2022年2月3日木曜日

桃山人夜話巻四 その42

P25後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

手を可多\/し天谷 底 へ熊 の落 し多るを見し人

て       多尓曽こ く満 於と    ミ ひと

てをかたかたしてたにそこへくまのおとしたるをみしひと


有 其 石 を十  人 志天動 可し个れども春こしもゆる

あり曽のいし 志゛う尓ん  うご  

ありそのいしをじゅうにんしてうごかしけれどもすこしもゆる


可゛ざりしと楚゛鬼 熊 石 と天木曽の山 奥 尓今 尓

        於尓く満いし  き曽 や満於く いま

が ざりしとぞ おにくまいしとてきそのやまおくにいまに


有 と曽゛云 伝 ふ亨  保 の始  尓鬼 熊 を獲多る

あり   いひつ多 个 う本う 者じめ 於尓く満 え

ありとぞ いいつたうきょうほうのはじめにおにくまをえたる


か里うど有 皮 の大 いさ六 畳  尓足ら須゛曽゛有 个る

    あり可ハ 於本  ろくぜ う 多     あり

かりうどありかわのおおいさろうじょうにたらず ぞ ありける


(大意)

片手で谷底へ熊が落としたのを見た人

がいる。その石を十人で動かそうとしたが少しも揺る

がなかったという。鬼熊石といって木曽の山奥に今も

あると言い伝わっている。享保のはじめに鬼熊を捕まえた

猟師がいた。その皮の大きさは六畳にとどかんとするほどであったという。


(補足)


「手を可多\/し天」、「可多\/」が困りました。「片方」(かたほう)の意でしょうけど、「堅堅」(かたかた)の文字通り「堅い」の意もあります。まぁ片方が順当かと。

「か里うど」、平仮名「か」もときたま使われます。

「大いさ」、「き」の間違いなのかどうか不明です。

 皮の大きさが6畳弱だったというのですから、大きいグリズリーやヒグマや白熊と同程度です。実際にいたような気がします。約300年前のことですので皮は何かに使われてしまったのでしょう。残念。

 

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