表紙 個人蔵
(読み)
JAPANESE FAIRY TALE SERIES No.1
MOMOTARO.
(大意)
日本昔噺第一號
桃太郎
(補足)
ちりめん本です。すでにこのブログでこのシリーズの「KACHI-KACHI MOUNTAIN No5」「OURASIMA LE PETIT PÊCHEUR No8」「THE OLD MAN & THE DEVILS No7」
「The Wonderful Tea-Kettle No10」をアップしています。
今回はこのシリーズの第一号桃太郎です。つい先日手に入れたものです。状態は中程度と記されていましたが、手にして何度も確かめましたが、それ以上の保存のよいちりめん本でした。本の周辺は擦れていますが、大和綴じの綴じ糸はしっかりとしています。
虫眼鏡で表紙をくまなく見ました。すばらしいとしかいえません。デジタル写真にしてPCで拡大してみても、これまたすばらしい。
豆本などでは廉価でなるべく目立つようにして手にしてもらうようにするため、明治赤といわれる派手な色合いでした。外国からこの安い赤色塗料が輸入されるまでは、赤(紅)の塗料はとても高価でそう簡単には使用することができませんでした。明治赤の使用はその反動もあってのことだったのでしょう。
しかしこのシリーズのちりめん本では、従来の日本の色調を基本として、赤の使用はそれほどでもありません。全体としては地味というのとはことなり、とても落ち着いて上品な仕上がりになっています。この表紙で赤があるのは桃太郎の右手の袖口にのぞく裏生地と右腰の手ぬぐい、うしろにひかえるキジの鎧と顔の部分だけです。
表紙は絵師・彫師・摺師が一番に気合を込めて描き、彫り、摺るところです。青空や山肌の濃淡、松の針葉一本一本、その枝の折り曲がり、そして幹と根方に腰掛ける桃太郎と目をはこばせます。
網目の袋にたくさん入っているきびだんご、きびだんごの重みを感じるかのように精緻です。すぐその下の藁で作った脚絆もこれまた見事です。他にもあげればきりがありませんが、犬がさしている太刀も拡大しなければわからないくらいなのですが、柄も鞘も丁寧に描かれています。
桃太郎と犬の視線と、猿と桃太郎の右足を結ぶ線の交点に桃太郎が差し出すきびだんごが位置するような構図は絵全体に安定感を与えています。そして桃太郎のやさしい表情と犬のひたすら一心に忠義を体全体からにじませる物腰が読者の胸にあたたかいものを感じさせます。
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