2023年8月1日火曜日

箱入娘面屋人魚 その59

P32 国立国会図書館蔵

(読み)

此のもの可多りハ

このものがたりは


七 千 九  百  年 本ど

ななせんきゅうひゃくねんほど


む可しの事 尓て

むかしのことにて


どう可一 通 り尓きひて

どうかひととおりにきいて


ハうそらし个れとも

はうそらしけれども


もうとういつハり尓ごさ

もうとういつわりにござ


奈く候   人 魚 ハもとより

なくそうろうにんぎょはもとより


ふろうふし平 二ハとし可゛

ふろうふしへいじはとしが


よりそう尓奈るとハ女  本うを

よりそうになるとはにょうぼうを


奈め\/して今 尓このふうふ

なめなめしていまにこのふうふ


ぞんじやう尓ていまハ王多くしとなり尓

ぞんじょうにていまはわたくしとなりに


ち うきよ仕   り候   このうへいくらいきやうやら

じゅうきょつかまつりそうろうこのうえいくらいきようやら

(大意)

 この物語は七千九百年ほど昔のもので、このまま

通り一ぺんに聞いてしまうと嘘らしくおもえるのだが、

毛頭嘘偽りはございません。人魚はもともと不老不死で、

平次は年寄りになりそうになると、女房をなめなめして若返る。

いまでもこの夫婦は元気に暮らし、今はわたくしの隣に住んでいる。

この上、どれくらい生きるものなのであるかは、

(補足)

「千」「年」「手」のくずし字はどれもにたようなかたちで、最初は悩みます。

「よりそう尓奈るとハ」、「と(き)ハ」or 「ハ」をとるのかどちらでしょう?

 平次は座布団を敷いていますが、妻の方はなし。それとも元は人魚だったので不要なのか、さて?

ふたりとも煙管をもち、その前にあるのは火入れ、火屋(ほや)、火舎(かしゃ)とも。豪華な誂で、金持ちであることを示しています。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿