見返し口上
4行目から
(読み)
作 者 乃得手尓嗜欲 趣 向 ハ書肆 の金
さくしやのゑてに本まちものし由こうハ本んやの可年
さくしゃのえてにほもちものしゅこうはほんやのかね
筥 尓。山 吹 色 乃黄表 紙と。一寸 祝 川て
者゛こに ヤまぶ起いろのきびやうしと ちよつくりい者川て
ばこにやまぶきいろのきびょうしとちょっくりいわって
筆 を執類
ふでをとる
壬 戌 孟 陽
みずのえいぬ もうよう
十遍舎一九㊞
(大意)
(われら)作者はここぞとばかりにほまち銭を得る。趣向を凝らせば
本屋の金箱に山吹色の黄金小判がたまり、黄金色の黄表紙はめでたいものだと
ちょっくら祝って筆を執った。
壬戌 孟陽
十遍舎一九㊞
(補足)
「得手」(えて)、得手不得手の得手。最も得意とすること。またそれを行うこと。
このあとのダランとしたくずし字がよくわかりませんが「尓」としました。
「嗜欲」、そのまま読めば(しよく)。
(ほまちもの)とふり仮名があります。「帆待物」。
船乗りたちが規定の物以外を密かに荷積みして、臨時収入を得ること。
「欲」のくずし字の偏は「谷」のようですが、旁の「欠」は適当。
「趣向」、「趣」の偏は縦棒で簡略されてますが、旁の「取」はちゃんとしたくずし字になってます。
「書肆」(しょし)、「しょし」と入力するとでました。本屋。
「金筥に」、「に」としましたが、わかりません。
「祝川て」、変体仮名「川」の「い」はあまり見ません。
「壬戌(みずのえいぬ)」、1802年。
「孟陽」、新年。
序文を歌舞伎役者のように節を付けて音読すると、一九先生が役者になりきって口上している場面のようです。大声で音読するとこちらまで歌舞伎役者になった気分。
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