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2020年5月30日土曜日

豆本 鼡の嫁入 その14




奥付

(読み)
明 治十  四年
めいじじゅうよねん

十  月 十  八 日 御届
じゅうがつじゅうはちにちおとどけ

定 價壹 錢 5 厘
ていかいっせんごりん

東 京  府平 民
とうきょうふへいみん

編 輯  兼
へんしゅうけん

出  版 人  服部  為 三 郎
しゅっぱんにん はっとりためさぶろう

下 谷區
したやく

上 野西 黒 門 町  五番 地
うえのにしくろもんちょうごばんち



(大意)



(補足)
 直線を主体とした字体を意識したのでしょうか、雰囲気がピシッとします。
この豆本は保存状態がとてもよく色も鮮やかです。
人から人へ読まれたものではなく、発売後返本されるかなにかしてそのままになっていたものかもしれません。


裏表紙。



 扇柄模様です。





2020年5月29日金曜日

豆本 鼡の嫁入 その13




P.12

(読み)

「アア くたびれ多ゝ
 ああ くたびれたくたびれた

もしゝ ?うこゝ
もしもしもうここ

ハ大 こくさ満で
はだいこくさまで

ごさいま春可
ございますか


「もしきやうハ
 もしきょうは

よいおてんき
よいおてんき

でおめで多う
でおめでとう

ございま春
ございます


めで
めで

多し
たし

ゝ   ゝ
めでたしめでたし


(大意)
「あぁ くたびれたくたびれた。
もしもし、もうここは
大黒様でございましょうか。

「えぇ、今日は
良いお天気で
おめでとうございます。

めでたし
めでたしめでたし



(補足)
 赤ちゃんも白い顔に目と耳が見え鼠の形。

 出だしの「コ」+「く」の字は合字のようにも、カタカナの「ヲ」にも見えます。
読めませんが、文章の流れで「あぁ」としましたが、「おぉ」でもよさそう。

「くたびれ多」、平仮名「た」はあまり出てきません。ほとんどはその次にある変体仮名「多」。

「?うこゝハ」、「も」としましたが、「も」の変体仮名は「毛」「茂」「裳」「母」などですがどれでもなさそう。これも適当に当てはまる言葉を入れてみただけです。


 お供の小僧の背中に白い鼠顔のように見えるものがありますがなんでしょうか。
手に下げている白い物、読めません。

 前頁の土壁に点々を付けてそれらしく描いていました。
ここの石の鳥居と石畳の表面にも同じ手法で描いています。
初歩的な技術でとりたてて注目するようなことではないようですが、これがないとベッタリとしてしまって質感がありません。



2020年5月28日木曜日

豆本 鼡の嫁入 その12




P.11

(読み)
可゛へち うち゛
が へちゅうじ

ろうと奈づ
ろうとなづ

ける奈り
けるなり


も者や
もはや

ミや満いり尓
みやまいりに

奈り个る尓ぞでいりの
なりけるにぞでいりの

ものミ奈ゝ つれたち○
ものみなみなつれたち


○き多りて
  きたりて

よろこひを
よろこびを

のべ个り
のべけり



(大意)
考え忠次郎と名付けました。
はやくも宮参りとなり
親しい付き合いの者たちが次々に
やってきてお祝いの喜びを
伝えました。



(補足)
「可゛へちうち」の出だしには言葉の続きを示す記号(8の字を潰したような形)があります。
「ちうち」だけではなんのことかわかりませんが、つぎに「ろう」と続き、さらに「奈づける」とあるので、名前「忠次郎」とわかります。

「ミや満いり」、「ミ」は「三」に、「や」は「ゆ」に、「い」は「つ」に見えてしまう。

母親は赤い赤ちゃん用の着物(初着)をもってます。


P10P11見開き。



 全体に暗い色調の中に四匹の鼠の顔の白さが目立ちます。
奥の渋黄色の壁に黒い点々を描いて、土壁の感触を出しています。





2020年5月27日水曜日

豆本 鼡の嫁入 その11




P.10

(読み)
奈をつ个んと
なをつけんと

ようゝ と可んX
ようようとかん


「よい
 よい

おこで
おこで

ごさい
ござい

ま春
ます

ち うゝ
ちゅうちゅう


(大意)
名前を付けようかと
よく考え


「よいお子で
ございます。
チュウチュウ」


(補足)
 たらいにたっぷりのお湯、赤い襷(たすき)のお産婆さんが赤ちゃんを取り上げているの図。
屏風の裏地は全ページのものと同じですが、表の絵は異なってます。
屏風道楽のようです。

「ようようと」が「ふかふかと」とも見えましたが、「可」の字が大きいので「う」のほうをとりました。


2020年5月26日火曜日

豆本 鼡の嫁入 その10




P.9

(読み)
なし


(大意)
なし


(補足)
 文章はありません。

P8P9見開き。



 寝間での夫婦の様子。
枕は一つと思いきや、小さな枕に頭ふたつのせるのは無理っていうもんです。
そんなことあるはずありません。
絵の下部に半分隠れて描かれているのが、きっともう一つです。

 枕と敷布団はともかく、奥の山のようになった掛け布団、こんなにかけたら重くて翌朝は平たくなちゃいます。

 ふたりともいかにも寝巻きという姿。



2020年5月25日月曜日

豆本 鼡の嫁入 その9




P.8

(読み)
うミづき
うみづき

き多る尓
きたるに

奈んしう満
なんしうま

れける可゛奈んと
れけるが なんと



(大意)
産み月となり
男子が生まれました。
さて、なんと(名前を)


(補足)
「奈んし」、男子(だんし)。

 この頁だけではどういった場面なのか、わかりません。
夫婦の寝間の一部です。
燭台・行灯、奥に結婚式のときにあったのかもしれない小机があります。
それらの描き方は雑ですね。


2020年5月24日日曜日

豆本 鼡の嫁入 その8




P.7

(読み)
□けれバ
 ければ

おふ
おう

可多
かた

奈ら春゛
ならず

よろ
よろ

こひ尓
こびに

者や
はや


「者づ可しい
 はずかしい

ちうゝゝ
ちゅうちゅう



(大意)
ました。
その喜びようは
大変なものでありました。
はやくも、


「恥ずかしいわ、
チュウチュウ


(補足)
 文字が小さくフニャフニャして読みづらい。
「おふ可多奈ら春゛」、この部分悩みました。「大方ならず」という言い回しはこの当時普通に使われていたようで、何度か同じ表現を読んでいたのでわかりました。
「奈」は崩れているし、「春」は「す」+「て」のような形ですがこれも崩れています。

「よろこひ尓」、「尓」の上部が「ひ」に隠れてしまってます。


P6P7見開き。



 頁にまたがってしまった飾り机の左右が一致していません。豆本によくみられる定番のミス。
上部4人の人物(鼠)の位置関係はどうなっているのでしょうか。
盃を持っているのは新婦。
その奥は仲人の奥様?それとも嫁ぎ先のお母様?
新郎は赤い扇を持っている人でしょうか?それとも仲人さん?
その手前が新郎?

 三三九度の場面では通常は上座に新郎新婦、その両脇に仲人でしょうが、この場面はいまひとつよくわかりません。

屏風も絵もなんとなく殴り書き風。
屏風をおくことで、絵に奥行きがでました。




2020年5月23日土曜日

豆本 鼡の嫁入 その7




P.6

(読み)
それより
それより

ふう婦奈り
ふうふなり

よくくらし
よくくらし

ける可゛まも
けるが まも

奈く可い
なくかい

尓ん
にん

し□




「奈ん多゛可
 なんだ か

き満?
きま?

ハ?い
???

ちうゝ
ちゅうちゅう



(大意)
それからは
夫婦として仲良く暮らしました。
まもなく、懐妊し

「なんだか、
???
ちゅうちゅう



(補足)
 結納の儀式が済み、三三九度の場面のようです。
新婦は左頁です。

「ふう婦」の「婦」だけが漢字だとおもうのですが、上の「ふ」が重なるのを避けたのでしょうか。

「可い尓ん」の「い」は「ひ」にも見えますが。

会話文の二行目、三行目が不明です。
二行目は「きまりが」、三行目が「ハかひ(orい)」のように読めますが意味がサッパリです。
宿題が増えてしまいました。




2020年5月22日金曜日

豆本 鼡の嫁入 その6




P.5

(読み)
○よめ
 よめ

いりと
いりと

奈り个れバ
なりければ

ふ多り
ふたり

とも
とも

おふき尓
おうきに

よろこび
よろこび

めで多く
めでたく

ちきりを
ちぎりを

む春び
むすび

けり
けり


「これハ
 これは


これは

あり可゛
ありが

とう
とう

ヘイ
へい


へい


へい


へい



(大意)
嫁入りとなり
ふたりとも
大いに喜び
めでたく
夫婦となったのでありました。

「これはこれは
ありがとう。
(礼を繰り返す音)」


(補足)
「おふき尓」の「お」は変体仮名「於」でしょうけど、変体仮名「本」(ほ)にも似ています。

「めで多く」、「め」の左側のクルッとまわっているところがありませんので読みにくいですが、
言葉のつながりから「め」とわかります。

 会話文の最後の「へい」の繰り返しは、よく挨拶などの語尾がモジョモジョして不明瞭だったり、
息を吐く音だったりしますが、そのような擬音でしょうか。


 障子の外には縁側と庭園があります。
障子をよく見ると、障子紙を貼る部分の縦の木の部分と横の木の部分をきちんと描き分けているのがわかります。


P4P5見開き。



 立派な結納の品揃えです。
上座で挨拶している方の右側に刀?が見えます。
障子もでしたが、結納の品々をのせているお盆類も丁寧に描いています。
赤い酒樽の上にのっている青いものやはり気になります。
何でしょうねぇ。


2020年5月21日木曜日

豆本 鼡の嫁入 その5




P.4

(読み)
いれ志尓
いれしに

さつそく
さっそく

そうだん
そうだん

き満り
きまり

ゆいのう
ゆいのう

もとゝのひ
もととのい

きち尓ち
きちにち

をゑら
をえら

ミいよ
みいよ

ゝ○
いよ

「こん尓ちハ
 こんにちは

おめでとう
おめでとう

ごさい
ごさい

ま春
ます


(大意)
入れ、早速相談して決まりました。
結納も整い吉日を選んで
いよいよ


(補足)
 結納の品々、注連縄のような輪っかに挟んであるものは鰹節でしょうか。
赤いのはきっと漆塗りの酒樽。上の青いのはなんだろう。
目録の下部が見えています。

 文章に読みにくいところはありません。
変体仮名も「志」(し)、「尓」(に)、「満」(ま)、だけでいずれもお手本のような形です。
それと旧仮名「ゑ」があるくらい。


2020年5月20日水曜日

豆本 鼡の嫁入 その4




P.3

(読み)
ちう の
ちゅうの

春けをミ
すけをみ

そめけるそれ
そめけるそれ

より奈こうどを
よりなこうどを


(大意)
忠之助を見初めました。
その後、仲人を


(補足)
 三人女子衆の美しい立ち姿。
顔のかたちを変えてます。
赤の着物がお静で、お供が傘をさし、さらにもうひとり女中さん。
裾を引きずって、汚れちゃいますね。
傘と扇は定番の持ち物・添え物。

 和傘の小骨の本数が多そうなので、調べてみました。
実際の和傘はなんと48本もありました。
洋傘の小骨の本数に目がなれてしまっているようです。
なので、このオシャレな紫の和傘の小骨は少なすぎとなります。


P2P3見開き。



 女3人男2人の視線がバチバチと熱つそう。





2020年5月19日火曜日

豆本 鼡の嫁入 その3




P.2

(読み)
いふてき
いうてき

り也うもよし
りょうもよし

こゝろ也さしく
こころやさしく


きん志゛よ
きんじ ょ

尓てもひやう
にてもひょう

者ん世多るものも
ばんせたるものも

奈り个し可゛この
なりけしが この

お志づいつ志可
おしずいつしか


(大意)
(お静と)言う器量もよく
心優しい近所でも評判になるほどの
娘になっておりました。
しかし、いつしかお静は


(補足)
「いふてき り也うもよし こゝろ也さしく」、一度読めてしまうとなんともないのですが、初見ではとまどいました。「きりょう」の「り」は「ら」に見えるし、「こゝろ」の「ろ」は「ら」には見えないけど「り」にも見えるし、あれこれ音読してみました。

「ひやう 者んせ多るものも」、「せたる」が悩みました。


 赤は鼠の耳と扇だけで、全体を渋い色調に仕上げています。
暖簾がかかり床几の上には煙草盆と茶碗、茶屋のような店先でしょうか。






2020年5月18日月曜日

豆本 鼡の嫁入 その2




P.1

(読み)
「こゝ尓ねづ
 ここにねず

ミやちう の  
みやちゅうの

春けとて
すけとて

び奈んの
ぶなんの

きこへあり○
きこえあり

○ま多お奈じ
  またおなじ

奈可満の
なかまの

もちやの
もちやの

む春め尓
むすめに

お志つと
おしずと


「本ん尓
 ほんに

サウテ
そうで

こさい
ござい

ます
ます





「こゝ者さ
 ここはさ

むこうさへ
むこうさへ

志やう
しょう

ち奈
ちな

らこ
らこ

ちらハ
ちらは

いゝ
いい








「春こしも
 すこしも

可やぶん奈しさ
??ぶんなしさ



(大意)
ここに鼠屋忠之助という
美男の聞こえ高い男がおりました。
また同じ仲間の餅屋の娘に
お静と(いう)


「本当におめでとうございます」

「ここはさ、向こうさへ承知なら
こちらはいいのさ」

「少しも(かまや)しないさ」


(補足)
 「ねづミやちうの春け」を「鼠屋忠之助」としましたが、もっとよい名前がありそうです。
本文の出だしに「 がついてますが、会話ではないのに変です、間違えたのかも。

 会話体の「 がついたものが3箇所あります。
右下の部分の一行目、「こゝ者さ」としましたが、よくわかりません。
「者」がにじんでいてそれらしくはみえますが、このあとの「向こうさえ承知なら」につながる言葉としてはどんなものがあるでしょうか。

左下「春こしも」のあとが、「可やぶん」と読めるのですが、意味が通じません。
それとも「春こし/もう/やぶん/奈しさ」と区切る?
会話自体は「少しもかまわないさ」といった感じだとおもいます。
うーん、宿題にします。


 めでたい話をしているはずですが、背景の暗い淡薄緑色のためか、ちっとも明るくなく何か悪巧みをしている趣です。

 大黒様に使える者(神使)はねずみ、それも白いねずみがよくでてきます。
中勘助の「銀の匙」に、勘助が幼少の頃、散歩するときでさえおんぶして歩いてくれた叔母がいました。この叔母、家の米びつをねずみに空っぽにされ続け、家が破産してしまったというほどの信心深いひとでした。この鼠が白かったのでなおさら大切にし、神様の使いだからと追い立てなかったのでした。

 三人?とも着込んでいます。奥さんの首周りは襟巻きでしょうか。



2020年5月17日日曜日

豆本 鼡の嫁入 その1




表紙

(読み)
鼡  の嫁 入
ねずみのよめいり

(大意)



(補足)
 前々回は「きつねの嫁入」(堤吉兵衛)、前回は「狐の嫁入」(村井静馬)、
そして今回は「鼡の嫁入」と嫁入シリーズになってしまいました。
次回は「猫の嫁入」を計画しています。

「鼡」(ねずみ)は「鼠」の俗字ということですが、「嫁」が「女」+「取」となっていてこのフォントはありませんでした。この部品の組み合わせでは「嫁娶」(かしゅ)のように「娶」となってしまいます。

 狐ばかり見てきましたが、表紙のねずみを見てもどうも区別かつかなくなってしまってます。
新婦の紅白の着物が雑のような気もします。
新郎はとにかく羽織袴か裃姿なら形になるし、刀をさしていればもう申し分ありあません。
漆塗りの赤い盃で杯を重ねたのか、顔から耳まで赤くなってます。

御届は明治14年10月18日、編輯兼出版人は服部為三郎です。