P32 国立国会図書館蔵
(読み)
此のもの可多りハ
このものがたりは
七 千 九 百 年 本ど
ななせんきゅうひゃくねんほど
む可しの事 尓て
むかしのことにて
どう可一 通 り尓きひて
どうかひととおりにきいて
ハうそらし个れとも
はうそらしけれども
もうとういつハり尓ごさ
もうとういつわりにござ
奈く候 人 魚 ハもとより
なくそうろうにんぎょはもとより
ふろうふし平 二ハとし可゛
ふろうふしへいじはとしが
よりそう尓奈るとハ女 本うを
よりそうになるとはにょうぼうを
奈め\/して今 尓このふうふ
なめなめしていまにこのふうふ
ぞんじやう尓ていまハ王多くしとなり尓
ぞんじょうにていまはわたくしとなりに
ち うきよ仕 り候 このうへいくらいきやうやら
じゅうきょつかまつりそうろうこのうえいくらいきようやら
(大意)
この物語は七千九百年ほど昔のもので、このまま
通り一ぺんに聞いてしまうと嘘らしくおもえるのだが、
毛頭嘘偽りはございません。人魚はもともと不老不死で、
平次は年寄りになりそうになると、女房をなめなめして若返る。
いまでもこの夫婦は元気に暮らし、今はわたくしの隣に住んでいる。
この上、どれくらい生きるものなのであるかは、
(補足)
「千」「年」「手」のくずし字はどれもにたようなかたちで、最初は悩みます。
「よりそう尓奈るとハ」、「と(き)ハ」or 「ハ」をとるのかどちらでしょう?
平次は座布団を敷いていますが、妻の方はなし。それとも元は人魚だったので不要なのか、さて?
ふたりとも煙管をもち、その前にあるのは火入れ、火屋(ほや)、火舎(かしゃ)とも。豪華な誂で、金持ちであることを示しています。
0 件のコメント:
コメントを投稿