P2P3 東京都立図書館蔵
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(読み)
話説 すむ可し\/ 能事 可と与
わせつすむかしむかしのことかとよ
ミちのく能可多保とり尓ぢゝいと
みちのくのかたほとりにじじいと
者゛ゝアとあつ多とさふう婦とも尓
ば ばあとあったとさふうふともに
ずんど志やうじ起奈ものでかり
ずんどしょうじきなものでかり
尓もあし起こゝろをも多ず
にもあしきこころをもたず
あ王れミふ可起もの奈り个る可゛
あわれみふかきものなりけるが
可いとりをあ起奈いて与王
かいとりをあきないてよわ
多りとすされど志やうある
たりとすされどしょうある
ものをやし奈ふも大 き奈る
ものをやしなうもおおきなる
つミ尓して志やう者゛いの道
つみにしてしょうば いのみち
奈らざる事 を奈げ起つ年尓
ならざることをなげきつねに
ものごと尓奈さけを可けて
ものごとになさけをかけて
くらし个る
くらしける
(大意)
さて、昔むかしのことだったなぁ。みちのくの片田舎に
爺と婆あが住んでいたとさ。夫婦ともにとても正直で、
まちがっても悪い心を持つということはなく、憐れみ深い
ひとでありました。
鳥を飼って売り買いする商売をして暮らしていました。
しかし、生きるものを飼ってそのようなことをするのは大きな罪であると
生きるためとはいえこの商いすることを嘆き、いつも物事に情けをかけて
暮らしておりました。
(補足)
「話説す」、辞書に『② 中国の古い口語で,物語の冒頭の「これから話を始める」「さて」などの意のことば。中国の白話小説の影響を受けた江戸時代の読本(よみほん)に「話説す」の形で用いられた。「―す。きのふは奇々怪々といふことが,目下(まのあたり)に有りやした」〈滑稽本・浮世床•2〉』とありました。
「保とり」、くずし字が「伺」のようにも変体仮名「阿」にもにています。
「こゝろを」、「こ」と「と」の区別が判別しにくい。
「可いとり」、変体仮名「可」と「う」や「ら」の区別もおなじくやっかい。
「道」のくずし字は特徴的なのでおぼえやすい。
爺さんの左袖には「正」印、婆さんの右肩が首をかしげて悩んだすえに「善」と読めました。
この本の絵師春朗(北斎)はこのとき32歳。
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