2022年2月28日月曜日

桃山人夜話巻五 その23

P14前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  丗    九風 の神

多゛以さん志゛うく可ぜ 可ミ

だ いさんじゅうくかぜのかみ


天 地の間  の氣越風 と云 万  物 の滞   り越う奈可゛須自

てんち 阿い多゛き ふう いふ者゛んもつ とゞこを       し

てんちのあいだのきをふうというば んもつのとどこおりをうなが すし


然 の道具 尓し天奈く天叶 ハざる毛の也 俗  尓風 の神

ぜん どうぐ      可奈       曽゛く 可ぜ 可ミ

ぜんのどうぐにしてなくてかなわざるものなりぞ くにかぜのかみ


登云 ハ邪 氣也 邪 氣ハ毛のゝ春き間越う可ゞひ天

 いふ じやき  じやき      ま

というはじゃきなりじゃきはもののすきまをうかがいて


(大意)

第三十九風の神

天地の間の気を風という。万物の様々なさしさわりを促す自

然の道具であって、なくてはならないものである。俗に「風の神」

というのは邪気のことである。邪気はものの隙間をねらって


(補足)

「毛の」という表現のときは「も」の変体仮名はこの形になります。

「云ハ」(いふは)、「ふ」が「へ」にみえてしまい(いえば)と読んでしまいました。

「春き間越う可ゞひ天」、すぐ左側の行と比べると同じになってます。

 

2022年2月27日日曜日

桃山人夜話巻五 その22

P13後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

奈し是 与り志天無事奈ること越つゝ可゛奈しと

  これ    ぶじ

なしこれよりしてぶじなることをつつが なしと


ハ言 个るそ楚゛阿る説 尓ハ悪しきこと奈しと云 義

 いひ       せつ  阿       いふぎ

はいいけるとぞ あるせつにはあしきことなしというぎ


を書 多可゛へ天恙   と云 始 多りと有 何 連可然 るや

 可き     つゝ可゛ いひ曽め   阿りいづ  し可

をかきたが えてつつが といいそめたりとありいずれかしかるや


(大意)

(その心配は)なくなった。このときより無事であることを「つつがなし」と

云うようになったという。ある説では悪いということがない意味

を書き間違えて「つつが」と言い始めたとある。いずれが正しいのであろうか。


(補足)

「無事」、「事」は異体字「古」+「又」。

合字の「こと」が何箇所かあります。

 現代でも「つつがなくお過ごしください」のように、日常的に使われている言葉です。意味も昔と同じです。ふるいふるい言葉なのでした。

 

2022年2月26日土曜日

桃山人夜話巻五 その21

P13前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  丗    八 恙   虫

多゛以さん志゛う者ちつゝ可゛むし

だ いさんじゅうはちつつが むし


斉 明 天 皇 の御 時 石 見八上  の山 奥 尓徒ゝ可゛といへる

さ以め以てん王う 於んときい王ミや可゛ミ や満をく

さいめんてんのうのおんときいわみやが みのやまおくにつつが といえる


むし有 天夜ハ人 家尓入 天人 の禰むりをう可ゞひ生

  阿り よ じん可 いり ひと         せい

むしありてよはじんかにいりてひとのねむりをうかがいせい


血 越春ひ天殺 さるゝ毛の多 し博 士某 尓仰  附 ら

个つ    ころ     於本 者可せ曽れ あふせつけ

けつをすいてころさるるものおおしはかせそれにおうせつけら


連此 虫 越封 じさせ給 ひし与り民 間 尓其 愁

 このむし ふう   多満    ミん可ん 曽のうれい

れこのむしをふうじさせたまいしよりみんかんにそのうれい


(大意)

第三十八恙虫

斉明天皇の御時、石見八上の山奥に「つつが」という

虫がいた。夜になると人家に入り、人の眠りをうかがい

生き血を吸われて殺されるものが多かった。(天皇が)某博士に

仰せ付けられて、この虫を退治させなされてから、世間ではその心配は

(なくなった。)


(補足)

斉明天皇在位は655〜661年なのでとても古い、神話とでも呼べるようなお話。

「徒ゝ可゛」、変体仮名「徒」(つ)は変体仮名「津」(つ)とまぎらわしい。

「禰むりを」、変体仮名「袮or禰」(ね)は判別しやすい。「を」は「と」ではありません。

「殺さるゝ」、ここの「る」は変体仮名「留」(る)ではなく平仮名。

「博士某」、「それ、その」は「其」(左下にあります)、「なにがし、ぼう」は「某」。似ているので振り仮名を間違えたのかも。

「仰附ら連」、変体仮名「連」(れ)の形がちょっと違って見えますけど「れ」。「仰」のくずし字は旁のふたつの部品が上下になる形が多い。

「給ひし」、「給」の「合」のくずし字が「谷」のくずし字に見えます。

 

2022年2月25日金曜日

桃山人夜話巻五 その20

P12 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

風 能神

可ぜ 可ミ

かぜのかみ


風 尓のりて所  〃  を阿りき

可ぜ    ところ\゛/

かぜにのりてところどころをありき


人 を見れ者゛口 より黄奈る

ひと     くち  き

ひとをみれば くちよりきなる


可ぜを吹 可くる其 可せ尓

   ふき   その

かぜをふきかくるそのかぜに


阿多れ者゛可奈ら須゛疫 傷

          ゑきしやう

あたれば かならず えいしょう


寒 を王づらふ事

可ん     こと

かんをわずらうこと


とぞ

とぞ


(大意)

風の神

風にのってさまざまな所を歩き

人を見かけると口から黄色い

風を吹きかける。その風に

あたると必ず、流行病や怪我をしたり

熱が出たりするという。


(補足)

 摺りと綴じの都合で「恙虫」と「風の神」の画が先になります。

変体仮名「能」(の)、はじめてだと読めませんが、二度目からは読める変体仮名です。

「其可せ尓」、変体仮名「尓」(に)としましたが「耳」かもしれません。

 別の本の色刷りの画では吹く風の色は薄桃色で悪さをする風には見えません。

 

2022年2月24日木曜日

桃山人夜話巻五 その19

P11 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

恙  無し

つゝ可

つつがなし


む可しつゝ可゛虫 と

       むし

むかしつつが むしと


いふむし出 天人 を

    いで

いうむしいでてひとを


さし殺 し个るとぞ

  ころ

さしころしけるとぞ


され者゛今 の世尓毛

    いま よ

されば いまのよにも


佐ハり奈き事 をつゝ可゛

さはりなきことをつつが


奈しといへり下学  集

      可可゛くし う

なしといえりかが くしゅう


那ど尓毛見由

などにもみゆ


(大意)

つつがむし

昔、つつが虫という虫が出て人を

刺し殺したという。

そのため、今の世でも

さわりのないことを「つつがなし」と言う

のである。

「下学集」などにも見られる(言葉である)。


(補足)

「佐ハり」、変体仮名「佐」(さ)がすぐにはわかりませんでした。まだまだ初心者です。

 人面ムカデみたいで不気味。頭には牙、尾にはさすまたのような針。大きさが不明だけどこんなの目の前に出てきたら逃げるけど、相手は俊敏であっという間に刺殺されそう。出会わないことを祈るのみ。

 

2022年2月23日水曜日

桃山人夜話巻五 その18

P10後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

与き商 人 とも奈りぬべし今 や世間 尓も

  阿きうど       いま せ个ん

よきあきうどともなりぬべしいまやせけんにも


山 男  多 く阿連ども一 足 飛 尓ど可儲  せん

や満をとこ於本     いつそくとび   もうけ

やまおとこおおくあれどもいっそくとびにどかもうけせん


こと能ミを者可里天長  範 可゛当 呑 いま多゛

         てう 者ん  阿てのミ

ことのみをはかりてちょうはんが あてのみいまだ


手尓も入らざる先 尓奢 る可゛故 尓世尓出 る事 奈し

て  い   さき 於ご   ゆへ よ いづ こと

てにもいらざるさきにおごるが ゆえによにいずることなし


(大意)

よい商人にもなることができたかもしれない。今や世間にも

山男のような者は多くいるが、一足飛びに大儲けする

ことだけを考えて「長範が当て呑み」のように、まだお金を

手にする前に贅沢をするから、世に出ることがないのである。


(補足)

「ど可儲」、雪国では「どか雪」として使われますが、こんな使い方もあるのかと。

「長範が当て呑み」、捕らぬ狸の皮算用と同じ。恥ずかしながら初めて知りました。

 「山男」の話から、なんとも儒教的な説教臭い結末になってしまいました。巻一の序で述べた「ハチャメチャな物語をお見せしよう」の心意気はどこにいってしまったのでしょう。ちょっと残念。

 

2022年2月22日火曜日

桃山人夜話巻五 その17

P10前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

男  ハ春こしハ学  才 も阿里天詩奈ど越も作

をとこ     可゛くさ以    し    つく

おとこはすこしはが くさいもありてしなどをもつく


るとミえ多り秋 葉能奥 の山 男  ハ文 盲 尓

      阿き者 をく や満をとこ もんもう

るとみえたりあきばのおくのやまおとこはもんもうに


し天只 酒 者゛可り呑 ゐる登志らる文 盲 尓

  多ゞさけ    のミ      もんもう

してたださけば かりのみいるとしらるもんもうに


し天酒 者゛可里呑 ぶらつき天居ん与り者

  さけ    のミ     ゐ

してさけば かりのみぶらつきていんよりは


本曽もと帝゛尓天も地ミち尓可せぎ多らん尓ハ

         ぢ

ほそもとで にてもじみちにかせぎたらんには


(大意)

(山)男は少しは学才もあって詩なども作る

とみえる。(遠州)秋葉の山奥の山男は文盲で

ただ酒ばかり呑んでいると知られている。読み書き

ができず酒ばかり呑みブラブラしているよりは

元手が少なくとも地道に稼いでいれば


(補足)

「文盲尓し天只酒者゛可り呑」、「文盲尓し天酒者゛可里呑」、「只」が一字異なるだけで同じ文言を繰り返すのは珍しい。

「本曽もと帝゛」、そのまま辞書で調べたらありませんでした。何度か繰り返し読むと、細い元手なら文意が通じると理解。

 山男(たち)に酒ばかり呑んでないで地道にやれよと説教をたれているのがちょっとおかしい。山男にそんなこと言ったって無理ってエもんだ、って読者がおもうなんて考えてなさそうです。

 

2022年2月21日月曜日

桃山人夜話巻五 その16

P9後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

登阿るハ則   山 男  のこと奈り木 客 可゛詩尓酒

    春奈ハちや満をとこ     もく可く  し さけ

とあるはすなわちやまおとこのことなりぼっかくが しにさけ


尽 天君 沽ふこと莫 連壷  傾   天我 当 尓

つき きミ可   奈可 つ本゛可多むき 王れまさ

つきてきみかうことなかれつぼ かたむきてわれまさに


開 く遍゛し城  市囂 塵 多 し山 尓還  天

ひら    ぜう し个うぢん於本 や満 可へつ

ひらくべ しじょうしごうじんおおしやまにかえって


明 月  を弄    んと有 さ春れ者゛毛路こしの山

め以个゛つ も天阿曽バ              や満

めいげ つをもてあそばんとありさすれば もろこしのやま


(大意)

とあるのは、すなわち山男のことである。木客の詩に

「酒が尽きても、君、買うことなかれ。壺が空になったら、わたしはそのときに

かえるだろうよ。城下はごみごみして騒々しいことはなはだしい。山へ帰って

名月をめでよう」とある。なるほど唐土の山(男は)


(補足)

「尽天」、「尽」のくずし字も、すぐ左側にある「開」と同じように、中の部品「〃」や「开」が下部にきてます。

「囂」(ごう)、「口」4つに「頁」。辞書には「かまびすしい。さわがしい。「囂囂」「囂然」「喧囂(けんごう)」「喧喧(けんけん)囂囂」」とありました。

「明」、「有」、ともに「月」部分のくずし字は同じ形で頻繁に出てきます。「明月」の「月」のみではくずさずにほぼそのまま。

「毛路こし」、「路」の「各」のくずし字が「木客」の「客」の部品のくずし字とにています。

 

2022年2月20日日曜日

桃山人夜話巻五 その15

P9前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ごとく尓うせ多り又 蔵 ハうれしさ能余 り是 尓謝

                             あま これ しや

ごとくにうせたりまたぞうはうれしさのあまりこれにしゃ


せんとさゝえ尓酒 を入れ天かの谷 尓い多る尓山

       さけ い    多尓     や春

せんとささえにさけをいれてかのたににいたるにやま


男  二 人迄 出天是 越のミ大 い尓悦   天去 しと

おとこふ多り    これ   於本  よろこび さり

おとこふたりまででてこれをのみおおいによろこびてさりしと


楚゛此 事 古老 のいひ伝 へ天今 尓彼 の地尓天

      こらう   つ多  いま 可の ち

ぞ このこところうのいいつたえていまにかののちにて


ハ志る人 多 し合  壁 故事といへる書 尓木 客

   ひと於本 可゛うへきこじ    しよ もく可く

はしるひとおおしが うへきこじといえるしょにぼっかく


(大意)

ようにいなくなってしまった。又蔵はうれしさのあまり、このことの礼を

しようと、竹筒に酒を入れてあの谷へ行ってみると

山男が二人もあらわれて、これを呑み大変に悦んで去っていった

という。この話は古老が言い伝えて今も彼の地で

は知っている人も多い。「合壁故事(ごうへきこじ)」という書に「木客(墨客(ぼっかく))」


(補足)

「うれしさ能」、変体仮名「能」(の)のかたちは、「能わず」(あたわず)として使われるときのくずし字とはことなっています。

「さゝえ」は竹筒のこと。

「かの谷尓」、平仮名の「か」が堂々としてみえます。

「二人迄」、「迄」が変体仮名に見えますが、「迄」のくずし字。

「此事」、ここの「事」は「古」+「又」の異体字になっています。

「木客」は辞書になく、「墨客」(ぼっかく)のこと。

 

2022年2月19日土曜日

桃山人夜話巻五 その14

P8後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

根尓天足 越い多免阿由むこと能 ハ春゛し天多尓

禰  あし         阿多

ねにてあしをいためあゆむことあたわず してたに


の底 尓居多りし可゛山 男  いづことも奈く出 来 り天

 曽こ ゐ     や満をとこ       いでき多

のそこにいたりしが やまおとこいずくとのなくいできたりて


又 蔵 を負ひ屏  風を多天多る可゛如 き所  越や春

ま多ざう を びやうぶ       ごと ところ

またぞうをおいびょうぶをててたるが ごときところをやす


\/と登  り天医師可゛門 口 迄 い多りて可きけ春可゛

   の本゛  ゐし  可どぐちまで

やすとのぼ りていしが かどぐちまでいたりてかきけすが


(大意)

根で足を痛めてしまい、歩くことができなくなってしまった。谷

の底に居たのだが、山男がどこからともなくやって来て

又蔵を背負い、屏風を立てたような崖をやす

やすと登り、医者の門の前まで運んでくれ、それからかき消す


(補足)

「阿由むこと」、「こと」は合字。このあとにも何箇所か出てきます。振り仮名にもあります。

「登り天」(のぼりて)、この「登」は漢字のくずし字。3行目行頭の「登」は変体仮名「登」(と)で、このふたつはきちんと区別されているようです。

「可きけ春」、変体仮名「可」(か)はいつもながら、「う」にそっくりです。「き」は「さ」とまちがえそう。

 

2022年2月18日金曜日

桃山人夜話巻五 その13

P8前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

登至  天者やし始  も志ら須゛終  も志ら須゛せ以の高

 い多つ    者じめ     をハり        多可

といたってはやしはじめもしらず おわりもしらず せいのたか


さ六 尺  与りひくきハ奈し山 氣の化し天人 の形

 ろくしやく        さんき け  ひと 可多ち

さろくしゃくよりひくきはなしさんきのけしてひとのかたち


登奈り多る奈りと云 説 有 昔  同 国 志らくら村 と

        いふせつありむ可しどうこく    むら

となりたるなりというせつありむかしどうこくしらくらむらと


いふ所  尓又 蔵 と云 毛のあり病  人 有 天医越

  ところ ま多ざう いふ    べ う尓んあり ゐ

いうところにまたぞうというものありびょうにんありていを


呼 尓行 と天谷 尓ふミ者づし天落 入 个る可゛樹の

よび ゆく  多尓       於ちいり    き

よびにゆくとてたににふみはずしておちいりけるが きの


(大意)

極めてはやい。生まれや育ちは不明で死んだ姿を見たものもいない。背丈は

六尺より低いものはいない。山の気が変怪(へんげ)して人の形に

なったという説がある。昔、同じ国(遠州)の白倉村と

いうところに又蔵というものがいた。病人があり医者を

呼びにゆこうとして谷に足を踏み外して落ちてしまったが、樹の


(補足)

「者やし」、「や」が平べったい「ゆ」のようにみえます。「ゆ」は六行目中程「阿由む」にあり、変体仮名「由」(ゆ)。

「始も志ら須゛終も志ら須゛」、変体仮名「須」(す)の形を二つ目は変えています。

「志らくら村」、「ら」が「ろ」にもみえます。

「ふミ者づし天」、変体仮名「者」(は)がわかりずらい。

 

2022年2月17日木曜日

桃山人夜話巻五 その12

P7後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

奈し賃 銭 を与 ふ連どもとら須゛只 さけ越このミ

  ちんせん 阿多        多ゞ

なしちんせんをあたうれどもとらず たださけをこのみ


天与 ふ連バ悦  びツゝ呑めり毛のごし更 尓王可ら

 あと   よろこ   の      さら

てあたうればよろこびつつのめりものごしさらにわから


左゛れハ唖 尓をしふるごとく春る尓其 さとり得るこ

    をし           曽の   う

ざ ればおしにおしうるごとくするにそのさとりうるこ


(大意)

(里に知っているものは)いなかった。(お礼に)金銭を与えようとしても受け取らず、

酒だけは好きで、与えれば喜んで飲んだ。意思の疎通がうまくいかない

ときは、唖に身振り手振りで教えるようにすると、それを理解することは


(補足)

「悦びツゝ」、「ツゝ」が変体仮名「天」ではないし、悩みました。

「王可ら左゛れハ」、小さい三文字「王可ら」はなんとか読めます。変体仮名「左」(さ)が久しぶりで調べてから、あっそうだったと納得。

 どこかでネットだったか本だったかで、大きな熊が軍隊で兵隊さんと一緒に材木や重たいものを運び、ご褒美がビールだったという話を読んだことがありました。賢い熊で兵隊さんが話す簡単な言葉を理解でき、やや込み入ったことはこうやるんだと実際に兵隊さんがやって示すとすぐに理解して同じことができたそうです。

 

2022年2月16日水曜日

桃山人夜話巻五 その11

P7前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  丗    七 山 男

多゛以さん志゛うしちや満をとこ

だ いさんじゅうしちやまおとこ


遠 州  秋 葉の山 奥 奈ど尓ハ山 男  といふ毛の阿り天

ゑんし う阿き者 や満をく    や満をとこ

えんしゅうあきばのやまおくなどにはやまおとこというものありて


折 ふし出 ること有 杣 山 賤  の重 荷越負ひ多すけ

をり  いづ   阿り曽まや満可゛つ 於も尓 を

おりふしいずることありそまうあまがつのおもにをおいたすけ


天里 近 く迄 来 りてハ山 中  尓戻 れり家 も奈く

 さとぢ可 までき多   さんち う もど  いゑ

てさとぢかくまできたりてはさんちゅうにもどれりいえもなく


従  類 个ん曽゛くも奈く常 尓住 ふ所  さと尓志る者

志゛うる以        つ年 春満 ところ     もの

じゅうるいけんぞ くもなくつねにすまうところさとにしるもの


(大意)

第三十七山男

遠州秋葉の山奥などには山男というものが住んでいて

ときどき出てくることがある。木こりや猟師の重い荷物を背負って助け

て里近くまで運んできて、また山中に戻ってゆく。家もなく

従者や身内もなく、普段住んでいるところを里に知っているものは

(いなかった)


(補足)

画では「山おの古」でしたが、題名では「や満をとこ」。

「遠州」、ここの「州」のくずし字は「品」の「口」部分が「刀」になったものを、下の部分をちょっとくずした形。「州」は筆順通り左から短い点と長い縦棒がひとつの部品でそれが3つあります。そのひとつのセットは「刀」に似てます。「刀」を横に3つ並べては場所をとりますから、残り2つは下に並べて、このような形になったのではと推理しました。くずし字では偏と旁の位置を変えたりするのはよくあることです。

「里近く迄」、「近」のくずし字は「を」のなりそこないのようなかたち。

「従類」(じゅうるい)、辞書にはありませんでした。従う仲間なので従者。

「常」のくずし字は特徴的。「道」のくずし字ににています。

 

2022年2月15日火曜日

桃山人夜話巻五 その10

P6 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

山 おの古

やま

やまおのこ


深山  尓ハまゝ有 者 也 背の高 さ二丈  斗 り尓天其 形

しんざん      もの  せ 多可          その可多ち

しんざんにはままあるものなりせのたかさにじょうあまりにてそのかたち


鬼 のごとく山 賤  奈ど是 に逢 て逃 連バあやまち阿り

お尓    やま可゛つ  これ あひ 尓ぐ

おにもごとくやまが つなどこれにあいてにぐればあやまちあり


頼 む時 ハ柴  を負 て麓

多の とき し者゛ おひ ふもと

たのむときはしば をおいてふもと


までおく連りこれ

までおくれりこれ


其 力  ぢまん

そのち可ら

そのちかたじまん


と楚゛

とぞ


(大意)

山男(やまおのこ)

深い山奥にはときおり住んでいるものである。背の高さは二丈ほど(約6m)あり、その風体は

鬼のようである。猟師やきこりなどがこれに出会って逃げると怪我をおうこともある。

頼めば柴を背負って麓(ふもと)

まで送ってくれる。これは

その力自慢をみせたいから

といわれている。


(補足)

「鬼のごとく」、「ごと」は合字に濁点がついたもの。

「山賤」(やまがつ)、「山賊」と間違えそうですがそうではなく木こりや山の猟師のこと。今では使われなくなりました。

 小豆洗いでもそうでしたが、ここでも手指は3本、足指は2本とどうも5本にはしたくないようです。

鬼のパンツならぬ山男パンツがでかそうで前垂れ部分は青い布のようで豪華パンツです。

さて、どんな話なのか楽しみです。

 

2022年2月14日月曜日

桃山人夜話巻五 その9

P5 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

小豆 あらひ

あづき

あずきあらい


山 寺 の小僧 谷 川  尓行 て

やまでら こぞう多に可゛王 由き  

やまでらのこぞうたにが わにゆきて


あづきを洗 ひ居多り

    あら ゐ

あずきをあらいいたり


しを同 宿  の坊  主

  どうじ由く 本゛うず

しをどうじゅくのぼ うず


意趣 あり天

いし由

いしゅありて


谷 川  へつ起

多に可゛者

たにが わへつき


落 しける可゛

をと

おとしけるが


岩 尓う多れて

い王

いわにうたれて


死したりそれより

ししたりそれより


して彼 小僧 の霊

  可のこぞう れい

してかのこぞうのれい


魂 於り\/出て小豆 を

こん      あづき

こんおりおりでてあずきを


あら飛泣 川笑 ひつ

   奈き 王ら

あらいなきつわらいつ


奈須事 に奈ん阿り

なすことになんあり



(大意)

小豆洗い

山寺の小僧が谷川へ行って

あずきを洗っていた

ところを同じ寺に住む坊主

が、かねてより恨んでいたので

谷川へ突き落としてしまった。

小僧は岩にあたって死んでしまった。それより

かの小僧の霊魂が

ときどきあらわれ、小豆を

洗う様子は泣いたり笑ったり

しながらしているということであった。


(補足)

 この原本はやや鮮明さにかけているので、他の色刷りの鮮明な文献を確かめながら読みました。

「谷川尓行て」、「谷川へつ起」、「谷川」の振り仮名が「多に可゛王」と「多に可゛者」になっています。よく使われる「尓」を平仮名「に」にしたり、変体仮名「王」、変体仮名「者」をつかったりと見た目を変える工夫が随所にみられます。

「落しける可゛」、変体仮名ではなく平仮名「ける」。

「死したりそれより」、すべて平仮名です。

「霊」の異体字「ヨ」+「大」。異の異体字は「己」+「大」。

「あら飛泣川笑ひつ」、変体仮名「飛」と平仮名「ひ」、変体仮名「川」と平仮名「つ」と変化させています。

 小僧の手足の指をみると偶蹄類のように割れています。これでは小豆が洗いにくのではないかと心配、また小川の流れもはやく脇に置いてある柄杓のようなもので汲み取ったとしても、流されてしまうのではないかとこれまたいらぬ心配・・・瞳孔が見開かれ小豆を洗うこと精魂傾けてる様子、やはりチト怖い。

 

2022年2月13日日曜日

桃山人夜話巻五 その8

P4後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

今 ハ阿づき小僧 の奈のミ残 り天阿やしきことハ

いま    こ曽う 奈  のこ

いまはあずきこぞうのなのみのこりてあやしきことは


絶 尓个り去 バ恐 ろしきこと越円 海 坊  といひ天

多ゑ   され 於曽      ゑん可い本゛う

たえにけりさればおそろしきことをえんかいぼ うといいて


ひと越於ど須尓阿づき洗  可゛出多りといふも越 後

          あらひ  で      ゑちご

ひとをおどすにあずきあらいが でたりというもえちご


乃国 尓限 りし事 と楚゛彼 地の人 の語  侍 り幾

 く尓 可ぎ  こと   可のち ひと 可多り者べ

のくににかぎりしこととぞ かのちのひとのかたりはべりき


(大意)

今は小豆小僧の名前だけが残り、怪しいことは

絶えてしまったようだ。だから恐ろしいことを「円海坊」と言い、

人を脅すとき「小豆洗いが出だぞ」と言うのも、越後

の国に限ったことであると、彼の地の人たちに語り伝えられていることである。


(補足)

「今」は古文書などでは「彡」+「ヽ」のようなかたち。

「阿やしきこと」、「ゆ」に見えるのは「や」です。「ゆ」は変体仮名「由」の縦棒がゆらぎます。

「いひ天」、「い」と「ひ」はまぎらわしいですが、こうしてふたつ並ぶとやはりことなります。

「ひと越於ど須尓」、二文字目「と」が形になってません。次の「ど」はたしかに「と」の形。

「語侍り幾」、振り仮名「可多り」の「多」がわかりずらい。変体仮名「幾」(き)は久しぶりに出てきました。

 小豆洗いは全国定番の妖怪。妖怪漫画ではたいてい出てきます。それくら小豆が食されていたということであります。どこの家からも井戸や河原でショキショキ、シャキシャキ洗う音がきこえてきたのです。その音にひかれて子どもがよってくると・・・


 

2022年2月12日土曜日

桃山人夜話巻五 その7

P4前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ハ止 多り依 天住  職  春る者 久 しく多え天寺 ハ

 やミ  よつ じ うしよく  ものひさ     てら

はやみたりよってじゅうしょくするものひさしくたえててらは


遂 尓元  禄 二年 尓焼  失 し天跡 奈しといへり是 則

つい 个゛んろく    せ うしつ  阿と      これ春奈ハち

ついにげ んろくにねんにしょうしつしてあとなしといえりこれすなわち


童 謡 尓いふ赤小豆洗 ひの小僧  奈り焼  亡 の後

どうやう   あづき阿ら  こ曽゛う  せ うしつ のち

どうようにいうあずきあらいのこぞ うなりしょうしつののち


尓もさ満\゛/の怪異阿り个連バ土民 つとびて寺

        けゐ     どミん    てら

にもさまざ まのけいありければどみんつどひててら


乃跡 尓卒都婆越多天死霊  越弔  ひ个る尓曽゛

 阿と そとハ   し里やう とむら

のあとにそとばをたてしりょうをとむらいけるにぞ


(大意)

(音がして)は止む(ということが続いた)。そのため住職をするものが久しく絶えて寺は

ついに元禄二年に焼失して跡形もなくなってしまったという。これがつまり

童謡にある「小豆洗いの小僧」である。焼失したあと

にも様々な怪異があったので、土地のものたちは寄り集まって寺

の跡に卒塔婆を建てて死霊を弔ったとのことである。


(補足)

「是則」、「春奈ハち」は「即」ではなく「則」のほう。

「怪異」、ここの「異」は異体字で「己」+「大」。古文書で「異国船」の「異」はほとんどがこれです。

「つとびて」、「゛」が「ひ」のほうについてしまいました。

童謡で「小豆洗いの小僧」があるかとネットで検索しましたがヒットしませんでした。どんな歌詞なのか興味のあるところです。

 

2022年2月11日金曜日

桃山人夜話巻五 その6

P3後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

官  是 越聞 円 海 越とらへ天詮 議尓及  个る尓者

く王んこれ きゝ         せんぎ および

か んこれをききえんかいをとらえてせんぎにおよびけるには


多し天違 ふ所  奈く土 の松 原 と云 所  へ引 出 し

   多可゛ところ  つち まつバら いふところ ひきい多゛

たしてたがうところなくつちのまつばらというところへひきいだし


天死罪 尓行  ハ連个る尓其 夜与りし天円 海 可゛

 しざ以 於こ奈     その与    ゑん可以

てしざいにおこなわれけるにそのよよりしてえんかいが


霊 小僧  と共 尓井戸端  尓夜春可゛ら争  ひ深

連以こ曽゛う とも ゐど者゛多 与    阿ら曽 志ん

れいこぞ うとともにいどば たによすが らあらそいしん


更 尓い多り天共 尓井の底 尓組 天落 る音 して

可う     とも ゐ 曽こ くミ 於ち 於と

こうにいたりてともにいのそこにくみておちるおとして


(大意)

(代)官がこれをきき、円海を捕らえて詮議したところ

やはりうわさと違うところはなく土の松原というところへ引き出され

て死罪となり処刑された。するとその夜より円海の

霊が小僧とともに出るようになり、井戸端で一晩中争い、夜

更けにいたって共に井戸の底に組み合いながら落ちる音がして


(補足)

「代官」、「官」のくずし字は特徴的。

「聞」、「門」は「宀」のようになり、「耳」は「タ」や「ヌ」や「メ」のようなかたち。

「とらへ天」、ここの「と」はふつうの「と」とはかたちがややことなっています。

円海は死罪になり、霊になってもおのれが殺した小僧と争ってるとは・・・

 

2022年2月10日木曜日

桃山人夜話巻五 その5

P3前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

連の頃 本ひ流   尓出 天赤小豆越洗 ひ数 越与む

  ころ  奈可゛れ いで あづき 阿ら 可づ

れのころおいなが れにいでてあずきをあらいかずをよむ


是 越見る人 きもをけし天此 寺 尓入 来る毛の稀 也

これ ミ ひと      このてら いりく   まれ

これをみるひときおをけしてこのてらにいりくるものまれなり


志可る尓小僧  越こ路せし者 ハ同 宿   の円 海 也

    こ曽゛う     もの どう志゛由く ゑん可い

しかるにこぞ うをころせしものはどうじ ゅくのえんかいなり


登村 中  の毛の多れと奈くいひふらし个れバ所  の代

 むらぢ う                ところ 多゛ひ

とむらじゅうのものたれとなくいいふらしければところのだ い


(大意)

(夕暮)れのころ、小川に出て小豆を洗いその数を数えたりする姿があった。

これを見た人は、肝をつぶしてこの寺にやってくる者はまれになってしまった。

そのようななか、「小僧を殺したのは同じ寺に住む円海である」

と村中のものがだれともなくいいふらしたため、在所の代(官)


(補足)

「きもをけし天」、肝をつぶして。「を」の上半分が大きくて「と」にもみえます。

「志可る尓」、「る」が消えてしまっているようです。

 

2022年2月9日水曜日

桃山人夜話巻五 その4

P2後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ミ天和尚  能畄守越う可ゞひ小僧  越うちころ

  於せ う る春     こ曽゛う

みておしょうのるすをうかがいこぞ うをうちころ


志天井の中 へ沈 免阿や満ちて落 入 多るてい耳

  ゐ 奈可 志づ      於ちいり

していのなかへしずめあやまちておちいりたるていに


毛て奈し个連バ夜奈\/小僧  の霊 出 天雨 戸尓

       よ   こ曽゛う 連以いで 阿まど

もてなしければよなよなこぞ うのれいいでてあまどに


赤小豆越うち附 る音 於び多ゞしく阿るいハ夕 ぐ

阿づき   つく 於と          ゆふ

あずきをうちつくるおとをびただしくあるいはゆうぐ


(大意)

(ねた)み、和尚の留守をうかがって小僧を打ち

殺して井戸の中へ沈めた。円海は小僧があやまって井戸に落ちたように

見せかけた。そうすると、夜な夜な小僧の霊が出て、雨戸に

小豆を打ち付ける音がおびただしくあったり、あるいは夕暮(れ)


(補足)

「和尚」の振り仮名「於せう」なのでしょうが、拡大しても「せ」には見えません。カタカナ「セ」であるわけがないし、変体仮名「王」(わ)にもみえますが、それも変。

「和尚能」、変体仮名「能」(の)もよくでてきます。

「う可ゞひ」、「う」と「可」はにているし、「ひ」はややかすれて判別しにくく「ひ」に「゛」がついているようにみえるし、すぐには読めません。

「落入多るてい耳」、変体仮名「耳」(に)はあまりでてきませんが、たまに出現します。

「毛て奈し个連バ」、現在では「歓待する」の意がほとんどです。古い時代では「そうであるかのようにみせかける」と現在の意味とはかけはなれてます。

「於び多ゞしく」、変体仮名「多」(た)がちょっとわかりにくい。

 

2022年2月8日火曜日

桃山人夜話巻五 その3

P2前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

里ま多壱 升  越者可里天数 越問ふ尓猶 其 数

     いつせ う     可づ と  奈本曽の可づ

りまたいっしょうをはかりてかずをとうになおそのかず


を挙 多り員 へミる尓一粒   も違 ふこと奈し其 者つ

 阿げ  可ぞ    いち里 う 多可゛    曽の

をあげたりかぞえみるにいちりゅうもたがふことなしそのはつ


明 奈る越賞  美し天ゆく\/ハ志゛う志よくをも是

め以   せう び               これ

めいなるをしょうびしてゆくゆくはじゅうしょくをもこれ


尓譲 らんといつくしミ个る越同 宿   の僧 尓円 海

 ゆづ           とう志゛由く 曽う ゑん可以

にゆずらんといつくしみけるをどうじ ゅくのそうにえんかい


と天悪 僧 有 し可゛和尚  の小僧  越愛 春るを禰多

  阿く曽うあり   於せ う こ曽゛う 阿以

とてあくそうありしが おしょうのこぞ うをあいするをねた


(大意)

(答えた。)また一升をはかって数を問うと、同じようにその数を

答えた。数えてみると一粒も間違うことはなかった。小僧の賢い

ことを褒め、ゆくゆくは住職を小僧

に譲ろうと大切に育てた。そのことを、同じ寺の僧である円海

という悪僧がいたのだが、和尚がこの小僧を愛するのをねたみ


(補足)

「挙」のくずしは振り仮名がなければ読めません。

「いつくしミ个る」、「しミ」がわかりにくですが、「いつく」までくるとそのあとは「しみ」と想像できます。

「円」の旧字は「圓」。「員」のくずし方が二行前の「員へミる尓」とおなじになってます。囗は両脇のふたつの点になってしまったようです。

 職業とその人の性格や徳はなるほどとうなずくこともあれば、そうでないこともありそのほうがおおそうであります。さて悪僧円海その後はいかに。

 

2022年2月7日月曜日

桃山人夜話巻五 その2

P1後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

登し天育   个る可゛此 子人 と成 尓随    天才 発 人 尓春

   曽多゛て    このこひと 奈る 志多可゛ひ さ以者つひと

としてそだ てけるが このこひととなるにしたが いてさいはつひとにす


ぐれ別 てハ与く物 の数 越志連り阿る時 和尚  一 合

  王け    もの 可づ      とき於せ ういち可゛う

ぐれわけてはよくもののかずをしれりあるときおしょういちご う


の赤小豆越者可里天其 数 越問ふ尓数 を挙 多

の阿づき     曽の可づ と  可づ 阿げ

のあずきをはかりてそのかずをとうにかずをあげた


(大意)

として育てていた。この子は成長するにしたがい能力が人より

優れ、特によく物の数を知ることができた。あるとき、和尚が一合

の小豆をはかってその数を問うと、この子は数を答えた。


(補足)

「人と成尓」、「成」のくずし字は「斗」に少し似ています。

「数を挙多」、変体仮名「越」(を)がほとんどですが、たまに平仮名「を」もでてきます。

 

2022年2月6日日曜日

桃山人夜話巻五 その1

P1前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

桃 山 人 夜話巻 第 五

とうざんじんやわまきだいご


第丗六小豆洗

多゛以さん志゛うろく阿づき阿らひ

だ いさんじゅうろくあずきあらい


越 後の国 高田 の在 尓昔  一 宇の法 華寺 有 開

ゑちご く尓多可多 ざ以 む可しいちう 本つけでら阿り可い

えちごのくにたかだのざいにむかしいちうのほっけでらありかい


山 与り六世 尓當 りて日顕   登いへる住  僧 信 濃の

さん  ろくせ 阿多  尓ち个゛ん    志゛うさう志奈の

さんよりろくせにあたりてにちげ んといえるじゅうそうしなのの


浅 間可゛獄 のふもと与り片 王奈る子越毛らひて㐧子

阿さ満  多け      可多   こ     でし

あさまが たけのふもとよりかたわなるこをもらいてでし


(大意)

桃山人夜話巻第五

第三十六小豆洗

越後の国、高田の在に昔ひとつの法華寺があった。開

山より六世にあたる日顕という住職が信濃の

浅間山のふもとからかたわの子をもらって弟子


(補足)

巻第五に入ります。

この「小豆洗」は比較的よく知られたはなしで、わたしも好きなもののひとつです。

巻第五の最初のはなしなのでつかみが大切なはず。おもしろいものをもってきたようです。

「開山与り」「浅間可゛獄」、「間」が前者では「冖」、もう一つは「宀」のようになってます。

 

2022年2月5日土曜日

桃山人夜話巻四 その44

P26後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

P27 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

P26後半

くし天猫 の如 し作 りを阿ら春時 ハ所  の人 是 越狩る

   袮こ ごと つく     とき ところ ひとこれ 可

くしてねこのごとしつくりをあらすときはところのひとこれをかる


里民 呼 天゛可ミ奈り狩  と云 よし二 荒  山 あ多り

里ミんよん      可゛り いふ  尓つく王うざん

りみんよんで かみなりが りというよしにっこ うざんあたり


尓てハ折 ふしミる人 有 白 石 子も随  筆 尓此 事

   をり    ひとあり者くせきし 春゛いひつ このこと

にてはおりふしみるひとありはくせきしもず いひつにこのこと


越く王しく志るし置 多り

        をき

をくわしくしるしおきたり


P27

神 那里

可ミ

かみなり


(大意)

P26後半

(普段は)おだやかで猫のようである。農作物を荒らすときは土地の者たちが

この獣の狩りをおこなう。里のものはこれを雷狩りというそうだ。日光山あたり

では時折(この獣を)みかける人がいる。新井白石も随筆でこのこと

を詳しく記している。


P27

かみなり


(補足)

「やさしくし天」、ここの「し」のように上の文字に重ねるようにしてる書き方もあれば、最後の行の「く王しく志るし置多り」のように「し」を長い文字で書くこともあります。「く」も長いですけど。美意識なのでしょうか。

「作」のくずし字は特徴的です。ここのはそれほどでもありません。

「里民」、「里」に同じ漢字で振り仮名「変体仮名「里」(り)」があるのは、なんとなく変な感じ。

 画が黒ずくめでどこに雷獣がいるのかよくわかりませんが、左上と渦の中に2頭?います。なるほど猫族のようです。

 この画ではまったくわかりませんので他の資料で調べてみました。第一巻から第四巻の画の中では一番の彫込みではないかとおもうくらい、素晴らしい出来栄えであります。雷獣の毛並みがひと彫りひと彫り丁寧に隙間のない仕上がりになっています。また渦巻いている妖気も力強く精密に流れるように勢いよく彫られています。下部の部分は打ち砕かれる浪のようです。中央の雷獣の視線が読者にむけられているのですが、どうだこの画はなかなかだろうと、これは彫師の矜持のよう。

 

2022年2月4日金曜日

桃山人夜話巻四 その43

P26前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  丗    五かミ奈里

多゛以さん志゛うご

だ いさんじゅうごかみなり


下 野 の国 筑 波 の辺 尓ハ雷 獣  と天山 尓春む个もの有

志もつけ く尓つく者゛ へん  ら以ぢ う  や満      あり

しもつけのくにつくば のへんにはらいじゅうとてやまにすむけものあり


夕 立  雲 の起 らんと春る時 勢  い猛 く奈り天空 中

ゆふ多゛ちぐも 於こ     ときいき本 多け    くうちう

ゆうだ ちぐものおこらんとするときいきおいたけくなりてくうちゅう


へ可ける尓其 いき本い當 るべ可ら須゛といへり常 尓ハやさし

     曽の    阿多          つ年

へかけるにそのいきおいあたるべからず といえりつねにはやさし


(大意)

第三十五かみなり

下野の国、筑波のあたりには雷獣という山に住んでいる獣がいる。

夕立雲がわき起ころうとするとき、勢い猛々しくなって空中を

駆け回るのだが、その勢いは(速すぎて)当てることができないほどだという。普段はおだやかで


(補足)

 第4巻最後の話になります。

「其いき本い當るべ可ら須゛といへり」、この部分の意味がいまひとつわかりません。

「常」のくずし字は特徴的。

下野の国は現在の栃木県で、筑波は茨城県。なので常陸の国の間違いでしょう。ですが雷が活躍する地域としては似たようなもの。

 

2022年2月3日木曜日

桃山人夜話巻四 その42

P25後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

手を可多\/し天谷 底 へ熊 の落 し多るを見し人

て       多尓曽こ く満 於と    ミ ひと

てをかたかたしてたにそこへくまのおとしたるをみしひと


有 其 石 を十  人 志天動 可し个れども春こしもゆる

あり曽のいし 志゛う尓ん  うご  

ありそのいしをじゅうにんしてうごかしけれどもすこしもゆる


可゛ざりしと楚゛鬼 熊 石 と天木曽の山 奥 尓今 尓

        於尓く満いし  き曽 や満於く いま

が ざりしとぞ おにくまいしとてきそのやまおくにいまに


有 と曽゛云 伝 ふ亨  保 の始  尓鬼 熊 を獲多る

あり   いひつ多 个 う本う 者じめ 於尓く満 え

ありとぞ いいつたうきょうほうのはじめにおにくまをえたる


か里うど有 皮 の大 いさ六 畳  尓足ら須゛曽゛有 个る

    あり可ハ 於本  ろくぜ う 多     あり

かりうどありかわのおおいさろうじょうにたらず ぞ ありける


(大意)

片手で谷底へ熊が落としたのを見た人

がいる。その石を十人で動かそうとしたが少しも揺る

がなかったという。鬼熊石といって木曽の山奥に今も

あると言い伝わっている。享保のはじめに鬼熊を捕まえた

猟師がいた。その皮の大きさは六畳にとどかんとするほどであったという。


(補足)


「手を可多\/し天」、「可多\/」が困りました。「片方」(かたほう)の意でしょうけど、「堅堅」(かたかた)の文字通り「堅い」の意もあります。まぁ片方が順当かと。

「か里うど」、平仮名「か」もときたま使われます。

「大いさ」、「き」の間違いなのかどうか不明です。

 皮の大きさが6畳弱だったというのですから、大きいグリズリーやヒグマや白熊と同程度です。実際にいたような気がします。約300年前のことですので皮は何かに使われてしまったのでしょう。残念。

 

2022年2月2日水曜日

桃山人夜話巻四 その41

P25前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

こミ遂 尓ハ身の置 所  奈くし天穴 の口 へ出 るを鑓

    つい  ミ 於きどころ    阿奈 くち いづ  やり

こみついにはみのおきどころなくしてあなのくちへいずるをやり


尓天つきて川本う尓天うちとる奈り其 力  の

                曽のち可ら

にてつきてっぽうにてうちとるなりそのちからの


つよきこと何 人 力 といふこと越志ら須゛といへり王多り

     奈ん尓んりき      

つよきことなんにんりきということをしらず といへりわたり


六 七 尺  も阿らん可と思 ハるゝ本どの大 石 越山 中  ニ天

ろくしちしやく      於も      多以せき さんち う

ろくしちしゃくもあらんかとおもはるるほどのたいせきをさんちゅうにて


(大意)

(奥の方へ詰め)込み、ついには身の置きどころがなくなって穴の口から出てくるところを槍

でつき、鉄砲で撃ち取るのである。その力の

強いことは何人力ということでは言いあらせないほどであるという。端から端まで

六七尺もあろうかとおもわれるほどの大きな石を、山中で


(補足)

「鑓」(やり)、振り仮名がなければ読めません。振り仮名の「や」は「ゆ」とまぎらわしい。

「て川本う」、「川」はみため、とてもじゃないけど「つ」には見えません。変体仮名「川」(つ)。カタカナ「ツ」はたしかに三本の線があり「川」。

「つよきこと」、「こと」が「を」に見えてしまいますが合字の「こと」。次の「いふこと越」も同様。

「山中ニ天」、「ニ」がとても小さい。しかし助詞「ニ」はたいてい極小。

 

2022年2月1日火曜日

桃山人夜話巻四 その40

P24 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

鬼 く満

於尓

おにくま


(大意)

鬼熊


(補足)

 綴じの都合でしょうか、画が続きます。

馬は熊の背中にかつがれ、目玉はまん丸、口を開き歯をむき、気絶寸前の表情。鬼熊はあれっチト重いな、と目尻が下がりよっこらしょっと腰に力を入れてふんばっているところ。

グリズリーやホッキョクグマの大きいのは立つと3m前後あるというのですから、うーんでかい。

初めて北回りでジャンボに乗ったとき、途中アンカレッジ空港にでみたホッキョクグマに度肝を抜かれましたが、現在は日本に送られてきていて千歳市役所にあるそうです。