P.1
P.1 中・下段
(読み)
多ゞ今 の
ただいまの
おく春り
おくすり
でこさり
でござり
ます
ます
おめへ
おめえ
きよねん
きょねん
い多こで女 郎 を
いたこでじょろうを
可つていつゞけを
かっていつづけを
し多と起可年可゛
したときかねが
奈くてあげ
なくてあげ
多゛いの可ハり
だ いのかわり
尓きやう可を
にきょうかを
よん多゛といふ
よんだ という
者奈しを
はなしを
てうし のやゑ
ちょうしのやえ
ざ起さん可゛
ざきさんが
こつちのミセ
こっちのみせ
で者奈し可゛
ではなしが
ありやし多よ
ありやしたよ
(大意)
ただ今のお薬でございます。
おまえさん、
去年潮来で女郎を買って居続けをしたとき、
お金がなくて、揚げ代の代わりに狂歌を詠んだという話を
銚子の八重崎さんがこっちのお店でしてましたよ
(補足)
会話部分になります。
「多ゞ今の」、この「の」は最後の丸い部分がなくて、はて?と悩んでしまうのは初心者の恥ずかしいところ。
薬袋に3文字書いてあります。相手に差し出しているので、右側が上になるでしょうから、拡大してみると「く春里」とよめるような気がします。
「きよねん」、「ね」が現在と同じ平仮名「ね」です。たいていはその変体仮名である「年」が使われます。この数行あとに「可年可゛」(かねが)とあります。形は「○」が特徴になります。
普段の話し言葉の調子で書かれているようですが、なんだか妙にリアル感があります。
「八重崎さん」はきっと十返舎一九の親しいかお世話になっている人で、サービスで実名を書き込んだのではないかとおもいます。本人が読めば喜びますものね。
腕の良い彫師なのでしょう。比較的柔らかい線で丁寧です。
御婦人の両袖の縦縞模様が職人たちの腕の良さを表しています。
腕から手元にくるにしたがって縦縞の間隔が狭まり平行でなくなるように描いています。
立体感がでますし、実際の着物でもそのようになります。
日本髪の生え際も手を抜いてない。
なまけもの作家は襟元をくずし、くつろいでいる感あふれてます。
けど正座しているんですよね。
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