裏表紙
(読み)
なし
(大意)
なし
(補足)
扇面をそのままの形で図案化したもの。
このような図案はそれこそ千も万もあり、先人の図案化にかける執念やセンスの良さに惚れぼれするとともに、誇らしくもあります。
日本の意匠の財産であります。
裏表紙
(読み)
なし
(大意)
なし
(補足)
扇面をそのままの形で図案化したもの。
このような図案はそれこそ千も万もあり、先人の図案化にかける執念やセンスの良さに惚れぼれするとともに、誇らしくもあります。
日本の意匠の財産であります。
奥付
(読み)
明治十三年 三月二十二日 御届
東京府平民 價壹錢
編輯兼
出版人 服部為三郎
下谷區
上野西黒門町五番地
(大意)
略
(補足)
これだけの豆本が1銭なのですから、驚きをこえて出版業や書籍などの文化は江戸時代から盛んであったにもかかわらずその地位の低さ位置づけにため息がでます。
江戸時代後期・明治時代に日本にやってきた諸外国人が浮世絵などその出来栄えに比べて価格の異常な安さに驚き、買いあさったのも無理はありませんでした。
外国人の当時の日記には日本の書籍・出版業にたずさわる人たちの地位は低く稼ぎも悪いとあります。
P.12
P12下段
(読み)
さしあげ
さしあげ
志ゆつせ
しゅっせ
い多し
いたし
めで多し
めでたし
ゝゝゝ
めでたしめでたしめでたし
(大意)
差し上げ、
出世いたし
めでたし
めでたしめでたしめでたし
(補足)
「志ゆつせ」、そのまま平仮名通りに読むと、「しゆつせ」です。
上段でも「志ゆひ可く」(しゆひよく)があります。喋る言葉(口語体)と書き言葉(文語体)が一致しているというか一致させたくれた現代がありがたい。
上部の1本or2本の横線ですが、板木の大きさが異なったためかもしれません。多色刷りですので数枚の板木を使うわけです。その大きさが普通ならみな同じなのですが、なぜか異なってしまった。
でもそんな初歩的な間違いはしないとおもうのでうけど。
うーん、やはりわかりませんね。
P.12
P12上段
(読み)
お者く
おはく
志ゆひ可く
しゅびよく
主人 の可多
しゅじんのかた
きをうち
きをうち
そんぞうを
そんぞうを
て尓いれお可ミへ
てにいれおかみへ
(大意)
お白
首尾よく
主人のかたきをうち
尊像を
手に入れお上へ
(補足)
「志ゆひ可く」、「よ」の変体仮名は「与」ですが、どうみても「可」です。
「きをうち」、かすれていて読みづらいです。すぐ左の行の一番下が「を」で、それとくらべるとたしかに「を」と読み取れます。
「そんぞうを」、いきなり「尊像」がでてきましたが、歌舞伎かがみやまでは主人の書き置きとこの尊像が要となっています。
「お可ミへ」、「ミ」が「を」に見えてしまいました。「へ」も「つ」に見えます。
上部にある2本線がこの頁にもあります。何なんでしょうか。
尊像をもつ裃姿の武士は直線的に、灯りをもつお白は曲線的にと対比を明確にしてしっかりした線で描かれています。やはり後半からは親方がでてきて描いているようです。
P10P11見開き
(読み)
なし
(大意)
なし
(補足)
文章はありません。
上部の2本線、気になりますねぇ。
さらさは右肩もろ肌脱ぐようにし、両手で黒傘で岩藤の剣を防いでいます。
構図もいいですね。
黄色と赤の縦縞柄の筆の使い方が、以前と違ってからだの流れにそって自然で動きに見合っています。何回か述べてきましたが以前描いていたのが弟子なら、師匠の出番のようにみえます。
背景の上部は枝ぶりや雰囲気から梅だとおもいますが、左側の豚の鼻のような赤い花はなんでしょうか。寒椿には似ていないし・・・
P.10
(読み)
「奈尓を
なにを
こ志や
こしゃ
く奈
くな
「主人の
しゅじんの
可たきおもい
かたきおもい
しれ
しれ
(大意)
「何をこしゃくな
「主人の敵(かたき)
おもいしれ
(補足)
岩藤が刀を振り上げ、傘で防いでいるのは「主人の敵」を討とうとしている白。
他の頁にもありましたが、上部の横線がここにもあります。何のためかわかりません。
やはり前頁から絵師がかわったのではないでしょうか。
岩藤の描き方も着物に柄を入れたり、耳に赤を加えたり、筆のはこびが丁寧です。
背景の梅?や藁垣根なども手抜きしてません。
傘も立体感や質感がありしっかり描いてます。
「主人」、「人」が「へ」にみえるので、この2文字平仮名でなんと読むか悩みますが
漢字でした。「主」のくずし字を見たことがないとちょっと難しい。
「可たき」、ここでも「た」が平仮名です。変体仮名「多」ではありません。
P.9
(読み)
ミち
みち
尓て
にて
くせ
くせ
もの尓
ものに
であい
であい
者可らづ
はからず
志ゆじん
しゅじん
のふバこの
のふばこの
可きお起
かきおき
をミて
をみて
びつ
びっ
くり春る
くりする
(大意)
道にて曲者に出会い
おもいもよらず
主人の文箱の書き置きをみて
びっくりする
(補足)
「者可らづ」、これは難しい。すぐにわかるのは「づ」。「は」の変体仮名「者」は「む」のクルッとまわったあと右下にくにょくにょっと下がるのですが、ここのは「む」はそうはなってません。
前後の文章の流れからいろいろあてはめていくしかありあせん。
「春る」、変体仮名「春」は「す」+「て」のような形。
P8P9見開き
今までの頁と違って、まるで絵描きや彫師摺師がかわってしまった感じの頁です。
背景の石垣白壁や窓、遠近感をもって描いています。
左の裃の右肩を脱いでいる曲者、この人が強かったとわかります。右はその曲者の供でした。
この曲者の両耳、内側が赤く塗られています。
白の右手には「はからずも見てしまった主人の書き置き」を握っています。
一番左端の赤い窓があるのはなんでしょうか。籠のようでもあるし・・・
わかりません。
P.8
(読み)
「たん満りの者゛
だんまりのば
「お者く
おはく
志ゆじん
しゅじん
のやどへ
のやどへ
つ可い
つかい
尓
に
ゆく
ゆく
(大意)
「だんまりの場
「お白
主人の宿へ使いに行く
(補足)
「たん満りの者゛」とあり濁点がありませんが「だんまり」です。平仮名「た」になってます。
「者゛」のほうには濁点があるのに「た」のほうにはありません。
歌舞伎の「だんまりの場」、辞書には
「(「暗闘」とも書く)歌舞伎で,暗やみの中で,登場人物が無言でさぐりあいをするさまを様式化したもの。また,その場面。」とあります。
ここでは、お白が暗闇で曲者に襲われ、主人の文箱の書き置きがそとに出てしまって内容も見てしまったのか、驚いている場面です。
「志ゆじん」「やどへ」「ゆく」、「や」と「ゆ」がまぎらわしい。書き順まで同じです。
お白の黄色と赤の縦縞の着物は、前頁の岩藤との乱闘のときに着ていたものと同じです。
胸の前に文箱がとび、左手は提灯でしょうか、手にしています。
岩藤をも打ち負かすほどの腕前のお白が暗闇で急襲されたとはいえ、これほど簡単にやられてしまうのも解せぬませぬが、相手がよほどのてだれだったのでしょう。
暗闇の空が裏写りではなく何か模様が入ってますけど、何でしょうか。
前半の絵の乱雑さがみられなくなりました。
P.7
(読み)
「いハぶち
いわぶち
おもいの本可
おもいのほか
こりや
こりゃ
ちつと
ちっと
可ん志゛や
かんじ ょ
う可゛ち可
うが ちが
つた
った
「と天も可奈ハぬ ゝゝ
とてもかなわぬ かなわぬかなわぬ
(大意)
「岩藤
思いの外
こりゃ
ちょっと
勘定がちがった
「とてもかなわぬ
かなわぬかなわぬ
(補足)
腕におぼえのある岩藤も、さらの予想外の(勘定が違った)強さに打ちのめされてしまいました。
女中も四つん這いになってほうほうの体で逃げ出しました。
「ち可つた」、変体仮名「多」ではなく、平仮名「た」が使われています。
「と天も」、しばしながめて、やっとわかりました。でだしの「と」がなやむし、「天」もカタカナ「ア」にみえてしまうし・・・
P6P7見開き
竹刀か木刀の色が異なってます。まぁこれは豆本ではよくあることです。
岩藤の立ち姿を少し弓なりにして浮世絵の基本はふまえているようです。渋緑の帯にも茶黄色をちらしてます。
見せ場のひとつなので力を入れて描いたようです。
P.6下段
(読み)
「いき
いき
可゛つ
が つ
まつて
まって
くる
くる
しや
しや
ゝゝ
くるしやくるしや
(大意)
「息がつまって
苦しいくるしいくるしい
(補足)
なんとも乱暴な絵です。
着物の線などメチャクチャ。頭の描き方も。
乱闘効果をだそうとしたとはおもえません。
P.6
P.6上段後半
(読み)
めし
めし
つかへ
つかへ
者く
はく
「いハぶちさ満
いわぶちさま
者バ可り奈可゛ら
はばかりなが ら
おあいて尓く多゛
おあいてにくだ
さりませう
さりませう
奈らバあり
ならばあり
可゛とうぞんじ升
が とうぞんじます
(大意)
召し仕え白
「岩藤様
はばかりながら
お相手に
くださりましたならば
ありがたく存じます
(補足)
中老さらさは剣の心得がなく
その召し仕い白が代わって岩藤の相手をする場面です。
「つかへ」、「か」が変体仮名「可」ではありません。めずらしいです。
「おあいて尓」、「尓」は英文字筆記体の「y」です。「あ」は現在の「あ」とは印象が異なります。「お」に「丶」がないような形。
「升」、「ます」を「〼」と記号のような形で表すことはよく目にします。ここではそのまま漢字の「升」です。
P.6
P.6上段前半
(読み)
「これハた満
これはたま
らぬ
らぬ
て可゛
てが
本れ
ほれ
そうだ
そうだ
(大意)
「これはたまらぬ
てがしびれてきた
(補足)
「これハた満らぬ」、平仮名の「た」は珍しい。江戸後期明治前後の豆本ではほとんど使われてません。
「本れそうだ」、ここでも平仮名「だ」が使われています。「本れる」を調べると、頭がぼんやりするぼける耄碌するなどとあります。手の感覚がなくなってきた表現でしょう。
縦縞の着物が召使いの白(はく)です。
右手は竹刀を相手に突き出し、左手は右後ろの女中の右手を脇に抱え込み、左膝でもうひとりの女中を押さえつけています。大活躍というか乱闘です。
白の目のアップをよく見ると、薄く青く色が入っているようなないような、鋭い視線です。
頭は髷の部分に柄が描かれています。右上の女中の髪も同様です。
この絵をみて、兎とわかる人はあまりいないでしょうね。
P.5
(読み)
「ひ奈も
ひなも
あろう尓
あろうに
ぞうりを
ぞうりを
もつ天
もって
(大意)
「ひなもあろうに
草履をもって
(補足)
「ひなもあろうに」がわかりません。「ひな」は「雛」「鄙」がありますが、意味が通じません。
台詞の意味合いとしては「こともあろうに草履でもって(たたくとは)」「まわりの目もあろうに」のような感じでしょう。
表紙の構図と同じです。有名な場面なのではずせません。
中老さらさの目は耐え忍ぶという眼差しではなく、
クソババ〜〜〜ァ、この辱めッ、おぼえておけ〜、顔の部分を拡大するとよくわかります。
岩藤と同じように耳が短いので兎ではなく白ネズミです。
着物姿の絵は岩藤よりよほどまし。
P4P5見開き
P4とP5は描いた人が違うようです。
人物もそうですが、背景の御簾の描き方も異なっています。
P5のほうがよりまともです。
P.4
(読み)
「コノいハぶち可゛
このいわぶちが
ぞうりのせつ
ぞうりのせっ
可ん奈んと本ねミ
かんなんとほねみ
尓こたへ多可ア
にこたえたかぁ
(大意)
「この岩藤の草履の折檻
どうだ骨身にこたえたかぁ
(補足)
出だしの「コノ」がカタカナなのか漢字なのか最初わかりませんでした。
最後の「可ア」も「可」が「り」の可能性もあって悩む。
岩藤の耳が折れているのか小さいのかわかりませんが、これでは白鼠ですね。
岩藤の表情もよくわかりません。
怒りに燃えているためか激しい折檻で着物が乱れているのか絵が荒い。
背景の御簾も含めて、どこをみても色がはみ出していたり色の使い方が平面的だったりして、
雑です。
草履の折檻なのだから、もっと草履を丁寧に描かなければいけないとおもうのですが。
P.3
(読み)
ちう
ちゅう
ろう
ろう
さらさ
さらさ
「ミ奈ゝ
みなみな
いらせ
いらせ
られ
られ
ま志よ
ましよ
(大意)
中老さらさ
「皆々
行きましょう
(補足)
「ちうろう」、普段使わない言葉なので読めたとしても自身がありません。
「う」「ら」「可」「ろ」はほとんど同じなので前後の流れから判断することが多いのですが、たった4文字ではそれもできません。4文字目の「う」の一画目がなくなっているのでよけいに悩みます。
兔の群れを中老さらさが従えています。
着物がなんだかだらしなく見えるのはどうしてなのでしょうか。
P2P3見開き
上部のところの横線はなんでしょうか。他の頁にもあります。
見開きで見ると、傘をくるくる回し上下に上げ下げして、デモ隊のようです。
おごそかさやしずしずと花見に向かっているようには見えません。
皆さん避けて通り過ぎるでしょうね。
P.2
(読み)
「きよミづ
きよみず
者奈ミの
はなみの
ところ
ところ
大 つき
おおつき
ひめ
ひめ
ろう志よいハふち
ろうしょいわふち
(大意)
「清水花見のところ
大月姫
老女岩藤
(補足)
文章は絵の説明です。
老女岩藤を先頭に、
大月姫が大勢の供を連れて
清水の花見にでかけた場面です。
絵全体が、もっさりとキリッとしまってなく見えるのは彫師か摺り師の腕ではないとおもうですが、絵かきの腕がいまいちの感じ。どうも線が多いようです。その線も切れがない。傘も雑。
P.1
(読み)
「大つき
おおつき
ひめぎミ
ひめぎみ
のおさき
のおさき
ども
ども
ぎやう
ぎょう
れつの
れつの
てい
てい
(大意)
「大月姫君のお先共
行列の体
(補足)
読みにくいところはなさそうです。
この豆本は摺った後に、数箇所筆で色を加えているような感じがします。
お先共の脚先はちゃんと兔の脚になってます。