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2021年4月27日火曜日

豆本 開化地獄論後編 その17

奥付

裏表紙は無地白なので略

(読み)

明治十五年五月廿二日出版御届

東京府士族

編輯兼出版人 勝 木吉 勝

       かつきよしかつ

下谷區數寄屋町十五地

定價二銭

(大意)

(補足)

 文字が木版ではなく活字です。といっても現在でもゴム版などで使われているようなまとまった単語のものでしょう。「編輯兼出版人」はそろってますのでこれでひとつの印鑑のようになっているはず。縦軸が揺らいでいて頼りないですけど活字っぽくしたのもこれまた進取のあらわれかもしれません。

「勝」が上下にあります。下のほうがやや大きく見えます。同じ大きさのものがなかったのかも。

お伽噺とはことなり、地獄論上下はおもしろかった。

 

2021年4月26日月曜日

豆本 開化地獄論後編 その16

P12

(読み)

こゝ可゛

ここが


かい可の小児の

かいかのしょうにの


め者゛へ

まば え


がく志゛ゆつの者んも

がくじゅ つのはんも


奈春ハ皇 こくのさ可へ

なすはこうこくのさかえ


志も者゛んミん尓い多るまで

しもば んみんにいたるまで


ミ奈万 ざいを祝  し个る

みなばんざいをしゅくしける


めで多し\/\/

めでたしめでたしめでたし


幾飛亭画

いくひていが

(大意)

このように開化の芽生えが子どもにまでおよび

学術の繁茂で皇国が栄えるだろう。

万民下々に至るまで皆万歳で祝す。

めでたしめでたしめでたし

(補足)

 杖をつき脇に本をかかえ、柵の向こうの窓から聞こえてくる子どもたちと大王や鬼たちの会話に耳を傾けるは開化に希望をみる老学者か。背広のような将校服のような妙な上着です。

建物は石積みで柵はきっと鉄柵でしょう。これも開化のひとつのあらわれ?

文章の出だし「こゝ可゛」の「こ」のあとがわかりずらい。

「がく志゛ゆつの者んも」、きれいな「か」です。「も」は丸っこくって悩みます。


「幕末明治の豆本 加藤康子著」では「幾歳斎画」となっていますが「幾飛亭」だろうとおもいます。

小林英次郎です。かちかち山見返しの幾飛亭と同じです。


 

2021年4月25日日曜日

豆本 開化地獄論後編 その15

P10P11

(読み)P11

多て

たて


春゛


して

して


のち尓ハ

のちには


ミ奈

みな


\/

みな


わらゐを

わらいを


ふくミ

ふくみ


酒 ゑんをもようし

しゅえんをもようし


个ると奈ん

けるとなん


(大意)

(腹を)立ててはおらず

しばらくして皆々

笑顔もみられるようになり

酒宴を催しました


(補足)

「もようし」、なが〜〜〜い「し」です。

子どもたち二人の足元は足袋でしょうか、靴はまだ履いていません。

閻魔さんはおでこの大「王」ワッペンも復活してご機嫌。

テーブルクロスのひだがなにげなく描かれていて上手。

西洋式のテーブルに椅子というところが文明開化の香りでもあります。

 

2021年4月24日土曜日

豆本 開化地獄論後編 その14

P10P11

(読み)P10

くぎぬきで

くびぬきで


舌 をぬき

したをぬき


ますぞと

ますぞと


いへバお尓

いえばおに


どもゝ

どもも


せんぴを

ぜんぴを


くやミて

くやみて


かの小  児尓

かのしょうにに


ともども

ともども


わびをけれバ

わびをければ


小供 も

こどもも


さのミ

さのみ


者ら

はら



(大意)

釘抜きで舌を抜きますぞ」と

言うと、鬼どもは前非を悔いて

かの小僧に鬼たちは詫びを入れ

ましたが、小僧はそれほど腹を(立ててはおらず)


(補足)

文章はくっきり見やすい。

「わびをけれバ」、今ではなんか違和感があるいいわましです。

「さのミ」、然のみ、とありました。それほど。たいしては。現在では会話でも文章でも目にしません。

 小僧と丁稚が椅子に浅く腰掛けています。脚がやっと届くか届かないくらいの微妙な感じで描いているのがうまい。

 

2021年4月23日金曜日

豆本 開化地獄論後編 その13

P8P9

(読み)P8下段

そのとおりでハ

そのとおりでは


奈い可だれも

ないかだれも


あそび多いハ

あそびたいは


お奈じこと多゛

おなじことだ


可らまア由るして

からまぁゆるして


おやん奈さい

おやんなさい


ゑんまさんも

えんまさんも


地ごくといふ

じごくという


国 可゛ある

くにが ある


奈んぞと

なんぞと


うそを

うそを


つくと

つくと


それそ

それそ


P9下段

こ尓

こに


ある

ある


(大意)

お前さんだってそのとおりではないか。

誰もが遊びたいのは同じことだ。

だからまぁ許しておやんなさい。

閻魔さんも地獄という国があるなんぞと

ウソをつくとそれそこにある

(補足)

 丁稚が両者を言い含めることばが、どこかのご隠居さん風にきこえます。

虫食いの跡がきれいにのたくってますが、なんとか読むことはできます。

「だれも」、だんだん平仮名「た」がつかわれる割合が多くなってきているようです。

「あ」と「お」のかたちも、はっきりと別物になってきてます。

「うそ」、平仮名「う」が「う」にみえなくて、変体仮名「可」のほうが「う」にそっくりです。

丁稚をはさんで、右上がりの勢いのある小僧、かたやもうしぼんでしまって消えてしまいそうな閻魔さん、明治の時代の象徴です。

 

2021年4月22日木曜日

豆本 開化地獄論後編 その12

P8P9

(読み)P9上段

多とう可゛

たとうが


よくおきゝ

よくおきき


わ多し奈んぞハ

わたしなんぞは


学 校 へ由可

がっこうへゆか


奈いから

ないから


むづ可しい事 ハ

むずかしいことは


志ら奈い可゛

しらないが


年 尓二どの

ねんににどの


おさい日 尓ハやどいりを

おさいじつにはやどいりを


春るのハ地ごくの

するのはじごくの


可まのふ多可゛あくとて

かまのふたが あくとて


あそぶのハゑんま

あそぶのはえんま


さんのあるお可げ

さんのあるおかげ


おまへさん多゛とて

おまえさんだ とて


(大意)

(お腹も)立ちましょうが

よくおききくださいな。

わたしなんぞは

学校へ行かないから

難しいことは知りませんが

年に2度の祭日に宿入りするのは

地獄の釜の蓋が開いたとしても

遊ぶことができるのは

閻魔さんがいるおかげですよ。

おまえさんだって


(補足)

「奈いから」、平仮名「か」はたまにつかわれます。

「事」が変体仮名「奈」や平仮名「る」にみえます。

「可ま」、「うま」ではありません。変体仮名「可」は「う」とほとんど同じで、大小様々。

 割って入った丁稚を中心に三人の視線は一直線に並びます。丁稚の右袖がやけにでかいです。

 

2021年4月21日水曜日

豆本 開化地獄論後編 その11

P8P9

(読み)P8上段

お尓どもを

おにどもを


奈多゛めて

なだ めて


ゑん

えん


まを

まを






の子供 を

のこどもを


可ミざ尓

かみざに


奈をして

なおして


これ

これ


尓いさん

にいさん


お者らも

おはらも


(大意)

鬼どもをなだめて

閻魔を起こし

あの子どもを

上座に改めて座らせ

「これ兄さん

お腹も(立ちましょうが)


(補足)

 腹が立ち怒り静まらぬ小僧は両拳をももにおき怒り肩でにらみつけます。

「ゑんまをおこしかの子供を」、どこで文章をきるのかわからなくなります。

「お者らも」、変体仮名「者」(は)は、出だしが「む」のようにして下にきたら右下に流れます。ここのは「え」ににてます。

 

2021年4月20日火曜日

豆本 開化地獄論後編 その10

P6P7

(読み)P7後半

ミせの

みせの


丁 稚ミせ尓

でっちみせに


い多りし可

いたりしか


この

この


あり

あり



ま尓

まに


可けき

かけき


たりて

たりて


大 せいの中 へ

おおせいのなかへ


わつて

わって


いり

いり


(大意)

(向かいの)店の丁稚が

店に居ましたが、

この有様に走ってやってきて

大勢の中へ割って入り


(補足)

かすれてしまって文字が読みにくいところが数箇所あります。

「い多りし可」、「し可」が拡大してもどうもはっきりしません。

「可けきたりて」、「可」にみえますが。平仮名「た」もたびたびでてきます。

丁稚と(開化中)小僧の髪型の違いがまさに文明開化進展中です。

p2に登場の小僧の着物は格子縞でP5では縦縞になり、ここP7では丁稚が格子縞です。

 

2021年4月19日月曜日

豆本 開化地獄論後編 その9

P6P7

(読み)P7前半

もの可

ものか


「奈尓を

 なにを


こしやく奈

こしゃくな


「ゑゝめん

 えぇめん


どう奈と

どうなと


ぶちあつて▲

ぶちあって


▲いる

 いる


とこ

とこ


ろへ

ろへ


むこふ●

むこう


(大意)

(渡してなる)ものか

「なにお〜こしゃくな」

「えぇ面倒な」と

殴り合っているところへ

向かいの(店の)


(補足)

「も」、この「も」の字は「五」のくずし字と同じような筆順。

「や」、筆順が一筆書きのようになっています。

「ぶちあって」、「ぶ」が少し見にくいですが、「むこふ」の「ふ」と同じです。

 仲裁に来た丁稚の後ろで、両腕を懐手にして、背筋から両脚までピンとを伸ばし、見えをきっている立ち姿は定番です。この姿好きです。小僧の髪の毛を拡大してみると荒くはありますけど、きちんと描いているのがわかります。

 

2021年4月18日日曜日

豆本 開化地獄論後編 その8

P6P7

(読み)P6

むくいハてきぜん

むくいはてきぜん


王れ\/可゛このつへ

われわれが このつえ


本゛うやさつま多で

ぼ うやさつまたで


者りの山 可ら

はりのやまから


ちのいけとうそを

ちのいけとうそを


つく奈ら志゛やう

つくならじ ょう


者りのかゞみ尓

はりのかがみに


可けてもとをしハせぬぞ

かけてもとおしはせぬぞ


「ぬ可し多り\/

「ぬかしたりぬかしたり


こうとらへ多

こうとらえた


このゑんま

このえんま


わいら尓

わいらに


王多して奈る

わたしてなる(ものか)


(大意)

報いは受けて当然だ。

われわれがこの杖棒や

刺股で針の山から血の池と

嘘をつくなら浄玻璃の鏡に

かけても通しはせぬぞ」

「ぬかしたなぁ、ぬかしたなぁ

こうやって捕らえたこの閻魔を

お前らにわたしてなるものか


(補足)

どうも読解力に欠けているようで、「王れ\/可゛〜うそつく奈ら」がよくわかりません。

「てきぜん」、現在では使われてないとおもいます。「的然」。はっきりとしたさま。明白なさま。

「つへ」、「へ」が「く」にみえます。

「山可ら」とその左の「うそ」、変体仮名「可」と「う」はほとんど同じにみえます。

「かゞみ」、平仮名「か」と「み」がめずらしい。

「わいら尓」、調べると「汝等」(わいら)とありました。

「王多して」、変体仮名「多」がわかりにくですけど、小さな「多」でしょう。

大王はすでに正気を失い、放心状態でヘナヘナ笑っています。

 

2021年4月17日土曜日

豆本 開化地獄論後編 その7

P4P5

(読み)P5

▲大 王 を

 だいおうを


とらへて

とらえて


いつ王り

いつわり


者 奈ぞと

ものなぞと


ぬかし

ぬかし


多る

たる


(大意)

大王を捕らえて

偽りの者などと

ぬかした

(補足)

 文章はくっきりはっきりですけど、

大王の表情ははっきりしません。なんかヘラヘラしてる?

P5だけを見ると、子どもが左腕で棍棒を振り上げているようにみえますけど

これは赤鬼に右腕でした。子どもの表情は目は10時10分、口は8時20分。

 

2021年4月16日金曜日

豆本 開化地獄論後編 その6

P4P5

(読み)P4後半

▲てんで尓

 てんでに


けんや本゛う

けんやぼ う


ちぎれおの

ちぎれおの


まさ可りや

まさかりや


さつま多と

さつまたと


ゑもの\/を

えものえものを


ひつさげて

ひっさげて


おのれこ王つ者゜▲

おのれこわっぱ


(大意)

めいめいに剣や棒ぎれ、斧、マサカリや

刺股(さすまた)と武器などを引っさげて

「おのれこわっぱ

(補足)

「ちぎれ」は千切れで意味はそのまま、ちぎれた切れ端し。「棒ちぎれ」で棒の切れ端。

「さつまた」では辞書でヒットしません。「さすまた」ならOK。

「ゑもの」は得物で武器のこと。

「こ王つ者゜」、半濁点「゜」がかすれてますがあるようにみえます。

 

2021年4月15日木曜日

豆本 開化地獄論後編 その5

P4P5

(読み)P4前半

いつ王り者 尓ち可゛い奈し

いつわりものにちが いなし


このおもむ起ヲ分 署 へ

このおもむきをぶんしょへ


ね可゛いそのご志よけい尓

ねが いそのごしょけいに


おこ奈いくれんと

おこないくれんと


いふと起の春起を

いうときのすきを


う可ゞい

うかがい


鬼ども

おにども


ハ▲


(大意)

偽り者に違いありません。

この事情を(警察)分署へ願い(届け)、

その後、処刑にしてくれよう」と言った

そのすきをじっと待って

鬼どもは


(補足)

「いつ王り者」、変体仮名「王」(わ)のかたちは「已」ですが、使われる頻度は高い。「者」(もの)はここでは文字通り「もの」。

「このおもむ起ヲ分署へ」、「ヲ」は片仮名。「分」のくずし字は「彡」+「ゝ」。

「う可ゞい」。「う」と変体仮名「可」(か)はどっちがどっちだかわからないくらいにてます。

 子どもは右手で閻魔の首根っこを抑え、左手で鬼の胸ぐらをとらえ赤鬼は苦しそうにのけぞっています。これで話が終わるわけではありませんが、まさに大団円。

部屋では大乱闘ですけど、背景の壁絵はのどかそう。

 

2021年4月14日水曜日

豆本 開化地獄論後編 その4

P2P3

(読み)P3

地古゛く尓

じご くに


原 籍

げんせき


ある奈ぞと

あるなぞと


いつても

いっても


そのく尓の

そのくにの


あり可も

ありかも


志れず

しれず


こく本うも

こくほうも


あいまい

あいまい


して

して


いる

いる


奈んぢ

なんじ


こそ

こそ


(大意)

地獄に本籍が

あるなどといっても

その国の場所もわからず

国法もあいまいにしている

あなたこそ


(補足)

 さんざん子どもたちに恐ろしいおもいをさせてきた閻魔大王が頭をかかえ表情は泣きっ面、この絵を見て読者の子どもたちは大喜びでしょう。

背景の土壁の下の白い部分は障子や板壁ではないし、何でしょうか。

 

2021年4月13日火曜日

豆本 開化地獄論後編 その3

P2P3

(読み)P2

子供 ハゑ多りと

こどもはえたりと


ゑんまをおしふせれバ

えんまをおしふせれば


このありさま尓

このありさまに


お尓どもハ

おにどもは


こけつまろびつ

こけつまろびつ


おくを

おくを


さして

さして


尓げて由く

にげてゆく


小  児ハ

しょうには


ゑんま尓

えんまに


む可ひ▲

むかい


(大意)

子どもはしめたとおもい

閻魔を押し伏せました。

この有様を見ていた鬼どもは

倒れたり転がったりして

奥の方へ逃げてゆきました。

子どもは閻魔に向かって


(補足)

「お」が3箇所でてきますが、かたちが少し変わっています。「十」+「◯」に「ゝ」のようなかたちになってます。たいていは3行目の「あ」に「ゝ」のかたちです。

「尓げて由く」、「尓」は拡大してみても「あ」にしかみえません。

子どもはとうとう実力行使、閻魔の裾をしっかりつかんでいます。子どもの両腕の太さもこころなしか今までより太くたくましくなっている。

 

2021年4月12日月曜日

豆本 開化地獄論後編 その2

P1

(読み)

㐧 一 号 ノつゞき

だいいちごうのつづき


小児

しょうに



さア\/

さあさあ


い可ゞで

いかがで


ござる

ござる



とい

とい


つめれバ

つめれば


ゑんまハ大 閉 口

えんまはだいへいこう


返 事の志可多尓

へんじのしかたに


さしつまれバ

さしつまれば


古いつ者志くじつ多

こいつはしくじった


さゝ

ささ


\/

ささ


大 へん

たいへん


\/

たいへん


者やく

はやく


尓げろ\/

にげろにげろ


(大意)

第一号のつづき


子どもは

「さあさあいかがでござる」と

問い詰めると

閻魔は大いに困り

返事のしようがなく

言葉なく黙ってしまいました。

「こいつはしくじった」

「ささささ大変たいへん

はやく逃げろにげろ」


(補足)

「㐧一号」、「㐧」は「第」の略字ですが、本文のとはちょっと異なってます。

「小児わ」、助詞が「は」or「ハ」でしょうけど「わ」になってます。

「古いつ者」、「い」が「ム」にみえます。

赤鬼青鬼はあわてふためいて逃げるというより、酔っ払っている感じ。

どうも鬼のパンツに目がいってしまう。カッコいい。

 

2021年4月11日日曜日

豆本 開化地獄論後編 その1

表紙

見返し

(読み)

開化地獄論後編

かいかじごくろんこうへん


地獄論

じごくろん


後編

こうへん


幾歳斎画

いくとしさいが