2020年6月30日火曜日

的中地本問屋 その17




P.6



P.6 上段

(読み)
奈りいち
なりいち

尓ち尓
にちに

ひとりで
ひとりで

何 万 まいと
なんまんまいと

いふ可ずを
いうかずを

春り个る
すりける

ひとへ尓あさ
ひとえにあさ

ひ奈可゛くさ
ひなが くさ

春゛りを
ず りを

ひ起きりし
ひききりし

うでのち
うでのち

可らと可げ
からとかげ

きよ可゛し
きよが し

ころを引
ころをひき

きりし
きりし

ち可ら尓
ちからに

あヤ可りし
あやかりし

と見へ
とみえ

多り
たり

个る
ける


(大意)
(達者に)なり、1日にひとりで何万枚という
数を摺った。
ひとえに、朝比奈が草摺を引ききった腕の力と
景清が錣(しころ)を引ききった力にあやかった
ように見えた。


(補足)
(その15)P5からの続きです。

 裏写りがあって読みづらい箇所もあります。

「何万」、「何」がわかりにくですが、確かに「亻」+「可」と読めます。

「しころ」、「こ」と「ろ」の区切りがわかっていしまえば問題なしなのですが、「しころ」という単語がわからなければ悩むところ。

「草摺」、鎧の腰部分を覆うヒラヒラ部分。鎌倉時代、曽我五郎と取っ組み合い、相手の草摺を引き違った故事による。

「錣」、兜の首の後ろ部分を覆う箇所。平安時代末期源平の合戦では那須与一の故事が有名。そのときに屋島の合戦で景清が三保谷国俊と争い、その錣を引き違ったという故事による。





2020年6月29日月曜日

的中地本問屋 その16




P.5



P.5 下段

(読み)
「とつくりのうち可ら
 とっくりのうちから

おいら可゛こうして出て
おいらが こうしてでて

いねへとゑづら可゛
いねぇとえずらが

王りい可らそこで
わりぃからそこで

ふ多り可゛いゝやく尓
ふたりが いいやくに

セめてこし
せめてこし

可けでも
かけでも

あれバいゝ
あればいい


ヨウ
よう

者やくあげ多ら
はやくあげたら

者゛ん尓ハひヤ可し尓
ば んにはひやかしに

いくべいゑてきち可゛
いくべぇえてきちが

まつている多゛ろふ
まっているだ ろう


(大意)
「とっくりの中から
おいらがこうしてでていねぇと
絵面がわりぃから
そこで二人がいい役を演じるが
せめて腰掛けでもあればいいさ


よぉ
早く仕上げたら
晩にはひやかしにいくべぇ
えて吉が待っているだろう



(補足)
「とつくりのうち可ら」、「う」「可」「ら」3つ並んでいるので比較にちょうどよいです。似てますよね。
他の箇所でも小さな「う」に見えるのは、ほとんど「可」です。

「ひヤかし尓」、「ゆ」に見間違える「や」がわずらわしいですが、カタカナの「ヤ」も出てきます。


 やや大きめの徳利、4合徳利か。
つまみに魚の尾が見えます。




2020年6月28日日曜日

的中地本問屋 その15




P.5



P.5 上段後半

(読み)
くろや起
くろやき

尓して
にして

これもさけの
これもさけの

うちへいれて
うちへいれて

のまセ
のませ

个れバ
ければ

者ん春り
はんすり

でやいのうで可゛
てあいのうでが

と本うも
とほうも

奈くち可ら
なくちから

可゛つよく
が つよく

多つ志ヤ尓
たっしゃに


(大意)
黒焼きにして、これも酒の中へ入れて
飲ませたところ、
彫師連中の腕が途方もなく
力強く達者に


(補足)
「くろや起」、「や」が「ゆ」とまぎらわしい。「ゆ」の変体仮名は「由」。
「と本うも」、「と」が悩みます。
「多つ志ヤ尓」、「たつしやに」と読めますが、少しして「たっしゃに」と気づきました。


 くわえ煙管をしながら彫師はバレンをセッセと動かしています。
煙草かすが落ちるなんていうヘマはしないのでしょう。




2020年6月27日土曜日

的中地本問屋 その14




P.5



P.5 上段前半

(読み)
奈んでも
なんでも

おもいれ
おもいれ

志こんで
しこんで

おくつ
おくつ

もり尓て
もりにて

者んこう
はんこう

を春る
をする

てやい尓
てあいに

あさ
あさ

ひるの
ひるの

うで
うで




可げ
かげ

きよの
きよの

うで
うで

とを
とを


(大意)
なんとかして思う存分に仕込んでおきたいので
版木を摺る連中に、朝比奈の腕と景清の腕とを



(補足)
「おもいれ」、(その8)で出てきました。思う存分。

変体仮名「可」はほとんど「う」ですが、この部分には平仮名「う」が数箇所でてきてます。
よーく比較するとやはり違ってますね。
「う」は一画目が上からきますが、「可」は左からです。でも同じカタチのときもあるから悩みます。

「あさひ奈のうで」、朝比奈の腕。鎌倉時代の武士。
「かげきよのうで」、景清の腕。平家の武将平景清。ふたりとも剛力で有名。
「げ」は変体仮名「計゛」にもみえます。

 鎧姿が景清、丸に三の紋の流し姿が朝比奈でしょうか。
「朝比奈草摺実記」が国立国会図書館デジタルコレクションにあります。



2020年6月26日金曜日

的中地本問屋 その13




P.4



P.4 下段

(読み)
奈つのうち
なつのうち

志こんでお可年
しこんでおかね

バおもふやう尓
ばおもうように

あ起奈い可゛で起
あきないが でき

まセぬそれを
ませぬそれを

こんヤぢう 尓
こんやじゅうに

あげてもらつて
あげてもらって

そのあと尓きく丸 の
そのあとにきくまるの

大尓しき 可゛六 七
おおにしきが ろくしち

者ん本つて
はんほって

もらひてへの
もらいてぇの


(大意)
夏のうちに仕込んでおかないと
思うように商売が出来ません。
それを今夜中に仕上げてもらって
そのあとに、きく丸の大錦を六・七枚
彫ってもらいたいのぉ。


(補足)
 右下の「よい まセぬ」は(その10)で記載済。

 江戸時代、本の出版はほとんど正月と決まっていて、人々は正月に新春版の本を買うのを楽しみにしていたという。(https://www.web-nihongo.com/edo/ed_p099/)
そのためには、「奈つのうち志こんでお可年バ」間に合わないとなる。

「きく丸」、喜多川歌麿の門人。初名を菊麿(きく丸)、この本の出版のときは喜久麿(きくまる)、1804年以降は月麿(つきまる)と名乗った。

「大尓しき」、大判の錦絵。当時の本屋さんの壁や軒下にポスターのように飾った。

 読みやすい文章が続きます。



2020年6月25日木曜日

的中地本問屋 その12




P.4



P.4 上段後半

(読み)
个れバ
ければ

者ん
はん

もと大 き尓
もとおおきに

よろこび
よろこび

く春りも
くすりも

きけバ
きけば

きくもの
きくもの

多゛これ可ら又
だ これからまた

どふぞ者ん春り
どうぞはんずり

でやい尓セいを
てあいにせいを

多゛さセる
だ させる

めう やくを
みょうやくを

とゝのへ
ととのえ

まセう
ましょう


(大意)
(彫り上げてしまった)ので
版元(村田屋)は大いに喜んだ。
薬も効けば効くもんだ、
これからまた、版摺り仲間に頑張ってもらう妙薬を
調剤しよう。


(補足)
「でやい」、手合(てあい)。仲間、連中。

「とゝのへ」が少し悩むくらいで、あとはまぁまぁ読みやすい。


P3P4見開き。



 外の立て看板下で寝そべっている犬の顔が変。
版木屋の店内の絵に比べると、ずいぶんと下手くそです。

 煙草をふかしながら、油売ってる一九さんの着物柄がP1のものと同じ。
こんな版木屋さんのぞいてみたいなぁ。




2020年6月24日水曜日

的中地本問屋 その11




P.4



P.4 上段前半

(読み)
水 をさけ
みずをさけ

の中 へいれて
のなかへいれて

者んぎヤへ
はんぎやへ

ぢさんし
じさんし

のまセ个れバ
のませければ

これもめう
これもみょう

やく多ち
やくたち

まち志るし
まちしるし

ありて
ありて

いちヤの
いちやの

うち尓
うちに

本れ多り
ほれたり


(大意)
水を酒の中に入れて
版木屋へ持参し飲ませたところ
これも妙薬のためか
たちまち効き目があらわれて
一夜のうちに、
彫り上げてしまった


(補足)
P.3上段後半からの続きです。

 このあたりまで読んでくると、文字の特徴にも慣れてきました。
それほどつかえることなく読むことができます。

立て看板に「朱肉 青肉 色々」とあります。
印鑑の印肉のことでしょう。
江戸時代、赤の朱肉を使えるのは武士階級でだけで、庶民は黒だったとあります。
名主などの村役人のや百姓たちは確かに黒です。

版木屋は草双紙、滑稽本などだけではなく、チラシや錦絵やそのた印刷物全般なんでも手広く商っていたようです。印鑑などチャチャッと彫っていたのかもしれません。


2020年6月23日火曜日

的中地本問屋 その10




P.3



P.3 下段

(読み)
あ奈多可゛
あなたが

下 さつ多
くださった

さけハ
さけは

ぶしつけ
ぶしつけ

奈可゛ら
なが ら

水 可゛まじつて
みずが まじって

おり
おり

まし多
ました

可ら
から

きつ
きっ

者゜り
ぱ り

(P4 下段へ)
よい
よい

まセぬ
ませぬ



(大意)
あなたが下さった酒は
ぶしつけながら
水が混じってましたから
全然酔いません。


(補足)
会話部分です。
約220年前の口語体の文章ですが、「きっぱり」の用法以外は全く現代と変わりません。

「きっぱり」は現在では「はっきり」の意。どの時代あたりで変化したのでしょうか。
また、「は」に「゜」(半濁点)がくっきりついているのも、珍しい。あまりみません。


2020年6月22日月曜日

的中地本問屋 その9




P.3



P.3 上段後半

(読み)
春゛るけ
ず るけ

られてハ
られては

奈るまい
なるまい

と可年て
とかねて

多く王へ
たくわえ

おい多る
おいたる

宝 永 年
ほうえいねん

中  ふじの
ちゅうふじの

山 の王起
やまのわき

いで多る
いでたる

と起の
ときの

あふミの
おうみの

水うミの
みずうみの


(大意)
怠けてもらっては困るので、
かねてより用意しておいた、
宝永の年に富士山が噴火したときに湧き出したという
近江の湖の


(補足)
「春゛るけ」、「す」の変体仮名「春」は「す」+「て」のような形。濁点「゛」がくっきりはっきり大きい、普段は付けたりなかったりでいい加減なのですが、ここのは存在感たっぷりで、その右側の「ぎヤ尓」の「ぎ」も同様。

 宝永大噴火は宝永4年(1707年)の富士山噴火で、この本の出版が1802年なので、約100年前のことを取り上げている。
近江の水、大昔富士山噴火で琵琶湖ができたという伝説を引用している。

「水」のくずし字は特徴的で、最初見たときは何の字かさっぱりわかりませんでした。形で覚えるしかありません。


2020年6月21日日曜日

的中地本問屋 その8




P.3



P.3 上段前半

(読み)
一九 可゛さくよく
いっくが さくよく

で起个れバゑを
できければえを

可ゝセて者ん
かかせてはん

ぎヤへあつらへ
ぎやへあつらへ

むら多ヤ奈ん
むらたやなん

でも者やく
でもはやく

志こんでおいて
しこんでおいて

おもいれうる
おもいれうる

つもり奈れバ
つもりなれば

さつき う尓
さっきゅうに

セ年バ奈ら
せねばなら

ず者ん
ずはん

ぎヤ尓
ぎやに


(大意)
一九の作品が良い出来だったので
絵を描かせて版木屋へ彫りを頼んだ。
村田屋は何でも早めに仕込みをしておいて
思う存分販売するつもりなので、
急いで事を運ばねばならず
版木屋に


(補足)
「さくよく」、「よ」の短い横棒がありません。
「ゑを可ゝセて」、「可ゝ」がなやみますが、「う」にみえるのはたいてい「か」。「ゑ」が「志」に似てますが、
「志こんでおいて」の「志」と比べると違いがわかります。
また「お」の点をとった形が「あ」になりますが、4行目「あつらへ」の「あ」で確かめられます。

「おもいれにうる」、この「おもいれ」は現在では使われなくなった意味です。
「セ年バ奈ら」、このあと6行目にもありますが「ね」の変体仮名「年」のかたちは特徴的で
「○」の横下に「丶」です。実際のくずし字でも同じで「○」になります。

あいかわらず「ら」と「う」が分かりづらいですが、前後の意味から判断するのがよさそう。


 彫師の姿が興味深い。
親方と一番弟子は同じ作りの(作業)机を使ってます。
力をかけるからでしょう、畳摺り桟(たたみすりさん)があります。
また机の両側には筆返しがあります。
職人さんの道具が鑿・小刀の3本しかないのは簡略したのでしょう。
煙管はかかせなかったもののようです。

真ん中のまだ髷を結ってない弟子の作業机は一人前の職人のものとは異なっています。
小刀で彫っています。左横には道具が3本。

それにしても、彫師の腕は驚異的です。
この頁の文章も彫っているわけですが、不定形な筆の手跡を「はね」や「とめ」、前後のつながりまでちゃんと表現しているのですから、手先が器用であるとかそのようなことは超えてしまっています。

鑿・小刀など刃物類を製造する職人さんたちもたくさんいたし、研ぎ師もいなくてはこれだけのものは彫れません。版木は桜材が多いのですが、それらの供給も十分にあったのでしょう。

 次から次へと彫られてゆくのですから、その技量にため息しか出ません。
こんな大変な仕事でも給金はそれほど良くなかったはずです。
職人の地位や給金は低く、この技術でひと財産を築くことは出来ませんでした。
これら職人たちをこき使った商人たちが大儲けしたのです。


2020年6月20日土曜日

的中地本問屋 その7




P.2



P.2 下段

(読み)
一九 馬 の
いっくうまの

ふんを
ふんを

いれて
いれて

のま
のま

セら
せら

るゝ
るる

とハ
とは

志らず
しらず

これハ
これは

いゝ
いい

御酒
おさけ

多゛王へ
だ わえ


てう しで者゛可を
ちょうしでば かを

つくし多こ多ア
つくしたこたぁ

ことしの
ことしの

旅眼石(多ひすゞり)と
たびすずり     と

いふ本ん尓
いうほんに

ミ奈
みな

可起
かき

やし多
やした


(大意)
一九は馬の糞が入っているとは知らずに
これはいい酒だとごきげんだった。

「銚子で馬鹿騒ぎをした顛末は
今年の「旅眼石」という本に
全部書きましたよ」


(補足)
手前小柄な剃髪orツルッパゲの御仁が栄邑堂(えいゆうどう)の主人、奥で頭をかいているのが一九。煙草盆やお銚子や湯豆腐のような鍋があります。

一九の着物の横縞模様も腰から上と下で向きをかえています。下部分でも場所により変化させています。

「旅眼石」(たびすずり)。狂歌入紀行『南総記行 旅眼石』(たびすずり)がこの本と同じ1802年に出版されていてその宣伝をしています。

「馬」、「御酒」のくずし字が悩みます。

会話の「」部分、約220年前といえども現在とさほど変わりません。
タイムマシンで当時にいったとしてもやっていけそう。



2020年6月19日金曜日

的中地本問屋 その6




P.2



P.2上段

(読み)
鋤(すき)鍬(くハ)
すき   くわ

これをミ奈
これをみな

さいまつ尓
さいまつに

奈しひやく
なしひゃく

しやうのミの
しょうのみの

あぶらを
あぶらを

志本゛りて
しぼ りて

ねりヤ王セ
ねりあわせ

丸薬  と奈し
がんやくとなし

一九 尓のまセ
いっくにのませ

个る尓ふし
けるにふし

ぎヤめう
ぎやみょう

やくのとく
たくのとく

尓てことしの
にてことしの

さくハと本う
さくはとほう

も奈くよく
もなくよく

で起个る
できける


(大意)
鋤(すき)・鍬(くわ)、これらを細かく砕き
百姓の身の油を絞ったものと練り合わせ丸薬としたものだった。
一九に飲ませたところ、なんとしたことか妙薬の効き目で
今年の作品は途方もなく良い仕上がりになった。


(補足)
 前々回の「干鰯・馬糞」からの続きになります。

「や」の筆順が「ゆ」と同じで、最後の斜め棒がないので「ゆ」に見えてしまいます。
また「ねりヤ王セ」、「ふしぎヤ」のようにカタカナもあります。

「ひやくしやう」、「う」が「ら」とまぎらわしい。「あぶらを」の「ら」とほとんど同じ形です。「めうやくの」の「う」も同じ。

「ねりヤ王セ」(ねりあわせ)、練り合わせるの意ですけど、旧仮名遣いでもこんなふうに言うのでしたっけ。

「丸薬」、「薬」が「艹」+「禾」になってます。

「尓てことしの」、「て」と「こ」の区別がやっかい。


 丸薬の材料、干鰯・馬糞、さらに百姓の油まではよいとしても鋤・鍬まで原料とするのはなんだかとっても妙であります。


2020年6月18日木曜日

的中地本問屋 その5




P.1



P.1 中・下段

(読み)
多ゞ今 の
ただいまの

おく春り
おくすり

でこさり
でござり

ます
ます


おめへ
おめえ

きよねん
きょねん

い多こで女 郎 を
いたこでじょろうを

可つていつゞけを
かっていつづけを

し多と起可年可゛
したときかねが

奈くてあげ
なくてあげ

多゛いの可ハり
だ いのかわり

尓きやう可を
にきょうかを

よん多゛といふ
よんだ という

者奈しを
はなしを

てうし のやゑ
ちょうしのやえ

ざ起さん可゛
ざきさんが

こつちのミセ
こっちのみせ

で者奈し可゛
ではなしが

ありやし多よ
ありやしたよ


(大意)
ただ今のお薬でございます。

おまえさん、
去年潮来で女郎を買って居続けをしたとき、
お金がなくて、揚げ代の代わりに狂歌を詠んだという話を
銚子の八重崎さんがこっちのお店でしてましたよ


(補足)
 会話部分になります。

「多ゞ今の」、この「の」は最後の丸い部分がなくて、はて?と悩んでしまうのは初心者の恥ずかしいところ。

薬袋に3文字書いてあります。相手に差し出しているので、右側が上になるでしょうから、拡大してみると「く春里」とよめるような気がします。

「きよねん」、「ね」が現在と同じ平仮名「ね」です。たいていはその変体仮名である「年」が使われます。この数行あとに「可年可゛」(かねが)とあります。形は「○」が特徴になります。

 普段の話し言葉の調子で書かれているようですが、なんだか妙にリアル感があります。
「八重崎さん」はきっと十返舎一九の親しいかお世話になっている人で、サービスで実名を書き込んだのではないかとおもいます。本人が読めば喜びますものね。

 腕の良い彫師なのでしょう。比較的柔らかい線で丁寧です。
御婦人の両袖の縦縞模様が職人たちの腕の良さを表しています。
腕から手元にくるにしたがって縦縞の間隔が狭まり平行でなくなるように描いています。
立体感がでますし、実際の着物でもそのようになります。
日本髪の生え際も手を抜いてない。

なまけもの作家は襟元をくずし、くつろいでいる感あふれてます。
けど正座しているんですよね。


2020年6月17日水曜日

的中地本問屋 その4




P.1



P.1 上段

(読み)
御ぞんじの
ごぞんじの

さうしの者ん
そうしのはん

もと栄 邑 堂 の
もとえいゆうどうの

あるじとしゞ
あるじとしどし

のさうしミ奈
のそうしみな

かハり多る
かわりたる

志由こうも
しゅこうも

奈しことしハ
なしことしは

いち者゛んあてる
いちば んあてる

つもり尓て
つもりにて

いろゝ とくふう
いろいろとくふう

を奈しまづ
をなしまず

さうしのさく
そうしのさく

しやれいの
しゃれいの

奈まけものゝ
なまけものの

十返舎一九
じっぺんしゃいっく

をよびよセ
をよびよせ

奈尓可奈し尓
なにかなしに

さけをい多゛し
さけをいだ し

そのさけの中 へ
そのさけのなかへ

さくのよく
さくのよく

で起るめう
できるみょう

やくをいれて
やくをいれて

のまセ个る
のませける

そのく春りと
そのくすりと

いふハ
いうは

干 鰯(ほし可)馬糞(者゛ふん)
ほしか     ばふん


(大意)
御存知の草紙の版元栄邑堂の主、ここ数年出版する草紙は
みなかわりばえもなく特段の趣向もないとおもった。
今年はひとつ当てるつもりでいろいろ工夫をしようと、
まず、草紙の作者、例の怠け者の十返舎一九を呼び寄せた。
なんとなくまあ一献と酒をすすめた。
その酒の中へ作のよくできる妙薬を飲ませた。
その薬というのは、干鰯・馬糞


(補足)
「御ぞんじの」とくると、豆本の出だし「昔々お子様方御存知の」をすぐにおもいうかべてしまいます。

「も」の形はだいたい2つあって、「者ん(も)と」と7行目の「志由こう(も)」です。
変体仮名「者」は平仮名「む」の下側が、だらりと流れる感じ。

「あるじ」、「あ」は「お」に「、」がない形になります。現在の「あ」とは印象がちがいます。このあとにでてくる「あ」もみな同じ形。

「ミ奈」、平仮名「み」はほとんどがカタカナ「ミ」です。

「尓」(に)の形はこの本では筆記体の「y」。

「セ」、「ミ」と同様に、平仮名「せ」はめったに目にしません。

「で起る」、「起」が「記」や「紀」のようにみえますが、「き」の変体仮名「起」です。

「めうやく」(みょうやく)、「や」には見えませんね。

「のまセ个る」、「个」が簡略化されてます。ほかのところでは「け」ですが、ここだけ「个」。

「く春り」(くすり)、「す」の変体仮名「春」。「す」+「て」のような形。

「干鰯・馬糞」、丁寧な楷書です。
干鰯は現在でも生産されています。風通しの良い丘陵の浜近くに行くと日干しにされ、匂いでわかります。農作物の貴重な肥料です。


2020年6月16日火曜日

的中地本問屋 その3




見返し口上
4行目から

(読み)
作 者 乃得手尓嗜欲   趣 向 ハ書肆 の金
さくしやのゑてに本まちものし由こうハ本んやの可年
さくしゃのえてにほもちものしゅこうはほんやのかね

筥  尓。山 吹 色 乃黄表  紙と。一寸   祝 川て
者゛こに ヤまぶ起いろのきびやうしと ちよつくりい者川て
ばこにやまぶきいろのきびょうしとちょっくりいわって

筆 を執類
ふでをとる


壬   戌  孟 陽
みずのえいぬ もうよう

十遍舎一九㊞


(大意)
(われら)作者はここぞとばかりにほまち銭を得る。趣向を凝らせば
本屋の金箱に山吹色の黄金小判がたまり、黄金色の黄表紙はめでたいものだと
ちょっくら祝って筆を執った。

壬戌 孟陽

十遍舎一九㊞


(補足)
「得手」(えて)、得手不得手の得手。最も得意とすること。またそれを行うこと。
このあとのダランとしたくずし字がよくわかりませんが「尓」としました。

「嗜欲」、そのまま読めば(しよく)。
(ほまちもの)とふり仮名があります。「帆待物」。
船乗りたちが規定の物以外を密かに荷積みして、臨時収入を得ること。
「欲」のくずし字の偏は「谷」のようですが、旁の「欠」は適当。

「趣向」、「趣」の偏は縦棒で簡略されてますが、旁の「取」はちゃんとしたくずし字になってます。

「書肆」(しょし)、「しょし」と入力するとでました。本屋。

「金筥に」、「に」としましたが、わかりません。

「祝川て」、変体仮名「川」の「い」はあまり見ません。

「壬戌(みずのえいぬ)」、1802年。
「孟陽」、新年。

 序文を歌舞伎役者のように節を付けて音読すると、一九先生が役者になりきって口上している場面のようです。大声で音読するとこちらまで歌舞伎役者になった気分。



2020年6月15日月曜日

的中地本問屋 その2




見返し口上
3行目まで

(読み)
商賣ハ草の種本。書けども盡ぬ。濱乃
しやう者゛いハくさの多年本ん。可けどもつきぬ。者満の
しょうばいはくさのたねほん。かけどもつきぬ。はまの

真砂の志やれ次第。蹉跎次第乃出放多゛以。
まさごのしやれしだい。ふざけし多゛いので本う多゛以。
まさごのしゃれしだい。ふざけしだいのでほうだい。

金の生る木を彫天。小刀細工の銭?盤。
可年の奈る木を本じくっ天。こ可゛多奈ざいくのゼ尓もふけ盤。
かねのなるきをほじくって。こがたなざいくのぜにもうけは。


(大意)
「商売は草の種」というが、(草双紙のネタも)書いても書いてもなくならない。
「濱の真砂」ほどたくさんある洒落をどう使うかによるのだ。ふざけまくったネタはいくらでも出てくる。それらを「金の生る木」の版木に彫りつけて、小刀細工の彫師の銭儲けになれば、


(補足)
 見返しは表紙の裏に絵や見出し文を書いたりする頁です。この黄表紙に見返しはないのですが七五調のような韻で歌舞伎の役者がセリフを語るような調子で記しています。序文になります。

「草の種」を「草双紙」に引っ掛けてます。
「蹉跎」、(ふざけ)とルビにあります。読みは(さた)、つまずく、時期を失するの意味。どちらの漢字も「つまずく」の意。

「銭もうけ」の漢字が不明です。「捷」のようでもありますがわかりません。
その下の「は」は変体仮名「盤」に見えます。

 誰にでも読めるようにくずし字も丁寧に書かれているし、フリガナも振ってあります。それでも、くずし字のもとの楷書の形が初心者には難しい。



2020年6月14日日曜日

的中地本問屋 その1




表紙1



表紙2


(読み)
表紙1
的中地本問屋
あたりやしたじほんどんや

表紙2
享和二年
きょうわにねん

的中地本問屋
あたりやしたじほんどんや

一九画作
いっくがさく

三冊
さんさつ

(大意)


(補足)
 今回からは「的中地本問屋 十遍舎一九 作・画」です。
ネットでも何人もの方が、丁寧で面白くまとめて取り上げられています。
先人方のBlogにはとても及びませんので、単にくずし字の勉強と慣れのためだけに特化して
書き連ねてまいります。
 新しい発見やなるほどと思われる内容はまずありませんので、それらを期待する方々は他のBlogをご覧なされたほうが有益であります。

「的中地本問屋」、そのまま素直に読めば「てきちゅうじほんどんや」となりますが、そこは一九先生、洒落と諧謔とへそ曲がりのかたまりですから、「的中」を江戸弁で「あたりやした」と出版した本が大いに売れたことをそのまま題名にしたのでしょう。題名に「アタリマシタ」とフリガナがある版もあります。

 地本問屋とはそのままの意味で江戸の地元で出版された書籍類を販売するお店。また上方の出店や上方下りの本を扱うお店に対する言葉でもありました。

 あらすじは、地本問屋主人村田屋が怪しい丸薬を怠け者作家一九先生に飲ませたところ、たちどころに原稿が出来て売れに売れ、褒美に一九先生大好物の蕎麦を腹いっぱい振る舞われたという
どうでもよい話です。

 しかし、当時の出版の彫り摺り丁合い販売などの製本作業が詳しく描かれていて、これがとても興味深いのであります。

享和二年ですから1802年の出版です。
およそ220年前ですね、でもなんとか読むことができて意味もわかります。


黄色の表紙には刻印があります。
「帝國圖書館蔵」と読めます。

チビチビ読み進めるので約70回を予定しています。


2020年6月13日土曜日

豆本 化物嫁入咄 その14




 奥付

(読み)
厚薄辻占入 唄本品々
こうはくつじうらないいり うたほんしなじな

太閤記甲越 武者切付品々
たいこうきこうえつ むしゃきりつきしなじな

新板上下 一代記物 手遊繪品々
しんぱんじょうげ いちだいきもの てあそびえしなじな

開化往来物品々
かいかおうらいものしなじな

手遊繪品々
てあそびえしなじな

改正 塵功記
かいせい じんこうき

明治十四年九月三日御届
めいじじゅうよねんくがつみっかおとどけ

本所区?沢町壱丁目
ほんじょく?さわちょういっちょうめ

三者゛ん地
さんばんち

出版人 宮田伊助
しゅっぱんにん みやたいすけ

定價壹錢三厘
ていかいっせんさんりん


(大意)



(補足)
 広告です。
これはこれで興味深い。

フリガナはあてずっぽうです。

「厚薄」(こうはく)、今では使わないし耳にもしません。意味は十分なこと不十分なことのような感じなので、当たることもあるし当たらぬこともある辻占いのおまけ付きということでしょう。

「手遊繪」、当時の子ども達が楽しんだ錦絵(浮世絵)のこと。「遊」のくずし字は特徴的で、偏や旁などを分解してしまって部品の位置を変えるというひとつの型があります。
ここでは「方」を偏にして、残りを右半分にまとめています。

「塵劫記」、吉田光由が1627年に出版したものですから、この明治になってもまだまだ需要があったことになります。算術書として約270年も読みつがれていることに驚嘆します。

「三者゛ん地」、わざわざ「番」を変体仮名で「者゛ん」としています。あまり目にしません。

 原本の豆本は色刷りなのですが、国立国会図書館デジタルコレクションでは白黒写真なので絵の迫力が少々物足りませんでした。




2020年6月12日金曜日

豆本 化物嫁入咄 その13




P.12

(読み)
てめへも
てめえも

お連尓
おれに

おぶさる
おぶさる

よふでハ
ようでは

いくぢ可゛
いくじが

奈い
ない




國麿画
くにまろが


(大意)
てめぇも俺におぶさるようでは
意気地(いくじ)がないぞ


(補足)
 前頁「腐っても鯛というが」の続きから始まります。

鯛の化物が、台の上に乗っているのを「おぶさっている」と野次っているのでしょうか。

読みに難しいところはありません。
文章は現在でもどこかから聞こえてきそうなセリフです。

「國麿」とは「歌川國麿」。


2020年6月11日木曜日

豆本 化物嫁入咄 その12




P.11

(読み)
「ミん奈せい
 みんなせい

多゛せゝ
だ せせいだせ

いづ連
いずれ

ぶしう
ぶしゅ

ぎハ
ぎは

志つ
しっ

可り
かり

でるつもり多゛
でるつもりだ

「くさつても
 くさっても

多いといふ可゛
たいというが


(大意)
「皆んな精出せ精出せ。
いずれ不祝儀はしっかり出すつもりだ。」

「腐っても鯛というが」


(補足)
「志つ可りでるつもり多゛」、今なら「でる」ではなく「だす」ですが、いつ頃からこのようになっていたのでしょうか、気になります。

 婚礼では祝儀でしょうけど、そこは化物世界なので不祝儀なんですね。

P10P11見開き。



 それにしてもわけのわからない絵です。描くほうも大変だとおもいます。




2020年6月10日水曜日

豆本 化物嫁入咄 その11




P.10

(読み)
「本゛うぐミ
 ぼ うぐみ

可多を可へさつ
かたをかえさっ

せへお連ハ
せえおれは

くびを
くびを

いれ可へるぞ
いれかえるぞ


(大意)
「棒組、肩をかえさっせえ。
俺は首を入れかえるぞ」


(補足)
 文章の順序はこの次の頁の文章が最初のようです。

話が一度読んだだけでは?です。
婚礼の道具類を運んでいる場面でしょう。
棒にぶら下げて運んでいる化け物たちを「肩を入れ替えろ」と叱咤しています。
そして自分は首が疲れたので、その首を入れ替えかえるぞと化物ならではの会話です。

 一行目に「う」があります。そのあとの「う」にそっくりなのはすべて「可」(か)です。

2020年6月9日火曜日

豆本 化物嫁入咄 その10




P.9

(読み)
おしやう志ん尓
おしょうしんに

多のミ
たのみ

ます
ます


(大意)
お上人(おしょうにん)に頼みます。


(補足)
 前頁の最後の会話文の続きです。
「おしやう(に)ん尓」だとおもうのですが、(に)ではなく「志」になってます。
そうではなく、「おしょう真に頼みます」?、でも「おしょう」が??。

 製図の見取り図のように、床几や茶釜の台がやけに正確丁寧描かれています。
その茶釜は頭も尻尾もあるぶんぶく茶釜、さらにやかんもちょっと怒り顔になってます。

 お茶を出している絵が気になります。
口から茶碗に注いでいるように見えるのだけれど、まさかっ、そこまで描くかなぁ!?


2020年6月8日月曜日

豆本 化物嫁入咄 その9




P.7



P.8

(読み)
P.7は文章なし

P.8
さつそく者奈し可゛王可る
さっそくはなしが わかる

ミやいをせんとやくそく春る
みあいをせんとやくそくする

いしや
いしゃ

「奈んといゝ志ろもの
 なんといいしろもの

じやアごんせぬ可
じゃあごんせぬか

「イヤもふいちごんも
 いやもういちごんも

奈い
ない


ひとつめの
ひとつめの

む春こ
むすこ

見あいする
みあいする


(大意)
早速話がまとまった。
見合いすることを約束した。

医者
「何という代物じゃないか。
いやぁもう一言もない」

ひとつ目の息子は見合いをした。


(補足)
P7は文章がなく、柳の下の床几に腰掛ける女だけ。
右の頁P6は見合いする娘がいます。
柳の下を通るすぎる娘をどこからか見合い相手を仲人の医者と息子が眺めることができるよう設定した場面のようです。

「者奈し可゛王可る」、現在では「話がわかった」というのは理解したなどの意味です。理解したしたので話がまとまったということにしました。

「ミやいをせんとやくそく春る」、「ミやい」は見合いですが、旧仮名遣いでもこのように記すものなのかわかりません。変体仮名「春」は「す」+「て」の形ですが、ずいぶん簡略されてわかりにくい。このあとに出てくる「春」(す)はそのようになってます。

「ごんせぬ可」、「言(ごん)せぬか」だとおもいます。

「見あいする」、ここでは「ミ」ではなく漢字の「見」。




2020年6月7日日曜日

豆本 化物嫁入咄 その8




P.6

(読み)
きゝてせ王する
ききてせわする

むすこもと
むすこもと

よりふき
よりふき

里やう
りょう

のぞミ
のぞみ

尓て
にて


(大意)
聞いて世話をすることにした。
息子はもともと不器量な娘を
望んでいたので


(補足)
「ふき里やう」(ふきりょう)、不器量。変体仮名「里」がわかれば「ぶきりょう」と読めます。

 ももんじいの娘、なるほど「三十振り袖四十島田」のなりであります。
かんざしを両目とし、島田髷から角のように出ているのを眉毛にみたて、これまた別の化物をおもわせます。
右側のムーミンのようなカピバラ顔の化物ははてどなたでしょうか。


2020年6月6日土曜日

豆本 化物嫁入咄 その7




P.5

(読み)
さい
さい

王い
わい

むす
むす

こ尓
こに

よめを
よめを

本し
ほし

可゛る
が る





(大意)
幸い息子に嫁を欲しがると


(補足)
 ひとつ目一家はやはりなんか不気味。
右のひとつ目は眉毛が一本。
中央のデカ目ひとつ目の着物柄が髑髏(しゃれこうべ、どくろ)だけど、
目の穴が2つある。
笑えますな。

 火鉢からは腕がでていて、前頁の半魚人化物にお茶を出しています。


「むすこ尓」、いままでは「す」は変体仮名「春」でした。
「本し可゛る」、変体仮名「本」は「ほ」。


2020年6月5日金曜日

豆本 化物嫁入咄 その6




P.4

(読み)
あらハとでいりの
あらばとでいりの

もの尓多のミける
ものにたのみける

む春めの父
むすめのちち

「どふぞよいところへ多のミます
 どうぞよいところへたのみます

「ひとつめ尓う どうのところへ
 ひとつめにゅうどうのところへ

出入 いしやの者゛けもの
でいりいしゃのば けもの


(大意)
あればと親しくしている
ものに頼んだ

娘の父(がいう)
「どうぞよいところへ頼みます」
「ひとつ目入道のところへ」

親しくしている医者の化物が


(補足)
「あらハと」、ここだけ読んでも悩みますが、前頁の「さうおう奈ところ可゛」(相応なところが)につながるので「あらばと」(あればと)となります。

「ひとつめ尓」と「尓」(に)を助詞で区切ってしまうと、次がおかしくなります。
「う」にみえるのはほとんどは「可」(か)なのですが、ここでは両方共「う」です。
「ひとつめ尓うどう」(ひとつ目入道)でした。
次頁にそのひとつ目入道が描かれています。

「いしや」、石屋ではなく医者。


 大口を開けている半魚人化物は1頁の化物と同一人物いや化物なのでしょうが、顎の肉がたるんでいません。

屏風の絵はまともで梅でしょうか。



2020年6月4日木曜日

豆本 化物嫁入咄 その5




P.3

(読み)
よめいりざ可りさう
よめいりざかりそう

おう奈ところ可゛
おうなところが

[つぎへ]


「王しや
 わしゃ

こつ者つ
こっぱず

可しい
かしい


(大意)
嫁入り盛り。
相応なところが

「わしゃぁ
こっ恥(ぱ)ずかしい


(補足)
「さうおう奈」、そのままよむと?ですが、旧仮名使いなので「そうそうな」。

「王(わ)しやこつ者(は)つ可(か)しい」、このままではちょっと悩みます。

 屏風の前には火の玉、
「三十振り袖四十島田」娘の顔はスタートレックやスターウォーズに出てくる宇宙人です。
そして、ボロ着の方は貧乏神?
恥も外聞も無頓着な娘のことを目玉が飛び出さんばかりに顎がはずれそうに嘆いています。
神様は化物じゃないか。


2020年6月3日水曜日

豆本 化物嫁入咄 その4




P.2

(読み)
三 十  ふりそで四十  志満多゛尓て
さんじゅうふりそでしじゅうしまだ にて

者゛けそふ奈む春め多゛
ば けそうなむすめだ

とひやう
とひょう

者ん
ばん

春る者゛けもの奈可まの
するば けものなかまの



(大意)
三十振り袖四十島田にて
化けそうな娘だ
と評判する。
化物仲間の


(補足)
大意だけではうまく内容を伝えられません。
(人の世では)「三十振り袖四十島田」と言われるように
(年不相応な衣装・髪型をして若作りに)化物のような娘だと
評判されることがあり、この娘はそのような娘であった。
というようなことです。

「とひやう者ん」、「ひ」が悩みます。
「奈可まの」、「ま」の途中が切れていてわかりにく。

手前の小さな座布団にのっているのは煙草盆でしょうか。
これにも目があって、やはり化物の仲間でしょうね。
煙管の螺旋になっているのも化物か?



2020年6月2日火曜日

豆本 化物嫁入咄 その3




P.1

(読み)
む可し
むかし


むかし

おこ
おこ

さ満
さま

可゛多
が た

ごぞんじ
ごぞんじ

のもゝんじい
のももんじい

尓一人 の
にひとりの

む春めあり
むすめあり

としハ者や
としははや



「む春めこも
 むすめごも

もふ者゛けそ
もうば けそ

ふ奈おとし
うなおとし

志゛や▲
じ ゃ

▲可ら本し
 からほし

可゛る
が る

所  ハ
ところは

やまゝ さ
やまやまさ


(大意)
むかしむかし、お子様方ご存知のももんじい(という化物)に
一人の娘がいました。
年は早くも

「娘御ももう化けそうなお年じゃから
(嫁に)欲しがるところはたくさんあるさ


(補足)
「お子様方ご存知の」はこの手の本の出だしの決まりセリフ。

「お」と「あ」はにてますが、「丶」の有無でわかります。「(お)こさ満」、「む春め(あ)り」。

「春」(す)と「者」(は)をよく間違えてしまいます。「む(春)めあり」、「としハ(者)や」。
変体仮名「春」は「す」+「て」。変体仮名「者」は「む」の底辺が流れてしまう感じ。
ここの「と」が「8」に見えてしまいますが、文章の流れから判断します。

「志゛や▲」、ここで文章が終わるかとおもうと「▲」でつながって、「志゛や▲可ら」となります。変体仮名「可」(か)はほとんど「う」の形です。「う」にみえるのはほぼ「か」と読んでまちがいありません。

 「う」と発音する場合は「ふ」を用います。「も(ふ)」者゛けそ(ふ)奈」。

「可゛る所ハ」、「所」はくずし字。

「やまやま」、現在では「〜したいのはやまやまだけけど」のようにあとに否定的な表現をともなって使います。ここではそのまま「たくさん」「多いさま」の意。

 ナマズのような化物でしょうか。
しかし当時も今もこのような人がいるので、とても現実味があります。
ついたての絵ももちろん化物でしょう。



2020年6月1日月曜日

豆本 化物嫁入咄 その2




見返し

(読み)
圓朝
えんちょう

宮田板
みやたばん


(大意)



(補足)
「圓朝」は落語「三遊亭圓朝」でしょうけど、「宮田板」とははて?

左半分が空白ですが、なんとなくひとがたのように見えるものがあります。
左側の頁の絵がうつったのかもしれません。