2021年7月31日土曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その11

P12

P13

(読み)

P12上段

とう可゛らしミそを

とうが らしみそを


こしらへ奈春り

こしらえなすり


つけれバ奈本\/

つければなおなお


い多ミで

いたみで


くるしミ

くるしみ


P13上段

ける

ける


あるひ

あるひ


うさ起

うさぎ


きふ年

きふね


をこしらへ

をこしらえ


い多る尓

いたるに


多ぬきも

たぬきも


つちふ年

つちふね


をこし

をこし


らへ

らえ


可ハへいで△

かわへいで


(大意)

P12

とうがらし味噌を

作ってなすりつければ

ますます傷み苦しみ

P13

ました。

ある日、

うさぎは木舟を作ったところ

たぬきも土船を作って

川へ出た

(補足)

 話の流れが見開きの上段から下段となってますのでそれに従います。P12上段背景がやや読みずらい。

「奈本」の「奈」が「る」のように見えますが、このあとの「くるしミ」の「る」と比較してください。またP13出だし「ける」「あるひ」の「る」は上部の横棒がありません。変体仮名「留」(る)に近いです。

 P12唐辛子味噌調剤と治療の図がなかなか細かいです。まな板のようなところで唐辛子を刻み、すり鉢に入れてゴリゴリ、それを油紙の和紙に塗って、その薬も赤だけでなく黒いぶつぶつを描いています。すり鉢の奥には取っ手を上に薬箱「かうやく」の木目もきれいです。そのうしろの襖絵は赤い唐辛子が飛び散ったかのように花が咲いています。うさぎの着物も洒落てますね。

 

2021年7月30日金曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その10

P10

P11

(読み)

P10

本゛う\/峠

ぼ うぼうとうげ


是 ゟ かち\/山

これよりかちかちやま


P11

ひをうち可けれバ

ひをうちかければ


多ぬきのせ奈可へ

たぬきのせなかへ


もへつきお本やけど

もえつきおおやけど


を奈しうちへ可へり

をなしうちへかえり


うさ起尓く春り

うさぎにくすり


をもらい个る尓

をもらいけるに


「これ可゛

 これげ


可ち\/

かちかち


や満さ

やまさ


(大意)

P10

ぼうぼう峠

これよりかちかち山

P11

火をつけると

たぬきの背中へ

燃えつけて大やけどを

おわせました。

家へ帰って

うさぎに薬を

もらったのですが


「これが

かちかち山さ

(補足)

「もへつき」「もらい个る」、ここの「も」は長細い「の」のようにみえます。この「も」の筆順は下端で逆さ「?」マークのようにクルッと左回りに上がって途中から今度は右回りに回ってそのまま下へ流れます。

「う」と変体仮名「可」(か)は区別がつきませんので、文章の流れや意味から判断するしかありません。

 うさぎが両手に持つ火打ち石。よく時代劇などで見るのは両手ともに石ですけど、ここでは打ち付けられる左手の方はその石を木で挟んでいるように見えます。うさぎは青い忍者装束だけでは単調としたのか、赤い半纏に黄色の帯で見栄え良くしてます。

P10P11見開き

 江戸五街道は幹線道路でしたけど、おおかたはここの絵のような道だったに違いありません。

 

2021年7月29日木曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その9

P9

(読み)

き多りて者可゛ミを

きたりてはが みを


奈しくやし可゛りおちい

なしくやしが りおちい


さん王し可゛可多きを

さんわしが かたきを


とりま須可らそん

とりますからそん


奈尓お奈げ起

なにおなげき


奈さる奈と◯

なさるなと


◯それより

 それより


うさ起゛ハ志たく

うさぎ はしたく


奈し多ぬき尓可や

なしたぬきにかや


を多くさんせを

をたくさんせを


王せや満へつれ行 (由起)

わせやまへつれゆき(ゆき)


(大意)

来て、歯噛みをして

悔しがり、お爺さん

わたしが敵(かたき)を

とりますから、

そんなにお嘆きしないでください

(と言いました)

それから、

うさぎは仕度をして

たぬきに萱(かや)を

たくさん背負わせて

山へ連れてゆきました。

(補足)

 最後の「行」のくずし字がわかりにくいとおもったのか「由起」と振り変体仮名がふってあります。読本は誰にでも読むことができるように振り仮名のあるものが多く、初心者のわたしなどには大助かりであります。

 うさぎも右手に手ぬぐいを持っています。手ぬぐいはとても大切な小道具の一つ。

P8P9見開き

 文章と絵が一致しています。やはりそのほうが違和感がないです。


 

2021年7月28日水曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その8

P8

(読み)

あと尓て

あとにて


大 起尓お

おおきにお


どろ起可奈

どろきかな


しミける

しみける


ところへうさ起゛

ところへうさぎ

(大意)

その後

大変に驚き

悲しみました。

そこへうさぎが

(補足)

「おどろ起」、ここの「お」は平仮名より変体仮名「於」(お)にもみえます。

「可奈しミける」、たいていは「个る」ですが、ここでは平仮名「け」。

 爺さん左手に手ぬぐいを握りしめおいおい泣き溢れる涙をふいてもふいても・・・悲しみに打ち沈んでいます。

 部屋がずいぶん丁寧に描かれています。壁は単色でなく白をあしらい木壁らしく、縁側は竹でしょうか。その縁の下に(爺さんの背中後ろに)ひび割れたようなものがみえますが、これは蜘蛛の巣のよう。そしてその右側に二色で描かれているものがわかりません。なんでしょう、これ?

 

2021年7月27日火曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その7

P7

(読み)

◯多いをあらハし者゛ゝアくつ多

 たいをあらわしば ばあくった


志゛ゝゆい

じじ ゆい


奈王の

なわの


し多の

したの


本年を

ほねを


ミう

みう


やい\/

やいやい


とさん

とさん


\゛/

ざん


あく

あく


多いを

たいを


つき尓げ行 ける

つきにげゆきける


(大意)

(正)体をあらわし、ババアを食った

ジジイは結縄(ゆいなわ)の下に

ババアの骨を見つけました。

(狸は)さんざんにわめきちらしながら

悪態をついて逃げていってしまいました。

(補足)

「ゆい奈王の」、ここの「ゆ」はどうみても「や」なのですが、それでは意味がおかしいので「ゆ」としました。彫り間違いか?そのあとに「やい\/」とあり、これは「や」です。

 爺さんの箱膳が立派、三面図の見取り図のようにきちっと描かれています。

P6P7見開き

 縁側・障子・屏風など直線部分と奥行き感は上手ですが、お櫃・お盆など曲線部分はいまひとつで苦手そうです。

 しかしながら、屏風の繪といい、隅々までしっかり描いていますねぇ。

 

2021年7月26日月曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その6

P6

(読み)

可くとハ志ら春゛

かくとはしらず


ぢゝ゛可へり

じじ かえり


个れバ者ゝ゛ア

ければばば あ


ぜんを多゛し

ぜんをだ し


めしを

めしを


春ゝめ

すすめ


奈どし

などし


おのれも

おのれも


志多ゝ可

したたか


くらいて

くらいて


多ぬきの志やふ

たぬきのしょう(たい)



「さあ\/

 さあさあ


多くさん

たくさん


おあ可゛ん

おあが ん


奈さい

なさい


(大意)

そのようなこととは知らず

ジジイが帰ってくると

ババアは膳を用意し

飯をすすめたりしました。

自分もたくさんに

食って

狸の正体を

「さあさあたくさん

おあがんなさい


(補足)

「ぢゝ゛可へり」、「可」の上にもう一文字あるように見えますが汚れかもしれません。

「志多ゝ可」、「ゝ」が「く」に見えて、その次の「可」につながらず、悩みました。

「多ぬきの志やふ」、「志やふ」で切れてしまうと、なんのことかわかりません。

「さあさあ・・・」と口語体です。明治19年出版ですから今からおよそ135年前です。今と全然変わりません。ババア汁のはいった鉄鍋、ごはんのお櫃、婆さんの丸盆とこれらも今でも馴染みのあるものばかり。

 この狸は着物の色にあわせて尻尾の色も変えることができるみたいです。青い尻尾が右に左に動いているみたい。縁側や障子も細かく描かれています。

 

2021年7月25日日曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その5

P4

P5

P4P5パノラマ

(読み)

P5

うさきハ

うさぎは


者゛アの

ばばあの


可多きと

かたきと


多ぬきを

たぬきを


うちころ

うちころ


(大意)

うさぎは

ババアの

敵である

たぬきを

打ち殺す

(補足)

 説明書きの部分は赤地に白抜きの模様が入って洒落た手ぬぐいのよう。

たぬきの船が黒いぶつぶつのようになっているのは、泥舟のため。

 パノラマでは浜をあまねく照らす朝日のあまりに鮮烈な描写に目を奪われます。光線の激しさだけでやけどしそうです。でも、沖にはのどかに帆掛け船が数艘。汁になってしまった婆さんの敵をとってくれろと扇をふるって必死の応援をする爺さんの表情はどこか和やかです。

 

2021年7月24日土曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その4

P3

(読み)

おもひといて

おもいといて


やれバ多ぬき

やればたぬき


者゛ゝア尓くらい

ば ばあにくらい


つ起天

つきて


き年をとり

きねをとり


ふちころし

ぶちころし


おのれ者゛ゝア尓

おのれば ばあに


者゛けむ起゛を

ば けむぎ を


つ起ミそ

つきみそ


奈ぞ春り

なぞすり


者゛ゝアしるを

ば ばあしるを


こしらいおき个る

こしらいおきける


(大意)

思い(縄を)解いてやりました。が、狸は

ババアに食らいついて、杵を奪い

打ち殺してしまい、

自分がババアに

化けて麦を

ついて味噌などをすって

ババア汁を

作っておきました。

(補足)

 豆本ではよくあるのですが、後ろに倒れかけている婆さんの表情が真に迫ってやけにリアルなのです。拡大してみました。どうですか!?

 この頁の文章も切れ目が何度か目を通さないと分かりづらい。

P2P3見開き

 狸と婆さんの視軸が一直線でつながっています。杵を奪い取られ、後ろに倒され、その一瞬の婆さんの姿をとらえているのが見事です。

 

2021年7月23日金曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その3

P2

(読み)

志゛るを志て

じるをして


多べんとつるし

たべんとつるし


お起ぢゝ

おきじじ


よふ多し

ようたし


尓いで由起个る

にいでゆきける


者゛ゝアむ起をつき

ば ばあむぎをつき


い多りし可゛多ぬ起

いたりしが たぬき


といてもら王ん

といてもらわん


とさ満\/と

とさまさまと


奈げき

ねげき


个れバ者゛ア

ければばばあ


ふひん尓

ふびんに


(大意)

汁を作って

食べようと吊るして置きました。

爺は用事を片付けに

出かけてゆきました。

ババアは麦をついていましたが

狸は縄をといてもらおうと

あれやこれやいろいろと

哀願したところ

ババアは不憫に

(補足)

 文章の文字はかすれもなくクッキリなのですが、背景が暗青色で読みづらい。また何度か繰り返し読まないとどこが文章の区切りなのかも難しい。

「よふ多し」、用たし。

「もら王ん」、「王ん」のところに汚れがあって分かりづらいです。変体仮名「王」(わ)は「已」のようなかたち。

 この頁も隅々まで丁寧に描かれています。部屋や縁側と縁側の下の壁まで、また狸の着物のくずしかたもなかなか粋であります。

 

2021年7月22日木曜日

豆本 昔咄しかち\/山 その2

P1

(読み)

明治十九年十一月二日内務省交付1367


む可し\/ ある可多い奈可尓

むかしむかしあるかたいなかに


ぢゝい者゛ゝア春ミ

じじいば ばあすみ


个る可゛あるひ

けるが あるひ


ぢゝい多ぬ

じじいたぬ


きをとり

きをとり


き多り多ぬき

きたりたぬき


(大意)

昔々ある片田舎に

爺と婆婆が

住んでいましたがある日

爺が狸を捕まえ

てきて、狸

(補足)

 とてもきれいです。色あせやズレはなく鮮明です。文章もかすれもなくクッキリ。

 狸は縛られ吊るされて顔を婆さんに向けて、なにやら語りかけている様子。婆さんは餅つきではなく麦つきをしています。下駄じゃ仕事がしづらいだろうに。絵の四隅に至るまで丁寧に描きこんでいます。

 

2021年7月21日水曜日

豆本昔咄しかち\/山 その1

表紙

表紙裏

(読み)

昔  咄 しかち\/山

むかしばなしかちかちやま


綱 島 藏 版

つなしまぞうはん


(大意)

(補足)

 うさぎが背負っていた薪に火をつけられて大やけどをするのですが、奥の男はその薪をタップリとかついでいます。手前の男の手には火付けの道具か?

 二人の身につけているもの、異なった柄模様で、さすが表紙だけに力込めて描いているのがわかります。

 見返しが朱印なんて寂しいです。


 

2021年7月20日火曜日

豆本 さるか尓合戦 その13

P13

(読み)

こハ可奈

こはかな


王じと尓げ

わじとにげ


い多春を多ち

いたすをたち


う春尓おさへ

うすにおさえ


られさるもせん△

られさるもせん


(P12)

△可多奈く

 かたなく


可いしん

かいしん


志てし多可゛ひ

してしたがい


けり

けり


めで

めで


(P13)

多し\/\/

たしめでたしめでたし


\/

めでたし


御届明治十九年九月廿日

馬喰町二丁目十四番地

編輯兼 

出版人 綱島亀吉


定價弐銭

(大意)

これはかなわんと逃げるところを

立ち臼に押さえられて

猿も仕方なく

心を入れ替えて

(皆に)従いました。

めでたし

めでたしめでたし

めでたし

以下略

(補足)

 両頁で上下段に分かれているので合印●△に従います。

囲炉裏でいきなりバチッと炭や小枝の薪が爆(は)ぜることがあります。けっこう驚きます。玉子が爆音とともに飛び出してきたら驚くどころの騒ぎではないでしょう。玉子は忍者のように鉄帷子(てつかたびら)を着て襷(たすき)がけ、やる気十分です。うしろの障子の桟がなんとなく変です。

P12P13見開き

現在でもこのような部屋はあります。このあともなくなることはないような気がします。

裏表紙

いつもながらの亀の意匠。池の中を自在に泳いでいます。


 

2021年7月19日月曜日

豆本 さるか尓合戦 その12

P12

(読み)

こゝへき多りこのあい多゛ハ

ここへきたりこのあいだ は


まこと尓おきのとくお王び

まことにおきのどくおわび


尓き満し多といろりそバへ

にきましたといろりそばへ


よれハ奈可与り多満ご

よればなかよりたまご


者年いでさるの可本へやけ

はねいでさるのかおへやけ


つきこれハ多満らぬ

つきこれはたまらぬ


とぬ可ミそをつけんと

とぬかみそをつけんと


せし可゛王き与り

せしが わきより


者ちいでさん

はちいでさん


\゛/尓さゝれ●

ざ んにさされ


(大意)

ここへやって来ました。

「この間は

まことにお気の毒でした。

お詫びに来ました」と囲炉裏のそばへ

近づいたところ、囲炉裏の中からたまごが

はね出てきて、猿の顔にやけどをさせました。

これはたまらぬと、糠味噌をつけようと

しましたが、脇から蜂が出てきて

さんざんに刺され

(補足)

「まこと尓」、「き満し多」、平仮名「ま」と変体仮名「満」(ま)。

「よれハ奈可与り」、平仮名「よ」、変体仮名「与」(よ)。

縁側は竹であつらえたようです。障子の桟が丁寧に描かれています。

 

2021年7月18日日曜日

豆本 さるか尓合戦 その11

P11

(読み)

者ねてやらん

はねてやらん


とそれ\゛/て王

とそれぞ れてわ


けを志てまつ

けをしてまつ


とも志ら須゛さるハ

ともしらず さるは


ま多゛あと尓可

まだ あとにか


起可゛ある由へそれもとらんと

きが あるゆえそれもとらんと


(大意)

はねてやろうと

それぞれ手分けして

待っている

とも知らずに猿は

まだ柿がその後も

残っていたので

それらを採ろうと

(補足)

「者ねて」、変体仮名「禰」ではなく平仮名「ね」。文章が背景の青縞で読みづらいですが鮮明です。

 蜂の縦縞柿色の羽織が渋い。蜂の顔がどうなっているかパッと見た目わからなかったのですけど、前に飛び出しているふたつの丸いのが目でその下に脚があります。お尻の部分がそのまま首になってます。竹の格子壁をとおして外の風景も丁寧に描かれています。

P10P11見開き

三人並んでの相談、立ち臼の存在がでかい。親方です。

 

2021年7月17日土曜日

豆本 さるか尓合戦 その10

P10

(読み)

可多起

かたき


うちの

うちの


さう多゛ん

そうだ ん


さいちう

さいちゅう


多満ごハ

たまごは


いろり尓

いろりに


いりて

いりて


(大意)

敵討ちの相談さいちゅうに

玉子は囲炉裏に入って

(補足)

 読みに難しいところはなさそうです。立ち臼の格子柄に色を散らした着物が素敵です。それを引き立てるように玉子の着物は地味。床の間も立派。

 

2021年7月16日金曜日

豆本 さるか尓合戦 その9

P8P9見開き

(読み)

P8

く満ん者゛ち

くまんば ち


とんできて

とんできて


春くひ者ち

すくいはち


可尓ゝむ可ひ

かににむかい


王れのとも

われのとも


多ぢ●

だち


P9

多ちう

たちう


春と

すと


多満ご

たまご


といふ

という


もの

もの


あり

あり


者やく

はやく


ふ多り

ふたり


をよび

をよび


尓やり天

にやりて


(大意)

熊ん蜂が

飛んできて

救い、蜂と

蟹に向かい

わたしの友達に

立ち臼と

玉子というものがいる。

はやく二人を呼びにいって

(補足)

「く満ん者゛ち」、パッとみため平仮名「ね」に見えるのは変体仮名「満」(ま)。「多満ご」も確認。変体仮名「者」(は)が何箇所か出てきてます。平仮名「む」の後半が右下に流れます。

「とも多ぢ」、濁点が「ち」のほうについてしまってますが、ひとつ上の文字につくべきところがそうなっている例がたくさんあります。不思議です。

「多ちう春」、「立ち臼」という言葉を知らないとなんのことが不明です。変体仮名「春」(す)は「十」+「て」のような形。

「者やく」と「尓やり天」の「や」の筆順とかたちがことなっています。変体仮名「天」(て)は「〃」+「く」のような形。

 玉子は旅装のような姿、左袖と左肩の柄が見えてますがこの着物はどうなっているのでしょう。左後ろの松をわざわざ交差させて描くところは絵師の遊び心。子どもたちは玉子の白い顔のところに絶対に百人が百人、いたずら書きをしたはず・・・

 

2021年7月15日木曜日

豆本 さるか尓合戦 その8

P8

P9

(読み)

P8

志ぶ

しぶ


可起

かき



可尓の

かにの


せ奈可

せなか


へぶつ

へぶつ


けさん

けさん


\゛/尓

ざ んに


奈や

なや


まし

まし


P9

ける

ける


とこ

とこ


ろへ☓

ろへ


(大意)

渋柿を蟹の

背中にぶつけ

ひどい目に

あわされました。

そこへ

(補足)

 ここの上段の話は前頁のもの。猿は手ぬぐいでほおかぶりし、さらに右手の袖で身を隠してるつもりの知らんぷり。かかとを揃えての立ち姿は定石のひとつ。左の裾が普通にしていたらあまり絵としてはおもしろくありません。

「せ奈可」、「可」が小さくて見にくいですけどあります。

「ける」と平仮名表記。

「ところへ」、「と」と「こ」の見分けは難しいので文章の流れから判断します。

 

2021年7月14日水曜日

豆本 さるか尓合戦 その7

P7

(読み)

さん

ざん


禰ん

ねん


尓おもひ

におもい


や可満しく△

やかましく


△いへバ

 いえば


さるハ

さるは


や可ましと

やかましと


(大意)

残念におもい

大声で文句を言うと

猿はうるさいっと

(補足)

「や」が現在の平仮名「ゆ」にみえてしまいます。変体仮名「也」(や)は平仮名「つ」をかいて最後に内側でクルッと右回りに一周します。

P6P7見開き

 両者を比べると、猿のほうがやや稚拙?柿の木も少々荒っぽい。蟹の脇には石灯籠。上の中抜の部分をとおして色を忘れていませんが、柿の枝分かれ部分はうっかり・・・

 

2021年7月13日火曜日

豆本 さるか尓合戦 その6

P6

(読み)

きへの本゛れぬいへ

きへのぼ れぬゆえ


とることできぬと

とることできぬと


きさ満とりて

きさまとりて


くれゝバ王けて

くれればわけて


やるべしと由ふ

やるべしちゆう


さるハ春ぐ尓

さるはすぐに


き尓の本゛りて

きにのぼ りて


つへ多るを

つえたるを


くらひ春こし

くらいすこし


もよこさ須゛

もよこさず


志多尓て

したにて


可尓ハ

かには


(大意)

木に登れなかったので

採ることができませんでした。

おまえが採ってくれれば分けて

やるぞと言うと

猿はすぐに

木に登って

熟したもの食って

少しもよこさず

下にいた蟹は

(補足)

「きへの本゛れぬいへ」、「いへ」は「ゆへ」のまちがいでしょう。

「つへ多るを」、辞書を引きました。「漬える」や「費える」はわかりましたが、「熟える」は知りませんでした。いい歳をしたジジイなのにお恥ずかしいばかり・・・

文章はきれいに摺られていて読みやすい。

 

2021年7月12日月曜日

豆本 さるか尓合戦 その5

P4

(読み)

可尓の可多

かにのかた


きさるを

きさるを


う春と多満

うすとたま


こ者ち尓て

ごはちにて


うちとり

うちとり


多り

たり


(大意)

蟹の敵(かたき)

猿を

臼(うす)と玉子

と蜂(はち)で

討ち取ったり


(補足)

 一番左の武士蟹は手に「大當」の扇をもって応援。その隣は帷子を肌着にいざと構える玉子武士。臼は歌舞伎の衣装。頁かわって、刺股(さすまた)で取り押さえるは蜂、中央はまいったまいったと猿。奥には立会人が2名蟹姿。

 これを読んだ子どもたちは、それぞれ配役を決めて「猿の敵うち」ごっこをしたんでしょうね。

 説明文の背景の赤色に白い柄があるなと拡大してみると、どうやら蜂のようです。違うかな?

P4P5パノラマ

 パノラマで見ると、いつもおなじことをかいてしまいますが、やはりこの広がりはいいです。

 

2021年7月11日日曜日

豆本 さるか尓合戦 その4

P2P3見開き

(読み)下段

P2

●由起て

 ゆきて


多のしミ

たのしみ


い多るとこ

いたるとこ


ろへさる8

ろへさる


P3

8き多りて

 きたりて


奈ぜとら

なぜとら


ぬといゝ

ぬといい


けれバ王れハ

ければわれは


(大意)

いって楽しんでいる

ところへ

猿が来て

なぜ(柿の実を)採ら

ないのかと

聞いたところ

自分は


(補足)

合印はいろいろな形がありますが、◯ふたつの8の字のものはあまり見たことがありません。

「こ」と「と」は似ているので注意。

 蟹の肌の色が白くて、色を忘れたのではとおもいましたが、このあとの頁を見てみるとみな白いので色白の蟹ということのようです。水桶の取っ手の下のところは色忘れ。

生け垣の格子の部分はすべてしっかり紐で縛られてますし、枝折り戸のひし形の格子部分も同様です。丁寧です。

 

2021年7月10日土曜日

豆本 さるか尓合戦 その3

P2

P3

(読み)上段

P2

うへ

うえ


て多の

てたの


しミい多り

しみいたり


ひ尓まし△

ひにまし


P3

△ゑ多゛者

 えだ は


志げり

しへり


多くさん尓

たくさんに


可起奈り

なきなり


个る

ける


きの

きの


もとへ●

もとへ


(大意)

植えて楽しんでいました。

日増しに枝は茂り

柿が沢山に実りました。

木の元へ

(補足)

 文章の流れが両ページにまたがるので上下段に分けます。△◯8の合印でつながります。

「ゑ多゛者」、助詞の「は」はたいては「ハ」ですが、ここでは変体仮名「者」(は)。

中央の太い幹の両面の色が異なってますけど、陰影のつもりなら極端だし、何か訳があるのか?

 猿はわらじで蟹はけとばされたら痛そうな角下駄、なんとなくそれらしい。

猿が左手でちょいと裾を持ち上げる仕草が粋なんでしょうね。

 

2021年7月9日金曜日

豆本 さるか尓合戦 その2

P1

(読み)

明治十九年十一月二日内務省交付


む可し\/ ある

むかしむかしある


や満可げ尓

やまかげに


さると可尓

さるとかに


ありあるひ可尓ハむ春

ありあるひかにはむす


びをひとつもちさるハかきの

びをひとつもちさるはかきの


多年をもちき多りむ春び

たねをもちきたりむすび


ととり可へくらゐ个る可尓

ととりかえくらいけるかに


ハ可起の多年をもち

はかきのたねをもち


王可゛やへ可へり尓ハへ

わが やへかえりにわへ


(大意)

昔々ある

山かげに

猿と蟹が

いました。ある日蟹はむすびを

ひとつもち猿は柿の

種をもって来ました。(猿は)むすびと

取り替えて食べてしまいました。蟹は

柿の種を持って

我が家へ帰り庭へ

(補足)

 この豆本は保存状態がとても良くて文字にかすれがなく絵の色合いも鮮やかです。発売された当初のままではないかとおもわれます。

 文章に難しいところはなさそうです。

 猿の体毛の色が濃紫色、僧侶なら高僧であります。それに花柄の赤いちゃんちゃんこが可愛らしい。手には柿の種をひとつ持っているはずですが、拡大してもわかりません。蟹のでっかい白いむすびは10人前くらいありそう。蟹の腹のしかめっ面のシワは定番です。山奥のどこかののどかな風景です。

 

2021年7月8日木曜日

豆本 さるか尓合戦 その1

表紙

見返し

(読み)

さるか尓合 戦

さるかにがっせん


綱 島 藏 版

つなしまぞうはん


東京図書館印 TOKIO LIBRARY

(大意)

(補足)

 まわりの花柄模様はこのシリーズではみな同じようです。二人ならべるとどうしても阿行吽形になってしまうようで、二人の手のひらがパーとグーになってます。上の武者姿の上着が背景の色と同じになってしまってます。

「か」は平仮名ではなく変体仮名「加」(か)だとおもいます。


 

2021年7月7日水曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その13

P13

(読み)

あ可め本こらを

あがめほこらを


多ていと多いせつ尓

たていとたいせつに


とうとミ个る

とうとみける


めで多し\/\/

めでたしめでたしめでたし


御届明治一九年九月廿九日

日本橋區馬喰町二丁目十四バンチ

編輯兼

出版人 綱島亀吉

定價弐銭

(大意)

崇(あが)め祠(ほこら)を

建て大変に大切に

敬って大事にしました。

めでたしめでたしめでたし

以下略

(補足)

当時の平仮名「あ」は現在のものと形が少し異なって「お」の「ヽ」をとったような形です。

「とうとミ」、2行前の「本こらを」の「こ」と、ここのふたつの「と」がまぎらわしい。「尊ぶ」(とうとぶ)とは、最初気づきませんでした。

 漢字は象形文字から出発していますから、さらに進んで意匠化しやすくここでも「文福大明神」は好き勝手に変形されています。

P12P13見開き

 山の千両箱を背に抱えることができれば、誰でも日に何度も手を合わせるとおもいます。幸せそう。

裏表紙

これは茶釜を上からみたところの意匠でしょう。おしゃれです。

 

2021年7月6日火曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その12

P12

(読み)

[つゞき]くら奈ぞ

 つづき くらなぞ


めて多くさ

めてたくさ


可へちや可゛満

かえちゃが ま


をぶんふく

をぶんふく


多゛いめ与うし゛んと

だいみょう じ んと


(大意)

[つづき]蔵など(たてて)

めでたく栄え

茶釜を文福大明神と

(補足)

 夫婦で文福大明神茶釜に手を合わせ感謝しているの図。背後には千両箱が山なりです。床がぬけそう。文章に難しいところはなさそうです。

 

2021年7月5日月曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その11

P11

(読み)

◇まい日\/

 まいにちまいにち


ゑいとう\/

えいとうえいとう


大いり くんじ由

おおいりぐんしゅう


奈し个るま多

なしけるまた


大 めう 可゛多尓めされ

だいみょうが たにめされ


奈ぞしてお本起尓

なぞしておおきに


可年もうけを

かねもうけを


奈しりつ者゜に

なしりっぱ に


ふしんをし

ふしんをし


[つゞく]


(大意)

毎日毎日

見物人が大勢つめかけ

大入りとなり賑わいました。

また大名がたにお招きなったりして

大いに金儲けをして

立派に普請をし

(補足)

「ゑいとう」、辞書には『興行などで,見物人が大勢つめかけるさま。また,劇場などで,大入りを願う口上の言葉。「東西東西,―,―」「四季に絶せぬ見物は―,―又―」〈洒落本・当世気とり草〉』とありました。

「くんじ由」、群衆(ぐんしゅう)のことだとおもうのですが読み間違いかも。

「可年」、「子」のようにみえるのは変体仮名「年」(ね)。くずし字は「◯」に「ヽ」のようなかたち。「もうけを」、ここでは平仮名「け」、変体仮名「个留」(ける)は習慣で以前の表記のままなのでしょう。

「りつ者゜」、半濁音の「◯」がとてもはっきり立派であります。

P10P11見開き

 ここの場面は舞台ではないので、大名家にお招きになったときの座でしょう。髪型はきっと大名家の奥方のもでしょうし、着物柄も一人ひとりことなっています。

 

2021年7月4日日曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その10

P10

P10P11見開き

(読み)

[つゞき]

やしハその

やしはその


ちや可゛満をミせ

ちゃが まをみせ


もの尓多゛し个る尓

ものにだ しけるに


江戸ぢ うの

えどじゅうの


ひやう者゛んと

ひょうば んと


奈り个る尓◇

なりけるに


(大意)

つづき

香具師(やし)はその

茶釜を見世物に出したところ

江戸中の評判となりました。

(補足)

「(や)しハ」「ひ(や)う者゛ん」、「ち(や)可゛満を」、「や」のかたちに注意です。

変体仮名「个」(け)は「々」のようなかたち。

最後の手裏剣のような印は「合印」(あいいん)、同じ印のところへつづきます。

 猿回しならぬたぬき回し。右手に指示棒、左手にリード、右脇には小太鼓があります。猿回しでは芸のつなぎで胸を張って直立姿勢をとるところがありますが、この場面も同じです。たぬきは精一杯胸を張りからだをそらしきっています。その背には古めかしい茶釜、これが主役でしょう。尻尾が愛らしい。

 今回はP11ものせました。頑張って読んでみてください。