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2021年3月28日日曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その13

奥付

(読み)

明治十五年五月廿二日出版御届

東京府士族

編輯兼出版人 勝木吉勝(かつきよしかつ)

下谷區數寄屋町十五地

定價二銭

(大意)

(補足)

 縦の線がフラフラしてますけど活字を使っている。活字は宣教師が持ち込んだものや秀吉が朝鮮より持ち帰ったもの、またその後、家康が駿河版といわれた銅版活字などが有名だが、定着せず木版が全盛を誇った。しかし明治になり急速に普及し木版はすたれ現在に至る。勝木吉勝はいわばその進取の気風をしめしたかったか?でもこの豆本はお世辞にも出来が良いと言えないどころかむしろ悪い部類。それなのに定價二銭は他の豆本が壹銭五厘だから高い。

 

2021年3月27日土曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その12

P12

(読み)

だつ多ん

だったん


あめり可

あめりか


といろ\/の

といろいろの


嶋 へわ多り

しまへわたり


一 生  を

いっしょうを


春起し

すぎし


とぞ

とぞ


めで多し\/

めでたしめでたし


(大意)

韃靼(だったん)・アメリカといろいろな嶋へ渡り

一生を過ごしたとのことでした。

めでたしめでたし。


(補足)

 韃靼は普段耳にしませんが、現在では蕎麦屋に韃靼そばがメニューにあるくらいでしょうか。

「岩」に見える字は「嶋」としましたが、間違っているかもしれません。古文書では偏と旁の部品は左右に並びますが、それを上下に配置してあることがよくあります。

 朝比奈の表情はやはりひょうきんだし、左脚のスネの細さが操り人形のよう。ひざまずく「黒ん坊」は何かを懇願しているようですがさてはて?

 

2021年3月26日金曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その11

P10P11見開き

(読み)

たべもの

たべもの


やま起春ミ

やまきすみ


あるひハ

あるいは


人 をのせ多りして

ひとをのせたりして


く王つけいを

くわつけいを


多てるところ

たてるところ


奈り

なり


あさゐ奈ハ

あさいなは


それより

それより


くろん本゛う

くろんぼ う


のし満へ

のしまへ


由起それ

ゆきそれ


よりおろ

よりおろ


しや

しゃ


(大意)

食べ物や

薪(まき)炭(すみ)

あるいは

人を乗せたりして

家計をたてている。

朝比奈は

それより

黒ん坊の島へ行き

それからロシア


(補足)

出だしは平仮名「た」。「や」は現在の平仮名とほとんど同じですが書き順が「つ」のあとにそのまま左上にすすめてから反転して右下におろしています。

「く王つけいを」、悩むところですが旧仮名遣いと理解して「かけい」(家計)としました。

 朝比奈のやる気のない表情がおかしい。摺師も両足部分など色ののせかたも適当です。

 

2021年3月25日木曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その10

P10

(読み)

このく尓の人 ハ

このくにのひとは


ミ奈\/

みなみな


者ら尓▲

はらに


▲おゝ起奈

 おおきな


あ奈可゛あいて

あなが あいて


いてそのあ奈

いてそのあな


の奈可へ本゛うを

のなかへぼ うを


とをして日々の

とおしてひびの


(大意)

この国の人は

皆々腹に大きな穴があいていて

その穴の中へ棒を

通して日々の


(補足)

変体仮名「者」(は)は平仮名「む」の左半分を書いてあとは右下にダラリとたらす感じ。

「あ」は「お」の「丶」がない形。最初の縦棒が現在の「あ」はゆるく曲がりますが、当時のはまっすぐです。

変体仮名「本」(ほ)は漢字「不」の形。

 背景の白い部分は色の塗り忘れです。天秤棒にぶら下がっている腹穴あき人の顔がなんとも妙チクリン、見たこともない国の人の顔だからか。


 

2021年3月24日水曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その9


P9

P8P9見開き

(読み)

みるとこも

みるとこも


奈けれバ

なければ


春ぐ尓

すぐに


むこふの

むこうの


し満へわ多りて

しまへわたりて


このく尓をミる尓

このくにをみるに


(大意)

見るところもなかったので

すぐに向かいの島へ渡りました。

この国を訪れてみると


(補足)

最初の行「みるとこも」、最後の行「ミる尓」、平仮名「み」の使用頻度はは圧倒的に少ない、ほとんどは片仮名「ミ」。

平仮名「ふ」と変体仮名「尓」(に)は似てます。最後の行の「このく尓」の「尓」は英小文字筆記体の「y」にそっくり。

 全体の色調も色使いも明るくにぎやかです。主役は大小の太刀、見開きをバッテンにしていやはや立派なこと、朝比奈土俵入りの趣もあります。

 

2021年3月23日火曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その8

P8

(読み)

小人

こびと


じ満

じま



わ多り

わたり


この

この


く尓ハ

くには


国 も

くにも


ちいさく

ちいさく


人 もちい

ひともちい


さいくらい

さいくらい


多゛可ら

だ から


曽木とても

そぎとても


ちいさく

ちいさく


して

して


(大意)

小人(こびと)島に渡りました。

この国は国も小さく

人もちいさいくらいで

曽木でさえも小さかったので


(補足)

「小人じ満に」、平仮名「に」がでてきました。ふだんはほとんど変体仮名「尓」です。この3行あとにでてきます。

「曽木」ってなんでしょうか?読み方が違うか?

小人ふたりの服装はいたって質素単純です。


 

2021年3月22日月曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その7

P6P7見開き

(読み)

こく

こく


ふうを

ふうを


のこる可多

のこりかた


奈く

なく


へめぐりて

へめぐりて


こゝより

ここより


とをくも

とおくも


あらぬ

あらぬ


小びと

こびと


じ満へ

じまへ


由かん

ゆかん


と▼


▼びん

 びん


せん尓のり

ぜんにのり


可い志やう

かいしょう


つゝ可゛奈く

つつが なく


むこうの

むこうの


(大意)

とくにこれといった風俗習慣もなく

巡りました。

ここからそう遠くもない

小びと島へ行こうと

ちょうどそこに向かう船があり、それに乗って

海は荒れることなく

向こうの


(補足)

「こくふうをのこる可多奈く」、「こくふう」はお国ぶりと理解、「のこる可多奈く」は残っているところがないと理解、しましたがうーん・・・

その次の「へ」は何でしょう?不明です。

「便船」、ちょうど都合よく出る船。また、その船に乗ること。とありました。

「海象」(かいしょう)、海洋における自然現象の総称。

現在では使われない言葉がたくさんでてきてますが、はてさて正しい解釈かわかりません。当時でも、もっと低年齢の子ども向けに簡単な表現があったのではないかとおもうのですけど。

脚長島も手長島も、テナガザルが住んでる島と考えれば実際にありそうです。全頁で朝比奈は左手に白い食べ物を与えてましたが、この頁では左手に愛用の螺旋煙管、右手に煙草道具一式を持っています。

 

2021年3月21日日曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その6

P4P5見開き

(読み)

アゝナカ

ああなか


\/

なか


タベラレ

たべられ


ナイ

ない


\/

たべられない


あし

あし


奈可゛じ満へ

なが じまへ


わ多りいろ\/

わたりいろいろ


志゛由ん

じ ゅん


れ起を奈し▼

れきをなし


▼それより

 それより


て奈可゛

てなが


じ満へ

じまへ


由起て

ゆきて


(大意)

あぁなかなか食べられない


脚長(あしなが)島へ渡り

いろいろ巡歴しました。

それより、手長(てなが)島へ行って

(補足)

変体仮名「満」(ま)が◯に☓で記号のようです。

この頁の画は脚長島で次の頁が手長島となります。銭湯の壁絵にしてもよさそうな一場面です。

朝比奈の出自を1頁で和田義秀で勇猛果敢をにおわせましたが、どうも出てくる場面場面ではどこか茫洋としてのほほんとした感じ。

 

2021年3月20日土曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その5

P3

P2P3見開き

(読み)

おち由起

おちゆき


春ぐ尓

すぐに


こうらい国 へ

こうらいこくへ


わ多り

わたり


それより

それより


志満

しま


\゛/ヲ

じ まを


めぐらん

めぐらん


とてまづ

とてまず


女 尓んじ満へ■

にょにんじまへ


■わ多り

わたり


それより

それより


ミ奈ミの

みなみの


方 尓ある

ほうにある


(大意)

逃げ落ちました。

すぐに高麗国へ渡り、

それより島々を巡ろうと

まず、女人島へ渡り

それより南の方にある


(補足)

「わ」は変体仮名「王」が多く使われますが、ここではすべて「わ」。

「ミ奈ミの」、平仮名「み」はあまり使われず、ほとんどカタカナ「ミ」。

「方尓ある」、「方」の読みを「ほう」としましたが、さて・・・

 朝比奈が女人島で女性にもてまくっていて、イヤぁどうもどうも、とてれているの画。この当時もてれると自分の頭をトントンとたたく仕草は同じでだった様子です。

女性は唐風で、外国といえばやはり中国だったからでしょう。脚に包帯みたいにグルグル巻にしてゲートルではないでしょうけど、全体の印象はモンゴルチベット風です。

 

2021年3月19日金曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その4

P2

(読み)

あさひ奈

あさひな


三郎よし秀ハ

さぶろうよしひでは


建保元酉年の

けんぽう元(癸)酉年の


いくさ

いくさ


やぶれて

やぶれて


あハの

あわの


国まで

くにまで


(大意)

朝比奈三郎義秀は建保元癸酉(みずのととり)年の

戦に敗れて安房の国まで


(補足)

「ひ」と「い」がまぎらわしい。よく間違えます。

「よし秀」の上が不鮮明でわかりません。なんとなく文字の輪郭が「三郎」にみえますけど。

建保元年に朝比奈義秀は安房に敗走してますので、その年の干支を調べると癸酉です。建保のあとの三文字がそれらしく見えますがよくわかりません。

「国」のくずし字がこの形であることはわかりますが、どうしてこんな形になるのか見るたびに不思議です。

 

2021年3月18日木曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その3

P1

(読み)

人 皇 八 十  四 代

じんのうはちじゅうよんだい


順  徳 院 の

じゅんとくいんの


??

??


和田左ヱ門

わださえもん


よしもりの

よしもりの


三 奈ん

さんなん


(大意)

人皇84代順徳院の??和田左ヱ門義盛の三男

(補足)

「人皇」(じんこう、じんのう、にんのう)。神武天皇を初代としてそれ以降の天皇のこと。それ以前の神代(じんだい)に対していう。母はよく「神武(じんむ)綏靖(すいぜい)安寧(あんねい)懿徳(いとく)孝昭(こうしょう)孝安(こうあん)孝霊(こうれい)孝元(こうげん)・・・」とお経を読むように暗証しているのを聞かされました。母の世代では小学校で記憶させられたのです。

??のところは「御宮」に見えますが、わかりません。

 四斗樽でしょうか、赤いラベルに和田とあり、樽には朝比奈。腰掛けているのが朝比奈でしょうけど、なんとなくドッシリ感がありません。左の袖口あたりの色柄がきれい。右手には螺旋形の煙管、首周りには半紙を折り紙にして襟飾り。表情はどこかさえません。

 

2021年3月17日水曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その2

見返し

(読み)

朝 比奈

あさひな


しま


免ぐり

めぐり


(大意)

(補足)

 豆本を読むうちに、すっかり見返しファンになってしまいました。見返しのない豆本はそれだけでがっかりです。見返しだけ集めて一冊にしたいくらい。

この見返しも単純そのもの、煙管と煙草入れ。なんの変哲も無いところが見ていて飽きません。

「比」はほとんど平仮名「ひ」。 

2021年3月16日火曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その1

表紙

(読み)

朝 日奈嶋 逥 り

あさひなしまめぐり

(大意)

(補足)

 明治十五年五月廿二日出版御届で編輯兼出版人勝木吉勝の豆本。お値段は少々お高く二銭。

着物の家紋は丸に三つ引き両紋、他の豆本の朝比奈でも同様でした。頭の後ろの白い紙を折ったものはなんでしょうか。右手に持つ螺旋の品物はパイプのように見えます。背景の赤に小さなたくさんの白い丸は絞り柄みたいです。手前では島巡り先で出会ったのか異国人が笑っています。

綴じ糸の紙こよりは綴じ直したので新品同然。