上P1 東京都立図書館蔵
(読み)
鼠(ね春゛ミ)の娵(与め)入 ハ
ねず み の よめ いりは
男女(奈ん尓よ)の中(奈可)をも和(や王)らげ御子様方(おこさ満可゛多)の御心(おこゝろ)
なんにょ の なか をも やわ らげ おこさまが た の おこころ
を慰(奈くさ)むるハ赤本(あ可本゛ん)奈り古れや
を なぐさ むるは あかぼ ん なりこれや
ひさ可多能雨(あめ)尓し天ハ乙姫(おとひめ)尓はじまりて猿(さる)の生肝(い起きも)越奴
ひさかたの あめ にしては おとひめ にはじまりて さる の いききも をぬ
らしあら
らしあら
かね能土(つち)尓し天ハ狸(多ぬき)の舩(ふ年)尓於古り天兎(うさ起゛)の手柄(て可゛ら)
かねの つち にしては たぬき の ふね におこりて うさぎ の てが ら
をみせ彼(可れ)善(ぜん)耳
をみせ かれ ぜん に
春ゝめ是(これ)悪(あく)越こら須
すすめ これ あく をこらす
(大意)
鼠の嫁入りの噺は男女の仲の良さをもおだやかにし、御子様方のお心を慰め楽しませるのが赤本である。七夕の乙姫がでてくる浦島太郎や猿の生肝では涙をながし、地の土では泥舟で狸を殺す兎の手柄となるカチカチ山で喝采をおくる、勧善懲悪の噺である。
(補足)
「和(や王)らげ」、辞書に「男女の中をも―・げ」〈古今和歌集•仮名序〉とありました。
「あらかね能」、変体仮名「能」は「ə」+「e」のようなかたち。
「善(ぜん)耳」、「に」はたいてい変体仮名「尓」がおおいが、この変体仮名「耳」もよくでてきます。
0 件のコメント:
コメントを投稿