府平民
出版人 小森宗次郎


(大意)



(補足)
 これまでの豆本などは国立国会図書館デジタルコレクションのサイトで、
検索欄に「村井静馬」などの著者名で検索すると、豆本も含めてその他の作品もたくさん出てきます。

 村井静馬のような著名な浮世絵師からそれほどでもない絵師の作品がアーカイブされていて、同じ豆本でも作品の出来は見た目だけでなく内容においても、その差は歴然です。

 しかしながら、わたしが子どものころ親しんだ漫画雑誌も似たようなもので、高名な漫画家が必ずしも受け入れられていたわけではなく、たくさんの漫画家にはまたたくさんの自分のお気に入りの読者がいたはずです。もちろんわたしもそのうちの一人です。

 この豆本はわずか壱銭五厘です。
どの豆本にも子どもたちを楽しませようとするアツイ熱情は左程感じられませんが、
こんな絵本で、まぁ暇つぶしでもして楽しんでくれ、なんていう気持ちがあるような気がします。

 裏表紙。




 文福茶釜全はこれにて終了。



2020年4月17日金曜日

豆本 文福茶釜全 その14




 P.12

(読み)
[つゝき]

大よろろこひ尓て
おおよろこびにて

本うそう尓おさめ
ほうぞうにおさめ

个るめで多しゝゝ
けるめでたしめでたしめでたし

多ぬ起も
たぬきも

人を多春けし
ひをたすけし

むくひよつて
むくいよって

てん志やうく王い尓
てんじょうかい に

の本りしとぞ
のぼりしとぞ


(大意)
大喜びで(茶釜を)宝蔵に納めました。
めでたしめでたしめでたし。
たぬきも人を助けたことにより
天上界に昇ったということであります。


(補足)
 茶釜はどこへいったのやら、右手に笏を持ち、奈良平安時代の貴族の正装です。
渋赤色の装束に淡黄色の丸い絵柄は茶釜の意匠。
キントン雲で天上界へ昇りゆく文福茶釜大明神のまなざしは下界にむけ、達観した表情。
品と威厳があります。

「本うそう尓」(ほうそうに)と読めても、意味がわかりませんが、続けて読むと「おさめ个る」とあるので、「宝蔵」かもとわかります。

「人を多春けし」、「人」の左上に点があり「いへ」と読んでしまいました。

「てん志やうく王い尓」、(てんじょうかいに)ですが旧仮名遣いだとなんとも・・・

 手のひらサイズの豆本の短いお話、しかしジンと胸をうちました。


2020年4月16日木曜日

豆本 文福茶釜全 その13




 P.11

(読み)
ミ起゛尓つ起
みぎ につき

百  ゑんそへ
ひゃくえんそえ

おさめ多し
おさめたし

ともふし
ともうし

个る由へ
けるゆえ

ぢ うじ
じゅうじ




[次へ]


(大意)
右のような事情につき
(茶釜に)百円を添えて納めたい」
と申し出ましたところ
和尚も


(補足)
「ミ起゛尓つ起」、「右」という漢字を使えばよいのにと、余計なことを考えてしまう。
「ゑん」、「ゑ」がでてきたのはこれで2回目。
「ともふし」、字が震えているようでよみずらい。

 画工の村井静馬はここの御婦人なんてササッと描いてしまうんでしょうね。
襖の柄がおしゃれです。なんて言いましたっけ、このような柄?
「大明神」、「日」が「目」になってますが、何かわけがあるのかもしれません。


P10P11見開き。



 床の間が遠近法で描かれています。
床の間の左側の板、色を置き忘れ、三宝の左半分も、うっかりでしょう。
千両箱はともかく、江戸時代の家屋、部屋にはほとんど家具らしいものはなく、清潔簡素を旨としてました。


2020年4月15日水曜日

豆本 文福茶釜全 その12




 P.10

(読み)
[つゝき]

可のち 可゛満
かのちゃが ま

をもりんじ尓
をもりんじに

もち由起ぢ うし尓
もちゆきじゅうじに

めんく王いし☓
めんかい し

☓可く
 かく

ゝ の
かくの

志多い尓て大 志あ
しだいにておおしあ

ハせい多し
わせいたし


(大意)
その茶釜を茂林寺に持ってゆきました。
和尚さんに面会して
「このような次第で大変に幸せになりましたので


(補足)
 うーん、この頁は読みづらく、やや難しい。
「もりんじ」「もち由起」、この「も」は両方とも同じ形です。
「ぢうし」(住寺)(じゅうじ)。お寺の和尚さん。「う」が悩みます。

 以前の投稿で「め」の左下が版木で薄れて読みづらくなってるとしましたが、そうではなさそうです。ここの「め」もまったく同じようになってるからです。ここの変体仮名は「女」ですから、二画目から三画目で筆が流れなければつながりませんので、ここのような形の「め」になるんですね。

「めんく王い」、(めんくわい)。面会。

「志あハせ」、ふっと「志あ王せ」じゃないかとおもってしまうんですが・・・


 香具師さん大金儲け大幸せ、濃紺の羽織はおって髷もきりりと立派です。大店のご主人の趣。
高価そうな飾り柱の床の間の右側には「両」と書かれた千両箱が山と積まれています。


2020年4月14日火曜日

豆本 文福茶釜全 その11




 P.9

(読み)
お本よろこひ
おおよろこび

大 可年もふ
おおかねもう

けふく
けふく

ゝ と○
ふくと

○奈りし可バ
 なりしかば

やしも
やしも

も者や
もはや

多連りと
たれりと

おもひ[次へ]
おもい


(大意)
大いに喜び、大もうけして大金持ちになりました。
そして香具師はもはや十分に儲けたとおもい、


(補足)
同じ「大」(おお)でも、「お本よろこひ」だったり、そのまま「大可年もふけ」としたり、いろいろです。
「年」(ね)の変体仮名は○にちかい。右上から右回りにクルッと丸をかき、戻ったところで小さな横棒です。
「ふ」は「不」ですが小さくてわかりずらい。しかし、次の行の「ふ」は現在のものと同じです。

「ふくゝ」(福福)。

「やしもも者や」、おなじ「や」でもずいぶんと形が異なってます。

「おもひ」、ここの「も」はそのまえのふたつの「も」と筆の運びが最後のところが逆になってます。


P8P9見開き。



 文福茶釜の綱渡り。右手に「大入」扇子を、左手に傘。不安定さはなく上手な綱渡りです。
傘は日本では独特のおしゃれの品物として、昔より作られてきました。和の美には不可欠なものとして不動の装飾品となってます。
文福茶釜のたぬきは綱渡り踏み外して落ちたときのパラシュート代わりにも使ったのでしょう。

 絵の焦点はもちろん文福茶釜。香具師も親子3人も食い入るように視線そちらに向けています。
舞台の板はりが、ちょっと乱暴に描いているようにもみえますが、そうではありません。
使い込んだ板張りの感じを、画工の技工を感じさせぬようなにげなく描いています。
単純に板の色として渋茶色に黒線を引くのではなく、薄肌色を交互に幅を不規則に入れることにより木目感を出し、舞台の広がりを表現しています。



2020年4月13日月曜日

豆本 文福茶釜全 その10




 P.8

(読み)
[つゝき]
ゑいとうゝ   と
えいといえいとうと

大 入 大 者んじやう
おおいりだいはんじょう

又 ハ可ぞく可多
またはかぞくかた

尓もめさ連
にもめされ

よせ起奈ど
よせきなど

尓いで春
にいです

こし
こし

のひま
のひま

も奈し
もなし

大 者゛
おおば

やり
やり

由へ
ゆえ

やしハ
やしは


(大意)
「えいとうえいとう」と大入り大繁盛しました。
また(あるとき)は華族方(の家)にも呼ばれ(たり)、
寄席などに出て、少しの暇もなく大流行しました。
そのため香具師は


(補足)
「ゑいとうえいとう」、最初、香具師が舞台で文福茶釜を囃し立てる掛け声かと思いました。
それでも意味が通じないことはありません。
いちおう辞書で調べるとあるところにはあるものです。
次のようにのっていました。
『興行などで,見物人が大勢つめかけるさま。また,劇場などで,大入りを願う口上の言葉。「東西東西,―,―」「四季に絶せぬ見物は―,―又―」〈洒落本当世気とり草〉〔「永当」とも書く〕』

 賑やかに沢山の人が押し寄せている雰囲気を表しているとして、そのまま言葉に記さなくてもよいのですが、口上としてもおかしくはないので、大意のようにしました。

この「ゑ」は、めったにでてきません。いくつか豆本を見てきましたが、はじめてかもしれません。
「う」とくりかえしの「く」が重なってわかりずらい。

「可ぞく可多尓もめさ連」、いったん読めてしまうとなんでもないのですが、初見だと悩みます。
「可ぞく」がすぐには「華族」とピンときません。「家族」になってしまう。
「め」がかすれてしまって「や」のようにみえますし、ここの「連」もなやみます。

「よせ起奈ど尓いで」、「寄席」、現在では「よせ」とフリガナをしますが、そのまま「よせき」なんですね。「よ」がその両脇の「尓」とにていて、なやみます。「い」が「ハ」でなやむ。

「春こしのひま」、「こ」が読めません。「こ」の変体仮名は「古」で「十」+「い」のような形ですが、上半分が欠けてしまったのでしょうか。

「由へ」、「由」は左上から右回りに丸を描いて、元の位置に戻ったら右下中心に向かってゴニョゴニョと書きます。ここのはその途中右上でちょっと切れてしまったようです。


 香具師は舞台で文福茶釜に掛け声をかけ、舞台かぶりつきの席では父母子どもの家族が食い入るように見ています。子どもの青ゾリがかわゆい。

 香具師の衣装がなかなか。派手なのは紅白裃だけで、渋萌黄色の着物に内側は渋青、しかし両袖口からちらっと赤が見えています。
おしゃれです。


2020年4月12日日曜日

豆本 文福茶釜全 その9




 P.7

(読み)
さつそくきんじよの
さっそくきんじょの

やし尓そのちや可゛満を
やしにそのちゃが まを

うり者らひし可゛
うりはらいしが

やしハそのちや
やしはそのちゃ

可゛満をミせもの
が まをみせもの

尓い多゛しつ奈
にいだ しつな

王多り可る王さ
わたりかるわざ

さ満ゝ のけい
さまざまのげい

とうを奈し个る
とうをなしける

ゆへとうけいぢ う
ゆえときょうじゅう

の大 ひよう者ん
のだいひょうばん

と奈りまい日
となりまいにち

ゝ   [次へ]
まいにち


(大意)
早速(さっそく)、近所の香具師(やし)にその茶釜を
売り払ってしまいました。
香具師はその茶釜を見世物に出し、綱渡りや軽業など様々の芸当をするので
東京中の大評判となり、毎日毎日、


(補足)
 こんなに楽しい茶釜なら、茶の湯はせずとも、家にほしい。
しっぽフリフリ、なんか酔っ払っているような、あっいやさぁ〜こらさっと聞こえてきそう。
手で頭の蓋をとり、カチャカチャならし賑やかそう。
尻尾ですが、拡大してみるとフサフサ感がでるようにか、細かく描いています。

 左の大きな籠の底は網目に編んでなく、頑丈にするためにグルグル巻いてこしらえてあるところが心憎い。

「きんじよ」、「じ」が「ト」に見えます。「よ」は変体仮名「与」。
「やし」、版木なのですが「や」の筆の運びが「ゆ」と同じような感じに見えてしまうので「ゆ」とまちがえそうです。「や」は「也」、「ゆ」は「由」。

4行目「ちや」の「ち」が「ら」にみえます。その2行右の「ち」と比べても・・・

「可る王さ」、「可る」がややわかりにくいか。

「けいとう」(芸当)、「とうけいぢう」(東京中)、「大ひよう者ん」(大評判)。


 P6P7見開き。



 行灯の明かりのところは渋黄色になっていて、ゆらめく灯りの感じがよいです。
また、布団の左端だけが左の絵にほんの少しだけ描かれていますが、細かい芸当です。


2020年4月11日土曜日

豆本 文福茶釜全 その8




 P.6

(読み)
[つゝき]
个ふ
きょう

もりん
もりん

じ尓
じに

て可ひき
てかいき

多りし
たりし

ちや可゛満尓
ちゃが まに

てあし可゛
てあしが

者へおどり
はえおどり

い多る由へ
いたるゆえ

くづやハ
くずやは

きも
きも




つぶし
つぶし


(大意)
今日、茂林寺で買ってきた茶釜に
手足が生え、踊っていたので
屑屋は肝をつぶし


(補足)
 屑屋さん、もうかっているとみえて寝具も上等そうです。
あわてたのか、箱枕が左下にころがってしまいました。
ついたてには満月にすすきの絵、行灯はしっかりしたつくりですが、なんか左側一面が変、急須が浮いてしまってます。

 話がとびますが、「茂林寺」が群馬県館林市に実際にあることを知りませんでした。
お寺が所蔵する文福茶釜もあり、見学できるそうです。


 文章は読みづらいところはなく、ここまで読んできた知識だけでスラスラ読めるはずです。


2020年4月10日金曜日

豆本 文福茶釜全 その7




 P.5

(読み)
のころ
のころ

まくら
まくら

もと尓
もとに

奈尓可
なにか

もの
もの

おと
おと

し个る
しける

ゆへ
ゆえ

いづやハ
くづやは

めを
めを

さまし
さまし

ミまハ
みまわ

せバ[次へ]
せば


(大意)
の頃、枕元に何か物音がしたので
屑屋は目を覚まし見回したところ


(補足)
版木の文字はかすれもなく、変形しているところもなく読みやすい。

座敷にいる和尚さんはP1の驚いてひっくり返っている和尚さんと着物の柄が同じなので、きっと同一人物です。
その隣の和尚さん?、どことなく浮世絵美人画の一人の趣。
尼さんなのでしょうか?
帯の結びも気になります。

 もともと作画者の村井静馬は浮世絵師歌川房種です。



 こんな錦絵を描いている人ですから、豆本などチョチョイのチョイですが、手を抜いているとは感じられません。

P4, P5見開き。



 座敷の上がりのところの板壁の下端が二重線になってます。
また座敷の奥の板壁の下端も二重線で描かれています。
絵全体の視点がやや上からですから、たったこれだけで奥行きと立体感がでています。




2020年4月9日木曜日

豆本 文福茶釜全 その6




 P.4

(読み)
[つゝ起]
 つづき

でしをよび
でしをよび

ミせ个連バでしも
みせければでしも

ぎう てん奈しこ連ハ
ぎょうてんなしこれは

うり者らふより本可
うりはらうよりほか

奈しおでいりのくづ
なしおでいりのくづ

やをよび一 貫 文 尓て
やをよびいっかんもんにて

うり王多し个る
うりわたしける

そ連よりくづ
それよりくづ

やハうちへもどり
やはうちへもどり

や春ミ个ると
やすみけると

よ奈可
よなか



(大意)
続き
弟子を呼び見せたところ、弟子もビックリ仰天してしまいました。
これは売り払うよりほかなしと、お出入りの屑屋(くずや)を呼び寄せ
(和尚は)一貫文で売り渡してしまいました。
それから、屑屋は家に戻り休んでいると夜中


(補足)
 屑屋さんの左手に持っているのは、棒秤(ぼうばかり)です。
わたしが子どもの頃はごく普通に使われていました。
電池もバネも不要で、いくつかの分銅と棒竿があればよく、壊れる心配はありません。
現在でも最強の秤(はかり)です。

 茶釜は鉄製なので量り売りなのでしょうか、「一貫文尓てうり王多し个る」とあります。
「メ」は「貫」のくずし字、「攵」は「文」のくずし字、だとおもいます。

 左の竹籠(たけかご)の具合も細かく描いています。

「つゝ起」がなぜか急に変体仮名「起」が使われています。

「个連バ」「こ連ハ」「そ連より」、最初の「連」がわかりずらい。

「うちへもどり」、この「う」一文字だけだったら読むのに悩みます。


2020年4月8日水曜日

豆本 文福茶釜全 その5




 P.3

(読み)
あし可゛
あしが

者へ多る
はえたる

ゆへ○
ゆえ

○お志やうハ
  おしょうは

おどろ起
おどろき

そ連より[次へ]
それより


(大意)
脚がはえたため
和尚は驚き、
すぐに


(補足)
 この和尚さん、普段から修行怠りないようで、両腕両足ともたくましい。
茶釜を追い払う箒は槍を振り回していそう。

「ゆ」は「由」、「や」は「也」ですが、ここでは「や」がややつぶれてわかりずらい。

「そ連より」は前後をつなげる接続詞のように頻繁に使われます。「そして」が一番語感としては近そうです。ここでは「すぐに」としました。


P2P3見開き。



 囲炉裏も茶道具もどこかへなくなってしまいました。
簡素な部屋に、二人があわてふためき、どこか呑気に文ぶく茶釜が逃げ飛び回っている様が愉快です。寺男は驚愕の様子ですが和尚の表情はにこやか。

 箒をぶら下げる下げ緒までちゃんと描かれています。




2020年4月7日火曜日

豆本 文福茶釜全 その4




 P.2

(読み)
[つゝき]
可のちや可満をとり
かのちゃがまをとり

い多しいろり
いたしいろり

尓可けおく
にかけおく

尓とく
にとく

尓ちや
にちゃ

可満
かま




志り本可゛
しりほが

者へ
はえ


(大意)
あの茶釜を取り出し囲炉裏にかけておくと
すぐに茶釜に尻尾(しっぽ)がはえ、


(補足)
 左の頁に和尚さんが箒で茶釜を追い払って、逃げ回っているところの図。
どうして和尚さんの隣に町人風の男がとおもったのですが、先を読むと弟子とあります。
寺の雑事などをする寺男でしょう。

 鮮明な摺りです。
男の脚が少ない線で描かれていますが、肉付き感がしっかり表現されています。

変体仮名「可」は「う」にそっくりなので注意、たくさんでています。
変体仮名「尓」(に)も4箇所でてます。

「とく尓ちや可満」、この「とくに」は「疾くに」、「すぐに」の意味でしょうか? 「特に」ではないとはおもうのですが。


2020年4月6日月曜日

豆本 文福茶釜全 その3




 P.1

(読み)
む可し
むかし

もりん
もりん

じと
じと

いふてら尓
いうてらに

としふる
としふる

ち 可゛満
ちゃが ま

あり
あり

ある日の
あるひの

ことぢ うし
ことじゅうじ

ちやの
ちゃの

ゆを
ゆを

せんと[次へ]
せんと



(大意)
昔、茂林寺という寺に年代物の茶釜がありました。
ある日のこと、和尚が茶の湯をしようと


(補足)
 和尚の前には、茶の湯の道具一式がそろっています。
茶釜から脚が出て、しっぽも左になびきながらあらわれ、頭は和尚の方へ正面に向いています。
茶釜の湯は煮立って上に飛び散り、蓋が上方へ高く上がってます。

「としふる」、年経る。
「ある日のこと」、「こと」のフォントがないのですが、合字になってます。「こ」と「と」をひとつにしたものです。濁点がついて「ごと」としても使われます。他の例として「より」が「ゟ」などがあります。

「ぢうじ」、住持(じゅうじ)。寺の住職。住持茶とつなげて読んでしまい、宇治茶というのがありますから、はたとこんなお茶あったっけ?とボケてしまいました。情けない・・・

 和尚さん余程驚いたのでしょう、左足の指が6本もあります!!!




2020年4月5日日曜日

豆本 文福茶釜全 その2




 見返し

(読み)
文 ぶく
ぶんぶく

茶 可満
ちゃかま


(大意)



(補足)
 いやぁ〜、淡々として気持ちが和みますな。
赤系統の色がなく宵闇左上にかかる半月が静かです。
茶釜のためにこしらえたような囲炉裏に自在鉤に吊るされて熱くなったのか、
たぬきが頭を出し、しっぽを出し、手足も出して動こうにも、吊るされちゃってるからな。

 茶釜の蓋と横木の渋黄色がアクセントになってこれまた、絵をしめてます。



2020年4月4日土曜日

豆本 文福茶釜全 その1




 表紙

(読み)
村井静馬著
むらいしずまちょ

文福茶釜全
ぶんぶくちゃがまぜん


(大意)



(補足)
 前回の「桃太郎噺」と同作画者・同版元・同日・同定価で出版された
「文福茶釜」のはじまりはじまり~

表紙は錦絵摺り付けのようです。
母親とその娘さんでしょうか、女の子は右手に狸の置物のようなおもちゃを持っています。
母親は立派な日本髪、娘さんは典型的な子どもの髪型で部分部分を残してあとはツルツル。

背景は梅の花。

典型的なな明治赤を画面の8割以上使ってます。
顔の白さが引き立ちますね。

絵のどこをみても丁寧に描かれています。


色見本と一緒に。



 ところで文福茶釜のあらすじってどんなのだっけと心もとなく、
思い出しながらすすめていきます。
それにしても、毎回毎回いらつくのですが、ラベルをこんなところに貼りやがって!
よく係員は首にならなかったものです。