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2023年1月8日日曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その12

P10 国立国会図書館蔵

(読み)

[次 ゟ]

 つぎより


いんきやう

いんきょ


さんも

さんも


めを

めを


可けて◆

かけて


◆やりし

 やりし


といふ

という


めで

めで


たし

たし


\/  \/

めでたしめでたし


明治廿一年七月十日印刷同年廿二(日)出版

日本橋區馬喰町三丁目十番地

印刷兼発行者 小森宗次郎


(大意)

隠居さんもめをかけて

やったということでした

めでたし

めでたしめでたし


(補足)

 こんなに小さな頁の隅々まで丁寧に描いているのに感心させられます。ふすまは枠も引き手もそして花びら模様の柄もどれも手抜きなし。床の間の前の千両箱?や火鉢も欅模様を入れています。隠居さんは立派な座布団、婆さんは座布団なしですけど白足袋をはいています。

まことにめでたい最後の頁でした。

 

2023年1月7日土曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その11

P8P9 国立国会図書館蔵

(読み)P9

より

より


古ゝ

ここ


ろを

ろを


い連

いれ




ぜん

ぜん


しん尓

しんに


なりけ連バ

なりければ


ふくゑもん

ふくえもん



おゝき尓よろこび

おおきによろこび


[次へ]


(大意)

(これ)からは心を入れかえ

善良になりますとのことで

福右衛門も大いに喜び


(補足)

 豆本は手のひらにのるほど小さな冊子で、子ども向けの廉価なものですから、それを制作する絵師や彫師・摺師はやはり手を抜いてしまうところもあります。しかしながらこの頁の、飛行機の翼のように両手を広げて逃げる様、縦縞の着物の輪郭線の確実さ、婆さんの表情と特に髪型など、ついつい真面目に仕事をしてしまったようです。また同様に首長入道の頭部分とそのぐぅわぉ〜と婆さんに襲いかかる目つきで絵師の力量が相当なものとわかります。

「い連可へ」、「い」と「連」がくっついているので読みにくいが文脈から読むことができます。

 

2023年1月6日金曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その10

P8P9 国立国会図書館蔵

(読み)P8

[次 ゟ]

 つぎより


ひき可へふく

ひきかえふく


ゑもんはいろ\/

えもんはいろいろ


のた可らものを

のたからものを


みてみ奈らべよろ

みてみならべよろ


こびいると古ろへ

こびいるところへ


よく者゛ゞむざん尓

よくば ばむざんに


尓げき多りこれ

にげきたりこれ


(大意)

(それに)ひきかえ、

福右衛門はいろいろな宝物を

並べてはながめ、喜んでいましたが

そこへ欲張り婆さんはいたましく

逃げ切って来ました。

これ(より)


(補足)

 骸骨の右手が婆さんの左足をギュッとつかんでいます。妖怪化け物にはそれぞれ名前がついているのですけど、ここの化け物はなんでしょうか?

気のせいではなく変体仮名「古」(こ)が多用されています。文字は鮮明で読みやすい。

 

2023年1月5日木曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その9

P6P7 国立国会図書館蔵

(読み)P7

あけてみ連ハ

あけてみれば


いろ\/な者゛け

いろいろなば け


もの可゛あら王れよく

ものが あらわれよく


者゛りばアさんあをく

ば りばあさんあおく


奈りあちら

なりあちら


こちらへ

こちらへ


尓げ

にげ


ま王り

まわり


ける

ける


それを

それを


[次へ]


(大意)

開けてみると

いろいろな化け物が

あらわれ、欲張り婆さんは青くなって

あちらこちらへ逃げまわりました。

それに


(補足)

 この豆本の爺さん婆さんの顔は、他の豆本の爺さん婆さんにくらべるといわゆるしわくちゃ顔ではなく、どこか西洋人っぽくつるんとしています。

「み連ハ」、平仮名「み」をみることはあまりないのですけど、この豆本では意識的に変体仮名と平仮名を同じくらいに使うようにしているように感じます。

 葛籠(ツヅラ)の中身は金銀珊瑚綾錦(きんぎんさんごあやにしき)、珊瑚はわかりますけど他の細々したものは何がなんだかわかりません。

 

2023年1月4日水曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その8

P6P7 国立国会図書館蔵

(読み)P6

[次 ゟ]

 つぎより


よう

よう


古゛ざり

ご ざり


ま春と

ますと


きく尓

きくに


者゛アさん

ば あさん


おもゐ

おもい


本うを

ほうを


いたゞきませ うと◯

いただきましょうと


おもき

おもき


本うを

ほうを


もつ天

もって


かへる

かえる


うちへ

うちへ


いりて□

いりて


(大意)

(どちらが)よう

ございましょうかときけば

婆さんは

重いほうをいただきましょう

と、重いほうを持ち帰りました。

家について


(補足)

 ここはおじいさんの家ですが、なんとも簡素で家具ひとつおいてなく現在の家屋でもそのまま使えそうな部屋になっています。

籠の部分の彫りは、まわりの彫りとは異なっていて、版画のように刻んでいます。文字は大変に鮮明で読みやすい。

 

2023年1月3日火曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その7

 


P4P5 国立国会図書館蔵

(読み)P5

なし

なし


奈尓可

なにか


おみ

おみ


やけを

たげを


あけま春可゛

あげますが


かるい△△

かるい


△△つゞら可

  つづらか


おもいつゞら可

おもいつづらか


どちら可゛[次 へ]

どちらが  つぎへ


(大意)

(はなしを)して、

なにかおみやげをあげましょうと

軽いツヅラか重いツヅラか

どちらが


(補足)

変体仮名「可」(か)がたくさん出てきてますが、「かるい」では平仮名です。

三人の着物柄がそれぞれ際立っています。すずめひとりは羽織袴で、袴は縦縞模様。奥様らしきすずめは着物上掛けが地味ながらもなんとも手のこんだ柄です。おじいさんは前掛けのような三色の部分がおしゃれ、杖は竹の節があります。

 建物全体の造作は床下の竹の柵や、部屋の壁の鈍い輝きなど、どの部分を見ても丁寧に描かれています。


2023年1月2日月曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その6

P4P5 国立国会図書館蔵

(読み)P4

[次 ゟ]

 つぎより


みてじぶんもその

みてじぶんもその


まねをなし

まねをなし


春ゞめ越

すずめを


さ可゛し尓

さが しに


いでる

いでる


む可ふ

むかう


より

より


春ゞめいで

すずめいで


きたりおや\/

きたりおやおや


お者゛アさん◯

おば あさん


◯よく

 よく


おいでした

おいでした


さ阿こちらへと

さあこちらへと


うちへ入

うちへはいり


いろ\/は

いろいろは


奈しを△

なしを


(大意)

(婆さんは)見て、自分もまねをして

すずめを探しに出かけました。

むかってゆくと、すずめが出迎えてきて

「おやおやお婆さん

よくおいでくださいました。

さあ、こちらへ」と

家に入り、いろいろはなしを


(補足)

 文章前半がふすまの赤色が背景で、とても読みづらい。読み間違いがあるかもしれません。後半の下半分はとても鮮明。すずめ2羽とおじいさんの着物の彩りがとてもきれいです。

「は奈しを」、平仮名「は」が使われるています。

 

2023年1月1日日曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その5

 


P2P3 国立国会図書館蔵

(読み)P3

◎だしおみやげ尓

 だしおみやげに


つゞらを

つづらを


あげま春可ら

あげますから


可るゐの可゛よふ

かるいのが よう


古゛ざいま

ご ざいま


しやうと

しょうと


いんきやう

いんきょ


さん●

さん


そのつゞ

そのつづ


らを

らを


せおつて⦿

せおって


⦿可へり

 かへり


ふ多をあけ天

ふたをあけて


みると▲

みると


▲いろ\/な

 いろいろな


た可ら可゛いでたる

たからが いでたる


を者゛アさん[次 へ]

をば あさん つぎへ


(大意)

(ごちそうを)だし、おみやげに

ツヅラをあげますから、軽いのが

ようございましょうと

隠居さんはそのツヅラを背負って

帰りました。蓋を開けてみると

いろいろな宝物が出たのを

婆さん


(補足)

 引き続き、鮮明な文字で読みやすい。平仮名「み」がこれほどたくさん使われているのは、めずらしいかもしれません。ほとんどはカタカナ「ミ」ですが、なんか意識して使ってないような気がしてきました。

「おみやげ」、ここの「や」が現在のかたちと同じですが、このあとのものは「ゆ」ににたようなかたちです。

「ふ多をあけ天」、変体仮名「多」も多用されるのが普通ですが、ここ以外は平仮名「た」です。変体仮名「天」(て)も出てきてます。

この頁では、平仮名「か」は使わないときめたようで、全部変体仮名「可」(か)です。

 絵全体も無難に仕上がっています。


2022年12月31日土曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その4

P2P3 国立国会図書館蔵

(読み)P2

[次 ゟ]

 つぎより


志たをきりとばし个る

したをきちとばしける


あとへいんきやうさん

あとへいんきょ さん


可へりきてその

かえりきてその


者奈しをきゝ

はなしをきき


春ぐ尓春ゞめ乃

すぐにすずめの


あり可をさ可゛し

ありかをさが し


いでたるむ可ふ可ら

いでたるむこうから


春ゞめ

すずめ


いでき多り

いできたり


おや古゛いん

おやご いん


きやうさん◯

きょ さん


◯よく

 よく


いらつ

いらっ


しヤい

しゃい


ました□

ました


□さあ\/

 さあさあ


こちらへと

こちらへと


うちへいれ

うちへいれ


いろ\/奈

いろいろな


古゛ちそうを◎

ご ちそうを


(大意)

下を切り飛ばしました。

しばらくして隠居さんが帰り、その

はなしをきき、すぐにすずめのすみかを

探しに出かけました。

 向こうから、すずめが迎え出てきて

「おや、ご隠居さんよくいらっしゃいました。

さあさあこちらへと家へ迎い入れ

いろいろなごちそうを


(補足)

「志たをきりとばし个る」、切り飛ばすとはなんともすごい表現。

変体仮名「可」(か)がたくさん使われています。「う」と「ら」はそっくりなので注意です。

 やや色ズレがありますが、ふすまの柄などまぁまぁ丁寧に仕上がっているようです。

 

2022年12月30日金曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その3

P1後半 国立国会図書館蔵

(読み)

□よく者゛り

 よくば り


者あさん

ばあさん


せんだく

せんたく


せんと

せんと


のりを

のりを


とき

とき


おき

おき


しに

しに


春ゞ

すず


め△


△きたつて

 きたって


のりをなめたり者゛アさん

のりをなめたりば あさん


お本い尓お古りはさミ

おおいにおこりはさみ


尓て春ゞめの[次 へ]

にてすずめの つぎへ


(大意)

欲張り婆さんが洗濯をしようと

のりをといておいてあったものを

すずめが来て、のりをなめました。

婆さんは大変に怒って、ハサミで

すずめの


(補足)

 絵師はベテランでしょう。歌舞伎などでは役者さんが「なにおぉ〜」と怒ったときのきまりきった仕草ですが、婆さんの構えも同じです。右脚を膝立ちし、左手で右手の肘あたりまで腕まくりし、肩をやや怒らせ、和鋏とはおもえぬようなデカイハサミを握りしめています。体全体から怒りがあらわされていて、からだの線を残しながらも着物で覆って描いているところが腕の良さをしめしています。

 建物の窓の竹柵や破れ壁など、絵全体もとても丁寧に描いています。

 

2022年12月29日木曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その2

P1前半 国立国会図書館蔵

(読み)

「む可し\/

 むかしむかし


あるところ尓

あるところに


ふくゑもんとて

ふくえもんとて


ひとりのいんきやう

ひとりのいんきょ


さん可゛

さんが


あり

あり


ました

ました


よく春ゞめを

よくすずめを


あいし可いおき

あいしかいおき


けるある日◎

けるあるひ


◎る春の

 るすの


とき

とき


と奈り

となり


の□


(大意)

むかしむかしあるところに

福右衛門というひとりの

隠居さんがおりました。

大変に雀を可愛がっていました。

ある日、留守のとき隣の


(補足)

 1頁めから婆さんのまわりは文字だらけです。こんなのも豆本ではめずらしい。

「いんきやうさん」、隠居さん。旧仮名遣いは現代の文字遣いに比べると、古めかしいと言う前になんだか変でおかしな文字表現です。

明治20年前後の文字表現なのですが、もちろん元は変体仮名表現が底流にあるため、現在の平仮名を多く使おうとする編集方針は感じるのですけど、やはりポコっポコっと変体仮名が使われてしまっています。

 文末の記号から文頭の記号へと記号が一致するように読むのですけど、いい加減なことも多いです。

 意地悪ばあさんの顔つきがよく豆本にあるような婆さんとはちがってなかなか個性的であります。

絵全体はとてもよく描けています。

 

2022年12月28日水曜日

舌切春ゞ免(小森宗次郎) その1

表紙 国立国会図書館蔵

見返し

(読み)

舌 切 春ゞ免

志たきり

したきりすずめ


見返し

東京圖書館印 TOKIO LIBRARY

明治二一・七・三0・内交・

(大意)

(補足)

 前回の「猫の狂言津くし」(沢久次郎)は絵などが荒れていたので一作で終了します。

小森宗次郎の豆本をとりあげます。明治廿一年七月十日印刷同年廿二一出版。

 やはり豆本の表紙はこうでなくっちゃ。画工たちの心意気が隅々にまで発揮されていて素晴らしい。なんでこんなに凝るのだろうとおもわせるぐらい、細かい箇所を見ていくと感じられます。

 題名は「舌切」が楷書でその振り仮名が変体仮名「志」(し)と楷書の平仮名です。続いて「春」「免」と変体仮名となります。表紙の題名なのでひとつの図案なのだと解釈すれば、これもまた納得できます。

 こんな素晴らしい表紙を描くのだから見返しを期待してしまいますが、残念なことに鮮明な丸朱印がふたつのみとは残念であります。