2023年5月31日水曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その24

P24奥付 個人蔵

(読み)奥付

版権所有

日本昔噺第八號

浦嶋太郎

明治三十年二月廿九日印刷

同年三月七日發行

同年三月廿二日版権登録


東京市四谷區本村町丗八番地

発行者 長谷川武次郎

譯者 佛國人ドウトルメル

 

東京市京橋區竹田町一番地

印刷人 柴田喜一

(大意)

(補足)

 貝が三つ。物語に出てきた竜宮に仕える家来たちに貝はいませんでした。最後の奥付にとっておいたのかいと長谷川武次郎さんにお聞きしたいところであります。その貝も成長線など丁寧に描いています。

 東京女子大学比較文化研究所所蔵ちりめん本コレクションにこの絵本と同一の平紙版のものがあります。異なっているのは発行者の住所でこの絵本は「東京市四谷區本村町丗八番地」、平紙版が「東京市京橋區日吉町十番地」となっていることだけです。平紙版のほうが手間はかかってませんから廉価版として発行したようにおもわれますがさて・・・

 

2023年5月30日火曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その23

P24奥付 個人蔵

(読み)P24

Si seulement il avait agi, comme on

le lui avait conseillé, il aurait pu vivre

emore mille années.

N'aimeriez vous pas aller voir le

palais des Dragons, par delà les vagues

où le dieu de la mer vit et gouverne

comme un roi les Dragons, les tortues

et les poisons? où les arbres ont des

eméraudes pour feuilles, des rubis

pour fruits, ou les queux des poissons

sont d'argent et les queux des dragons

sont d'or?

(大意)

 もし浦島が言われたことをその通りに守ってさえいれば、この先千年も生きていたかもしれません。みなさんは海の向こうにある竜宮に行って見てみたいとおもいますか?そこは海神が住み王として君臨し、竜や亀や魚を支配しているのです。また樹々は葉をエメラルド色に輝かし、ベリーの果実はルビーのように実っています。そして魚の尾ひれは銀であり竜の尾ひれは純金なのです。

(補足)

 贅沢な絵本です。長谷川武次郎はこの絵本を最初は日本の英語を学ぶ子どもや青少年の学習教材として販売しはじめたのですが、外国からの観光客に評判がよく外国向けへのお土産用にと販売軸を変えたそうです。英語版だけではなくフランス・ドイツ・スウェーデン・デンマーク・ポルトガル・スペイン・オランダなど外国語版の多さに驚きます。

 

2023年5月29日月曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その22

P22P23 個人蔵

(読み)

avoir ouvert la boîte, il ne pourra plus

jamais revenir au palais du dieu de

la mer.

 Mais bientôt il ne put plus ni courir

ni crier. Car, soudain, ses cheveux

devinrent blancs comme la neige, son

visage se rida et son dos se courba en

deux comme celui d'un vieillard. Son

souffle s'arrêta et il tomba mort sur

le rivage.


Pauvre Ourasima!

Il mourut

parce

qu'il

avait

été léger

et désobéis-

sant

(大意)

(妻が彼に言ったことを思い出してしまった今となっては、)箱を開けてしまったあと、竜宮に再び帰ることはいかようにしても決してできないのでした。しかしまもなく浦島は走ることも叫ぶことももはやできませんでした。

 突然、彼の髪の毛は雪のように白くなり、顔はしわだらけになり、腰は老人のように曲がってしまいました。それから息も絶え絶えになり浜で倒れ込み死にました。

 かわいそうな浦島!彼が死んだのは愚かだったからでもありまた妻の言いつけに従わなかったからでもありました。

(補足)

 浦島がひざまずき後ろにのけぞるからだを支えている足の指先のそり具合がなんともリアルです。箱は外側は黒い漆仕上げ、内側は金の蒔絵のように金が散りばめられているようにみえます。

 浦島が亡くなってしまったあと、この箱も急に朽ちて消滅してしまったのでしょうか?

 砂浜というより磯辺にうちよせてはひく波、百年も千年もずっと繰り返します。

 

2023年5月28日日曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その21

P20P21 個人蔵

(読み)P21

pour le conduire. " Peut-être, se dit-il

qu'en ouvrant la boîte qu'elle m'a

donnée, trouverai-je le chemin." Il

désobéit donc aux ordres de la

princesse qui lui prescrivaient de ne

pas ouvrir la boîte; peut-être, les

oublia-t-il, dans sa légèreté. Quoi

qu'il en soit, il ouvrit la boîte. Que

pensez vous qu'il en sortit? Rien

qu'un nuage bleu qui s'envola sur

l'océan. Ourasima lui cria de s'arrêter,

courut après et pleura de chagrin; car

il se rappelait maintenant ce que sa

femme lui avait dit et comment, après

(大意)

浦島は考えました。

「多分、もし妻が持たせてくれた箱を開ければ、わたしは帰りの道を見つけることができるにちがいない。」

そうして、彼は箱を開けてはいけないという妻の言いつけに背いたのでした。それとも多分それらの約束を忘れていたのかもしれませんでした。いずれにしろ浦島は箱を開けました。みなさんは箱から何が出てきたと思われますか?

 海の上に浮かんでいる白い雲のようなもの以外なにも出てきませんでした。浦島はその雲のようなものに向かって消えろと大声をだし、慌てふためき、悲鳴をあげました。妻が彼に言ったことを思い出してしまった今となっては、(箱を開けてしまったあと、竜宮に再び帰ることはいかようにしても決してできないのでした。)

(補足)

 この当時の印刷は手作業でした。この和紙は薄い越後和紙らしいのですが、ちりめん加工をする前に、平紙の状態で摺ったあと、その和紙をセーム皮のようなもので挟み込み、麺棒に巻き付けます。それを棒の両端から圧縮して縮め、いったん挟み込んだ皮から剥がし、次は向きを変えて同じことを繰り返すこと、4方8方から圧縮してちりめん状にしてゆきます。もとの平紙の大きさから比べると8割程度の大きさになってしまうということです。

 それでもこんなに鮮明な文字をたもっているのですから、見事なものだとおもいます。

 

2023年5月27日土曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その20

P20P21 個人蔵

(読み)P20

ment de la longueur d'une année

sur la terre, de sorte que les trois

années gu'il y avait passées équiva-

laient effectivement à des centaines

d'années. Naturellement il ny avait,

pour lui, aucun intérêt à rester chez

lui, maintenant que tous ses amis

étaient morts et enterrés, et que le

village même n'existait plus. Oura-

sima était donc très-désireux d'aller

retrouver sa femme, la princesse des

Dragons, de l'autre côté de la mer.

Mais quel était le chemin? Il ne pou-

vait pas le trouver, n'ayant personne

(大意)

ですから、彼の竜宮での三年間は実際は数百年にもおよぶことだったのです。もちろん、もう故郷にとどまる理由はありませんでした。いまではかれのすべての友人たちは亡くなってしまっていましたし、村自体もとっくに存在してなかったからでした。それから浦島は海の向こうの竜宮にいる妻のところへ帰りたいと激しく心がつのりました。しかしどうやって帰ったらいいのだろう?彼は帰りの途を見つけることができませんでした。誰も浦島に帰るべき道を教えてくれる人はいませんでした。

(補足)

 再び挿絵なしの見開きページです。活字の美しさを楽しみましょう。

 

2023年5月26日金曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その19

P18P19 個人蔵

(読み)P19

en rubis et ges dragons à queue d'or

pur, devait faire partie du pays des

fées, el qu'un jour y était probable-

(大意)

(突然浦島の頭に珊瑚の壁に囲まれ)ルビーの果実が実り純金の尾をもつ竜たちがいる(海神の宮殿がよぎりました。)

そしてそこはきっと一日が一年にも及ぶすばらしい国であるにちがいありません。

(補足)

 左の三軒の民家の大きな立木はよくある樹木のようですけど、右側の三本の大きな立木は枝ぶりがどこか均整がとれてなく妙であります。そのうち二本はなんだか人形(ひとがた)のようにみえなくもありません。

 

2023年5月25日木曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その18

P18P19 個人蔵

(読み)P18

Alors Ourasima se mit, all réfléchir.

Il pensa que le palais du dieu de la

mer, avec ses murs do corail, ses fruits

(大意)

その時、突然浦島の頭に珊瑚の壁に囲まれ(ルビーの果実が実り純金の尾をもつ竜たちがいる)海神の宮殿がよぎりました。

(補足)

 右手に玉手箱を持ち土地の人と今の村の様子を聞いている浦島太郎、茫然自失で棒立ちになっているようにも見えますが、どこかふっきれてすっきりした表情にもみえます。

 風景からはなぜか湿気が感じられてしまうのは絵師・彫師・摺師たちが湿潤な日本に育ったからでしょうか。

 空には青色の濃淡があり地表に近づくにつれて赤みの濃淡に変化してゆくという手の込んだ摺りをしています。

 遠景の山肌、その手前の丘、ふたりの立つところ、これらにも微妙に摺り加減をして遠近と立体感を与えています。全体が挿絵ではなく一枚の風景に仕上がっています。すばらしい。

 

2023年5月24日水曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その17

P16P17 個人蔵

(読み)P17

long du ruisseau, Ourasima leur dit:

"Voudriez vous me dire où a été

transportée la maison d'Ourasima qui

se trouvait à cet endroit?"

 " Ourasima, repondirent ces hom-

mes?  Mais il y a quatre cents ans

qu'il s'est noyé à la pêche. Ses

parents, ses frères, leurs enfants et

petits enfants sont tous morts depuis

longtemps, c'est une vieille, vieille

histoire, comment pouvez vous en-

core demander leur maison. Elle est

tombée ou ruines il ya des centaines

d'années."

(大意)

彼らに近寄って聞きました。

「浦島家の小屋がどこにあるか教えて下さいませんか?以前ここにあったはずなんですが、引っ越されたのでしょうか」

「浦島の家?」と二人は答えて「えぇっ!それは四百年前のことですよ。浦島は漁に出て溺れてしまったのです。彼の両親や兄弟、その子どもたちも孫もみんな大昔に亡くなってしまってます。古い古い話です。

どうして浦島の家を尋ねるなどととんでもないことをしようとおもったのですか。もう何百年も前になくなってしまっているのですよ」

(補足)

 繰り返してしまいますけど、挿絵がないとやはり寂しいです。


2023年5月23日火曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その16


P16P17 個人蔵

(読み)P16

 Mais qu'était-il donc arrivé pendant

qu'il avait été absent? Où était la

maison de son père? Où était le

village où il avait vécu? Les montag-

nes étaient bien là comme autrefois,

mais les arbres avaient été coupés. Le

petit ruisseau qui était tout près de

la maison de son père, était encore le

même; mais il n'y avait plus de

femmes qui lavaient leurs vêtements.

Il paraissait fort extraordinaire que

tout eût changé tellement en l'espace

de trois courtes années. Aussi, comme

deux personnes vinrent à passer le

(大意)

しかし、彼が離れていた間に一体何があったのでしょうか?父の小屋はどこにいってしまったのでしょうか?以前住んでいた村はどうなってしまったのでしょう?山並みは以前と同じようにそこにありましたが山の樹々はすっかり伐られてしまっていました。父の小屋の脇を流れていた小川はまだありましたが、そこで洗濯をする女たちの姿はもやはそこでは見かけませんでした。三年という短いあいだに何もかもが変わってしまったようにみえて、とても不思議なことにおもわれました。そうしていると、ちょうど浜をふたりの男がとおりかかり、

(補足)

 この2ページは挿絵がありません。やはりないと残念です。活字だけ拡大したりしてながめわたしているとその鮮明さにやはり驚きます。千年たっても変わらないのではないでしょうか。


2023年5月22日月曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その15

P14P15 個人蔵

(読み)P15

Ourasima promit de faire grande

attention à la boîte et de ne l'ouvrir

sous aucun prétexte; puis, prenant

son bateau, il se mit à ramer jusqu'à

ce qu'il arrivât aux rivages

de son propre pays.

(大意)

浦島はその箱を大切に扱うことを約束し、またどんなことがあっても開けないことも約束しました。そして箱を小舟の中に入れ、彼は舟を漕ぎ出しました。そしてとうとう彼の故郷の浜辺に到着しました。

(補足)

 二人の衣装、過不足なく線だけで描き、うまいものだなぁとじっと鑑賞してしまいます。

 

2023年5月21日日曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その14

P14P15 個人蔵

(読み)P14

Ourasima dit à sa femme: "Je suis

très-heureux ici; cependant je dési-

rerais retourner à la maison pour voir

mon père, ma mère, mes frères et mes

sœurs. Laissez moi aller pour quelque

temps et je serai bientôt de retour.

"-" Je ne puis approuver votre

projet de départ, répondit la prin-

cesse, et j'ai peur qu'il ne vous arrive

quelque chose d'affreux. Toutefois je

ne puis vous retenir si vous désirez

partir. Seulement prenez cette boîte

et ayez soin de ne pas l'ouvrir. Si

vous l'ouvrez, vous ne pourrez plus

jamais revenir."

(大意)

浦島は妻に告げました。

「わたしはここでとても幸せに暮らしています。それでもわたしは家に帰って父や母そして弟や妹に会いたいのです。少しのあいだ帰らせてください。すぐに戻ってきますから。」

「わたしは帰らせたくはありません。わたしは何か恐ろしいことがあなたに起こるのではと、とても不安なのです。でもあなたがどうしても帰りたいのでしたら、あなたを引き止めることはいたしません。この箱だけは必ず持って行ってください。そして箱を開けないよう十分気をつけてください。もし開けてしまったら、あなたはもうここに戻ってくることは決してできなくなるでしょう」

と妻はこたえました。

(補足)

 姫の衣装の紫と朱色がいままでのものより色濃く感じるのは、挿絵が大きいためでしょうか。腰元の髪の毛の隙間をとおして紫と朱の衣装がすけて見えています。髪の毛がフワァっと感じられ見事です。

 

2023年5月20日土曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その13

P12P13 個人蔵

(読み)P13

au milieu des arbres aux feuilles

d'émeraudes et aux fruits de rubis.

Mais un matin

(大意)

そこはエメラルド色の葉が茂り、ルビーのような果実がなっていました。

しかしある朝、

(補足)

 すっきりして素敵な部屋です。部屋を飾り立てずにその部屋自体の美しさで空間をひきしめるというのがわたしの好みで、この部屋がまさしくそう。姫はここでも紫に朱、そして桜色の三色、きれいです。一番手前に蛸がいるのを発見、右手が蛸です、なんかうれしい。一番右にいるのは、河豚(ふぐ)みたい。

 

2023年5月19日金曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その12

P10P11 個人蔵

(読み)P11

Les jeunes mariés vécurent ainsi

très-heuroux pendant trois ans. se

promenant ça et là, tous les jours

(大意)

新婚夫婦はとても幸せに3年間を過ごしました。毎日美しい樹々の間を散歩しました。

(補足)

 カジキマクロのようなでかい頭と刀のような口が目立ちます。竜宮に仕える者たちの頭はみないろいろな種類の魚の頭になっていてユーモラスです。蟹は表紙にありましたが、蛸やサザエなどもみてみたい。

 

2023年5月18日木曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その11

 

P10P11 個人蔵

(読み)P10

et pour fruits des rubis; les écailles des

poisons étaient d'argent et les queues

des dragons d'or pur. Imaginez ce

que vous pouvez avoir vu de plus

beau, rassemblez tout ensemble et

vous aurez une idée de ce que peut

être ce palais. Et tout cela appartenait

à Ourasima; en effet, n'était-il pas le

gendre du dieu de la mer, le mari

de la charmante

Princesse des

Dragons?

(大意)

ベリーの果実はルビーのように実り、魚の鱗は銀のように輝き、竜の尾にいたっては純金でした。想像してみてください、あなたが今まで見てきた非常に美しくキラキラ輝いているものを、それらをすべてあわせたものが、そうですもうおわかりでしょう、この宮殿なのです。そしてこれらすべてが浦島のものでした。実際、浦島は海神の婿ではなかったのでしょうか、魅力あふれる竜神の姫の夫ではなかったのでしょうか?

(補足)

 この頁の挿絵が磯の岩場のようになってしまってますが、きっとサンゴ礁のように描きたかったのだとおもいます。しかし、右側の頁とあわせてみれば違和感はなくどこか日本情緒あふれる竜宮の浜辺になっています。空の青さとそれが写り込んだような海の青さもきれいです。


2023年5月17日水曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その10

P8P9 個人蔵

(読み)P9

Jusqu'a ce qu'ils arrivassent au palais

des dragons, où le dieu de la mer

résidalt, et gouvernait comme un roi

tous les dragons, les tortues et les

poissons

Oh! comme cétait joli! Les murs

du palais étaient de corail, les arbres

avaient pour feuilles des émeraudes

(大意)

 そしてついに竜宮城まで漕ぎ続けたのでした。そこは海神が住み、龍や亀や魚の王として君臨していました。

 なんとすばらしいところなんだでしょう!竜宮の壁は珊瑚でつくら、樹々の葉はエメラルド色に輝き、

(補足)

 文章とはことなり、挿絵の風景はタヒチかトンガかどこかの南太平洋諸島のひとつにある藁葺き屋根に高床式のリゾート施設のようであります。樹々はエメラルドというより、緑茶色。でも、薄青色の海がきれいです。

 

2023年5月16日火曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その9

P8P9 個人蔵

(読み)P8

vous chercher. Vous m'épouserez,si

vous le voulez,et nous vivrons

heureux ensemble pendant mille ans

dans le Palais des Dragons au delà

de la profonde mer bleue."

Ourasima prit une rame, la fille du

dieu de la mer prit l'autre,et ils

ramèrent ainsi pendant longtemps,

(大意)

(わたしは)あなたを探し(連れて帰るためにここにやってきました。)もしあなたがよかったらわたしと結婚しましょう。そしてわたしたちは紺碧の海の向こうで千年の間一緒に幸せに暮らすのです。」

 浦島は一本の櫂をもち、海神の娘の姫はもう一本の櫂をもち、二人は長いこと漕ぎ続けたのでした。

(補足)

 浪はさざ波になりました。摺師のぼかしの技がなければできない表現ですがその前の彫師・絵師なくしてはできません。三位一体にちなんで三職一絵。

 

2023年5月15日月曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その8

P6P7 個人蔵

(読み)P7

de la mer m'avait envoyée voir si

vous étiez bon ou mauvais.

 "Nous savons maintenant que vous

êtes un bon et aimable garçon qui

n'aime pas à être cruel, et je suis venue

(大意)

あなたが善人なのか悪人なのかを確かめるようわたくしをここにつかわしたのです。

わたしたちはもうあなたが親切な良い少年で残酷なことをすることを好まないということがわかっています。わたしはあなたを探し連れて帰るためにここにやってきました。

(補足)

 この小舟は艫(とも)をみると丸太を二本つないでくり抜いたような作りになっています。初めてみました。神奈川県は東京湾に面した走水(はしりみず)に弟橘媛(おとたちばなひめ)神話があります。橘媛は海が荒れて海神を鎮めるために入水してしまうのですが、もしかしたらこの姫のように櫂をもって漕いだのかもしれません。

 

2023年5月14日日曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その7

P6P7 個人蔵

(読み)P6

dans le palais des Dragons, en dessous

des vagues. Ce n'était pas une tortue

que vous avez prise maintenant, et

que vous avez si généreusement

rejetée dans la mer. C'était moi

même. Mon pere, le dieu

(大意)

(父と一緒に)海原を越えたところの竜宮に(住んでいます。)

あなたがさきほど捕まえた亀ではありません。そしてあなたはとても優しく

その亀を殺すことなく海へ解き放しました。あれはわたくし自身でした。わたくしの

父、海の神は、

(補足)

 何度も書いてくどいのですけど、海のさざ波よりもう少し大きい小浪の描き方がほんとうにうまい!この絵を見ながら同じものを描いても描けない自信があります。

 今気づいたのですが、姫も櫂を手にして漕いでいるではありませんか、さすが海神の娘です。

 

2023年5月13日土曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その6

P4P5 個人蔵

(読み)P5

belle fille qui entra dans le bateau et

dit; Je suis la fille

du dieu de la mer

et je vis avec

mon père

(大意)

 そして少年漁師は居眠りをしていると、波間の下から美しい少女が現れ、小舟に乗り込み、語りだしました。「わたしは海の神の娘です。父と一緒に海原を越えたところの竜宮に住んでいます。」

(補足)

 姫の衣装は表紙のものと同じで、紫、赤、そして桜色の取り合わせが美しい。冠がべっ甲色なのはやはり亀だからでしょうか?

  小舟の中を拡大してのぞいてみると、櫂が船に縛り付けてあるように見えますが、居眠り中に流されてしまうのではないかと心配・・・


 

2023年5月12日金曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その5

P4P5 個人蔵

(読み)P4

l'empêcherai-je de vivre encore pen-

dant neuf cent quatre vingt dix neut

ans? Non, non, je ne serai pas si

cruel. Je suis sûr aussi, du reste,

que ma mère n'aimerait pas cela

non plus "

Tout à ces pensées, il rejeta la tortue

dans la mer.

Puis Ourasima s'endormit dans son

bateau; car il faisait alors une de ces

chaudes journées d'été pendant les

quelles tout le monde fait un petit

somme l'après midi. Comme il dor

mait, il vint du fond des flots une

(大意)

 浦島は心のなかで「魚は今夜のおかずになるだろうし、この亀だってそうしてもよさそうだし、もっとおいしいおかずになりそうだ。家に帰ってこのかわいそうな亀を殺して食べるなんて無理だよ。それにおれがこの亀の残り999年を失わせてしまうなんてできやしないぞ。無理むり、おれはそんなに残酷な人間じゃない。おふくろだっておれがそんなことをするわけがないってわかってるさ」とおもったのでした。

 そして、こんなことをつぶやきながら、彼は亀を海に逃してあげたのでした。

 そののち、浦島に起こったことは小舟の中で眠りについてしまったことでした。それはこんなに暑い夏の日々には誰しもが午後の居眠りを楽しんでいたからです。

(補足)

 大意ではなくフィクションになってしまったかもしれません。浦島太郎の噺は多くは浜辺で子どもたちにいじめられていた亀を助けるというところから始まります。海で釣り上げたという噺もあるようですけど、この部分どうもうまく訳せんません。まぁだいたいの噺のながれはこのようなところではないかというところであしからず。

 

2023年5月11日木曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その4

P2P3 個人蔵

(読み)P3

Un jour il partit pour la pêche.

Mais au lieu de prendre du poisson,

devinez ce qui lui vint? Une grande

et grosse tortue avec une écaille

très dure, une tête toute ratatinée et

une queue toute petite. Or, je dois

vous dire quelque chose que vous

ignorez vraisemblablement; c'est que

les tortues vivent un miller d'années,

du moins les tortues japonaises.

Ourasima, à cette vue pensa: "Un

poisson ferait tout aussi bien pour

mon dîner, mieux même; pourquoi

donc tuerai-je ce pauvre animal et

(大意)

ある日、彼は漁のため沖に船を出しました。

しかし釣れたのは魚ではありませんでした。

彼は何を捕まえたのでしょうか?なんと、

大きな亀だったのです、硬い甲羅となんともかわいい

しわしわの顔、それにちっちゃい尻尾がありました。

さて、わたしはここで読者の皆様にきっとご存知ないことを

お伝えしなければなりません。それは少なくともここ日本では

亀は千年も生きると言われていることであります。ですので

浦島は心のなかで「」とおもったのでした。

(補足)

「」の中は次回に。浦島が船べりで亀を放してやるため小舟が傾いているのがわかります。釣り竿とビクが見えます。大波でもなくさざ波でもない浪を描くのは難しいと思うのですけど、うまいものです。

 

2023年5月10日水曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その3

P1 個人蔵

(読み)

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR.


IL y a longtemps, bien longtemps,

vivait sur la côte de la mer du

Japon, un jeune pêcheur nommé

Ourasima, gentil et habile garçon,

très adroit de se ligne et de son filet.

(大意)

少年漁師浦島

昔むかしそのまた昔、とある日本の浜辺に浦島という若い漁師が住んでおりました。

親切な若者で、釣りが上手でした。

(補足)

その1では「小さな漁師」としましたが、「少年」としました。「若い」とどちらにするかで悩み、それも諦めきれずに大意では「若い」としました。

フランス語では

「PÊCHEUR」はaccent circonflexe。

「nommé」はaccent aigu。

「garçon」はcédille。

「très」はaccent grave。

さらに、ここにはまだでてきてませんが「ëïü」tréma があって、チリメン本では判別しにくい文字がありますので、本文を誤入力しているかもしれません。pêcheur を pécheur と間違えると漁師が罪人となってまた違う昔話となってしまいます。間違っていたらごめんなさい、先に謝っておきます。

 みごとな竹竿とびく。釣り糸の先にはでっかいマグロも釣れるのではないかとおもえる?型の釣り針があって、釣れてもこんな小さなビクには入りません。

 

2023年5月9日火曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その2

見返し 個人蔵

(読み)

LES CONTES DU VIEUX JAPON.

No.8.

Traduit par

J. DAUTREMER.

版権所有

TOUS LES DROITS RÉSERVÉS.

(大意)

日本昔噺第八号

訳者J.ドートルメ

版権所有

全著作権所有

(補足)

 龍の絵が全体に薄いのでどこがどうなっているのかよくわかりませんけど、しばらくながめたり拡大すると精緻に彫り込まれているのがわかります。ちりめんのシワの薄青色の濃淡が龍にまとわりついているような感じがして現実感を感じます。

 

2023年5月8日月曜日

OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR その1

表紙 個人蔵

(読み)

LES CONTES DU VIEUX JAPON.

No.8.

OURASIMA

LE PETIT PÊCHEUR.

Publies par T.HASEGAWA, 38 Yotsuya Hommra, Tokyo.

(大意)

日本昔噺 No.8

浦島 小さな漁師

出版 長谷川武次郎 東京 本村 四谷38

(補足)

Saint-Exupéryの「Le Petit Prince」をおもわせる題名ですがこちらのほうが先です。

表紙下部中央に大きな汚れがあります。汚れが透き通っているので拡大してみるとワタリガニのような蟹にみえます。竜宮城で歓待されているところでいろいろな魚顔の侍女のはいている朱色がきれいです。また主の着物もすばらしく、紫色がきれい。下部は波砕ける波頭が細かく描かれ、上部は日本画によくある隙間埋めの雲のような感じですけど樹木の茂る葉のようにもみえます。表紙だけに彩りもきれいで細かく描きこんでいます。

綴紐(とじひも)がきれいに残っています。

 

2023年5月7日日曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その17

裏表紙 個人蔵

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

 蜘蛛の巣に落ち葉が2枚つかまってしまったように見えます。本文とは関係なさそうですけど。

 蜘蛛の巣のように丸く同心円状になってないので違うかも。葉っぱは2枚とも葉脈や葉柄まで丁寧に描いてあり濃淡もほどこしています。このまま植物図鑑にのせても大丈夫そうです。

 これまでに「KACHI-KACHI MOUNTAIN」「THE TONGUE CUT SPARROW」「The Wonderful Tea-Kettle」と今回の「THE OLD MAN & THE DEVILS」で4つの約100年前の英文に翻訳した日本昔ばなしをアップしてきました。当時の日本語の文章より英文のほうが読みやすくわかりやすいというのもなんだかおかしなことであります。

 チリメン本を手にしたときのあの感触、そして文面や挿絵に独特の奥深さと立体感をあたえる細かな凹凸やシワ、なんともいえぬ感動がからだじゅうにはしります。

 

2023年5月6日土曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その16

P18P19 個人蔵

(読み)P18

now let us see him dance" This old

man was awkward and did not dance

as well as the other. So the devils

cried out, "You dance badly, and are

getting worse and worse, we will

give you back the lump which we

took from you as a pledge." Upon

this one of the devils brought the

lump and stuck it on the other side

of his face; so the old man returned

home with a lump on each side of

his face.

(大意)

「さぁ、老人の踊りを見ようじゃないか」この年寄の

動きはぎこちなく、あの老人の踊りと同じように踊れませんでした。

そのため、悪鬼たちはどなりました。「おまえの踊りはひどいぞ、それにどんどん下手く

そな踊りになっている。老人から質としてとった瘤を返してやる。」するとすぐに悪鬼た

ちのうちのひとりがあの瘤を持ってきてそれを年寄りのもう片方の頬にひっつけてしまい

ました。そうして年寄は両方の頬に瘤をつけて家に帰ったのでした。

(補足)

 両頬に瘤を付けた年寄りは渋面になっています。腰に挿しているのは煙管ではなく小刀でした。足元は前頁では草鞋でしたがなぜかサンダルになっています。

 背景のぼかしが入念です。地面は薄草色で、空は薄空色、その境目は薄っすらと日の出前の明かりになっています。立木や草なども写実的に描いています。摺師の技と熱意が伝わってくる最終頁です。

 

2023年5月5日金曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その15

P16P17 個人蔵

(読み)P17

the old man had got rid of his lump,

he determined that he would also

try the same plan to get rid of his

lump. So he went and crept into the

hollow tree and waited for the devils

to come. Sure enough, they came

just as he was told. They sat down,

drank wine and made merry just as

they did before. The old man afraid

and trembling crept out of the hol-

low tree. The devils welcomed

him saying, "the old man has come,

(大意)

老人が(どうやって)頬の瘤をとったのかという(話を詳しく聞いて)、年寄りは自分も瘤をとるために老人と同じようにしてみようとこころに決めました。

そうして年寄りはその場所に行き、例の木の洞(うろ)にはいずりこみ、悪鬼が来るのを待ちました。果たして、彼らは老人が言ったとおりやってきました。悪鬼たちは座って酒を飲み、以前に彼らがしたように陽気に騒ぎはじめました。年寄りは恐ろしくふるえながら洞からはい出ました。悪鬼たちは「老人がやってきたぞ」と言いながら喜んで迎えました。

(補足)

 挿絵のあるところはほとんど背景に薄青色やここのように薄灰青色の濃淡をほどこしています。このひとてまでぐっと挿絵あるの空間に広がりが出て絵を引き立たせています。

 

2023年5月4日木曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その14

P16P17 個人蔵

(読み)P16

Now among the neighbours there

was another old man who had a big

lump on the left side of his face.

Hearing all about how

(大意)

さてご近所のなかに、左頬に大きな瘤がある別の年寄りが

おりました。(老人がどうやって頬の瘤をとったのかという)

話を詳しく聞いて

(補足)

 瘤のある老人の左腰に小刀のようなものがささっていますが、きっと煙管でしょう。左の緑は笹の生け垣か藪でしょうか。また瘤の老人はわらじをはいていますが、瘤なし爺さんのはサンダルのような形にみえます。

 

2023年5月3日水曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その13

P14P15 個人蔵

(読み)P15

happened to you". So he told her

all that had befallen him.

(大意)

どうしたのですか!」。そして老人は自分におきた

一部始終を説明しました。

(補足)

 年寄りたちの着物の色のシックなこと。いいですねぇ。

 

2023年5月2日火曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その12

P14P15 個人蔵

(読み)P14

So the devils laid hold of it, twisting

and pulling, and took it off without

giving him any pain, and put it

away as a pledge that he would

come back. Just then the day began

to dawn and the birds to sing, so the

devils hurried away.

 The old man felt his face and

found it quite smooth and not a

trace of the lump left. He forgot

all about cutting wood, and hasten-

ed home. His wife seeing him, ex-

claimed in great surprise "what has

(大意)

そして悪鬼は瘤をつかみひねって引っぱり取りました。

老人には痛みもありませんでした。悪鬼は老人が戻ってくる

あかしとして取った瘤を取り置きました。

 老人は顔をさわってみると、左側の頬にあった瘤があとかたもなくなくなって

とてもなめらかになっているのに気づきました。木を伐りに来たことをすっかり忘れてい

て急ぎ家へ帰りました。妻は夫を見てひどく驚いて叫び声をあげ「

(補足)

 前頁にもありましたが悪鬼たちが手にしていた松明、宴会のときの焚き火、そしてこの囲炉裏、燃える火のゆらめきの濃淡やそれが立ち上る煙に溶けこんでゆく様がとても印象的です。

 煙管一式はどんなときでもてばなさず、またそれが描いてあると絵になります。

 

2023年5月1日月曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その11

P12P13 個人蔵

(読み)P13

"I have had this lump many years

and would not without good reason

part with it; but you may have it,

or an eye or my nose either if

you wish".

(大意)

「わしは何年もこの瘤と暮らしてきました。わけなくこれと

はなれることなんてできやしません。ですからどうしても

これを取ると言うなら目でも鼻でもどちらでもいいからもっていってください。」

(補足)

 ここの赤鬼青鬼ふうの悪鬼たちはの服は、豆本などに出てくる鬼ヶ島の鬼たちと同じように、中国や韓国の様式を連想させるものとなっています。やはり当時は外国といえばお隣の国々だったからでしょう。赤鬼の薄茶色の巻きスカートはなかなか素敵、青鬼のズボンの薄紫色がきれいです。