2023年8月28日月曜日

桃太郎発端話説 その5

P2P3 東京都立図書館蔵

P2

(読み)

話説 すむ可し\/ 能事 可と与

わせつすむかしむかしのことかとよ


ミちのく能可多保とり尓ぢゝいと

みちのくのかたほとりにじじいと


者゛ゝアとあつ多とさふう婦とも尓

ば ばあとあったとさふうふともに


ずんど志やうじ起奈ものでかり

ずんどしょうじきなものでかり


尓もあし起こゝろをも多ず

にもあしきこころをもたず


あ王れミふ可起もの奈り个る可゛

あわれみふかきものなりけるが


可いとりをあ起奈いて与王

かいとりをあきないてよわ


多りとすされど志やうある

たりとすされどしょうある


ものをやし奈ふも大 き奈る

ものをやしなうもおおきなる


つミ尓して志やう者゛いの道

つみにしてしょうば いのみち


奈らざる事 を奈げ起つ年尓

ならざることをなげきつねに


ものごと尓奈さけを可けて

ものごとになさけをかけて


くらし个る

くらしける

(大意)

 さて、昔むかしのことだったなぁ。みちのくの片田舎に

爺と婆あが住んでいたとさ。夫婦ともにとても正直で、

まちがっても悪い心を持つということはなく、憐れみ深い

ひとでありました。

 鳥を飼って売り買いする商売をして暮らしていました。

しかし、生きるものを飼ってそのようなことをするのは大きな罪であると

生きるためとはいえこの商いすることを嘆き、いつも物事に情けをかけて

暮らしておりました。

(補足)

「話説す」、辞書に『② 中国の古い口語で,物語の冒頭の「これから話を始める」「さて」などの意のことば。中国の白話小説の影響を受けた江戸時代の読本(よみほん)に「話説す」の形で用いられた。「―す。きのふは奇々怪々といふことが,目下(まのあたり)に有りやした」〈滑稽本・浮世床•2〉』とありました。

「保とり」、くずし字が「伺」のようにも変体仮名「阿」にもにています。

「こゝろを」、「こ」と「と」の区別が判別しにくい。

「可いとり」、変体仮名「可」と「う」や「ら」の区別もおなじくやっかい。

「道」のくずし字は特徴的なのでおぼえやすい。

 爺さんの左袖には「正」印、婆さんの右肩が首をかしげて悩んだすえに「善」と読めました。

この本の絵師春朗(北斎)はこのとき32歳。

 

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