上表紙 東京都立図書館蔵
(読み)
附 り
つけた
作 者 山 東 京 傳
さくしゃ さんとうきょうでん
ひら久や梅(むめ)の赤本(あ可本゛ん)にの勢天
ひらくや むめ の あかぼ ん にのせて
出 した類御年玉(おとし多゛ま)
多゛したる おとしだ ま
昔(む可し)〃(\/ )
むかし むかし
桃太郎發端話説(も〃多らう本川多ん者゛奈し)
ももたろうほったんば なし
并 二
ならびに
そろゆる草双紙(くささうし)
そろゆる くさそうし
者や春薺(奈づな)の青本(あを本゛ん)ハひやうし
はやす なずな の あおぼ ん はひょうし
(上) 板元 通 油 町 (屋号印)徒多や
じょう はんもと とおりあぶらちょう つたや
(大意)
もう少しすると紅白の梅の花がさくけど、赤本をお年玉代わりに子どもたちにやるときには、どうか銭をそれにのせてやってくださいな。そうすれば赤本をもっとかってくれるだろうしね。
たくさんそろってきた草双紙、正月7日七草のなずなの色がはえてきれいなのは青本の表紙だな、もっとかってそろえてくだいね。
(補足)
この黄表紙は三巻三冊十五丁寛政4(1792)年刊。附の歌「ひらくや梅の」はこの本の翌年「先開梅の赤本(まずひらくうめのあかほん)」が刊行されていますが、それを意識したものなのかどうかはわかりませんけど、なにか伏線めいたものを感じます。
つたやは「蔦重」こと蔦屋重三郎。このBlog「箱入娘面屋人魚」のまじめ奈る口上ででてきました。
大意はフィクションになってしまってますけど、それも歌の読み方。
赤本の赤は古来魔除けの呪力をもった色とされてきたので、江戸時代の縁起物の刊行物は赤色で印刷されてました。疱瘡絵・疱瘡絵本と呼ばれるものがそうでした。子どもの成長を願って、正月など神社へお参りしたお土産にしたそうです。こうして人々は正月の祝い物(お年玉)として、赤本を買い求めるようになったのでした。これらは享保年間(1716〜36)ごろを境に一般大衆のあいだに浸透して、赤本が大衆化し発行部数が増大してゆくことにしたがい表紙に使用した赤の顔料(酸化鉛)が高騰したこともあって、植物性の染料を使った萌黄色の表紙になり、これが青本でありました。と、これらのウンチクはとある本からの受け売りでありました。
この本の絵師は最後の頁に春朗画(しゅんろうが)とあり、これは勝川春朗、葛飾北斎。
上部の絵は、東北を巡る實方朝臣(さねかたあそん)、笠をもっています。そして吹き出しの雀は實方が亡くなって姿を変えたもの。その雀を左の慳貪婆がこらしめるという、登場人物が大雑把に紹介されています。
藤原実方はどことなく高貴で品にあふれるような風体、慳貪婆はいかにもいじわるくといった感じ、うまく雰囲気をかもしだすものです。
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