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2023年8月2日水曜日

箱入娘面屋人魚 その60

P32 国立国会図書館蔵

(読み)

ちうきよ 仕   り候   このうへいくらいきやうやら

じゅうきょつかまつりそうろうこのうえいくらいきようやら


その本どハ志れ申 さ須゛

そのほどはしれもうさず


とう本゛うさく尓多川多

とうぼ うさくにたった


百  年 ち可゛川てやく者らひの

ひゃくねんちが ってやくばらいの


もんく尓ハもれ多れども

もんくにはもれたれども


金 もまんと今 尓

かねもまんといまに


あ連ハまこと尓

あればまことに


外 ゝ のくさそうし

ほかほかのくさぞうし


の志まひでき合 の

のしまいできあいの


めて多可り个るとち可゛ひ

めでたかりけるとちが い


これハ可くべ川尓御あつらへ

これはかくべつにおあつらえ


とびきりのめで多

とびきりのめでた


可りける志多゛い奈り

かりけるしだ いなり


京  傳 作 ㊞

きょうでんさく


(大意)

今はわたくしの隣に住んでいる。この上、どれくらい生きるものなのであるかは、

まったくわからない。「東方朔が九千歳」と歌われるものにたった百年違いで

厄払いの文句にはならないかもしれないが、今は巨万の富をかかえている。

じつに、他の草双紙のおしまいの決め台詞「めでたしめでたし」とはことなり、

こちらはまったく「めでたし」を誂えたようにぴったしの

めでたいことなのでありました。

(補足)

「外ゝ」(ほかほか)、読めませんでした。意味も調べてわかった次第。

「でき合の」、「合」は前後の流れからなんとか。

 婦人は胸にくっきりと「人魚」とあります。裾の柄は青海波の一部のように見えますが、鱗に違いないようにおもわれます。

 ふたりの背後には千両箱を祭壇代わりに積み上げてお神酒徳利をのせています。

 「とう本゛うさく」、「東方朔」は前漢の人で、仙術をよくし、西王母(せいおうぼ)の桃を盗み食って長寿を保ったとの伝説がある、とものの本にはありました。文中たった百年違いとありますが、9000ー7900=1100ですので引き算の計算間違いです。

 「京傳作」の下の印章は「又臭」と読むのだそうです。人魚の臭気を許されよの意味。

 

2023年8月1日火曜日

箱入娘面屋人魚 その59

P32 国立国会図書館蔵

(読み)

此のもの可多りハ

このものがたりは


七 千 九  百  年 本ど

ななせんきゅうひゃくねんほど


む可しの事 尓て

むかしのことにて


どう可一 通 り尓きひて

どうかひととおりにきいて


ハうそらし个れとも

はうそらしけれども


もうとういつハり尓ごさ

もうとういつわりにござ


奈く候   人 魚 ハもとより

なくそうろうにんぎょはもとより


ふろうふし平 二ハとし可゛

ふろうふしへいじはとしが


よりそう尓奈るとハ女  本うを

よりそうになるとはにょうぼうを


奈め\/して今 尓このふうふ

なめなめしていまにこのふうふ


ぞんじやう尓ていまハ王多くしとなり尓

ぞんじょうにていまはわたくしとなりに


ち うきよ仕   り候   このうへいくらいきやうやら

じゅうきょつかまつりそうろうこのうえいくらいきようやら

(大意)

 この物語は七千九百年ほど昔のもので、このまま

通り一ぺんに聞いてしまうと嘘らしくおもえるのだが、

毛頭嘘偽りはございません。人魚はもともと不老不死で、

平次は年寄りになりそうになると、女房をなめなめして若返る。

いまでもこの夫婦は元気に暮らし、今はわたくしの隣に住んでいる。

この上、どれくらい生きるものなのであるかは、

(補足)

「千」「年」「手」のくずし字はどれもにたようなかたちで、最初は悩みます。

「よりそう尓奈るとハ」、「と(き)ハ」or 「ハ」をとるのかどちらでしょう?

 平次は座布団を敷いていますが、妻の方はなし。それとも元は人魚だったので不要なのか、さて?

ふたりとも煙管をもち、その前にあるのは火入れ、火屋(ほや)、火舎(かしゃ)とも。豪華な誂で、金持ちであることを示しています。

 

2023年7月31日月曜日

箱入娘面屋人魚 その58

P30P31 国立国会図書館蔵

(読み)

〽せミのぬけ可らとち可゛ひ

 せみのぬけがらとちが い


人 魚 のぬけ可らハめづらし个れバ

にんぎょのぬけがらはめずらしければ


こ連をきくす里やへうり

これをきぐすりやへうり


平 二可き年のそとの金 を

へいじかきねのそとのかねを


もう个る

もうける


よいとき尓ハ

よいときには


よい事 者゛可り

よいことば かり


ふき付 るもの奈り

ふきつけるものなり


P31

〽ゆくすへ

 ゆくすえ


とも尓

ともに


まもるべし

まもるべし


可奈ら須

かならず


う多可゛ふ

うたが う


事 奈可れ

ことなかれ


志可し

しかし


あて尓も

あてにも


する事

すること


奈可れ

なかれ


ドロン\/

どろんどろん


ドロ\/\/\/

どろどろどろどろ

(大意)

 蝉の抜け殻とちがい人魚の抜け殻は珍しく

これを生薬屋へ売り、平次はもうひともうけをした。

良いときには良いことばかりが続くものである。

(浦島)「これから先は夫婦ともに手を取り助け合いなさい。

疑うことなどもってのほか。しかし、頼りきってもいけないよ。」

どろどろどろん。

(補足)

 桃がふたつに割れてあらわれた桃太郎を意識したかどうかはわかりませんが、

人魚の抜け殻がわれて、あらわれたような構図です。

 平次の前の玉手箱から立ち上るのは白い煙。浦島太郎と奥さんの鯉(人魚の母親)は科白とともに大きな吹き出しの中にあって、異世界からあらわれたような光景になっています。

 この版では、浦島太郎が髭をはやしています。いたずら書きかな・・・


 

2023年7月30日日曜日

箱入娘面屋人魚 その57

P30P31 国立国会図書館蔵

P31

(読み)

〽さて女  本う人 魚 も

 さてにょうぼうにんぎょも


王可ひてやい可゛

わかいてあいが


手を付 多り

てをつけたり


あしをつけ多可゛りし

あしをつけたが りし


一 袮ん尓て

いちねんにて


者可まを

はかまを


ぬき多るごとく

ぬぎたるごとく


一 可ハむけ

ひとかわむけ


あし手可゛

あしてが


できて本んとうの

できてほんとうの


人 間 と奈り

にんげんとなり


个るこそ

けるこそ


も川とも

もっとも


あまり

あまり


こじつけ尓て

こじつけにて


うま春き多る

うますぎたる


本どふしぎ奈り

ほどふしぎなり


〽平 次ハ人 魚 と

 へいじはにんぎょと


中 む川ましく

なかむつまじく


うとくの

うとくの


ミと奈り

みとなり


さ可い丁  へんへ

さかいちょうへんへ


ぢ う多くを

じゅうたくを



引 こし个る此 所  を人 魚 丁

ひっこしけるこのところをにんぎょちょう


といひし可゛今 ハ人 形  丁  と

といいしが いまはにんぎょうちょうと


あやまり个る

あやまりける

(大意)

 さて女房の人魚も、若い連中が手をつけたい足をつけたいという一念が

通じたのか、袴を脱いだかのように一皮むけて手足ができて本当の人間になった

というのは、はなはだあまりのこじつけで出来すぎた不思議なことである。

 平次は人魚と仲睦まじく金持ちの身となり、堺町あたりに住宅を建て、引っ越した。

ここを(もと人魚が住むというので)人魚町というのだが、いまは訛って人形町と

言い伝えられている。

(補足)

 人形町は現東京都中央区日本橋の町名。人形師が多く住んでいたので俗称でそう呼ばれていた。近くの十軒店に「面屋(めんや)」という屋号の人形屋が実際にあった。その面屋と人形が箱入りで売られていたことから本作の書名「箱入娘面屋人魚」とした、とものの本にはありました。

 

2023年7月28日金曜日

箱入娘面屋人魚 その56

P30P31 国立国会図書館蔵

P30

(読み)

平 二大 き尓

へいじおおきに


よろこび个る

よろこびける


これ多満ごで

これたまごで


ふやして

ふやして


く王ゐで

くわいで


へらし多

へらした


やう奈

ような


もの奈り

ものなり


〽きよ袮ん

 きょねん


ふ可川 の八 まんで

ふかがわのはちまんで


可いちやうありし

かいちょうありし


玉 手者こハ

たまてばこは


す奈王ち

すなわち


これ奈り

これなり

(大意)

平次は大変に喜んだ。

これはたまごで増やし、クワイで減らしたようなもので

落ち着くところに落ち着いた。

去年深川の八幡で開帳した玉手箱は

つまりこれだったのだ。

(補足)

「よろこび个る」、ここの「こ」は前後で使われている形とは異なっているようにみえます。変体仮名「古」(こ)でしょうか。

「多満ごでふやしてく王ゐでへらし多やう奈もの」、なんのことかわかりません。ものの本には次のようにありました。たまごは強精、クワイは精を減らす食べ物と考えられていたことから、精力の均衡がとれたことをいう。

「ふ可川の八まんで可いちやうありし玉手者」、横浜の東神奈川近くにある慶運寺は別名浦島寺とよばれ、そこの玉手箱が当時江戸の町で開帳されたという記録があるそうです。


 

2023年7月27日木曜日

箱入娘面屋人魚 その55

P30P31 国立国会図書館蔵

P30

(読み)

さてもつりふ年ふうふ奈んぎの

さてもつりふねふうふねんぎの


ところへうら志ま太郎 こいを

ところへうらしまたろうこいを


どう\/してあら王れ出 可の

どうどうしてあらわれいでかの


こともと奈りし平 次尓

こどもとなりしへいじに


多満手者このふ多を

たまてばこのふたを


あけさせ个れハあい可ハら須゛

あけさせけれはあいかわらず


としの

としの


よる玉 手者この

よるたまてばこの


ゐとく尓て

いとくにて


て うどいゝ

ちょうどいい


可希゛んの

かげ んの


男  ざ可り

おとこざかり


かん平 どの尓

かんぺいどのに


奈る可奈ら須゛と

なるかならず と


いふとし

いうとし


可川こう尓

かっこうに


奈り个れハ

なりければ

(大意)

さて、釣船の平次夫婦がいろいろと面倒なことになっているとき、

浦島太郎が鯉といっしょにあらわれ出た。あの子どもになってしまった

平次に玉手箱のふたを開けさせると、いつになっても古びている玉手箱の

威徳のある力のおかげで、ちょうどよい年格好の(早野)勘平に似ているとも似ていないともみえる男盛りになっていた。

(補足)

早野勘平は仮名手本忠臣蔵で31歳で亡くなっている。

「可希゛んの」、変体仮名「希」(け)と読みましたが、この変体仮名はあまりみません。

 浦島太郎が玉手箱を持ってあらわれ、それを幼子になった平次に開けさせるとは、なんとも奇抜なはなしの展開、おもしろい。平次の衣装のなりで今度は顔もツヤツヤの男盛りに若返っています。

 平次の右肩には「平」、左の腰蓑をつけた浦島の右袖に「浦」、その隣には頭にでっかい鯉をのせた美人、帯柄は青海波。浦島の袖や裾のところの柄は浪となっていて、凝ってますねぇ。

 

2023年7月26日水曜日

箱入娘面屋人魚 その54

P29 国立国会図書館蔵

(読み)

女  本うハ尓んぎよていし由ハ

にょうぼうはにんぎょていしゅは


子どもさりとハつまらぬ

こどもさりとはつまらぬ


事 と奈るあまり由き

こととなるあまりゆき


すぎるものを奈め

すぎるものをなめ


春ぎ多や川多゛と

すぎたやつだ と


いふも

いうも


こん奈

こんな


事 可ら

ことから


いひ

いい


出せし

だせし


奈るべし

なるべし


〽それミ奈せへし

 それみなせえし


あんまり奈め

あんまりなめ


すぎ奈者る可ら

すぎなはるから


そう多゛

そうだ


〽可ゝアヤこれ

 かかあやこれ


まあどうし多

まあどうした


もん多゛

もんだ


アゝちゝ可゛

ああちちが


のミ多く

のみたく


奈つ多

なった

(大意)

女房は人魚、亭主は子ども、こうなっては

目も当てられぬ事となった。

あまりにゆき過ぎるヤツのことを

嘗め(すぎ)たヤツだというのは

こんな事から言い出したのだろう。

(補足)

「つまらぬ事と奈る」、「る」は変体仮名「留」のかたちで、丸っこい。そして「る」のかたちになっているのが「事」のくずし字と変体仮名「奈」(な)。

「奈るべし」、こちらの「奈る」は同じく変体仮名「奈」が「る」のかたちで、次の「る」はほとんどかたちになっていません。

「可ゝアヤ」、いったん読めてしまえばなんでもないですけど、初見では??でした。

 平次が大人のなりで、そのまま子どもの顔つきになっているのが愉快ゆかい。

 

2023年7月25日火曜日

箱入娘面屋人魚 その53

P29 国立国会図書館蔵

(読み)

平 二ハまんとし多可年

へいじはまんとしたかね


もちと奈り此 うへの

もちとなりこのうえの


よく尓ハどいの二 郎尓

よくにはどいのじろうに


あら年どもとし二十

あらねどもとしはたち


多゛尓王可くんハおもしろ

だ にわかくんばおもしろ


多ぬきとてまへもの

たぬきとてまえもの


奈れバま可奈すき可゛奈

なればまがなすきが な


女  本うを奈め个る可゛

にょうぼうをなめけるが


奈めれバ奈める本ど

なめればなめるほど


王可く奈る可゛

わかくなるが


おもしろさ

おもしろさ


尓王れを

にわれを


王すれて

わすれて


あんまり奈め

あんまりなめ


すぎつい尓七 ツ

すぎついにななつ


者゛可りのこぞうと奈り

ば かりのこぞうとなり

(大意)

平次はとんでもない金持ちとなり、

この上の欲は、土肥二郎ではないが、

歳がもう二十歳だけでも若ければよいのだがと、

自分の女房だからと、少しでも暇があるといつも

女房を嘗め続けた。嘗めれば嘗めるほど若くなるのが

面白く、我を忘れてあんまり嘗めすぎて、

ついに七つばかりの小僧となってしまった。

(補足)

「土肥二郎」、源頼朝の家臣、土肥次郎実平(どひのじろうさねひら)。芝居などでは老人として登場するが、もっと若ければ、合戦で活躍できたろうとされる人物。

「此うへの」、「う」がわかりずらい。

「二十多゛尓王可くんハ」、何度か音読して納得。

「多ぬきとてまへもの奈れバ」、どこで区切るか悩む。「多ぬきとて/まへもの奈れバ」「多ぬきと/てまへもの奈れバ」。

「ま可奈すき可゛奈」、間がな隙がな。しばらくわかりませんでした。

女房の脇には行灯があります。夜となく昼となく嘗め続けたことを暗示するとものの本にはありました。なるほどね。

 

2023年7月24日月曜日

箱入娘面屋人魚 その52

P28 国立国会図書館蔵

(読み)

〽人 魚 者可まひつけ須゛

 にんぎょはかまひつけず


つんとしている

つんとしている


〽しやうじん

 しょうじん


日尓ハ

びには


つきやハれ

つきやわれ


袮へよのふ

ねえよのう


〽あすあ多りハむさしやへでもいつて

 あすあたりはむさしやへでもいって


志や連るきハ奈し可へ

しゃれるきはなしかえ


志可しこのごしんぞも

しかしこのごしんぞも


む可ふしまでハ由多゛んの

むこうじまではゆだ んの


奈らねへ奈り多

ならねえなりだ

(大意)

人魚はそんな誘いにもおうじずツンとすましている。

(人魚曰く)「精進日にはお付き合いはできませんのよ」

「明日あたり、武蔵屋へでも行って洒落る気はねえかい。

しかし、このご新造も向島では油断のならねえなりをしてやがる」

(補足)

ローカルな内容で、ものの本にたよらないと理解できません。以下その本よりです。

向島には中田屋(葛西太郎)や武蔵屋権三郎といった鯉料理で有名な料理屋があって、人魚はまちがって料理されかねない。がこれは表向きのことで、江戸郊外向島の料理やなどは出会茶屋(大人の休憩所、ラブホテル)でもあったので、そこで嘗めてみたいというのが本音なのでした。

 

2023年7月23日日曜日

箱入娘面屋人魚 その51

P28 国立国会図書館蔵

(読み)

可くてつりふ年の平 次ハすこしのうち尓女 ウ本゛うの

かくてつりぶねのへいじはすこしのうちににょうぼ うの


お可げ尓て大 可年を

おかげにておおがねを


もうけ今 ハ

もうけいまは


奈尓ふそく奈きミの

なにふそくなきみの


うへと

うえと


奈り个れハ

なりければ


きんじよの王可いてやい

きんじょのわかいてあい


これをうら山 しく思 ひ

これをうらやましくおもい


平 二可゛ぶ男  をミこミ?て

へいじが ぶおとこをみこみ て


人 を人 ツくさいとも

ひとをひとっくさいとも


思 ハ須゛人 魚 をうをツくさい

おもわず にんぎょをうおっくさい


とも思 ハぬや可ら平 二可゛

ともおもわぬやからへいじが


る春といふと志けこミ

るすというとしけこみ


いろ\/いやらしきせりふを

いろいろいやらしきせりふを


のべて者り个れとも人 魚 ハ貞魚(ていきよ)

のべてはりけれどもにんぎょは   ていぎょ


多ゞしく中\/ せう ちせ須゛さ可奈多け

ただしくなかなかしょうちせず さかなだけ


おひれ尓て者年つ个る

おひれにてはねつける

(大意)

かくて釣船の平次は、少しのうちに

女房のおかげで、大金をもうけ

今は何不足のない身の上となった。

近所の若い手合はこれをうらやましくおもい

平次が醜男(ぶおとこ)であることをいいことに

人を人っ臭いともおもわず、人魚を人魚っ臭いとも

おもわぬ輩(やから)は、平次の留守をねらって家にしけこみ

いろいろいやらしいせりふを言ってものにしようとする。

しかし人魚はまさしく貞魚(貞淑)であり、これをなかなか承知せず、

魚だけに尾鰭ではねつける。

(補足)

「大可年を」、すぐには読めず次の「もうけ」でわかりました。

「平二可゛ぶ男をミこミ?て」、「て」の変体仮名は「天」や「帝」がありますけど、それらとはことなっています。「ミ」と「て」のあいだにもう一文字あるようにもみえますけど、わかりません。

 横兵庫に結った人魚は気分良く一服。そのまわりには武家や町人、さかりの付いたオス猫どもが一匹のメス猫の周りにジッとうずくまっている有様であります。

 

2023年7月22日土曜日

箱入娘面屋人魚 その50

P26P27 国立国会図書館蔵

(読み)

〽マアこいの

 まあこいの


きものを

きものを


ぬいで可ら

ぬいでから


ぶ多れやう

ぶたれよう


者奈しねへ

はなしねえ


\/

はなしねえ


〽うぬ可゛き可゛

 うぬが きが


き可袮へ可ら

きかねえから


者やら袮へハ

はやらねえは


このふん者゛りめ

このふんば りめ


者りさけらア

はりさけらあ


P27

奈尓者り

なにはり


さけるへ

さけるへ


きい多ふう奈

きいたふうな


者りさけるとハ

はりさけるとは


このごろ

このごろ


よしハらの

よしわらの


ハやり

はやり


ことバ可へ

ことばかえ


そん奈事 ハ

そんなことは


志ら袮へ

しらねえ


こ川ちやア

こっちゃあ


このふき

このふき


奈可゛し可゛

なが しが


者りさけらア

はりさけらあ


〽おいらハ志らぬ

 おいらはしらぬ


かゝさんハようよ

かかさんはようよ


おとゝ尓奈川多

おととになった


おいらハ志らぬ

おいらはしらぬ

(大意)

「あぁ、鯉の着物を脱いでからぶっておくれ、

はなしねぇ、はなしねぇ」

「おまえが、気がきかねぇからはやらねぇんだ、

このバカ女房が、張り裂けらぁ」

「なにが張り裂けるだ、きいたふうなことを。

張り裂けるとは、この頃吉原の流行り言葉かえ。

そんなことは、しらねぇよ。

こっちはこの鯉の吹き流しが張り裂けらぁ」

「おいらのしったことかい、

かかさんはやっとお魚になったのに、

おいらのしったことかい」

(補足)

 鯉の吹き流しの尻ビレあたりから女房の脚がにょっきり張り裂けて出てきています。

背景の衣桁の竿に着物の脇に鍵らしきものがかかっています。首から下げられるように紐までついています。なんでしょうか?

この絵をみてから、きっと鯉の吹き流しがたくさん売れたこととおもいます。

 

2023年7月21日金曜日

箱入娘面屋人魚 その49

P26P27 国立国会図書館蔵

P27

(読み)

人 魚 を奈めさせて大 金

にんぎょをなめさせてたいきん


をもうけ連バその

をもうければその


と奈りのていし由

となりのていしゅ


よくしんもの尓て

よくしんものにて


や可゛てあんじ付

やが てあんじつき


女  本うの山 の可ミ可゛

にょうぼうのやまのかみが


ふくらすゝめのやう奈

ふくらすずめのような


つらへおしろいをこて\/とぬらせむ年可ら

つらへおしろいをこてこてとぬらせむねから


下 へうちのこぞう可゛五月 のこいのふき

したへうちのこぞうが さつきのこいのふき


奈可しをとり出して者可満尓者可せ

ながしをとりだしてはかまにはかせ


尓多山 尓ん魚 尓志多て天こと\/しく

にたやまにんぎょにしたててことごとしく


可ん者゛んを出し一 奈め二百  文 川ゝのやす

かんば んをだしひとなめにひゃくもんづつのやす


うりを出し可け个れどもこいつハさぎを

うりをだしかけけれどもこいつはさぎを


可らすよ多可をち うさん奈ん本゛

からすよたかをちゅうさんなんぼ


こけ奈俗物(ぞくふつ)でもその手ハ

こけな   ぞくぶつ でもそのては


く王須゛多れひとり奈め尓

くわず だれひとりなめに


こぬ由へていし由やけをおこして

こぬゆえていしゅやけをおこして


ふうふけんく王をおつ者しめる

ふうふけんか をおっぱじめる

(大意)

人魚をなめさせて大金を儲ければ、

その隣の亭主は強欲者で、しばらく考え思い付き

山の神である女房のおたふくのような顔に

白粉をコテコテと塗りたくり、

胸から下は、うちの子どもが五月の鯉のぼりを取り出してきて

袴のようにはかせ、人魚に似た山人魚に仕立て上げた。

大げさに看板まで出し、ひとなめ二百文ずつと安売りにしたけれども、

これは、鷺を烏、夜鷹を昼三とするような嘘っぱち。いくらなんでも

愚かな俗物といっても、こんな手にだまされることもなく、

誰一人としてなめに来るものはいなかった。

亭主はやけを起こして、夫婦喧嘩をおっぱじめてしまった。

(補足)

「山の可ミ可゛」、「山」と気づくまでにちと時間がかかりました。

「ぬらせ」、「ら」のかたちはありませんが、ながれから「ら」。

「こと\/しく」、「こと」は合字。大げさに。

「こぬ由へていし由やけを」、変体仮名「由」と平仮名「や」はまちがえやすい。当時の「や」の形が現在の「ゆ」にそっくり。変体仮名「由」(ゆ)は縦棒が「口」のなかでゆらぎます。

 どこかの長屋で実際にありそうな夫婦喧嘩の光景で、おかしくもあるがちとこわい。

 

2023年7月20日木曜日

箱入娘面屋人魚 その48

P26P27 国立国会図書館蔵

P26

(読み)

ふ可川 の三ぶ可゛者やると

ふかがわのさぶが はやると


両  ごくへもでき

りょうごくへもでき


と奈りでち うしんくらをすると

となりでちゅうしんぐらをすると


こ川ちも忠  臣 くら

こっちもちゅうしんぐら


十  二文 のちやつけミせハ

じゅうにもんのちゃづけみせは


とこ可゛本んけやら

どこが ほんけやら


志れ奈く奈り

しれなくなり


志゛やう志うで

じょうしゅうで


八 丈  を尓せ

はちじょうをにせ


連バ

れば


八 王 子でも

はちおうじでも


おり出す

おりだす


奈可\/

なかなか


由多゛んハ

ゆだ んは


奈ら須゛

ならず


王れおとらじと

われおとらじと


お川可ふせるよの中

おっかぶせるよのなか


つりふ年の

つりふねの


平次可゛

へいじが

(大意)

深川の三ぶ(料理屋の名前)がはやると、両国へも同じようなものができ

隣で忠臣蔵がかかると、こっちも忠臣蔵、

十二文の茶漬屋は、どこが本家かわからなくなる有様。

上州で八丈に似せたものがでれば、八王子でも織り出す。

なかなか油断はならず、われもわれも遅れてはならずと

次から次へと出てくる世の中である。

釣船の平次が

(補足)

「ふ可川の三ぶ可゛」、「三」は「ミ」のようにも見えます。この「深川の三ぶ」とは、深川州崎にあった升屋にならんで、有名な料理屋「樽屋三郎兵衛」のことと、とある本にはありました。

 女房はなんともへんちくりんな格好をして夫婦喧嘩の真っ最中、それを脇で見る子どもはタジタジ。障子は障子紙のどこも破れることなく新品同様で下は板張りになっている豪華なもの。

 

2023年7月19日水曜日

箱入娘面屋人魚 その47

P24P25 国立国会図書館蔵

P24

(読み)

〽ミ奈\/

 みなみな


者゛ん付 の

ば んづけの


ふ多゛尓て

ふだ にて


志由ん尓奈める

じゅんになめる


〽おの\/奈める

 おのおのなめる


可本者奈者多゛

かおはなはだ


里可うらしく

りこうらしく


ミへる

みえる


P25

〽ひやう

 ひょう


し尓

しに


可ゝ川て

かかって


奈めまんしやう

なめまんしょう


〽い川そ

 いっそ


もつと

もっと


下 の本う可゛

したのほうが


奈め多ひ

なめたい


〽奈ん本人 魚 でも

 なんぼにんぎょでも


すこしハ者つ可しく

すこしははずかしく


可本をづきん尓て

かおをずきんにて


可くす

かくす

(大意)

皆さん、番号札を手に順になめる。

おのおの、なめるときの顔は、とても賢そうにみえる。(ほんとうは阿呆ずら)

「拍子にあわせてなめまんしょう」

「ほんとうはもっと下の方がなめたい」

いくら人魚でも、少しは恥ずかしく、顔を頭巾で隠す。

(補足)

「可本者奈者多゛」、どこで区切って読むのかなやみます。

「里可うらしく」、「可」も「う」も「ら」もみな似ているかたちですが、ここの「ら」はわかりやすい。

「もつと」「人魚でも」、ふたつの「も」のかたちがことなっています。

「なめる」とは情事の隠語でもあるとものの本にはありました。

 

2023年7月18日火曜日

箱入娘面屋人魚 その46

P24P25 国立国会図書館蔵

P25

(読み)

〽なめるもの尓とりてハ志よく王いの

 なめるものにとりてはしょか いの


さしきのさ可づき可ていし由の

ざしきのさかずきかていしゅの


るすの女  本゛う可マダどう二の

るすのにょうぼ うかまだどうにの


ふん多゛多いこ二可水 あめ

ふんだ たいこにかみずあめ


飛し本きんざんじ

ひしおきんざんじ


ご満ミそ由ずミそ

ごまみそゆずみそ


さとうミそハア飛やうし尓

さとうみそはあひょうしに


可ゝ川て奈めさ川せへ

かかってなめさっせえ


ドコツク\/  スコドコドン\/

どこつくどこつくすこどこどんどん


〽せんの可多ハお可王り

 せんのかたはおかわり

(大意)

「舐めるものにとりては、初会の座敷の盃か、

亭主の留守の女房か、マダ胴二の踏んだ太鼓二か、

水飴・醤・金山寺、胡麻味噌・柚子味噌・砂糖味噌、

ハア、拍子に掛かってなめさっせい、

ドコツクドコツク、スコドコ、どんどん」

「先の方は代わって下さい」

(補足)

「志よく王いのさしきのさ可づき可」、読めても意味が?なので不安、「さ可づき」は「盃」とわかりますから「さしき」は「座敷」だろうと、で、最初のところは「初会の」だろうと。

遊女と初めての夜、遊女が御酌してくれた盃を緊張してチビチビなめる様でしょうか。

「ていし由のるすの女本゛う可」、これは髪結いの亭主、妻が稼いでいる間、家でチビチビ酒をなめる亭主、のことでしょうか。

「マダ胴二の踏んだ太鼓二か」、調べるとかるた遊びの内容ですが、全然わかりませんでした。

 なめるものはたくさんあって、以下具体的にいろいろあげております。

「水あめ」、「水」のくずし字は特徴的なのですぐに覚えられます。一画目の「丶」が「水」の縦棒で、次が「水」の左側を、そのまま右側に筆を運んで「水」の右側「く」になると理解しています。

 平次が太鼓をたたいて調子をとり、それにあわせてなめなっせいと囃し立てます。なんせ一人前、一両一分、なめる時間はほんのわずか、客の回転もすこぶるよく、大金が転がり込んできて平次の口上も快調です。

 

2023年7月17日月曜日

箱入娘面屋人魚 その45

P24P25 国立国会図書館蔵

P25

(読み)

さ川そく門 口 へ志゛由ミやうのく春り人 魚 御奈め所  と

さっそくかどぐちへじ ゅみょうのくすりにんぎょおなめどころと


いふや春可ん者゛んを出し个れバ何 可゛むしやう尓

いうやすかんば んをだしければなにが むしょうに


よく者゛り天 めいのものさし尓者づ連て

よくば りてんめいのものさしにはずれて


奈可゛いきをし多可゛るぞくぶつとも千 年

なが いきをしたが るぞくぶつどもせんねん


いきるときゝ王れも\/ と奈め尓

いきるとききわれもわれもとなめに


来多り个るこそおろ可奈れ

きたりけるこそおろかなれ


〽多ゞし奈めちんハ一 人 まへ

 ただしねめちんはいちにんまえ


金 一 両  一 分川ゝよび出しち うさんと

きんいちりょういちぶずつよびだしちゅうさんと


同 し袮多゛ん奈り

おなじねだ んなり


〽ぬしハいつそ

 ぬしはいっそ


口 がくさひよ

くちがくさいよ


〽平 二そ者゛て

 へいじそば で


者や春

はやす


〽飛やうし尓かゝ川て

 ひょうしにかかって


奈めさつせへ

なめさっせい


〽ひやうし尓かゝ川て

 ひょうしにかかって


奈めまんしよ

なめまんしょ

(大意)

早速門口へ「寿命の薬 人魚御なめ所」という安看板を出したところ、

天より与えられた寿命を無視してただ欲張り長生きしたがる俗物どもが

千年生きると聞いて、われもわれもと舐めに来ることこそ愚かなことである。

ただし舐め賃はひとり一両一分、「呼出し昼三(吉原の最高級の遊女の一昼夜)」と同じ値段である。

「あなたはほんとうに口が臭いよ」

平二がそばで囃(はや)す。

「拍子に合わせて舐めさっせい」

「拍子に合わせて舐めまんしょう」


(補足)

「志゛由ミやうのく春り」、変体仮名「也」(や)は現在の平仮名「ゆ」に形が似ているので、読み間違いやすい。変体仮名「由」(ゆ)は中の縦棒がゆらぎます。「く」がカタカナ「ム」のようになっています。

 人魚の胸のあたりを舌を出して舐めているのは脇に刀と扇子があり、また身なりもからも武士でしょうが、他の身分の人ではなく武士を描いたところが山東京伝の京伝たるところでありましょう。

 

2023年7月16日日曜日

箱入娘面屋人魚 その44

P24P25 国立国会図書館蔵

P24

(読み)

こゝ尓つり

ここにつり


ふ年の

ふねの


平 ニ可゛

へいじが


きんじよ尓

きんじょに


一 人の

ひとりの


者くぶつ

はくぶつ


あり个る可゛

ありけるが


平二可

へいじが


人 魚 を

にんぎょを


女  本う尓して

にょうぼうにして


もち尓つくときゝ

もちにつくときき


可れ尓志めしてい王く

からにしめしていわく


夫本艸(それ本んざう)尓人魚(尓んぎよ)と称(せ う)

    それほんぞう に   いんぎょ と  しょう


ずる者(もの)ニ種(し由)あり曰

ずる  もの に  しゅ ありいわく


魚亭魚(ていぎよ)曰  魚児魚(じぎよ)又 異物誌(いぶつし)尓

    ていぎょ いわく    じぎょ また    いぶつし に


人 の形(可多ち)尓似(尓)て長(奈可゛)さ尺(しやく)余(よ)

ひとの  かたち に  に て  なが  さ  しゃく   よ


頂(い多ゝき)乃うへ小穿(すこしきあ奈)ありとハ

  いただき のうえ   すこしきあな ありとは


志るせし可とかゝる本゛つ

しるせしがとかかるぼ っ


とりもの奈る事 を志ら須゛

とりものなることをしらず


ま多む可しよりいひ

またむかしよりいい


つ多ふる尓人 魚 を

つたうるににんぎょを


奈め多るものハ千歳 の

なめたるものはちとせの


志゛由ミやうを多も川といへハ

じ ゅみょうをたもつといえば


何 尓もせよ金 尓奈る志ろもの

なににもせよかねになるしろもの


しやとい王れて平 二大  尓よろこび

じゃといわれてへいじおおいによろこび

(大意)

 ここに釣り船平次の近所に一人の博学者がいた。

平次が人魚を女房にして持て余していると聞き、

彼にこのようなこと言った。

「『本草』という書物に人魚と称するものは二種類あり。

ひとつは魚帝魚(ていぎょ)、ひとつは魚児魚(じぎょ)。

また『異物誌』には人の形に似て長さは一尺余り、頭のてっぺんには

小さな穴があると記してあるが、このように愛くるしい美人であるとは知らなかった。

また昔よりの言い伝えに、人魚を嘗めたものは千歳の寿命を保つとあるが、

いずれにせよ、金になる代物じゃ」。

これを聞き平次はおおいに喜び

(補足)

「もち尓つく」、辞書で調べてもありませんでした。文章の流れから意味はもてあますでありましょう。

 安看板に「寿命薬 人魚御奈め(所)」とあります。

順番を待つ人々、当時は身分社会ですから、髪型・持ち物・喋る言葉・挙措動作・人との対応などでその身分をおしはかることができました。ここにもいろいろな方々がいらっしゃいます。

 

2023年7月15日土曜日

箱入娘面屋人魚 その43

P21 国立国会図書館蔵

(読み)

〽可き入 可゛おゝく

 かきいれが おおく


奈つて本んや可゛

なってほんやが


うちま須可ら

うちますから


王多くしハ

わたくしは


多ゞ

ただ


ハイ\/と

はいはいと


者可り申

ばかりもうし


ておりま須

ております

(大意)

書き入れが多くなって文字が増えてしまうと

本屋が版木を彫るのが面倒になって

困りますから

わたくしはただ

はいはいとだけ

申しておりました。

(補足)

「申」、くずし字はカタカナ「ヤ」にもまた漢字の「巾」にもにています。

人魚は髪は横兵庫のままで表情はにこやか、座敷に逆反りのたたずまいはなんとも変、尾が平次の背中に見えます。

 

2023年7月14日金曜日

箱入娘面屋人魚 その42

P21 国立国会図書館蔵

(読み)

〽イヤ者や

 いやはや


つき出しの入 用 ハいふも九大夫 おの可゛心  可゛らと

つきだしのいりようはいうもくだゆうおのが こころが らと


いひ奈可゛らゐしやう可らくし可う可゛い

いいなが らいしょうからくしこうが い


由可う尓びやうふよぎふとん者んぞう

ゆこうにびょうぶよぎふとんはんぞう


ひ者゛ち多者こ本゛ん

ひば ちたばこぼ ん


きやう多゛いちやうちん

きょうだ いちょうちん


奈がへげ多多んす

ながえげたたんす


奈可゛もちさらさ者ち

なが もちさらさばち


すりこぎ春り者゛ち

すりこぎすりば ち


者ち\/\/可゛ら\/\/

はちはちはちが らがらがら


いくらのそん可志れませぬと

いくらのそんかしれませぬと


き川年つき尓うゐらう

きつねつきにいうろう


のませ多やう尓人 魚 のを尓

のませたようににんぎょのおに


おをつけて志や遍゛る

おをつけてしゃべ る

(大意)

「いやはや、突出しにかかった費用は言うも苦だよ。自業自得とはいえ、

衣装から櫛(くし)笄(こうがい)、衣桁(いこう)に屏風夜着蒲団、半挿(はんぞう)火鉢

煙草盆、鏡台提灯長柄下駄、箪笥長持更紗鉢擂粉木擂鉢、鉢はちはち、柄がらがら、

いくら損したかわかりませぬ」と、

狐憑きに外郎を飲ませたように、人魚の尾に尾をつけたように喋る。


(補足)

「いふも九大夫」、言うも苦だよと洒落と解釈しましたけど。

「心」のくずし字は「飛」とまぎらわしい。

「ゐしやう」とそのあと9行目「うゐらう」の「ゐ」はここのフォントのようではなく左下の丸みがありません。変体仮名「為」(ゐ)。

「ちやうちん」、「や」がかすれていて「中」のよう。

「き川年つき尓うゐらうのませ多やう尓」、伝三は、歌舞伎役者市川團十郎のお家芸のひとつ、曽我十郎の扮装をして小田原名物の妙薬外郎の由来効能を述べたあとに早口言葉をつらねた長い口上を述べる、そのまねをしている。とものの本にはありました。

 

2023年7月13日木曜日

箱入娘面屋人魚 その41

P21 国立国会図書館蔵

(読み)

まひつるやのていし由可゛思 ひつき

まいづるやのていしゅが おもいつき


きん袮んの者多き尓て

きんねんのはたきにて


志よ尓ち可らミそをつけ

しょにちからみそをつけ


まひつるやへハ者けもの可゛でる

まいづるやへはばけものが でる


と可奈んと可ひやうぎし个れハ

とかなんとかひょうぎしければ


人 魚 を一 日 もうち尓

にんぎょをいちにちもうちに


於可連須゛ざ川とめ尓ミへて

おかれず ざっとめにみえて


七 両  二分をそん尓して

しちりょうにぶをそんにして


人 ぬし平 ニをよび

ひとぬしへいじをよび


引 王多す

ひきわたす

(大意)

舞鶴屋の亭主の思いつきは

最初から失敗で

(突き出しの)初日からミソが付き

舞鶴屋には化け物がでる

とかなんとか噂になってはと

人魚を一日もうちに

置くことは出来ず、ざっとみつくろっても

七両二分の損はするのだが

人魚の主人である平次を呼び

引き渡しました。

(補足)

 人魚は鱗におおわれているとはいへ、素っ裸です。舞鶴屋の伝三は欅づくりのような贅沢な火鉢に着慣れた着物。対する平次は縦縞模様の質素なもののようにみえます。

「思ひつき」、「思」がずいぶんとくずされていますが、まぁなんとか読めそうです。

「人魚」、「魚」が「争」にみえます。

「於可連須゛」、変体仮名が続きます。

「七両二分」、「分」のくずし字は「ミ」+「丶」。

「そん尓して」、「し」が線対称のようになってますけど、こんなのもあるのでした。