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2021年2月13日土曜日

豆本 金太郎山めぐり その15

奥付

裏表紙

(読み)

御届明治十八年六月一日

編輯

画工兼出板人 定價壹銭五厘

東京日本橋區

馬喰町二町目七番地

佐藤新太郎

(大意)

(補足)

 御届日付と同じ日付で佐藤新太郎は豆本を10冊前後出版しており、そのうち「金太郎一代記」「金太郎山めぐり」「金太郎咄し」と似たような内容で3冊もシリーズ化しています。前回の記事でも示しましたが、最終頁などはほとんど同じ構図になってます。なぜ一気に10冊前後の豆本を出版したのか、それらを開いてみると出来具合はそろってなく、出来不出来の差が激しいのです。不出来のものは出版しなければよいのに、よほどの理由があったのかもしれません。とても気になります。

 

2021年2月12日金曜日

豆本 金太郎山めぐり その14

P12

(読み)

あら多めそのこう

あらためそのこう


ひとの志る

ひとのしる


ところ

ところ


奈り

なり


めで多し\/\/

めでたしめでたしめでたし


(大意)

あらため、その功(績)は

人の知るところとなりました。


(補足)

 金太郎は坂田金時(さかたのきんとき)、頼光の四天王のひとりとなって出世してめでたしめでたしめでたしとなりました。足柄山の山姥も天上より喜びの舞をしてその功をたたえています。

 左手は袖をつまみ、右手には扇(その扇もすべてを描かずに端をきる構図は定番)、体をゆるくくの字にひねり、後ろ髪を風になびかせています。最後の頁は手抜きもなく親方、佐藤新太郎が描いたようです。

 同時期に出版した「金太郎一代記」の最終頁はこれとほとんど同じです。

一見しただけでその違いは明らかです。

2,3行目のちょうど同じ2文字目に「と」と「こ」が並んでいます。「こ」と「と」は似ているので注意です。

 

2021年2月11日木曜日

豆本 金太郎山めぐり その13

P11

(読み)

[つゞき]

お本

おお


多こを

たこを


者りて古れを

はりてこれを


あげて奈ぐ

あげてなぐ


さむのち

さむのち


より

より


ミつ可

みつこ


うの

うの


可しん

かしん


と奈り

となり


きん

きん


ときと

ときと


(大意)

大凧を張って、これを揚げて楽しみました。

その後、頼光公の家臣となり

金時と


(補足)

 絵がやはり稚拙です。弟子にしてもちょっと下手すぎます。凧の下部の足なんて適当。大凧の絵も子どもの落書きのよう。

「者りて」、変体仮名「者」(は)は「十」+「て」のような形ですが、「む」の後半が下に流れている形のようなこともあります。「張る」は凧の糸をピンと張っているのか大凧をしっかりたわまないように張っているのかどちらかでしょう。

「古れを」、変体仮「古」(こ)。

「よりミつ可うの」、「可」が小さすぎてわかりにく。もう少し大きくしたのが2行あとの「可しん」。

 

2021年2月10日水曜日

豆本 金太郎山めぐり その12

P10

(読み)

▲お本き

 おおき


奈るこひ

なるこい


を多゛起●

をだ き


●とむる

 とむる


あるひ大

あるひおお


可ぜふきし[つぎへ]

かぜふきし


(大意)

大きな鯉

を抱き止めました。

ある日、大風が吹き


(補足)

 金太郎の描き方がちと乱暴です、スネや足は下書き以下。鯉を描いて疲れてしまったのか。糸のような紐のようなものをたぐってます。足元には紐を入れるザルがあります。

P10P11見開き

凧揚げでした。絵は稚拙とはいえ、遠近を考えた構図は手抜きがないようです。

 

2021年2月9日火曜日

豆本 金太郎山めぐり その11

P9

(読み)

[つゞき]

ま多

また


たき

たき


つ本゛尓

つぼ に


いりて

いりて


きん多らう▲

きんたろう


(大意)

また、滝壺に入って

金太郎は


(補足)

ここでも変体仮名「多」と平仮名「た」があります。

P8P9見開き

 五月の節句に鯉幟や鍾馗様や兜も良いですけど、この絵一枚額に入れるなり表装するなりして飾りたい。子どもが大きな鯉と一緒に元気に育ちそう。それにジジイには元気がもらえそう。

 大鯉の眼はパッチリ、金太郎を視野に入れながらも周囲に警戒怠らず、行くぞ金太郎しっかりつかまれっ!とはっぱをかけているみたい。

 

2021年2月8日月曜日

豆本 金太郎山めぐり その10

P8

(読み)

きん多らう

きんたろう


ハたゝひ

はただひ


とこ

とこ


ぶし○☓

ぶし


(大意)

金太郎は

たったの一撃で


(補足)

文章よりもなによりも絵がすごい。

P8P9見開きです。

 たくさんの豆本の中でも特筆に値する描写です。金太郎が主役のはずですが、どっこい、滝壺の主(あるじ)大きな鯉なのであります。金太郎の下半身は鯉の胴体と一体化して鯉にしがみつき一緒に遊んでいるよう。鯉全体を描くことはせず尾の部分はヒレを少し見せるにとどめています。その構図も勢いがいやまして推進力を感じさせます。真上からではなくいくらか手前に視点をもってきているところもかえってその不安定さが滝壺の中を泳ぎ回っているよう。うろこは金と朱でキラキラきらめくよう。胸ビレ背びれ尾びれも金と朱でまぶしい。頭の二つの丸い斑点がチャーミング。それにしても金太郎をのせ水をかき分け猛進する水流の描写もすごい。いやぁ素晴らしい!!

金太郎はすっかり引き立て役になってしまいました。


「たゝひとこぶし」、一読しても?。一拳(ひとこぶし)がわかって「た」のつぎが悩みますが「ゝ」とすれば意味が通じます。平仮名「た」も少しずつ多くなっているような気がします。この部分は前頁へ戻って続きます、(たったの一撃で猪を打ち殺してしまった)。「と」と「こ」は区別がつかないこともあるのですが、やはりちょっとにています。


 

2021年2月7日日曜日

豆本 金太郎山めぐり その9

P7

(読み)

[つゞき]

あ連

あれ


い多゛し

いだ し


けれバ

ければ


さるうさ起゛

さるうさぎ


奈どおそ連

などおそれ


尓げまどふを

にげまどうを


○☓尓うち

 にうち


ころせし

ころせし


とぞ[つぎへ]

とぞ


(大意)

(が)暴れまわったので

猿兎などは恐れ逃げまどい

ました。

○☓に打ち殺してしまった

とのことでした。

(補足)

変体仮名「連」(れ)が2ヶ所、平仮名の「れ」もあります。「おそ連」、「そ」の下がかすれて「ユ」にみえます。

合印◯☓は次頁からの続きです。

P6P7見開き

大イノシシの首から下も迫力満点、太くて荒い毛が鱗のようにも見えますがやはり獣の身体であります。見開きで見ると迫力倍増。猪のひずめの青が印象的です。猪と金太郎が動ならば左下の赤く紅葉したもみじは静。まわりにも散らばっています。

 

2021年2月6日土曜日

豆本 金太郎山めぐり その8

P6

(読み)

けりこのや満尓

けりこのやまに


としふ可く

としふかく


春む

すむ


いの志ゝ

いのしし


(大意)

(追い散らしま)した。この山に

長年住む猪(いのしし)


(補足)

 鬼退治の次は山の主のような大猪。金太郎に首根っこを押さえつけられて目をむいています。猪の荒く太い針のような毛並みがとてもリアルです。金太郎の後には黄色くなったもみじの葉があります。

「春む」、変体仮名「春」(す)は「十」+「て」or「す」+「て」のような形。

「いの志ゝ」、変体仮名「志」(し)、平仮名「し」との使い分けは気分次第の感じです。

 

2021年2月5日金曜日

豆本 金太郎山めぐり その7

P5

(読み)

[つゞき]

あま多の

あまたの


けものを

けものを


奈やませ

なやませ


志可バ△

しかば


△きん多らう

 きんたろう


たゞひとり

ただひとり


尓てさん\゛/尓

にてさんざ んに


おいちらし

おいちらし


(大意)

たくさんの獣(けもの)を苦しめたので

金太郎はただひとりで

ひどい目にあわせ追い散らしました。


(補足)

変体仮名「多」(た)が常用ですが平仮名「た」もあります。

「きん多らう」、ここの「ら」と「う」のようにはっきり見分けられればよいのですが、「おいちらし」の「ら」となると「う」にも見えます。まぁここは文章の流れで「ら」とすぐわかりますけど。

P4P5見開き

輪郭線がはっきりしています。佐藤新太郎の豆本は輪郭線が明瞭なのと、ササッとなぞった感じのがあります。お弟子さん達の癖で異なるのかもしれません。P4の根方の色は忘れてしまったよう。

逃げる化け物たちのの視線は全員金太郎に集中しています。金太郎の体からは覇気が発散、戦いの声がきこえてきそうです。

 

2021年2月4日木曜日

豆本 金太郎山めぐり その6

P4

(読み)

○●あるひ

 あるひ


や満をくへ

やまおくへ


さ満\/の

さまざまの


者゛けものいでて[つぎへ]

ば けものいでて


(大意)

ある日、山奥に

様々な化け物が出て


(補足)

 顔が紅潮するとはいいますが、全身マッカッカの金太郎、力士であります。

 

2021年2月3日水曜日

豆本 金太郎山めぐり その5

P3

(読み)

[つゞき]

けものを

けものを


あつめいろ\/

あつめいろいろ


のたハ

のたわ


む連を

むれを


奈して

なして


あそび

あそび


ける◯●

ける


(大意)

獣(けもの)を集め

いろいろな遊びをして

過ごしました。


(補足)

 怪力無双だけあってムキムキマッチョ怖いものなしの金太郎。

「たハむ連」、平仮名「た」は珍しく、ほとんどは変体仮名「多」(た)です。変体仮名「連」(れ)はよくでてきます。

P2P3見開き

 山の中のこんな場面をちょっとのぞいてみたい。

 

2021年2月2日火曜日

豆本 金太郎山めぐり その4

P2

(読み)

のこ尓きん多らうといふ●

のこにきんたろうという


●く王い

 かい


里起ぶ

りきぶ


そうの

そうの


こあり△

こあり


▽△あま多の[つぎへ]

  あまたの


(大意)

の子に金太郎という

怪力無双の子がいました。

たくさんの

(補足)

 文章を読む順序のために●、△などの印が文末に付いていますが頁をまたがることもあり、また[つぎへ][つゞき]となっているところもあります。記号は合印(あいじるし)などと呼ばれ、同じ記号の所へ続きます。

「のこ尓きん多らうといふ」「こあり」、に「こ」と「と」があります、似てるので注意です。2箇所に「う」がありますが最初のは「り」にもみえてしまいます。

「く王い里起」、一文字ずつ読めば「くわいりき」ですが現在では「かいりき」。「ぶそうの」、辞書で確かめたら「無双」(むそう)は(ぶそう)とも読むのでした。

平仮名「あ」はこの当時「お」から「丶」をとった形になります。

 狐の綱渡り、ぶんぶく茶釜でもたぬきがやっていました。傘に扇子は定番です。尻尾のフサフサ感がいいですね。

 

2021年2月1日月曜日

豆本 金太郎山めぐり その3

P1

(読み)

む可し

むかし


者こ

はこ


ねの

ねの


阿し

あし


加゛ら

がら


やま尓すむやまうバ

やまにすむやまうば


△つ禰尓

 つねに


や満を

やまを


可け

かけ


めぐりて▽△

めぐりて


(大意)

昔箱根の足柄山に住む山姥


つねに山をかけめぐりて


(補足)

 文章は頁をめくったP2とつながているので、上下で意味がちぐはぐになってます。

「者こ」の変体仮名「者」(は)が摺りがかけてしまってます。「十」+「て」のような形です。

「加゛ら」、変体仮名「可」ではなく「加」を使ってます。

「やま尓すむやまうバ」、「や満を可け」、「や」の形に注意。あとのは「ゆ」に似ています。また「う」と「可」にも注意、ほとんど同じで文章の流れから判断するのが一番です。

変体仮名「禰」(ね)、よく使われるのは「年」(ね)、他に「根」などがあります。上段では平仮名「ね」の「者こねの」です。また「ま」が上段では平仮名、下段では変体仮名「満」(ま)。

「やまうバ」とあるので、恐ろしい婆さんかとおもいきや、そんなことはありませんでした。おもちゃの魚が山の中なのに不思議です。全体に明るい色調です。

 

2021年1月31日日曜日

豆本 金太郎山めぐり その2

見返し

(読み)

金太郎山めぐり

きんたろうやまめぐり


國政ゑ加゛久

くにまさえがく


明治十九年十二月十四日内務省交付1943

東京図書館印 TOKIO LIBRARY


(大意)

(補足)

 犬猿の仲の赤と青の半被(はっぴ)羽織った2匹、どこか寂しそうだけど穏やかな様子。猿は桃の実を猫背にしてながめ、犬はボンヤリ下むいてます。豆本の見返しには気の利いたものが多いですがこれも飾りたくなる一枚。

國の中が龜や繩の画数の多い部分に似ていますけどわかりません。政は正と攵が左右ですがくずし字などでは上下に書いたものも多い。変体仮名「加」(か)。変体仮名「久」(く)。 

2021年1月30日土曜日

豆本 金太郎山めぐり その1

表紙

(読み)

金太郎山めぐり

きんたろうやまめぐり

(大意)

(補足)

 前回も「金太郎咄し」でしたが今回も金太郎シリーズです。佐藤新太郎はもうひとつ「金太郎一代記」も出版しています。これは次回の予定。この表紙の中では赤い目の真っ白な兎に目がゆきますが、わたしは大きな鉞(まさかり)の刃の色合いと赤い金の字のほうを見入ってしまいます。じっと見ていると刃の先の白いところが光っていそうな気がしてきます。金太郎は子どもの代表的な前髪パッツン一直線の坊ちゃん刈り(前髪の上は剃っています)、わたしも子どものときは同じでした(上は剃ってません)。