2026年11月4日水曜日

手品獨稽古その17

P10_2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯掌(しやう)中  多いまつの傳

    しょう ちゅうたいまつのでん


○硫黄(ゐ王う)○焔火肖(ゑんせ う)○樟脳(せ うのう)○乳香(尓 うこう)

   いおう      えんしょう     しょうのう     にゅうこう


右 能四味(ミ)を生(き)うるし尓て練(ねり)あハせ

みぎのし  み を  き うるしにて  ねり あわせ


多゛んご本ど尓まろめ本しあげ火を

だ んごほどにまろめほしあげひを


つけ持(もて)バよくと本゛る奈り雨 風 越

つけ  もて ばよくとぼ るなりあめかぜを


いと王須゛く王いちう 志て旅行(りよ可う)

いとわ ずか いちゅうして   りょこう


の用意(い)とする尓重宝(ちやう者う)奈り

のよう い とするに   ちょうほう なり

(大意)

 ◯手のひらに収まるたいまつの方法

○硫黄(ゐ王う)○焔火肖(ゑんせう)○樟脳(せうのう)○乳香(尓うこう)、

右の4種を生漆で練り合わせ、

だんごくらいの大きさに丸めて干しあげる。火を

つけて持てばよく灯る。雨風でも

大丈夫。懐中して旅行の

用意をする品として重宝する。

(補足)

「ゑんせう」、『えんしょう ―せう【煙硝・焰硝】① 硝酸カリウム。硝石。② 有煙火薬の俗称。「―のにおい」』。「火」+「肖」の漢字はありそうで、みつかりませんでした。

「雨風」、「風」は読めますが、その上の一文字に悩みました。

「生(き)うるし尓て練(ねり)あハせ」とありますが、現在国産の生漆でこんな団子を作ったら、ひとつで10万円は軽くこえるとおもいます。それを燃やしてしまうのだから、この団子をつくる人はまずいないとおもいます。

 画の人物がここまで皆同じように見えます。誰かを想定していそうです。

 

2026年11月3日火曜日

手品獨稽古その16

P10_1 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯さん古゛志゛由こしらへ方 の傳

  さんご じ ゅこしらえかたのでん


ぞうげ鹿(志可)能角 尓てそのか多ち越

ぞうげ  しか のつのにてそのかたちを


古しらへ煎(せんじ)春王う?な可へうめ

こしらへ  せんじ すおうのなかへうめ


酢(ず)をい連徒のを尓ると少(すこ)しいろづく

  ず をいれつのをにると  すこ しいろづく


奈り其 と起か多きさいくべ尓越

なりそのときかたきさいくべにを


ぬりて酢(す)尓てむす奈り本んとう

ぬりて  す にてむすなりほんとう


のごとくとなる

のごとくとなる

(大意)

 ◯珊瑚樹をつくる方法

象牙・鹿の角でその形を

こしらえ、煎じ蘇芳の中へ梅酢を

入れ、角を煮ると少し色づく。

そのとき、硬い細工紅を

塗って酢で蒸す。本物の

ようになる。

(補足)

「蘇芳」、『すおう ―はう【蘇芳・蘇方・蘇枋】① マメ科の落葉小高木。熱帯アジア原産。枝に鋭いとげがあり,葉は羽状複葉。春,黄色の小花を円錐状につけ,花後,帯紅色の豆果を結ぶ。心材と莢(さや)は,赤色染料とする。蘇芳の木。③ 染め色の名。 →1の幹の心材の煎汁で染めた紅色。赤みのかかった紫』。

「細工紅」、『江戸時代に紅花から精製され、主に木版画(浮世絵や錦絵)の印刷や絵画に使われた貴重な赤色の絵具。摺師にとって細⼯紅は「⾦の如く」といわれた⾼価な絵具であり、惜しみなく使える代物ではありませんでした』。

 ちっとも手品らしくなく、むしろ偽物をどう作ればよいかの手引き書のよう。しかし、人の目をだまし、驚かせるという点では手品といえなくもありません。でも、これを本物の珊瑚樹だといって販売し金銭を得ると詐欺であります。

 

2026年11月2日月曜日

手品獨稽古その15

P9_2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯太平守(多いへいまもり)の太刀(多ち)の傳

      たいへいまもり の   たち のでん


この図(づ)のごとく切(きつ)さ起へ

この  ず のごとく  きっ さきへ


いとを由ひつけ手に

いとをゆいつけてに


もち古し越ひ年流と

もちこしをひねると


ぬけるなり

ぬけるなり

(大意)

 ◯太平守の太刀の傳

この図のように切っ先へ

糸を結いつけ、手に

持ち、腰をひねると

抜ける。

(補足)

「太平守の太刀」の意味がよくわからないのでAIにききました。

『主に舞楽(雅楽の舞)の演目である『太平楽(たいへいらく)』で用いられる装飾的な太刀(太平楽飾太刀(たいらくかざたち))を指す。「太平楽」とは、即位の大礼など非常にめでたい席で、天下泰平(世の中が平和に収まること)を祝って奏される舞楽です。この舞を舞う際、武官の甲冑姿をした4人の舞人が手にするのがこの太刀です。つまり、人を傷つけるための武器ではなく、平和と繁栄を祈念・祝福するためのシンボル(儀仗用の太刀)としての意味を持っています』、とのことでした。

「由ひつけ」、変体仮名「由」(ゆ)が重ね書きのようになっていますが、「ゆ」でよろしいかと。

 鞘から刀がとびだすという一瞬芸一発芸。座敷芸でうけそうです。

 

2026年11月1日日曜日

手品獨稽古その14

P9_1 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯火(ひ)婦き多゛るま能傳

    ひ ふきだ るまのでん


かやの可王共(とも)尓志ん尓て外(そと)をバ

かやのかわ  とも にしんにて  そと をば


お可゛くず尓てよくねり可多めくち尓

おが くずにてよくねりかためくちに


すこしあ奈をあけ志りをやけバ

すこしあなをあけしりをやけば


けふりを吹(ふく)その先(さ起)へ火をともすべし

くむりを  ふく その  さき へひをともすべし

(大意)

 ○火吹達磨の方法

茅の皮と共に芯を入れその外側を

おがくずでよく練り固め、口に

少し穴を開けて、尻を焼けば

煙を吹く。その先へ火をともすとよい。

(補足)

 何度も読んだのですが、どうもこの仕掛けがよく理解できません。頭がすっかり固くなってしまったジジイ、両手でもみしだきます。そうしたらハッと、まさかとはおもいましたが、煙管に仕掛けがあるのではなく、だるま自体が仕掛けなのだろうと、それしかありえぬ、と気づきました。

 こういうことでしょうか。だるまを練り固めたおがくずでこしらえて、口に少し穴をあけ、だるまの尻を焼くと、穴から煙がでてくるので、そこへ煙管をさしてその先っちょへ火をつける。うん、これならなんとなく手品らしい。だるまそっくりを作るのだと思います。

 ところで、この達磨、(その4)で手品師が左手に持ち上げているのがこれでした。「達磨尓煙越婦可世類」とありました。

 

2026年10月31日土曜日

手品獨稽古その13

P8_2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯茶(ちや)王ん尓水 をい連

    ちゃ わんにみずをいれ


  手ぬぐい尓つゝむ傳

  てぬぐいにつつむでん


ちや王んのふち尓

ちゃわんのふちに


白(者く)らうをぬりて

  はく ろうをぬりて


ミづ越い連

みずをいれ


多いら尓よく

たいらによく


津ゝむべし

つつむべし


水 こ本゛流ゝ

みずこぼ るる


事(こと)なし

  こと なし

(大意)

略

(補足)

「水こ本゛流ゝ」、変体仮名「流」(る)。

 コップに水を満杯にして、ボールや下敷き、ティッシュペーパーでも大丈夫、で蓋をする。そしてエイッと逆さにすると、あら不思議⁉️水はこぼれません。楽しい科学実験です。これは江戸時代のもの、理屈はわかっていても不思議です。

 

2026年10月30日金曜日

手品獨稽古その12

P8_1 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯紙 かん奈べの傳

  かみかんなべのでん


古ん尓やく多゛満をのり尓してせん

こんにゃくだ まをのりにしてせん


可のかミにひくべし酒(さけ)の可ん又

かのかみにひくべし  さけ のかんまた


やさいものを煮(尓)る尓よ起もの也

やさいものを  に るによきものなり


つ年尓く王い

つねにか い


ち う春べし

ちゅうすべし

(大意)

 ◯紙燗鍋の方法

蒟蒻玉を糊にして、

仙貨紙にひく。酒の燗または

野菜ものを煮るのに便利である。

常に持ち歩くとよい。

(補足)

「せん可のかミ」、『泉貨紙 / 仙貨紙(せんかし)— 伝統的な高級和紙

 歴史的には、戦国時代末期の天正年間に伊予国(現在の愛媛県西予市)の武士、兵頭太郎左衛門(法名:泉貨)が考案した強靭な手漉き和紙を指します。

• 特徴: 楮(こうぞ)を原料とし、2枚のまだ乾いていない生紙(きがみ)を重ね合わせて1枚に仕上げる特殊な製法で作られます。そのため非常に分厚く、破れにくいのが特徴です。

• 用途: 江戸時代には宇和島藩の専売品となり、大坂の蔵屋敷などで帳簿、大福帳、傘や合羽の地紙、袋物などに広く使われました。現在は国の無形文化財に選択され、愛媛県や高知県の限られた地域で伝統が守られています』、以上AIによる概要でした。

「く王いちう」、懐中でしょうか?

 この紙の鍋は現在では旅館やホテルで特別なものとしてではなく当たり前に使われています。紙は燃えるのが普通で、それを火の上にのせるのですから、手品になったのでしょう。でもきっと、同じようなことをして燃やしてしまって、驚いた人たちもたくさんいたとおもいます♫

 火鉢なんてもうすっかり目にしなくなりました。


2026年10月29日木曜日

手品獨稽古その11

P7_2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯王ら人形(尓んぎやう)手(て)の

  わら   にんぎょう   て の


     ひらに多つ傳

     ひらにたつでん


人(尓ん)ぎやうのあしの奈可へ者りを

  にん ぎょうのあしのなかへはりを


まげさしおきてつ可へバ多つ

まげさしおきてつかえばたつ


なり

なり

(大意)

略

(補足)

 わずか4、5行ですが、変体仮名の学習をしてないと、最初の「己」でつまずいてしまいます。

 

2026年10月28日水曜日

手品獨稽古その10

P7_1 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯蝋燭(らうそく)中天(ち うてん)尓つるす傳

     ろうそく    ちゅうてん につるすでん


らう楚く中(ち う)につる尓ハ志ら可゛

ろうそく  ちゅう につるにはしらが


者り可゛年ち うへ横(よこ)尓引(ひき)そ連へ

はりが ねちゅうへ  よこ に  ひき それへ


よこ尓き連こますべし上  下

よこにきれこますべしじょうげ


を者らひミせる可゛よし

をはらいみせるが よし

(大意)

 ◯蝋燭を空中につるす方法

蝋燭を空中に吊るすには、白髪針金を空中に横に張っておき、それに

蝋燭を横に切れ込ませる。その上下

をはらって(種も仕掛けもないことを)見せることが肝心。

(補足)

「志ら可゛者り可゛年」、白髪(しらが)のように細くしなやかな針金。

 昨日と同じ人物が手品の仕方を演じています。でも、着物が昨日は横縞、今日は縦縞、やはり気を使っているようです。

 

2026年10月27日火曜日

手品獨稽古その9

P6_2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯水 中  より火(ひ)を出す傳

  すいちゅうより  ひ をだすでん


どんぶり尓水 をつ起゛そのふち尓

どんぶりにみずをつぎ そのふちに


ろうにてせん可うをつけ火(ひ)を

ろうにてせんこうをつけ  ひ を


つけおきかミの者し尓い王う

つけおきかみのはしにいおう


を付(つけ)せん可うの火を

を  つけ せんこうのひを


うつすべし

うつすべし

(大意)

 ◯水中より火を出す方法

どんぶりに水をつぎ、そのふちに

線香を蝋で付け、火をつけておく。

紙の端に硫黄を塗っておき、

線香の火をうつす。

(補足)

 マッチが一瞬で炎があがるのと同じで、水をはったどんぶりの中で、一瞬にして大きな炎が立ち上がるという手品というか芸のようです。

 手品は一瞬芸が多いですが、これもそのようです。水芸でもやりそう。

 

2026年10月26日月曜日

手品獨稽古その8

P6_1 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯子持(こもち)達磨(多゛るま)の傳

     こもち    だ るま のでん


むそうそこぬけ者゛こ尓入 とり

むそうそこぬけば こにいれとり


い多゛しか春゛の子多゛るまをとり

いだ しかず のこだ るまをとり


出しミせるなり

だしみせるなり


多゛るまのうしろ尓あ奈をあけ子

だ るまのうしろにあなをあけこ


多゛るまをい連おくなり

だ るまをいれおくなり

(大意)

 ◯子持ち達磨の方法

仕掛けをほどこした箱に入れ取り出し、

たくさんの子だるまを取り出して見せるものである。

だるまのうしろに穴をあけ、

子だるまをいれておく。

(補足)

 「子持ち達磨 江戸時代」で検索したAIによる概要では、

『「子持ち達磨(こもちだるま)」は、江戸時代から伝わる日本の伝統的な手品(和妻・奇術)の演目の一つです。

子持ち達磨の概要

• 歴史: 江戸時代の元禄期頃から盛んになった手品・奇術の古典演目として記録されています。

• 内容: 大きな達磨(のだるま)の中から、次々と小さないくつもの子どもの達磨が出現する(または入れ子構造を活かした)仕掛けや手順を行う演目です。』

とありました。

「むそう」も「手品 むそう箱 むそう底」で調べたAIの概要によると、

『主に道具の底面や構造に仕掛けを施した日本の伝統的な手品道具(和妻・古典奇術)の技法・仕組みを指します。漢字では「無双箱」「無双底」と書かれることが一般的です。「無双(表裏がない、二つとない)」という名の通り、観客に底を見せても怪しいところがないように巧妙に作られています』。

「か春゛の子多゛るま」、『かず【数】

③ 数量の多いこと。古語では多く「かずの」の形で使われる。「―をこなす」「―ある作品中の名作」「今我等―の仏を見奉りつ」〈栄花物語•鳥の舞〉』。

 この手品は種も仕掛けも観客はわかっていて、手品師の芸を楽しむのでしょうけど、そのことは手品師にも十分わかっているので、親達磨から次々と子達磨を出してゆくのですが、その数がどうやったらこの親達磨の中に入っているのかと思わせるほどで、観客は驚くという手品なのではないかとおもいます。その方法はさすがにこの本でも内緒となっています。

 

2026年10月25日日曜日

手品獨稽古その7

P5_2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯茶(ちや)王ん水 上(あげ)の傳

    ちゃ わんみず  あげ のでん


磁器(ちや王ん)のそこ尓あ奈をあけて図(づ)の

   ちゃわん のそこにあなをあけて  ず の


ごとくミつぶくろより水 をかよ王

ごとくみずぶくろよりみずをかよわ


春るなり水 を出す尓ハ

するなりみずをだすには


袋(ふくろ)を足(あし)尓てふむべし

  ふくろ を  あし にてふむべし


ふくろハふぐの可ハ可゛

ふくろはふぐのかわが


よし

よい

(大意)

 ◯茶碗水上げの方法

茶碗の底に穴をあけて図のように、水袋より水を通すようにする。

水を出すには袋を足で踏む。袋はフグの皮がよろしい。

(補足)

「磁器(ちや王ん)」、「磁」のくずし字はなんとなく「磁」とわかりました。「器」のほうは「磁」ときたら、瀬戸物でその後に続く漢字の筆頭は「器」ですから、それをくずし字辞典で調べると、🎯。

 フグの皮を布のようにして巾着袋みたいにこしらえたのでしょうね。 

2026年10月24日土曜日

手品獨稽古その6

P5_1 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

 ◯水 の上 尓文字を浮 す傳

        もじ う可

  みずのうえにもじをうかすでん


白 さゝ起゛越こま可尓して

志ろ

しろささぎ をこまかにして


明  者゛ん春こし入 かミをぬらし

め う

みょうば んすこしいれかみをぬらし


右 能くすりを

ミき

みぎのくすりを


ぬりうへ尓

ぬりうえに


文字を書

もじ 可き

もじをかき


古連を水 の

これをみずの


奈可へ入 紙 を

     可ミ

なかへいれかみを


也うじ尓て

ようじにて


志多へぬきとるべし

したへぬきとるべし

(大意)

 ◯水の上に文字を浮かす方法

白ささぎを細かくして、明礬を少し入れる。紙をぬらし右の薬を塗り、上に文字を書き、

これを水の中へ入れる。紙を楊枝で下へ抜き取る。

(補足)

「白さゝ起゛」、『白ささぎ(白いんげん豆の一種や白ささげ)は、クセが少なく、ほくほくした食感が特徴の白い豆です。煮豆、白あん、サラダ、洋風の煮込み料理など幅広く使われる』。

「ゝ」「可」「う」など形が似てます。前後の流れから判断するしかありません。

「書」のくずし字はよくでてきて、形もいろいろ。ここのは「少」+「ム」を合体させたような形。

「也うじ」、変体仮名「也」(や)だとおもいます。

 種明かしに従っての結果が茶碗の中に「天照大神」(あまてらすおおかみ/てんしょうだいじん)という文字を浮かべています。絵はなんとも稚拙です。弟子に描かせたのでしょうかね。

 ささげも明礬(みょうばん)も簡単に安く手に入るので、やってみよう。とおもったのですが、「水の上に文字を浮かべる」で検索すると、ホワイトボードマーカー(百均)を使っておなじことをやっている科学実験のYouTubeがありました。面白いですよ♫

 

2026年10月23日金曜日

手品獨稽古その5

P3P4 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

P3

楳 亭

ばいてい


時 那らぬ

とき

ときならぬ


花 越座敷

者奈 ざしき

はなをざしき


尓

に


左可世

さかせ


P4

希理

けり


面白

おもしろ

おもしろ


多へ

たへ


尓

に


雪 越

ゆきを


婦ら

ふら


せ天

せて

(大意)

略

(補足)

「左可世希理」、この変体仮名をスラスラッと読めたら、初心者脱出です。また変体仮名「左」と変体仮名「世」の違いがよくわかります。

少々長くなりますが、この和歌をGoogleで検索したAIによる概要です。

①和歌だけの場合

この和歌(または連歌・俳諧の連)は、冬の座敷の中で、まるで時季外れの美しい花を咲かせたかのように見事に雪が降る様子を(あるいは白布などを花に見立てて)面白く表現した優雅な一首です。

これは江戸時代初期の著名な文化人・文人である本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)、あるいはその周辺の風流人が、座敷での連歌や茶の湯などの遊び(あるいは特定の趣向)において詠んだもの、もしくはその情景を描いたものと考えられます。

【歌の解釈と見どころ】

• 時ならぬ花を座敷に咲かせけり

・「時ならぬ花」とは、季節外れに咲く花のことです。ここでは、外に降る「雪」を美しい「白い花」に見立てています。あるいは、座敷の中に白布や紙吹雪などを散らして雪を演出した、室内での風流な「見立て」の遊びを指しているとも解釈できます。

• 面白たへに雪を降らせて

・「面白(おもしろ)たへに」の「たへ(妙・妙に)」は、非常に趣深く、素晴らしいという意味です。しんしんと、あるいは見事に降る雪の風情を「なんと素晴らしいことか」と深く賞賛しています。

【背景にある文化】

当時(安土桃山時代〜江戸初期)の風流人たちは、実際の自然を愛でるだけでなく、座敷という限られた空間の中に自然の美(雪・月・花)をいかに取り込むかという趣向を凝らしました。

• 庭に降る雪を座敷から眺めながら、それを「花」に見立てて座を盛り上げる。

• あるいは、茶会や連歌の席で、主人が客人を喜ばせるために特別な演出(見立て)を行った。

まさに、当時の「数寄(すき)」の精神や、遊び心が詰まった非常に粋で美しい表現です。

②手品独稽古+和歌の場合

 この粋な短歌は、江戸時代の代表的な手品書(奇術書)である『手品独稽古(てじなひとりげいこ)』の一節、あるいはその世界観を詠んだものですね。

「部屋の中に季節外れの桜を咲かせ、見事な趣向で雪を降らせてみせよう」という意味になり、当時の手品(奇術)が単なるトリックの披露にとどまらず、風流で幻想的なエンターテインメントとして楽しまれていた様子が鮮やかに伝わってきます。

 江戸時代、18世紀後半から19世紀にかけては『手品独稽古』をはじめとする多くの手品解説書が出版され、庶民の間でちょっとした手品ブームが起こりました。

• 時ならぬ花を座敷に咲かせけり:紙から作った花を一瞬で出現させたり、枯れ木に花を咲かせるように見せる「紙変化(かみへんげ)」などの奇術を連想させます。

• 面白たへに雪を降らせて:現代でもお馴染みの、和紙を細かくちぎって扇子で仰ぎ、まるで吹雪のように見せる伝統奇術「和妻(わづま)」の「胡蝶の舞」や「紙吹雪」の演出を思わせます。

 ①②ともになかなか興味深い結果であります。

 前回の「達磨に煙管をふかせる」とは違って、お客さんの注目を集めていて、手品師はちょっと得意げ。

 

2026年10月22日木曜日

手品獨稽古その4

P1P2 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)

志ん氣

  き

しんき


左尓

さに


ま多は知

またはち


巻

ま起

まき


毛

も

P2

左を倦 天

  あき

さをあきて


棚 能

多奈

たなの


達 磨

多るま

だるま


尓

に


煙 越

けむ

けむを


婦可世類

ふかせる

?兆

一 寿 斎 芳 晴 画

いちじゅさいよしはるが

(大意)AIによる概要

『ご提示の歌詞(「あまり辛気臭さに、棚の達磨さんをちょいと下ろし、鉢巻ォさせたり」)が含まれる江戸の流行小唄(端唄・俗曲)『棚のだるまさん』は、特定の作詞者・作曲者が明確に記録されていない不詳(作者不詳の民俗的な流行歌・巷間流布の唄)です。

幕末から明治初期にかけて、市井の人々の間で自然発生的に、あるいは無名の市井の作者によって作られ、歌い継がれてきた「はやり唄」の一つとされています。

この唄について

• 曲名: 『棚のだるまさん』(または『棚の達磨』)

• 背景: 恋しい人を待ちわびるやるせない退屈さ(辛気臭さ)や、思い通りにいかない世の中の憂さを晴らすため、棚にあるダルマを引っ張り出して鉢巻をさせたり転がしたりして一人でもてあそぶ、当時の庶民(主に女性)のユーモラスで少し切ない心情が描かれています。

• 主な音源: 昭和期には、著名なうた手である藤本二三吉(ふじもと ふみきち)らによってレコードに吹き込まれ、端唄・俗曲の名曲として広く知られるようになりました』。

(補足)

 歌詞で検索すると、上記のような説明が得られました。なんとなくなるほどと。なのでそのまま貼り付けました。

 歌詞の最後「置兆」のようにも読めますが、不明です。

「左を倦(あき)天」、『「その状況や物事にすっかり飽きてしまい」「嫌気がさして」という意味を持つ表現です。

それぞれの言葉を分解すると、次のような意味と成り立ちになります。

• さ:直前の文脈や事柄を指す言葉(「そのように」「そういう状態」)です』。

 変体仮名「左」(さ)と変体仮名「世」(せ)があります。平仮名「を」に近いほうが変体仮名「せ」。

 手品師は誰も見てくれないので、情けない泣きそうなおももちであります。男二人、女三人、それぞれ世間話で手品なんかどうでもよさそう。着物柄をみなかえていて、彫線も鮮明で、文字も引き締まっています。

 初版に近い摺りなのでしょう。

 

2026年10月21日水曜日

手品獨稽古その3

序文 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)後半

空 耳轟  具雷 電 能。手 段  盤山 も海 登那る。楚能種 々 の傳

そら とゞろ 奈る可ミ  し由多゛ん    うミ      いろ\/ でん

そらにとどろくなるかみの しゅだ んはやまもうみとなる そのいろいろのでん


法 越。毛ら左須゛残 左須゛阿希゛多連者。何 天毛自在 の此 小 冊

本ふ       のこ              じさい   せ うさつ

ぽうを もらさず のこさず あげ たれば なんでもじざいのこのしょうさつ


於子左満可゛多能御蔵 書 尓盤。是 尓増 多るも能あ羅じ。と

        ござうしよ   これ まし

おこさまが たのごぞうしょには これにましたるものあらじ と


自  ら誇  天加具能ごとし

ミつか 本こつ

みずからほこってかくのごとし


楳 亭 漁 父誌

ばいていりょふしるす

(大意)

 空に轟く雷も、手品の仕掛けで山も海となる。それらいろいろ伝わる種明かし、もらさず残さずご覧に入れよう。さすれば何でも自在にできようぞ。この小冊子、お子様方のご蔵書に、これにまさるものはあるまいと、自らこのように自慢している次第。

楳亭漁父誌

(補足)

 毛筆でというより、硬筆でくずし字をスラスラっと書いたようで、とても読みやすいし、くずし字のかたちもよくわかります。彫師も腕がよいのでしょうね。字がきりりとひきしまっています。

 名前の最後の一文字、「傘」のような「金」の縦棒を長くしような印はさて?縦棒の左右に「可本」「ゐ」と読めますが、これもさて?花押。それとも「全(まったし)」?

う〜ん🤔・・・

 

2026年10月20日火曜日

手品獨稽古その2

序文 同志社大学デジタルコレクション所蔵

(読み)前半

腊  昔  ?老父左満可゛。枯 木尓花 越咲 世しより。世上 

む可し\/  ぢゞ     可れき    さ可       

むかしむかし?ぢぢさまが  かれきにはなをさかせしより せじょう


一 般 流  行 能

いつ者んり う可う

いっぱんりゅうこうの


手品 尓一寸  懐中  能紙 越捻 ツ天霍 と那し。雲 井遥  尓乗 阿る具

てじ奈 ちよつとふところ    ひ年  つる    くもゐ者る可 のり

てじなにちょっとふところのかみをひねってつるとなし くもいはるかにのりあるく


駒 を小 左奈瓢  可ら。小諸 ふし尓て引 出し能。徳 利ハ忽  地

こま     ふくべ   こもろ          とくり 多ちまち

こまをちいさなふくべから こもろぶしにてひきだしの とくりはたちまち


傘   と。か者る盤

可ら可さ

からかさと かわるは


もの可ハ三 伏 能。夏 の朝 尓雪 越降ら世寒 サ尓堪へぬ冬 能日毛

    さんぷく  奈つ あさ ゆき    さむ  多

ものかわさんぷくの なつのあさにゆきをふらせさむさにたえぬふゆのひも

(大意)

 むかし昔のこと、花咲爺様が花咲かせたときより、今は流行りの手品だが、ふところ紙をちょいとちぎって投げ出せば鶴となる。遥か彼方の大空を、小諸馬子唄節にして、小さな瓢箪(ひょうたん)から馬を出す。徳利たちまち傘となり、こりゃーびっくりだ。盛夏の朝に雪降らせ、寒さに震える冬の日も、

(補足)

 出だしの一文字目「む可し」と振り仮名があります。調べるとこんな漢字「腊 」がありました。説明に『腊 (らく / しゃく):乾し肉の意味や声符として「昔」と通じる・関連する字』とあって、きっとこの漢字だとおもいます。

 「腊昔」の次の文字が不明です。「に」の変体仮名を調べても該当するものは見つかりませんでした。

「老父左満可゛」、変体仮名「左」(さ)がこの文章で多用されています。その数文字下「咲世しより」の変体仮名「世」(せ)と形がそっくりです。ひらがなの「を」に近いほうが変体仮名「世」です。

「乗阿る具」、変体仮名「具」(く)もこの文章にたくさん使われています。普通は変体仮名「久」(く)です。

「三伏」、『さんぷく【三伏】初伏(夏至後の三度目の庚(かのえ)の日)・中伏(四度目の庚の日)・末伏(立秋後初めての庚の日)の総称。最も暑い時期。季夏「―の候」』。

 読点「、」のような涙型「💧」の点が右側に何箇所もあります。音読すると節回しのような息継ぎのような講談師が調子をとるような感じで記しているみたい。大意もそんな感じにしてみました。

 

2026年10月19日月曜日

手品獨稽古その1

表紙 同志社大学デジタルコレクション所蔵

見返し

(読み)

表紙

手品 獨    稽  古

てじ奈ひと(り)けい(こ)


見返し

手品 獨  稽 古

てじ奈ひとりげいこ


一 寿 斎 芳 晴 画

いちじゅさいよしはるが


(大意)

略

(補足)

 手品獨稽古の出版年は江戸時代後期幕末頃とされています。著者は楳亭漁父(梅亭漁夫)(ばいていぎょふ)、絵師は一寿斎芳晴(いちじゅさいよしはる)で、かれらの活躍した年代からの推測です。

 この本の翻刻や出版物はたくさんあって、わたしのこのBlogでは変体仮名の勉強のためですから、新しい視点での読み方はいっさいありませんので、ご承知おきください。

「稽古」の「禾」が偏になってなくて、「尤」と対になって上にいってしまっています。古文書を読んでいるとよくあることで、偏や旁など漢字の部品の位置は自由だったようです。

 表紙絵は四角い井桁の箱から鳥(鳩)を出しているところのようです。手品師の目線は眼の前の飛び立つ鳩を見つめています。おや⁉️もしかしたら鳩を出すのは当たり前すぎるから、出した鳩を元の箱に呼び戻して消そうとしているのかもしれません。

 見返しのにじませたような絵柄がなんかモヤモヤっとしていかにも手品っぽい。

ここの画がなにかわからなかったので、AIにきいてみました。少し長いですが全回答です。

『描かれているものは、日本の伝統的な手品(和妻・わづま)の演目である「如意独楽(にょいごま)」に使用される「如意棒(にょいぼう)」(または「独楽の道中(どうちゅう)」に使う棒・道具)です。

💡 描かれている道具と手品の背景

• 如意独楽(にょいごま)の棒:

中央の黄色い軸と黒い持ち手を持つ棒は、和妻でよく使われる道具です。この棒の上で、回転する大きな独楽(こま)を器用に滑らせたり、綱渡りのように渡らせたりするアクロバティックな伝統手品に使用されます。

• 房付きの紐(飾り紐):

棒の両端から伸びている房付きの長い紐は、独楽を巻き付けて回すための紐、あるいは演技を華やかに見せるための飾り紐(タッセル)です。

『手品独稽古』は、梅亭漁夫の序文や一寿斎芳晴(歌川芳春)の挿絵などで知られる、当時の大衆向けの手品ダネ明かし・解説本です。見返しにこのような「花形の演目道具」をあしらうことで、本を開いた読者に「これから面白い手品の数々が始まる」というワクワク感を与える意図があったと考えられます』。

 手品より驚きました‼️見事な回答です。

 

2026年10月18日日曜日

大日本物産圖會その119

P119 「福岡市博物館所蔵」

P119_1

(読み)

同 神樂 棧 尓て引 揚 図

どうかぐらさんにてひきあげず


数多(アマタ)の予宗(モリ)尓つきふせら

   あまた の   もり につきふせら


連痛手(イタテ)尓くるしミ吽(ウメ)く

れ   いたで にくるしみ  うめ く


声(コエ)さもあハれ尓きこへる

  こえ さもあわれにきこえる


加くて漁 夫ハ大綱(ツナ)を以 て

かくてぎょふはおお つな をもって


海底(カイテイ)尓くゝ里入りくじらの

   かいてい にくくりいりくじらの


胴(ドウ)尓綱 を可け神樂(カグラ)さん

  どう につなをかけ   かぐら さん


尓て磯辺(イソベ)尓引 あげ肉 を

にて   いそべ にひきあげにくを


剖(カ)き油  をとり尾ひれの間  の

  か きあぶらをとりおひれのあいだの


皮 と咽(ノド)の下 奈るお左とハ

かわと  のど のしたなるおさとは


もろ\/の細工(サイク)もの尓用 由俗(ソク)

もろもろの   さいく ものにもちゆ  ぞく


尓鯨  一 尾とれバ七 浦 賑(ニギハ)ふと

にくじらいちびとればななうら  にぎわ うと


宜(ムベ)奈る可那

  むべ なるかな

(大意)

略

(補足)

 赤付箋「可ぐら左゛ん」(かぐらざん)とあります。なんとも大仕掛けで頑丈そうな轆轤(ろくろ)です。

 11人での力仕事で交代要員は音頭取りで大変です。沖の漁師たちとも連携しなければなりませんから、ただの力仕事ではなく危険で困難な仕事です。鯨が最後の力を振り絞ってこの神樂棧を海に引きずり込むようなこともあったのだろうなぁ。

 神樂桟の枠のむこうに母娘が沖の鯨を眺めています。赤い半纏がきいてますね。

 今回で「大日本物産圖會」はおしまいです。全国各地の様々な物産など読み眺めながらの楽しく興味深い旅をしてきました。図会の画像の利用にあたっては博物館・図書館など諸公共施設蔵のもを使わせていただき心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。(了)


 

2026年10月17日土曜日

大日本物産圖會その118

P118 「福岡市博物館所蔵」

P118_1

(読み)

壱岐 國 鯨  漁  之圖

いきのくにくじらりょうのず


鯨(クジラ)ハ多 く西 海 道 尓漁  す先

  くじら はおおくさいかいどうにりょうすまず


山 上  尓櫓(ヤクラ)を立 鯨  の潮(ウジホ)を吹

さんじょうに  やぐら をたてくじらの  うしお をふく


を見麾(サイ)をふりて船 へ知ら

をみ  さい をふりてふねへしら


す是 尓応(オウ)じて鯨  舟 十  六 艘

すこれに  おう じてくじらふねじゅうろくそう


合 魚予宗(モリ)を数 十 本 そ奈へ我

あい    もり をすうじっぽんそなへわれ


さ起尓とこぎ出し一 のもり

さきにとこぎだしいちのもり


を突(ツキ)多る舟 ハの本゛りの外

を  つき たるふねはのぼ りのほか


尓吹 奈可゛しを立 るを例(レイ)と須

にふきなが しをたてるを  れい とす


鯨  疵(テ)を痛(オヒ)て動揺(トウヨウ)すること

くじら  て を  おい て   どうよう すること


うし本の沸(ワク)可如 く三 五里の

うじおの  わく がごとくさんごりの


間  狂(クル)ひ廻 りて又 原々(もと\/)の所

あいだ  くる いまわりてまた   もともと のところ


尓來(キ)て死するといへり

に  き てしするといえり

(大意)

略

(補足)

「壱岐国」、いき 【壱岐】① 旧国名の一。壱岐全島にあたる。② 長崎県北部,玄界灘にある島。

「西海道」、『さいかいどう ―だう 【西海道】律令制における七道の一。今の九州地方,すなわち筑前・筑後・豊前(ぶぜん)・豊後(ぶんご)・肥前・肥後・日向(ひゆうが)・大隅・薩摩の九国と壱岐・対馬の二島。また,そこを通る幹線道路をいう』。

「モリ」の「予」+「宗」の漢字はなさそうです。

「死」のくずし字を楷書にしたような、「ト」+「ク」+「ヒ」の形になっています。

 鯨について、古文書を読んでいて、一番印象に残っているのは司馬江漢の西遊日記です。鯨の画や漁の道具も多数あります。わたしのこのBlogにもアップ済です。

 青い切れ長の鯨の目、真上に拭き上げる潮吹き、でも目が釘付けになってしまうのは七重八重と荒れる浪々、その間を縫うように銛をかざす漁師たち、よく見てみると鯨に二本銛が刺さってました。

 

2026年10月16日金曜日

大日本物産圖會その117

P117 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P117_1

(読み)

肥前 伊万里陶 器造  図二

ひぜんいまりとうきづくりずに


凡  噐(ウツハ)を造(ツク)る尓形 押 円 噐の両

およそ  うつわ を  つく るにかたおしえんきのりょう


種 ありといへとも円 器を㐧 一 の

しゅありといえどもえんきをだいいちの


用 品 とす先 土中  尓三 尺  程 乃

ようひんとすまずどちゅうにさんじゃくほどの


穴 を堀り中 尓車  を仕可けて車  の真 中

あなをほりなかにくるまをしかけてくるまのまんなか


尓土 を置 車  ハ足 尓て廻 し両  手を

につちをおきくるまはあしにてまわしりょうてを


以 て上 の土 を押(オシ)棒(サ)け指 尓て心  の

もってうえのつちを  おし   さ げゆびにてこころの


侭 尓噐  を作 り陰干(カゲホシ)尓して素焼

ままにうつわをつくり   かげぼし にしてすやき


の釜 尓入 薪 を用 ゐて度量(ドリヤウ)を

のかまにいれまきをもちいて   どりょう を


さつし火をけしてそのまゝさ

さっしひをけしてそのままさ


し取 い多゛して水 尓てあらひ

しとりいだ してみずにてあらい


書 画を可きて本 釜 へ入 て焼 奈り

しょがをかきてほんがまへいれてやくなり

(大意)

略

(補足)

 右より赤付箋「スヤキ釜ノ図」、黄付箋「クスリヲ掛タルヲエ図」、赤付箋「ヌノニテミカク」、黄付箋「画ヲカク図」。

 詞書きで円器について3行目からはじまっている説明はこの画の中にはなくて、昨日の画の左側の二人の轆轤(ろくろ)作業になります。

「真中」、「真」のくずし字を「土」と読んでしまいました。まだまだ初心者です。

 この画の中に出てくる赤絵の絵付け作業以外のところ素焼きの噐は、すべて輪郭線が薄青の色で縁取られています。籠の中の器までみなそうなっています。素焼き独特の質感をあらわしたのでしょう。

 赤の絵付けは、明治赤とよばれているもので、それまでは赤は天然の紅花やベンガラで大変に高価でした。しかし万延年間(1860〜1861年)頃から国外よりアニリンという化学染料が輸入されはじめて、いっきに広まりました。それより約30年前にはこの画の広重一派の初代広重が愛用したプルシアンブルー(ベロ藍(輸入品の化学顔料))の透き通って鮮やかな青がありました。

 素焼きを運ぶ職人さんの半纏の背中の意匠がふたつあります。下側はよく出てくる広重の「ヒロ」で、その上の印は、わかりそうでわからないう〜ん🤔・・・なんでしょうか?

 

2026年10月15日木曜日

大日本物産圖會その116

P116 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P116_1

(読み)

肥前 伊万里陶 器造  図一

ひぜんいまりとうきづくりずいち


肥前  國 伊万里焼 ハ本 朝  ニ尤   上

ひぜんのくにいまりやきはほんちょうにもっともじょう


品 と須就中   大河内  三河内 より

ひんとすなかんずくおおかわちみかわちより


出る物 上  等 也 此 焼 物 尓用  る土 を

でるものじょうとうなりこのやきものにもちいるつちを


志ら土 と云 て泉  山 より出て其 性 甚  多゛

しらつちといいていずみやまよりでてそのせいはなはだ


堅し擧(ゲン)のふを以 て打 可き金 杵

かたし げん のうをもってうちかきかねきね


尓て是 をつ起末 粉 と奈して他 の土

にてこれをつきすえこなとなしてほかのつち


二三 種 合 せて溜 池 尓漂(ヒタ)しよく

にさんしゅあわせてためいけに  ひた しよく


和し多るを飯籬(イガキ)尓てこし外 の溜

わしたるを   いがき にてこしそとのため


池 尓うつしよく澄(スミ)て浮(ウキ)多るものを

いけにうつしよく  すみ て  うき たるものを


揚(アゲ)て素(ス)やきの釜 尓ぬりて乾(カハカ)し

  あげ て  す やきのかまにぬりて  かわか し


再  び清 水 尓調和(テウクワ)し粘和(コネ)て工 人

ふたたびせいすいに   ちょうわ し   こね てこうじん


尓与(アタ)ふ是 まで婦人 の所為(シワサ)也

に  あた うこれまでふじんの   しわざ なり

(大意)

略

(補足)

「肥前」、『佐賀県と壱岐(いき)・対馬を除く長崎県に当たる』。

付箋が3枚、右から「シラ土ヲ溜池ニ入ル」、「澄シタル土ヲ揚る図」、「土ヲコネル図」、「円噐ヲ拵ル図」。

「飯籬」は辞書にありませんでしたが「籬」はあって『まがき【籬】① 竹・柴などを粗く編んで作った垣。ませ。ませがき。② 遊郭で,見世(みせ)と入り口の落ち間とのあいだにある格子戸』。

 左端の轆轤(ろくろ)を使っている職人さん、ボタン付きのYシャツ姿、明治です。

奥の部屋では商談がすすんでいるよう。

 働く御婦人たち、鉢巻あり、泥棒かぶりあり、頬かむりありといろいろでおもしろい。

 

2026年10月14日水曜日

大日本物産圖會その115

P115 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P115_1

(読み)

筑 前  國 鮪  漁  之圖

ちくぜんのくにまぐろりょうのず


鮪(シビ)ハ當 國 宗像(ムナカタ)にて多 く

  しび はとうごく   むなかた にておおく


漁  す王鮪(ワウシビ)叔鮪(メクロ)鮥子(メンロ)等 の

りょうす   おうしび    めくろ    めんろ とうの


名あり秋 の彼岸(ヒガン)与り取

なありあきの   ひがん よりとり


始 め網 の目八 寸 計 里尓して

はじめあみのめはっすんばかりにして


二十 丁  余  なり底(ソコ)ありて形

にじっちょうあまりなり  そこ ありてかたち


箕(ミ)の如 し常 尓海底(カイテイ)尓沈(シツ)め置

  み のごとしつねに   かいてい に  しづ めおき


て䋄 の両  端(ハシ)を二艘(ソウ)の舩 尓結(ムス)ぶ

てあみのりょう  はし をに  そう のふねに  むす ぶ


また山頂(サンテ ウ)尓櫓(ヤクラ)を可満へて魚 の集  る

また   さんちょう に  やぐら をかまえてうおのあつまる


を伺  ひ麾(ザイ)をふりて指令(サシツ)を奈せ

をうかがい  さい をふりて   さしず をなせ


バ数艘(スソウ)の小船 飛 可゛如 く尓出て

ば   すそう のこぶねとぶが ごとくにでて


網 を曳 打 可ぎ尓て採(トリ)入る奈り

あみをひきうちかぎにて  とり いるなり

(大意)

略

(補足)

「米」+「又」の漢字はないので「叔」で代用。

「丁」、『ちょう ちやう【町】一町は約109.09メートル』。

 山なりの波の様子とその色合いの濃淡の変化が力強くきれい。紫と青緑の漁師の配置、全員腰蓑は同色の黄土色、考えてますね。中央に飛び上がった鮪一疋が主役です。

 山頂の櫓で采を振るところ、拡大してみると人の形をしていて彫師泣かでしょうか。沖には白い帆をいっぱいに張っている帆掛舟が二艘みえます。

 大漁❗️大漁‼️大漁❗️❗️❗️

 

2026年10月13日火曜日

大日本物産圖會その114

P114 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P114_1

(読み)

筑 前  國 博 多織 之圖

ちくぜんのくにはかたおりのず


博多織(ハカタオリ)ハ當 國 博 多尓て

    はかたおり はとうごくはかたにて


産 春故 尓此 名あり有名(イウメイ)の織

さんすゆえにこのなあり   ゆうめい のおり


物 尓して其 精良(ヨキ)奈ること海 内

ものにしてその   よき なることかいない


無双(ブソウ)奈り五色 及 ひ茶 鼠

   むそう なりごしきおよびちゃねずみ


替 り縞 独古(シマトツコ)等(トウ)種 々 織

かわりじま   しまどっこ   とい しゅしゅおり


出す堅(ダイ)剛久尓耐(ナガクモツ)一艶色(ツヤ)最(モツトモ)

だす  


美麗(ビレイ)なるを以 て多 く男

   びれい なるをもっておおくだん


女 の帯 尓縫(ヌヒ)製 し衆

じょのおびに  ぬい せいししゅう


人 こぞつて賞用(シヤウヨウ)す

じんこぞって   しょうよう す

(大意)

略

(補足)

「堅(ダイ)剛久尓耐(ナガクモツ)一いちに艶色(ツヤ)最(モツトモ)美麗(ビレイ)なる」が振り仮名も不明確で、意味は理解できますが、読みをなんとかしたいとおもい、AIに頼りました。「(漢文の訓読スタイルでは、「堅剛(けんごう)久(ひさ)しきに耐(た)え、一艶色(いちえんしょく)最(もっとも)も美麗(びれい)なり」となります)」との回答がなかなかの読みです。なんかスッキリです。振り仮名「ナガク」の上に「フ」or「ツ」とありますが、読みがつながりません。

 ガラス窓をとおして庭木がみえる板壁に囲まれた庭は桜も咲き出して早春のよう。囲いの上にはどろぼうよけの返しがついてます。縁側では子どもが大きな猫をじゃらして部屋のにぎやかさとはことなる世界。ふすまの引手はひょうたんでおしゃれ。豊かな商家の一室での楽しい博多織の帯えらびはいつまで続くことやら・・・帯の入れ物籠には「博多」「本場」とありまして、なんとか買ってもらおうと勧める商人の表情が切羽詰まった渋い顔です。

 

2026年10月12日月曜日

大日本物産圖會その113

P113 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P113_1

(読み)

鶴 鷹 之圖二

かくようのずに


鷹 ハ甲斐日  向丹 後伊豫

たかはかいひゅうがたんごいよ


等 尓て捕るものハ皆 小鷹

とうにてとるものはみなこたか


尓して奥 州  尓て捕るものハ

にしておうしゅうにてとるものは


大 た可奈り白 鷹 ハ朝  鮮 よ

おおたかなりしろたかはちょうせんよ


里來 りて鶴 厂 をうつもの

りきたりてつるがんをうつもの


なり鷹 を養  ふことハ朝  鮮

なりたかをやしなうことはちょうせん


をもととし本 朝  尓てハ十

をもととしほんちょうにてはじゅう


七 代 仁 徳 天 皇 の御 宇阿(アニ)

ななだいにんとくてんのうのぎょう  あに


弭(ネ)古といふ人 初  て鷹 を献

  ね こというひとはじめてたかをけん


せし時 尓百済 の皇子酒  君

せしときにくだらのみこさけのきみ


をして是 を馴(ナラ)さしめ遊

をしてこれを  なら さしめゆう


猟  尓諸 鳥  をとらしむ是 則  ち

りょうにしょちょうをとらしむこれすなわち


我 朝  ニて鷹 を養  ふの始  也

わがちょうにてたかをやしなうのはじめなり

(大意)

略

(補足)

 「大日本物産圖會その59」が「伊予国鷹捕之圖一」でした。伊予国は愛媛県。

「厂」、『がん【雁・鴈】カモ目カモ科の水鳥のうち,ハクチョウ類に次いで体の大きい一群の総称』。

 鷹匠の足元の札書きに「鷹ヲ馴ス図」、左手には鷹。右手は籠の中でご褒美。

 紐付きで放たれたのは、鷹に襲わせる練習のための鳩でしょうか。紐をくるりと輪にして描いているところがにくい演出です。山々の風景は遠近があって稜線をみせる山に不思議と立体感があります。山の画には必ず川があるのがお約束で、右隅にチラッと忍ばせています。

 

2026年10月11日日曜日

大日本物産圖會その112

P112 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P112_1

(読み)

同 國 野蠶 養   之圖

どうこくやさんやしなうのず


野蠶 ハ春蚕(カイコ)と異(コト)奈り其 養 法

やさんは   かいこ と  こと なりそのようほう  


甚  多゛易 し是 を養   尓山 飼(カヒ)桶(ヲケ)飼

はなはだ やさしこれをやしなうにやま  がい   おけ がい


の二法 あり山 飼 ハ雑 木を悉   く伐(キリ)

のにほうありやまがいはぞうきをことごとく  きり


とり櫧(カシ)櫟(クスキ)等 の樹 上  尓虫 を養

とり  かし   くすき とうのじゅじょうにむしをやしな


ふ也 桶 飼 ハ四 斗樽 尓水 を張

うなりおけがいはよんとだるにみずをはり


蓋(フタ)をして中  央 尓穴 を穿け

  ふた をしてちゅうおうにあなをあけ


櫧(カシ)橡(ナラ)ホ の小枝 をさし此 内 に

  かし   なら などのこえだをさしこのうちに


飼ふ也 小枝 水 共 尓時 々 取 可へ凡

かうなりこえだみずともにときどきとりかえおよそ


六 十  日 目尓て繭(マユ)を作 る后(ノチ)廿   五六

ろくじゅうにちめにて  まゆ をつくる  のち にじゅうごろく


日 尓て蛾(テ フ)出る也 則   卵(タマコ)を産(サン)す

にちにて  ちょう でるなりすなわち  たまご を  さん す

(大意)

略

(補足)

「同國」、但馬国。

「野蚕」、『やさん【野蚕】野生の蚕の総称。柞蚕(さくさん)・山繭・樟蚕(くすさん)など。 →家蚕『かさん【家蚕】カイコの別名。野蚕(やさん)と区別していう語』

 左に手桶で水やりしているところ、台の下に線画だけの樽が描かれています。この物産図会でこのような描きかけはありませんでした。絵師が彫師にわたした下絵に描かれていたから彫師は彫ったのでしょうけど、めずらしい。

 この藁囲いの小枝の先の白いものが繭で桶飼。その右の大きな桑の木で行っているのが山飼。

 なんとものどかな風景です。

 

2026年10月10日土曜日

大日本物産圖會その111

P111 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P111_1

(読み)

但 馬 國 柳⺮考䇭(ヤナギコヲリ)製 圖

たじまのくに     やなぎごおり せいず


柳⺮考䇭(ヤナギコヲリ)ハ城ノ嵜 郡 豊

     やなぎこおり はきのさきぐんとよ


岡 より多 く出須柳  乃

おかよりおおくだすやなぎの


枝 を細割(コマカク)し晒(サラ)して行 李

えだを   こまかく し  さら してこうり


を編(ア)ミ或  ハ葛篭(ツゝラ)弁 当

を  あ みあるいは   つづら べんとう


い連畄を作 るそ能精

いれるをつくるそのせい


強(ツヨク)して遠地(トヲク)啓行(モチハコビ)の用

  つよく して   とおく    もちはこび のよう


に供(くう)す至(い多つ)て便(ベン)用 を奈

に  ぐう す  いたっ て  べん ようをな


すものなり

すものなり

(大意)

略

(補足)

「但馬國」、『兵庫県北部に相当。但州(たんしゆう)』。

「行李(こうり)」ではなく「⺮考䇭(コヲリ)」となっていて、フォントがありません。「栲䇭」(こうろう)、竹や柳の枝を編んで作った入れ物(かご)を意味する言葉はありました。

「柳行李」、『こうり かう―【行李・梱】〔「行李」は使者の意〕① 竹または柳などで編み,衣類や旅行用の荷物などを入れるのに用いるかぶせ蓋(ぶた)つきの入れもの。こり』。店の看板にも同じ漢字が記されています。

 この画をひとめみて最初に目がいくのが、右の通行人の洋傘です。なので当時もきっと目をひいたはず。二番目は中央店内のガラス戸、かなり珍しかったはず。ガラスをとおして見えている部分は色調を変えています。

 のれんにあるひし形の意匠は「広重」の「ヒロ」。どうなっているかわかりますか?

 行李はわたしが子どもの頃はごく普通に使われていました。使い込めば使い込むほどツヤツヤしてきて大切にしたものです。もうほとんど目にしません。

 

2026年10月9日金曜日

大日本物産圖會その110

P110 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P110_1

(読み)

丹 後 國 鰤(ブリ)追 網 之圖

たんごのくに  ぶり おいあみのず


鰤(ブリ)ハ丹 後 国 与謝(ヨサ)の入 海 に

  ぶり はたんごのくに   よさ のいりうみに


とるものを上  品(ヒン)と須魚 つ年

とるものをじょう  ひん とすうおつね


尓此(コゝ)尓あそび長  ずるに及(オヨン)で

に  ここ にあそびちょうずるに  およん で


出んとする時 をう可ゞひ追(オヒ)

でんとするときをうかがい  おい


網(アミ)を以 て捕(ト)る網 ハうミの

  あみ をもって  と るあみはうみの


入 口 尓者り数 十 艘 ふ年を

いりぐちにはりすうじっそうふねを


奈らべ舷(フナバタ)をたゝき魚 をおひ

ならべ  ふなばた をたたきうおをおい


いれ尚 魚 のもれざる多め三

いれなおうおのもれざるためみ


重尓あミを可け轆轤(ロクロ)にて

えにあみをかけ   ろくろ にて


ひ起阿けるなり

ひきあげるなり

(大意)

略

(補足)

「網」の異体字で検索したら「䋄」がありました。口の下が閉じてませんけんど。

「フナバタ」、原文は「舟」+「世」。

 ここまで記してきて、どうもこの画はとりあげたことがあるなと、調べたら「その70」で同じものをアップしていました。他の画でもダブっているのが数枚あるようです。

 「その70」の画のほうが色が鮮やかです。

 

2026年10月8日木曜日

大日本物産圖會その109

P109 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P109_1

(読み)

同 國 蜂 蜜 製 之圖

どうこくみつばちせいのず


蜂蜜(ハチミツ)ハ土 蜂 木蜂 山 蜂 ホ 有

   はちみつ はつちばちきばちやまばちなどあり


上  品 奈りと雖  も甚   少 し故

じょうひんなりといえどもはなはだすこしゆえ


尓家 蜜 と云 て箱 或  ハ桶 尓

にいえみつといいてはこあるいはおけに


數孔(アナ)を穿(ウカ)ち此 内 尓蜂 を

   あな を  うが ちこのうちにはちを


養(ヤシナ)ふ蜂 春 の末 より秋 の

  やしな うはちはるのすえよりあきの


末 尓至 る迄 外 辺 尓出て

すえにいたるまでがいへんにでて


花 の蜜 槽 を含(フク)ミ房中(バウチ ウ)尓

はなのみつそうを  ふく み   ぼうちゅう に


貯(タクハ)ふ秋 の末 尓至 りて筥 中

  たくわ うあきのすえにいたりてはこなか


の脾三 分 の二を採りて煎 じ

のひさんぶんのにをとりてせんじ


て熟蜜(シユクミツ)と須是 則   家 蜜 也

て   じゅくみつ とすこれすなわちいえみつなり

(大意)

略

(補足)

「同國」、丹波国。京都府中部と兵庫県中東部に相当。

江戸時代、丹波の国(現在の兵庫県北東部・京都府中部)は日本国内における主要な蜂蜜の産地の一つとして知られていたそうです。

 画全体が春の店先のにぎやかな様子で、子どもが蜂二匹におわれててんやわんや。

画の右下隅の竈(かまど)から立ち上がる煙が昇るにつれて透けて見えてくる職人さんの着物の色を変えているのが摺師のこだわり、うまいもんです。

 現在のような蜜柑箱みたいでの養蜂はいつごろからなのでしょうね。桶を使う方法はなかなか新鮮です。

 馬の鞍のしつらえが細かく描かれていて、こういったところも手を抜きません。

 

2026年10月7日水曜日

大日本物産圖會その108

P108 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P108_1

(読み)

丹 波 國 燧  石 切 出 之圖

たんばのくにひうちいしきりだしのず


燧石(ヒウチイシ)ハ氷上(ヒカミ)郡 の内 所 々 よ

   ひうちいし は   ひかみ ぐんのうちしょしょよ


里産 須゛土中  尓ある石 尓し

りさんす どちゅうにあるいしにし


て其 形 ち水晶(スヰシヤウ)のことし其 色

てそのかたち   すいしょう のごとしそのいろ


白 きあり鼠(ネズミ)色 あり金属(カネノルヰ)

しろきあり  ねずみ いろあり   かねのるい


を以て戛撃(タゝキ)すれば則火を

をもってたたきすればすなわちひを


発 す此 火を莔麻炭(ホクチ)尓うつし

はっすこのひを    ほぐち にうつし


て火を點(テン)ず故 尓火打 石 と

てひを  てん ずゆえにひうちいしと


称  して民 家尓用 ひざる処  奈し

しょうしてみんかにもちいざるところなし

(大意)

略

(補足)

「戛」、「かつ」と読み、「戛戛(かつかつ)『堅い物の触れる音を表す語。』」「戛然(かつぜん)『堅い物が触れて出る音のさま』」など熟語あり。なので「戛撃」は「かつげき」と読むのかな。

「莔麻炭(ホクチ)」、『ほくち【火口】① 燧(ひうち)を打ちつけて火をうつしとるもの。イチビの茎を炭にしたものや,茅花(つばな)(チガヤの花)やパンヤに焼酎・焰硝を加えて製したものを用いる。ほくそ。』

「莔麻」、『いちび【〈莔麻〉】① アオイ科の一年草。インド原産。高さ約1.5メートル。全体に軟毛が密生する。葉は心臓形。夏,黄色五弁の小花をつける。茎の皮から繊維を取り,ロープ・麻袋などに用いる。キリアサ。② 綱麻(つなそ)の別名。』

 詞書きのとおり、「土中尓ある石尓して其形ち水晶(スヰシヤウ)のことし其色白きあり鼠(ネズミ)色あり」ですので、石工さんたちが掘っているところだけ色がことなっています。そのまわりの黒ずんだ岩石の濃淡が上手。

 火打ち石は鉄などの金属で打ち付けたときに火花が散りますが、それは石から火の粉が出るのではなく、打ち付けた金属の粉が一瞬に酸化して火花になっているので、石どうしを打ち付けても火花はでません。

 この物産図会が出版される前後にマッチが製造されて、あっという間に火打ち石で火をつける習慣はなくなりました。現在ではアウトドアで使われています。

 

2026年10月6日火曜日

大日本物産圖會その107

P107 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P107_1

(読み)

佐渡金 堀 之圖

さどきんほりのず


金 尓砂金(サキン)石 金 其 外 数種(スシユ)

きんに   さきん いしかねそのほか   すしゅ


あり砂金 ハ山 谷土砂(ドシヤ)の中 に

ありさきんはさんや   どしゃ のなかに


生  春゛又 瓜子(ウリザネ)金 麩(ナスビ)金 と可

しょうず また   うりざね きん  なすび きんとか


阿り精煉(トラカシ)して熟(ジユク)金 と

あり   とらかし して  じゅく きんと


なす石 金 ハ岩 石 の間

なすいしかねはがんせきのあいだ


に混合(コンガウ)して方 言「シ

に   こんごう してほうげんし


ラマサ」といふ人 夫砿 中(アナ)

らまさ というにんぷこう  あな


の金脈(ツル)をつ多ふて堀 捕

の   つる をつたうてほりとる


毛の奈り

ものなり

(大意)

略

(補足)

 詞書きの題名に「堀」とあって、これは昨日も記したとおり現在では「掘」が⭕️。漢字の試験で「土」+「屈」をかいたら❌️になります。

赤札中央「カケヤ尓天孫八を打込む」、画を見ればあきらかで、カケヤは金掘大工が握っている大きな木槌、孫八は地面にある杭のようなもので「鑚(たがね)」。

左の2枚め「水ぬき」、この画ではところてんを押し出す器具ににて取っ手を上下にしてつかってますが、丸い筒状の水抜きもあって、それは手元でクルクルまわして使うものだったようです。

 お尻にあてている円形のものは「腰当(しりあて)カマス」。

 壁にさしてある灯りとりはサザエ殻のよう。

 佐渡金山の江戸時代の最盛期の金(銀等)の産出量は世界一だったそうです。現在は掘り尽くしたといわれていますが、現代の科学をもってすれば、付近の海底に金鉱脈を見つけることができるのではと夢想してしまいます。

 昨日の「佐渡國金山之圖」の元絵を広重としましたが、さらに広重は「日本山海名物図会巻之一 金山鋪口(かなやましきくち)NDL所蔵」を参考にしているようです。

 今日の元絵も同様です。「日本山海名物図会巻之一 金山鋪の中能繪(可奈やましきのうちのゑ)NDL所蔵」。

 わたしのBlogですでに「日本山海名物図会全5巻」をUPしてあります。

 鉱脈の中ですから手元や壁の灯り以外のところはほとんど真っ暗なはずですけど、金掘大工たちはそれぞれスポットライトをあびたように生き生きしています。

 最近『佐渡絢爛』(赤神諒・著)を読みました。面白かった。

 

2026年10月5日月曜日

大日本物産圖會その106

P106 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」



P106_1

(読み)

佐渡 國 金 山 之圖

さどのくにきんざんのず


皇国(クワウコク)金 を發見(ハツケン)せしハ

   こ うこく きんを   はっけん せしは


人 皇 四 十  六 代 孝謙(カウケン)天 皇 の

にんのうよんじゅうろくだい   こうけん てんのうの


御 宇始 めて陸奥 國 より献(ケン)

ぎょうはじめてむつのくにより  けん


納(ノウ)すと云(イフ)蓋(ケタシ)し當 國 盤

  のう すと  いう   けだし しとうごくは


諸 郡 より出春と雖 ども

しょぐんよりだすといえども


就中(ナカンツク)雑太(ザウタ)郡 相 川 西 見川

   なかんずく    ぞうた ぐんあいかわにしみかわ


金 北 山 より堀 出すこと最  も夥(オヒタ)シ

きんぼくさんよりほりだすこともっとも  おびただし


其 出  額 年 々 五十 〆 目余  ニ至

そのしゅつがくねんねんごじっかんめあまりにいた


れり実 尓盛  奈ること海 内 第 一 也

れりじつにさかりなることかいだいだいいちなり

(大意)

略

(補足)

 赤札が3枚あります。右から「風廻し口」、「四ツ留口」、「水抜口」。四ツ留口の入口上部には白い御幣を飾った額があり安全祈願。鉱山は水との戦いで、一日中ただひたすら水を桶で汲み上げる職人もいました。

「御宇」、『ぎょう【御宇】〔宇内(うだい)を統御するの意〕天子の治世の期間。御代(みよ)。「宇多天皇の―」』。

「金北山(きんぽくさん)」、『標高1171.9mで、佐渡島および大佐渡山地の最高峰』。

「堀出す」は「堀出す」です。詞書きの「堀」は「お城の堀」のホリ、土偏です。「扌」は「穴を掘る」のホル。まぁ細かいこと気にしないのがこの時代。

「海内」、『かいだい【海内】四海の内。国内。天下。「―無双」「―に御威光(ごいこう)輝き」〈自由太刀余波鋭鋒•逍遥〉』。

 3つの入口の岩の色の濃淡がちょっと不気味で怖い。

 先代広重の「六十余州名所図会 佐渡 金や満」、

 この画が元になっているようです。両方の画の明暗の差が気になるところです。

 

2026年10月4日日曜日

大日本物産圖會その105

P105 「船橋市西図書館所蔵」「画像の無断ダウンロード禁止」

P105_1

(読み)

越 後 國 鮭 洲走  を捕   圖

えちごのくにさけすばしりをとらえるず


當 國 の鮭(サケ)ハ初 秋  上 り北 海 を

とうごくの  さけ はしょしゅうのぼりほっかいを


出て千曲(クマ)川 阿加 川 尓沂(サカノボ)る㕝

でてち  くま がわあがのがわに  さかのぼ ること


凡  五十  四里 川尓ある事 五ヶ月

およそごじゅうしりかわにあることごかげつ


清 き流  水  の所  尓子を産 つけ

きよきりゅうひょうのところにこをうみつけ


后 海 尓皈 る鮞(ハラゝゴ)水 尓ある事

のちうみにかえる  はららご みずにあること


十  四五日 尓して魚 と化(ナル)春 尓至

じゅうしごにちにしてうおと  なる はるにいたっ


て海 尓入 生 長  して川 を登 ること前

てうみにいりせいちょうしてかわをのぼることまえ


のごとし鮭 網 あるを知り遁(ノカレ)んとして

のごとしさけあみあるをしり  のがれ んとして


河原 尓飛 上 り走 ること四五間 矢の

かわらにとびあがりはしることしごけんやの


如 く尓して水 尓飛 入る然 れども

ごとくにしてみずにとびいるしかれども


先 奈る魚 もの尓ふれて倒(タヲル)るゝこと

さきなるうおものにふれて  たおる るること


あれバ後 の鮭 皆 倒  て走 ら須゛奇魚

あればのちのさけみなたおれてはしらず きぎょ


と云 べし漁 夫これをとる事 多 し

というべしりょふこれをとることおおし

(大意)

略

(補足)

「㕝」、『事』。「皈」、『帰』。いつもながら見慣れぬ漢字多し。

 錦絵・浮世絵では主題になるものを大げさに巨大化して描くというのがお約束ですが、ここの鮭は漁師と比べてもほぼ実寸に見えます。産卵期に遡上してくる鮭に赤い斑点がありますがそれも忠実に描いています。手づかみで捕まえようとしている漁師の勢いが地をはい、浮かんでいるよう。

 州は水がひいて、砂浜や岩があるところですから表現するのは難しそうですが、雰囲気がでていて上手ですね。