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2020年4月3日金曜日

豆本 桃太郎噺 その15




 奥付

(読み)
明治九年十月五日出版御届定價壱銭五厘

南本所外手町十八番地
長崎縣士族
著者 村井静馬

馬喰町四町目十八番地
東京府平民
出版人 小森宗次郎


(大意)



(補足)
 廃藩置県は明治四年(1871年)に行われました。その翌年1872年には華族・士族・平民の3族籍に身分制度は大別されています。
なので、「長崎縣士族」「東京府平民」はできたてホヤホヤの表現のはずです。

価格が1銭5厘。
これだけの豆本がこの価格、驚きです。
どれくらい売れたのか興味あるところです。


 裏表紙です。



 普通の横縞柄です。

 桃太郎噺はこれにて終了。
次回も豆本です。


2020年4月2日木曜日

豆本 桃太郎噺 その14




 P.13

(読み)
[つゝき]
いのちを多春け多可ら
いのちをたすけたから

をい多゛させそ連を
をいだ させそれを

いぬさるきじ尓
いぬさるきじに

も多せ
もたせ

王可゛やへ多ち可へり
わが やへたちかえり

ぢゞ者゛ゝ尓
ぢぢば ばに

よろこバしめで多く者るをむ可ひ个る
よろこばしめでたくはるをむかいける

めで多しゝ
めでたし

ゝゝ

ゝゝ


(大意)
命を助け宝を出させました。
それらの宝を犬猿雉に持たせ
家に帰りました。
(桃太郎は)ジジババを喜ばせ、めでたく春を迎えました。
めでたしめでたしゝゝゝ。


(補足)
「多春け」、ここの「け」は変体仮名「个」(形は「々」)ではなく、現在と同じです。

「王可゛やへ多ち可へり」、「や」がわかりにくい。「可」が簡略すぎて読めません。

「いぬさるきじ尓」、「ぢゞ者゛ゝ尓」、ふたつの「尓」の形が別物です。

「者るをむ可ひ个る」、ここの「者る」は難しい。


 桃太郎の前に平伏しているのは命を助けられた鬼でしょうか?
桃太郎の身なりがゴチャゴチャして手足などどこがどこだかよくわかりません。
いままでの絵の構図と比べると平面的で、最後を飾るにはもうちょっと頑張ってほしかった。


2020年4月1日水曜日

豆本 桃太郎噺 その13






 P.11 , P.12

(読み)
[つゝき]
可しらのお尓
かしらのおに

をもゝ太郎 とりこと
をももたろうとりこと

奈し多可らを多゛さ
なしたからをだ さ

バいのち者゛可りハ多
ばいのちば かりはた

多春くべしといひ
たすくべしといい

个連バも者や可奈
ければもはやかな

王じとおもひ多可
わしとおもいたか

らハのこら須゛い多゛春
らはのこらず いだ す

べしといふゆへ[次へ]
べしというゆえ


(大意)
桃太郎は鬼の頭領を取り押さえ
「宝を出せば命だけは助けてやろう」
と言いました。
鬼はもはやかなわぬとおもい、
宝を残らず出せと言うので


(補足)
 日本のあちこちに悪鬼を踏みつけている仏像はたくさんあります。
ここの絵もまさにこれ、金棒を振り回し鬼を踏みつけています。
鬼の虎パンツと脛(すね)の虎柄脚絆(きゃはん)は今でも売れそう。

「とりこと」、「と」と「こ」のちがいはパッと見た目はわかりにくいですが、ジッと比較すると異なってます。

「多多春くべし」(たたすくべし)、「助けてやろう」ということですが、「たたすく」を調べてもヒットしません。糺(ただす)ではないですし、「た」を一文字余計に入れてしまったかも。

「个連バ」、何度も出てきてますが、ここの「个」はいつもより「々」がくずれてます。


P11P12見開きです。



 この物語一番の見せ場、絵の隅々まで実によく描かれています。
鬼の体の筋肉の盛り上がりも、ササッと筆を走らせているだけでモリモリ感がでていますし、苦悶の表情もうめき声が聞こえてきそう。

 このまま額装して飾ってもよさそうです。


2020年3月31日火曜日

豆本 桃太郎噺 その12






 P.9 , P.10

(読み)
[つゝき]
おしやふり
おしやぶり

いぬさるきじも
いぬさるきじも

ともゞ ミ多連
ともどもみだれ

いり个んぞくの
いりけんぞくの

お尓をこゝ可しこへ
おにをここかしこへ

おひつめ多いじ
おいつめたいじ

奈し个る[次へ]
なしける


(大意)
押し破り、犬猿雉と一緒に乱れ入り
鬼の一族を、あちらこちらへと追い詰め
退治してしまいました。


(補足)
P.9 は文章はなく、背中にしょった旗指物(はたさいもの)の桃太郎の独壇場。
歌舞伎そのものです。
鬼から奪ったのか、金棒、右手にかかえ見栄をきり、「いよっ 桃太郎!」と聞こえてきそう。

 下に見えるは、白いカワウソではなく、お供の犬。たすき掛けにしている黄色の紐がきまってる。

色使いも賑やかだけど、しっかり描きこんでいます。

P.10 は松に猿と雉。
猿は紫色のたすき掛け、雉はなんやら首の周りに紫色の、これはなんでしょう?

「やふり」(やぶり)、読みにくい。
「多いじ」、「い」が?
「奈し个る」、「な」も上部が欠けてしまった?


P9,P10見開き。



 右上、桃太郎の背後の赤が強烈です。その対の左下にはお供の3匹。
そして、鬼ヶ島の崖上の松と、遠くに海。
遠近をうまく描いています。


2020年3月30日月曜日

豆本 桃太郎噺 その11




 P.8 下段

(読み)
△い可りさんゞ
 いかりさんざん

尓のゝ志り
にののしり

个連バもゝ
ければもも

太郎 も
たろうも

こらへ
こらえ

可年
かね

いし
いし

もん
もん




[次へ]



(大意)
怒り、散々にののしりました。
桃太郎はこらえきれずに
石門を


(補足)
「个連バ」(ければ)、この言い回しは、おなじ表現ですでに何度も出てきました。

「も」の変体仮名「毛」が2種類でてきてます。



「个連バもゝ」と「いしもん」の「も」は画像の右側、なかなか読みにくく、
「太郎も」の「も」は左側になり、こちらは現在の「も」と同じなのですぐわかります。

「可年」、「年」(ね)は古文書などでは、ほとんど○のようになります。


P7P8見開き。



 見開きでこの場面をながめると、お供にならんとする3匹の視線は黍団子に向いているかとおもいきや、ちゃんと桃太郎の視線と交わっています。


2020年3月29日日曜日

豆本 桃太郎噺 その10




 P.8 上段

(読み)
まもりい多り
まもりいたり

もゝ太郎 ち可
ももたろうちか

より大 おん尓
よりだいおんに

もん
もん













とよバ王り个連バ
とよばわりければ

お尓ども大起△
おにどもおおき


(大意)
守っていました。
桃太郎は近寄り大声で
「門を開け」と叫んだところ
鬼どもは大変に


(補足)
 桃太郎小岩に腰掛け、右手に黍団子がたくさん入った網袋を持ち、左手にひとつつまんで犬雉猿に与えているの図。
 わたしが同じことをするなら、右手に黍団子をつまんで家来に与えますが・・・
黍団子の網袋を強調するには左手に持たせるしかなかったのかもしれません。

 それにしても桃太郎の頭の天辺から足の爪先までにぎやかに色もたくさん使って描かれていること!
幟旗(のぼりはた)の「桃」の字、いいですねぇ。
そして、幟竿(のぼりざお)のてっぺんについている桃のお飾り、ヘタもあしらっていてすばらしい。

「ち可より」、「ち」が悩みました。
「大おん尓」、大きな音で、大声で。
「大起い可り」、大いに怒り、大変な怒りようで。

「もんを」の「を」の左側に○印がありますが、これにつながるところがありません。
「ひらけ」の「ひ」の右側に薄く○印があるようにもみえますが。

この「ひらけ」のところ、一行一文字で右から読むわけです。よく昔の有名人の書で額にして飾ってあるのがありますが、どちらから読んでよいのかわからないときがあります。
日本語の縦書きは右から左へ読みますから、一行一文字でも悩まずに右から読みます。




2020年3月28日土曜日

豆本 桃太郎噺 その9




 P.7

(読み)
[つゝき]きミ多んごを
     きみだんごを

多くさんあ多へ个連バ
たくさんあたえければ

いつ連も大 起尓
いづれもおおきに

よろこび个るもゝ
よろこびけるもも

太郎 ハいぬさるき
たろうはいぬさるき

じをひ起つ連
じをひきつれ

お尓可゛し満尓い多り
おにが しまにいたり

見王多せバ
みわたせば

者る可む可ふ尓
はるかむこうに

个んご奈るいし
けんごなるいし

もんを可まへ
もんをかまえ

个んぞくども
けんぞくども


(大意)
黍団子をたくさん与えたところ
いずれも大変に喜びました。
桃太郎は犬猿雉を引き連れ
鬼ヶ島へ到着しました。
島を見渡したところ
はるか向こうに
堅固な石門を構え
眷属どもを

(補足)
「見王多せバ」、平仮名や変体仮名のなかに、「見」のくずし字があるとわかりにくものです。
次の変体仮名「王」(わ)があるので、(みわたせば)と類推できます。

「个んぞく」(眷属)、一族。ここでは鬼の一族。

 雉の羽、猿の毛並み、犬のしっぽんなど、それなりに丁寧に描かれています。
雉は日本の国鳥です。
3匹のなかに選ばれたのはそれが理由かどうか?
さてさてどうなのでしょう。

 空の赤縞模様は2頁の桃が流れてくる場面と同じです。
3匹はもちろん次頁の桃太郎を見つめています。


2020年3月27日金曜日

豆本 桃太郎噺 その8




 P.6

(読み)
「お連ハお尓可し満へ
「おれはおにかしまへ

多可らものを
たからものを

とり尓ゆく
とりにゆく

「おこし
「おこし

尓さ
にさ

げ多る
げたる

ハ奈ん
はなん

でござり
でござり

ま春「こ連ハ
ます「これは

尓つ本゛ん一 のきミ
にっぽ んいちのきみ

多゛んご一 ツく多゛さいおとも
だ んごひとつくだ さいおとも

い多しま志ようといふゆへ[次へ]
いたしましょうというゆえ


(大意)
「おれは鬼ケ島(おにかしま)へ宝物をとりに行く」と答えました。
「お腰に下げているのは何でございましょうかと」問われ、
「これは日本一の黍団子」と答え、
「ひとつくださればお供いたしましょう」と言うので、


(補足)
 この頁の話は次頁の絵の内容になっています。
鎧兜(よろいかぶと)は身につけてないものの、立派な若武者姿に育ち凛々しい。
五月人形にありそう。

この部分の会話は童謡桃太郎の1,2,3番の歌詞と同じです。


 会話で使うカギカッコ「」ですが、最初の「 だけで終わりの 」がありません。
次の会話の始めの「 がそれもかねているのかもしれません。

桃太郎が「俺(おれ)」といっているのが、身近に感じます。

「尓つ本゛ん一のきミ多゛んご」、明治のこのときにはまだ半濁音の表記がなく「本゜」とはなってないようです。調べればすぐわかることなのですが。
「きびだんご」も「きミ」となってます。

「一ツく多゛さい」のところ、カギカッコ「 がありませんが、忘れたのかも。


 P5P6見開き。



 見開き全体でながめると、婆さんと桃太郎が視線をあわせ、爺さんはセッセと黍団子を丸めてます。3人の親密感が伝わってきます。




2020年3月26日木曜日

豆本 桃太郎噺 その7




 P.5

(読み)
[つゝき]多゛んごを
[つづき]だ んごを

こしらいやり
こしらいやり

个連バそ
ければそ

連を
れを

多づ
たづ

さへ可ど
さえかど

いでを
いでを

奈し个る
なしける

ミち尓ていぬ
みちにていぬ

さるきじき多り
さるきじきたり

「もゝ太郎 さんどこへ
「ももたろうさんどこへ

おいでゞおざりま春
おいででおざります


(大意)
団子をこしらえてやったところ、
それを持って家を出発しました。
途中、犬猿雉が来て
「桃太郎さんどこへ出かけるので
ございましょうか」
と問いかけました。


(補足)
「こしらいやり」、「や」の変体仮名「也」ですが、「ゆ」に見えてしまいます。
「个連バそ連を」、変体仮名「个」(け)。変体仮名「連」(れ)。

「可どいで」、現在は門出(かどで)。人世の門出を祝うなど。

「ミち尓て」、「尓」がアルファベット筆記体の「y」に似てます。

”「”が使われているのは、今まで見てきた豆本で、ここがはじめてです。

ジジババでセッセと黍団子を作るの図です。
石臼があり、また手に湿り気を与える水桶もきちんと描かれています。
きびだんごは大きなこね鉢に沢山あります。
この頁の背景も前頁とおなじで辛子色。


2020年3月25日水曜日

豆本 桃太郎噺 その6




 P.4

(読み)
○可ゝり个る
 かかりける

奈本ま多
なおまた

お多いき奈
おたいきな

可゛らきミ
がらきみ

多゛んご
だんご

を多く
をたく

さん
さん

こし
こし

らい
らい

く連よと
くれよと

いふ由へ
いうゆえ

そのゐ尓
そのいに

ま可せ[次へ]
まかせ


(大意)
かかりました。さらに、お手間をおかけするが
黍団子をたくさんこしらえてくれと言うので
その願いどおり


(補足)
上段○印から下段○印へつながりますは、頁をまたぐときは[次へ][つづき]と区別しているようです。

「お多いき」、「お大儀」。
「きミ多゛んご」、「ん」が「れ」にみえますが、変体仮名「无」(ん)を調べてもこのような形は見つかりません。

「く連よと」、「と」の一画目の「丶」がありません。


 P3P4見開きです。



 桃太郎の後ろの、弓矢の的みたいな紅白の丸いのは何でしょう?
頁をまたいで、桃が割れているさま。両頁を中位に閉じていると桃太郎は見えず、大きく開いてパカっと桃が割れて目に飛び込んでくる、今で言う飛び出す絵本の効果もねらったのでしょうか。



2020年3月24日火曜日

豆本 桃太郎噺 その5




 P.4

(読み)
もゝ太郎 と奈づけ
ももたろうとなづけ

てのうちの多満と
てのうちのたまと

やういくせし可
よういくせいか

本ど奈くせいじん
ほどなくせいじん

奈しもも太郎
なしももたろう

ふ多り尓いふ
ふたりにいう

やう王しハ
やうわしは

を尓可゛し満
おにが しま

へ王多りた
へわたりた

可らをとり
からをとり

可へりておふ
かえりておふ

多り尓よろこ者せん
たりによろこばせん

といふゆへそのやうゐ尓○
というゆえそのよういに


(大意)
桃太郎と名付け、手の内の玉として養育しました。
程なくして成人し、桃太郎は二人に向かって
「わしは鬼ヶ島へ渡り、宝を取って帰りお二人に喜んでもらいたい」
と言うので、その用意に


(補足)
1行目「もゝ太ろ」の「ろ」に見えるのは、「郎」のくずし字です。
5行目にも「もゝ太ら」とあり、今度は「ら」に見えるのが「郎」のくずし字です。

「てのうちの多満」、目に入れても痛くないくらい可愛がり愛すること。
「やういく」、旧仮名遣い。養育(よういく)。最後の行にも「やうゐ」(ようい)が出てきます。
「いふやう」、言うよう。言いよう。言う様。
「王しハ」「王多り」、変体仮名「王」(わ)、何度か出てきました、「已」に似てます。

「を尓可゛し満」、この文字の並びを見ても「鬼ヶ島」とはピンときません。

 今度はジジイがビックリしているところです。
七福神の誰かさんにちょっと似てます?

 胡座(あぐら)を組んでいるのか、足は見えませんが、手のひらを開ききり、
歌舞伎の驚きの場面の定石、一方の手を頭の斜め後方に引き、もう一方を斜め前方に出すという、そのままの絵になってます。
ちゃんちゃんこの渋赤の横縞がアクセントになってます。

 見開きの左側の頁で右端に見えるのは、桃の種が割れた片割れと、桃太郎の右足。


2020年3月23日月曜日

豆本 桃太郎噺 その4




 P.3

(読み)
[つゝき]せし可゛いつくより可
 つづき せしが いつくよりか

もゝひとつ奈可゛連き多る
ももひとつなが れきたる

ゆへうちへもち可へり
ゆえうちへもちかえり

ふ多りで多べんと王り
ふたりでたべんとわり

しところ奈可より
しところなかより

多゛いゝ とし多る
だ いだいとしたる

おとこの子む満
おとこのこむま

連し可バふ多りハ
れしかばふたりは

よろこびおふ
よろこびおお

可多奈ら須
かたならず

もゝより
ももより

いでしゆへ
いでしゆえ


(大意)
どこからか桃がひとつ流れてきましたので、
家へ持ち帰り二人で食べようと割ったところ
中より大きな男のが生まれました。
二人の喜びようは大変なものでありました。
桃より生まれたので、


(補足)
「より」が何度も出てきますが合字の「ゟ」は使ってません。

変体仮名「連」(れ)が2箇所あります。また変体仮名「多」は何箇所も出ています。

変体仮名「王」(わ)は「已」に似ています。

「む満連し可バ」、「生(う)まれる」は「むまれる」とも表記されるとありました。

「おふ可多奈ら須」、「大方ならず」。
辞書で調べました。「大方の予想通り」の例であっそうかとわかりましたが、
「大方ならず」は「非常に、なみなみならない」とあります。

 この頁は見開きの右側です。左側には驚いているじじいがいます。
生まれたばかりの桃太郎はまるで若力士そのもの。

ここでも婆さんの描きこまれ方がとても細かく丁寧です。
髪の毛の一本一本といい、たすき掛けの後ろのちょうちょ結び、
両手の指は開き、両足の指が床をしっかりとらえ、体を支えているさまは、金剛力士像みたい。

 背景の辛子色がきいています。


2020年3月22日日曜日

豆本 桃太郎噺 その3 




 P.2

(読み)
む可しゝ
むかしむかし

さるい奈可尓ぢゝいと
さるいなかにじじいと

者゛ゝアとふ多り春ミ
ば ばあとふたりすみ

个る可゛ある日者゛ゝアハ
けるが あるひば ばあは

川 尓せん多くして可へらんと[次へ]
かわにせんたくしてかえらんと


(大意)
昔々、ある田舎にじじいとばばあがふたり住んでおりました。
ある日、ばばあは川で洗濯をして帰ろうとすると


(補足)
 定価1銭5厘の豆本とはいえ、まったく手抜き感のない色刷りの絵です。
ばばあの「おやまぁ」と驚いている表情と両手の所作、頭髪の線、
洗濯桶にとめ輪も丁寧に描いています。川岸の凸凹も。
流れてくる桃は大きいけれどドンブラコ感があります。

「春ミ个る可゛」、変体仮名「春」は「す」+「て」のような感じ。
変体仮名「个」は「々」に似てます。
「る」は変体仮名「留」ですが、一画目の横棒がありません。

「者゛ゝア」、変体仮名「者」は「む」のような感じで書き出して、左の小さなクルッと丸をかいたあとは右下に適当に流れる。

「尓」は少し崩れると筆記体の「y」のようになります。

変体仮名「多」(た)は「さ」の一画目横棒がなくなった形。

 きれいな絵ですね。


2020年3月21日土曜日

豆本 桃太郎噺 その2




 P.1(見返し)

(読み)
桃太郎
ももたろう

者奈し
はなし

(大意)



(補足)
 左側の辛子色の小粒のへたのついたものは桃の種となんとなくわかりますが、
その隣の網に入ったものはわかりません。
しかし噺を読み進めると、桃太郎が犬猿雉3匹の前で黍団子(きびだんご)を与えている場面がでてきます。それがこの網袋に入っているのでした。

黍団子と桃の種の図。
なんともへんてこりんな取り合わせです。

2020年3月20日金曜日

豆本 桃太郎噺 その1




 表紙

(読み)
村井静馬 著
むらいしずま ちょ

桃太郎噺
ももたろうばなし


(大意)



(補足)
 今回からは豆本「桃太郎噺」です。やく12回を予定してます。

出版は明治9年10月5日(1876年)。
村井静馬は浮世絵師で歌川房種(うたがわふさたね)です。

表紙は錦絵摺りで歌舞伎のひと場面のよう、桃太郎は隈取をした若衆姿、鉄棒を振り上げ鬼をこらしめているの図。
桃太郎の左手の4本の指が力を込めて鬼の左腕を握りしめ、反りかえってます。

主役の桃太郎より、鬼が好き。
鬼の渦巻く頭髪、眉のあたりが引きつって悔しそうに恨めしく見上げる眼、うめき声が聞こえてきそうなさけた口、首周りからは押さえつけられながらも憤怒の炎が飛び散っているようです。

「噺」の「口」偏の下に「フ」のようにみえるのは、旁の「新」の「木」の左側です。