P5 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
小豆 あらひ
あづき
あずきあらい
山 寺 の小僧 谷 川 尓行 て
やまでら こぞう多に可゛王 由き
やまでらのこぞうたにが わにゆきて
あづきを洗 ひ居多り
あら ゐ
あずきをあらいいたり
しを同 宿 の坊 主
どうじ由く 本゛うず
しをどうじゅくのぼ うず
意趣 あり天
いし由
いしゅありて
谷 川 へつ起
多に可゛者
たにが わへつき
落 しける可゛
をと
おとしけるが
岩 尓う多れて
い王
いわにうたれて
死したりそれより
し
ししたりそれより
して彼 小僧 の霊
可のこぞう れい
してかのこぞうのれい
魂 於り\/出て小豆 を
こん あづき
こんおりおりでてあずきを
あら飛泣 川笑 ひつ
奈き 王ら
あらいなきつわらいつ
奈須事 に奈ん阿り
なすことになんあり
し
し
(大意)
小豆洗い
山寺の小僧が谷川へ行って
あずきを洗っていた
ところを同じ寺に住む坊主
が、かねてより恨んでいたので
谷川へ突き落としてしまった。
小僧は岩にあたって死んでしまった。それより
かの小僧の霊魂が
ときどきあらわれ、小豆を
洗う様子は泣いたり笑ったり
しながらしているということであった。
(補足)
この原本はやや鮮明さにかけているので、他の色刷りの鮮明な文献を確かめながら読みました。
「谷川尓行て」、「谷川へつ起」、「谷川」の振り仮名が「多に可゛王」と「多に可゛者」になっています。よく使われる「尓」を平仮名「に」にしたり、変体仮名「王」、変体仮名「者」をつかったりと見た目を変える工夫が随所にみられます。
「落しける可゛」、変体仮名ではなく平仮名「ける」。
「死したりそれより」、すべて平仮名です。
「霊」の異体字「ヨ」+「大」。異の異体字は「己」+「大」。
「あら飛泣川笑ひつ」、変体仮名「飛」と平仮名「ひ」、変体仮名「川」と平仮名「つ」と変化させています。
小僧の手足の指をみると偶蹄類のように割れています。これでは小豆が洗いにくのではないかと心配、また小川の流れもはやく脇に置いてある柄杓のようなもので汲み取ったとしても、流されてしまうのではないかとこれまたいらぬ心配・・・瞳孔が見開かれ小豆を洗うこと精魂傾けてる様子、やはりチト怖い。
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