2020年9月30日水曜日

豆本 むまくらべ その13

 

P.9

(読み)

たく

たく


さん

さん


ある

ある


とかや

とかや


くハ

くは


ま多ハ

または


きう

きゅう


ようの

ようの


おり

おり


者せる

はせる


む満

むま


奈れども

なれども


い満のよ尓ハ

いまのよには


この馬 ハ

このうまは


奈し

なし


(大意)

(P8上段のつづき)

おおくあるという。

(P8下段のつづき)

くは、または急用の折

駆けつける馬のことであるが

今の世にこの馬はいない。


(補足)

P8の上段でもそうでしたが、平仮名「た」が使われています。そしてこの頁では平仮名「か」も。

「志ゆつくハ」、一晩考えましたが、うーん、わかりませんでした。宿題です。

「きうようのおり」、「う」がわかりずらい。

「む満」、「い満」、変体仮名「満」が「◯」+「☓」の記号のように見えます。


P8P9見開き

腰にさし後ろに流れているのは提灯でしょうか。その提灯のところから後ろに伸びているのは左手に持つムチでしょう。

野馬ののんびり優雅なたたずまいと対象的に早馬は武士も馬も死に物狂いの趣。

江戸時代、情報を早く伝える方法はいりいろあったようです。ここの早馬や他には早駕籠、早飛脚。

しかし、大阪の米取引相場では伝書鳩が早かったとか。また狼煙(のろし)という方法もよくつかわれていたとか。伝書鳩は今でも情報伝達の現役だそうです。



2020年9月29日火曜日

豆本 むまくらべ その12

 

P.8下段

(読み)

早 打 馬

はやうちうま


者やうち

はやうち


むまハ

むまは


きう

きゅう


多゛い

だ い


ミやうの

みょうの


つ可い者゛ん

つかいば ん


尓て

にて


志ゆつ(くハ)

しゅつ


(大意)

早打馬

早打ち馬は旧大名の使い番(伝令)である。

志ゆつ(くハ)


(補足)

「さう多゛いミやうの」、総大名と読めますが、そんな大名はありませんので、間違いです。

「きう」でしたら「旧」大名でしょう。これで意味は通じそうです。

「志ゆつ(くハ)」、うーん、ここもわからない。


馬の蹄の上、アキレス腱のところにたてがみのような毛が描かれています。野馬の方にもよく見るとありました。調べてみたら「距毛(きょもう)」とありました。

また馬の尾の付け根に飾り紐のようなものがまわしてあります。鞍を後ろからとめている紐なのか単に飾りなのか、何でしょう?



2020年9月28日月曜日

豆本 むまくらべ その11

 

P.8上段中段

(読み)

野馬

のま


のむまハ諸 こく尓

のむまはしょこくに


おゝしと

おおしと


いへども

いへども


奈の▲

なの


▲た可

 たか


いのハ

うのは


下 ふさ

しもふさ


こ可゛ねに

こが ねに


(大意)

野馬

野馬は諸国に多いといわれているが

有名なのは下総(しもうさ)の小金(こがね)に


(補足)

「下総の小金」で調べてみました。

江戸幕府直轄の牧(牧場)として野馬奉行が管理し、房総は平安時代から江戸時代にかけて軍馬の有力な供給地であったとあります。年をとっても知らないことはたくさんありますね。

 木の幹や枝ぶり葉や花の描き方に一定の技法があるようで、P7の樹木と同じような配置になってます。




2020年9月27日日曜日

豆本 むまくらべ その10

 

P.7下段

(読み)

俗 尓うさ起゛

ぞくにうさぎ


むまと

むまと


いへど

いえど


あつと

あっと


者ねる

はんる


わけでハ

わかでは


あらずと

あらずと


可や

かや


(大意)

俗にうさぎ馬というが

あっと跳ねるわけでは

ないそうだ


(補足)

 驢馬を俗にうさぎ馬ということですが知りませんでした。

背景の赤い花(葉?)の木の幹に樹皮のひだを書き入れてそれらしくしています。

ここでも、鼻先と蹄は薄青色です。



2020年9月26日土曜日

豆本 むまくらべ その9

 

P.7上段

(読み)

驢馬

ろば


ろ者゛ハ

ろば は


い多つて

いたって


ミゝの

みみの


奈可゛く

なが く


きも

きも


奈可゛く

なが く


志づ可奈る

しずかなる


むま奈り

むまなり


(大意)

驢馬

ろばは大変に耳の長く

気も長いおとなしい馬である


(補足)

「驢」の画数が多いので念の為、馬+虍+田+皿 です。「虎」はとらがしらorとらかんむり。

「ミゝの」、ここだけみて読めと言われても難しい、前後から判断します。

ロバの耳が誇張されて長いですが、実際はそれほどでもありません。

乗馬している人は羽織袴姿ですが、頭がすでに断髪したのか、つばなし帽子でもかぶっているみたい。



2020年9月25日金曜日

豆本 むまくらべ その8

 

P.6

(読み)

曲  馬

きょくば


き与く

きょく


者゛尓-

ば に


-つ可ふハ

 つかうは


馬 のとし

うまのとし


より奈り▲

よりなり


▲きぬけ可゛している

 きぬけが している


ゆへ

ゆえ


馬上  で

ばじょうで


いろゝ

いろいろ


げいを

げいを


奈す

なす


とや

とや


(大意)

曲馬

曲馬には年寄りの馬をつかう。

もう荒々しさはなくなって(よく従うようになって)いるので

いろいろ芸をすることができるという。


(補足)

1行目の「よ」は変体仮名「与」に見えますが、上段終わりから2行目の「よ」は平仮名でしょう。

「きぬけ可゛している」、「気抜け」だとおもいますが、そのままだと気の張りをなくしてボォーとしている状態でしょうが、ここでは乗馬する人の操るままになっていることでしょう。


 馬の頭部を極端に小さく描いてはいますが表情は厳しく引き締まっています。体中に血管が膨れ上がって気合が入っているのがよくわかります。

鐙(あぶみ)から足をはずし、乗馬して芸を次々に見せる曲馬師の姿が勇ましい。手綱も離し、両手に持っている大きな赤い花はなんでしょうか。両手両足を浮かせてまさに曲馬であります。


2020年9月24日木曜日

豆本 むまくらべ その7


P.5

(読み)

多満けむり

たまけむり


をぐゝ里

をぐくり


ぞく

ぞく


くんを

くんを


おい志り

おいしり


ぞけしも

ぞけしも


強 物 可゛

つわものが


馬馬尓

ばばに


ま多可゛り▲

またが り


▲ぞくを

 ぞくを


けちらし

けちらし


者ねとバ

はねとば


せしといふ

せしという


(大意)

弾(たま)煙(けむり)をくぐり

賊軍を追いしりぞけ

強者たちが馬々にまたがり


賊(軍)を蹴散らし

跳ね飛ばしたという


(補足)

「馬馬尓」(ばばに)、同じ「馬」のくずし字ですが形が同じではありません。


P4P5見開き

見開きにしてやっと戦場の様子が見えました。

黒馬にまたがっているのが賊軍で、手前の西洋服を着た陸軍士官や兵隊さんに追われているところです。賊軍(武者姿)は名前の通りお上(政府)に逆らう悪者としてまた新旧の対比もわかりやすく描かれています。


2020年9月23日水曜日

豆本 むまくらべ その6

 

P.4

(読み)

くろ馬

くろうま


陸 軍 の強  馬

りくぐんのきょうば


里くぐんの

りくぐんの


馬 ハ

うまは


あし

あし


者゛やで

ば やで


ちうを

ちゅうを


とぶごとくを

とぶごとくを


奈しとす

なしとす


春で尓

すでに


可ご志満

かごしま


の●


●せん

 せん


そうの

そうの


みぎり

みぎり


尓ハ

には


(大意)

陸軍の馬は足早で宙を飛ぶように走るという。

すでに鹿児島の戦争のときには


(補足)

明治10年の西南の役の場面です。

でだしは変体仮名「里」(り)。

変体仮名「者」(は)と「春」(す)が少し似てます。「者」(は)は平仮名「む」の下部が下に流れたような感じ。「春」(す)は「す」+「て」のような形。

「可ご志満」、「ま」の変体仮名「満」が記号◯の中に☓のように見えます。

「みぎり」、時、頃、折、場所、場面などの意。古文書では普通に出てきます。漢字は「砌」。


馬が主題であるだけに、黒馬と栗毛色の馬が力強い。黒馬の尾も丁寧です。


2020年9月22日火曜日

豆本 むまくらべ その5

 

P.3


(読み)

そらあぶ奈いぞ

そらあぶないぞ


へいゝ

へいへい


本らゝ

ほらほら


あり

あり


春?の▲

す?の


▲ちんせん

 ちんせん


五銭 本ど

ごせんほど


と可や

とかや


西 洋 馬

せいよううま


馬車

ばしゃ


(大意)

そら危ないぞ

へいへい

ほらほら


(乗り合いの馬車や)あり

その運賃は5銭ほどであるという。


(補足)

前半のせりふは御者の掛け声。

下段2行目からの2文字がよくわかりません。

「五銭」、「銭」の遍をとったフォントがありませんでした。


P2P3見開き

 左上の色の異なる馬にまたがる西洋人男女、幕末の生麦事件では実際に事件にあった一人は馬に乗った御婦人でした。薩摩藩の追手を振り切り近くの領事館へ逃げ込みその場で気を失ってしまいました。

細かいところまで色をのせています。余白など許さぬという描き方。


2020年9月21日月曜日

豆本 むまくらべ その4


P.2

(読み)

馬車 ハ

ばしゃは


くハいん

かんいん


可゛多く王ぞく

が たか ぞく


可゛多ま多ハ

が たまたは


せう本う尓

せいほうに


のりあいの

のりあいの


馬車 や

ばしゃや


へいゝ

へいへい


(大意)

馬車は官員がた華族がた

または西洋に乗り合いの馬車が

へいへい


(補足)

旧仮名遣いあるいは歴史的仮名遣いはなれてもやっかいです。

「くハんいん」、「ハ」は「可」(か)にも見えますがわかりません。

「く王ぞく」、変体仮名「王」(わ)で「くわぞく」。

「馬」のくずし字はなんとなくそれらしいのでわかりますが、ひらがなで「つる」の形に似てなくもない。


馬車の屋根の縁の飾りが日章旗柄。中は洋服姿の男性と和服の御婦人、時代です。

御者は首から下が西洋風の制服姿なのに、頭は手ぬぐいをほっかむりしていてどこか変。

馬の蹄のそのすぐ上の毛まで描いています。

適当に描いているところがコレッポチもなく隅々まで丁寧です。



2020年9月20日日曜日

豆本 むまくらべ その3

 

P.1


(読み)

若 軍 馬

わかぐんば


む可し

むかし


あし??の

あし??の


のりし

のりし


むまハこのことし

むまはこのごとし


といふ

という


今 の五月

いまのさつき


人 形  のごとし

にんぎょうのごとし


(大意)

若軍馬

昔武者が乗馬していた

馬はこの絵のようであったという。

今の五月人形のごとし。


(補足)

見出しの背景が紅白ラベルの「若軍馬」、「若」としましたがわかりません。「艹」+「百」ではヒットしませんでした。

二行目の3,4文字目が読めません。大意では絵の通り武者としましたが、宿題にします。


絵はいかにも小林英次郎です。国立国会図書館デジタルコレクションでは小林英次郎の豆本を4冊読むことができます。どれも彼の太い線の輪郭線と色鮮やかさが共通しています。


武者も軍馬も意気揚々としてまさしく五月人形であります。

刀の鞘の飾りなのでしょうか、虎か何かの勇猛な獣の尻尾のよう。


2020年9月19日土曜日

豆本 むまくらべ その2

 

見返し

(読み)

むまくら遍゛

むまくらべ


一 柳  堂 者ん

いちやなぎどうはん


(大意)

むまくらべ

一柳堂版


(補足)

「へ」の変体仮名「遍」に「゛」がついてます。

「は」の変体仮名「者」は「す」+「て」のような形。ここではもっとくだけた形になってます。

こんな絵柄の色紙を玄関先や床の間に飾ってみたいものです。

舟盛りに使うような小型の船の台にみえます。外側は黒で内は赤の漆塗りでしょう。

茶巾絞りのような花瓶なのでしょうか、それとも厚手の布に水を含ませて花を包んでいる?

豪華さはないけどちょっと侘びた佇まいでその向こうに夕方の里山の風景がみえそうです。

<20221123記>

 あらためてみてたら、お恥ずかしいことですが、これが馬の鐙(あぶみ)とは気づきませなんだ。

なんとも風流な花の飾り方であったのに・・・


2020年9月18日金曜日

豆本 むまくらべ その1

表紙


(読み)

むまくらべ

(大意)

むまくらべ

(補足)

「むま」とは馬のこと。馬がいろいろな場面に使用されているところを描いている豆本です。

前回「舌切雀」と同じ日に出版御届され、著者画小林英次郎、出板人野田茂政も同じです。

小林英次郎独特の太い線で輪郭を描き、色の使い分けが明確でメリハリのある描き方です。

馬と馬上の官軍士官の表情がそっくりで、見開いた目玉はとりかえっこができるほどです。

士官が事細かく細部まで描かれています。

右側には日章旗。

和綴じの糸こよりは修繕したてのようで真っ白。



2020年9月17日木曜日

豆本 舌切雀 その24

 

裏表紙

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

裏表紙も手抜きせず凝ってます。

両腕をいからしてかまえ、カマキリのような目をもち、何匹も襲ってきそうな雰囲気。

「雀」の形を図案化したようでもあります。

色鮮やかな質の良い豆本でした。

それにしてもいつもながらベタッと貼る整理番号シールどうにかなりませんかね。



2020年9月16日水曜日

豆本 舌切雀 その23

 

奥付

(読み)

明治十三年七月二十七日出版御届價一銭五厘

神田區八名川町五番地

著作者 小林英次郎

下谷區坂本町二丁目八番地

出板人 野田茂政

(大意)

(補足)

「御」の上に「野田」の印があります。

貼紙にすけて「北尾卯三郎改」と読めます。

明治10年の西南の役も終わり、ようやく江戸時代の区切りもつき、明治が明治らしくなってゆく頃の豆本です。

すべての頁が鮮明で発色もよく絵の出来も素晴らしい。

こんなに上出来な豆本が1銭5厘とは!

これら出版業界にかかわる当時の方々の生活が心配されます。



2020年9月15日火曜日

豆本 舌切雀 その22

 


P.12


(読み)

者゛ゞア

ば ばあ


可い志ん

かいしん


してぜん

してぜん


尓ん尓

にんに


なりし

なりし


とぞめで

とぞめで


多しゝゝ

たしめでたしめでたし


もゝん

ももん


可゛ア

が あ


志う

しゅう


どろ

どろ


どろ


(大意)

婆あは改心して

善人になったとのことでした。

めでたし

めでたしめでたし


(補足)

 この頁を見ると飛び込んでくるのは文字よりも絵です。

江戸時代の人の化物好きの趣向は本当にきりがありません。

このBlogでも「化物嫁入咄」をとりあげています。


「尓ん尓」、同じ「尓」ですが形がことなります。最初のは筆記体「y」に似たもの、あとのはほぼそのままの「尓」です。

「ももんがア」、(ももんがあ)で辞書で調べると「化け物。特に毛の生えた化け物」とあります。

「志うどろどろ」、お化けが出てくるときの擬音「シュウドロドロ」


化け物たちはどれもソフビで販売したら売れそうなものたちばかりです。

三つ目首長化物の首部分の鱗(うろこ)が念入りです。裏の腹の部分も。

準主役のババアはとても丁寧に鮮やかに輪郭を描き、ひっくり返って手足の突っ張りようも必死ですが、白髪リーゼントはくずれていません。

表情は恐怖より満面の笑みに見えてしまいます。


2020年9月14日月曜日

豆本 舌切雀 その21

 


P.11

(読み)

つゞらをね多゛り

つづらをねだ り


王しハ

わしは


ち可ら可゛

ちからが


ある可ら

あるから


奈る多け

なるたけ


おもいをくれ

おもいをくれ


あとてもらい

あとでもらい


うちへ

うちへ


▲奈や

 なや


ませ

ませ


ける

ける


(大意)

■葛籠(つづら)をねだり

「わしは力があるからなるべく重いものをくれ」と

あとでもらって

家へ


▲悩ませました。


(補足)

上段は前頁上段の■より続いています。

下段も前頁下段▲からです。


「王しハ」、変体仮名「王」(わ)は「已」のような形。

「おもい」、この「お」はわかりずらい。「十」に「◯」と「丶」になってます。


P10P11見開き

見開きの四隅だけでなくどこをみても実に丁寧に心を配って描いています。

斜めに画面を横切る垣根と門が印象的であります。

白髪リーゼント欲深婆さんもこれまた丁寧。腰の曲がり具合といい脛と白足袋に雪駄履きがそれらしい。



2020年9月13日日曜日

豆本 舌切雀 その20

 


P.10下段

(読み)

▲かへりあけゝ

 かえりあけけ


れバ奈可ゟ

ればなかより


いろゝ の

いろいろの


お者゛け可゛

おば けが


いでゝ者゛ゞアを

いでてば ばあを


(大意)

帰りあけてみると

中よりいろいろな

お化けが

出てきてババアを



(補足)

「あけゝ」、「あ」のかたちは現在とことなっていて、「お」の「丶」がないかたちに近い。

「奈可ゟ」、「ゟ」は合字で「よ」と「り」を縦につなげたようなかたち。「奈」の上半分がかすれて欠けています。

「お者゛け可゛」、「お」がわかりにくい。「者」(は)もくずれていますが許容範囲でしょう。この後の「者゛」も同様。


 居間の前庭に面する垣根と生け垣と小さな門が小さく見えますが、これが大きいのです。

次回見開きで見てみましょう。



2020年9月12日土曜日

豆本 舌切雀 その19

 


P.10上段


(読み)

正  ぢ起

しょうじき


奈る

なる


き志つ

きしつ


由へ▼

ゆえ


▼春ゞめ

 すずめ


尓もらいしと

にもらいしと


者奈せバ

はなせば


者゛ゞアハや可゛て

ば ばあはやが て


いで由起ぢゞいの

いでゆきじじいの


ごとく

ごとく


多づね由起■

たずねゆき



(大意)

正直なたちでしたので

「雀にもらった」と話しました。

婆あはすぐに出かけてゆき

爺いのように尋ねてゆきました。


(補足)

P10P11見開きで物語っていますので、P10上段最後■はP11上段に続きます。

P11の上段最後▲がP10下段▲へ続きそのままP11下段へ続きます。


「正ぢ起」、「正」は変体仮名ではなくくずし字。

「き志つ由へ」、「きしつ」(気質)という比較的かたい言葉が子ども向けの物語に出てきてますので、戸惑います。「ゆ」を変体仮名「由」としましたが「ゆ」でもOK。このあと「由起」(ゆき)として2度でてきてます。

「や可゛て」(やがて)、現在ではしばらくして、そのうちになどで使用しますが、逆にすぐに、ただちにという意味もありました。「や」の書き順がおもしろいです。


 雀の姉さん、異様に長い長い長煙管でいっぷく、気持ちよさそう。


2020年9月11日金曜日

豆本 舌切雀 その18

 


P.9上段


(読み)

者゛ゞ

ばば


アが

あが


これを

これを


ミて

みて


い可尓

いかに


して

して


この多可ら

このたから


をもとめ

をもとめ


しとて

しとて


ぢゞい尓

じじいに


きけバ

きけば


「さて

「さて


さて


うまく志多奈ア

うまくしたなあ



(大意)

婆あがこれをみて

どうやってこの宝物を

求めたのかと

爺いに聞けば


「さてさて

うまくしたなぁ


(補足)

■印にしたがって上段へつづきます。

「者゛ゞアが」、「は」の変体仮名は「者」で「す」+「て」のような形ですが、ここではずいぶんとくずれています。

平仮名「が」が使われています。とてもとてもめずらしい。

「い可尓」、はじめ「いうに」と読んでしまいました。変体仮名「可」と「う」はまぎらわしいというか、ほとんど同じで前後の意味の流れから判断するしかありません。


P8P9見開き

この頁も完璧な仕上がりです。

障子がずれてしまっていますが、つながりに不自然さはありません。

年代物風の葛籠の中はお宝満載であふれしまっています。

爺さん両手両足広げ喜びでばたつかせている様子、それを障子越しにのぞいた婆さんは驚きとうらまやしさで手が開ききっています。


2020年9月10日木曜日

豆本 舌切雀 その17

 


P.9下段


(読み)

けれバ

ければ


奈か可らハ▲

なかからは

いろゝ の

いろいろの


多可ら可゛

たからが


いで多るを

いでたるを


と奈りの

となりの


よくふ可起■

よくふかき


(大意)

(この葛籠をあ)けてみたところ

中からはいろいろな

宝が出てきたのを

隣の欲ふかな


(補足)

 P8のつづきでP9下段になります。

葛籠の中のお宝の全貌が見えました。

色鮮やかな打ち出の小槌、巻物や金銀珊瑚綾錦・・・

葛籠の表面の描きかたが年代物のような雰囲気を出していて見事です。


「奈か可らハ」、平仮名「か」が出てきました。とてもとてもめずらしい。

今までならば「奈可ゝらハ」とするところです。



2020年9月9日水曜日

豆本 舌切雀 その16

 


P.8下段


(読み)

可るいつゞら

かるいつづら


をもらい

をもらい


王可゛やへ

わが やへ


かへ里て可のつゞらをあ

かへりてかのつづらをあ


(大意)

軽い葛籠(つづら)をもらい

我が家へ帰ってから

この葛籠を(あけてみれば)


(補足)

「王可゛やへ」、「己」のようなのが変体仮名「王」(わ)のかたちです。

右上薄青い壁の下の白い部分は何でしょうか。あかりとりのはめ込みの障子みたいにもみえます。

あけてみた葛籠の中身はちょうど見開きの真ん中にあるのでよくわかりません。

爺さんは恰幅よく七福神の布袋様のよう。



2020年9月8日火曜日

豆本 舌切雀 その15

 


P.8上段


(読み)

ぢゞい

じじい


く多゛さる

くだ さる


奈ら王しハ

ならわしは


とし

とし


とつ多れバ

とつたれば


可るきを

かるきを


もらハんと

もらはんと


(大意)

爺い「くださるならわしは

年をとっているので

軽いものをもらいたい」と


(補足)

おしゃれな爺さんこの頁でも

衣裳総取っ替え。

着物の柄は卍になってしまいました。


「奈ら王しハ」、「王」が不鮮明でよくわかりませんが変体仮名「王」の輪郭がなんとなく読み取れます。

「もらハんと」、「ハん」が難しい。読みは「わん」ですから変体仮名「王」でもよいとおもうのですけど。


 左上部の障子2枚を手前と奥にきちんと描き分けています。

紺の葛籠(つづら)の感触が上手です。



2020年9月7日月曜日

豆本 舌切雀 その14

 


P.7


(読み)

ぢゞい尓

じじいに


つゞら

つづら



あげましやう

あげましょう



いへバ

いえば


(大意)

じじいに葛籠(つづら)を

あげましょうと

いえば


(補足)

「ぢゞい尓」、変体仮名「尓」はアルファベット筆記体の「y」にそっくりです。平仮名「に」はめったに使われません。


P6P7見開き


 踊っている若い娘雀は扇を舞い上げ、やや年増の雀は合いの手も楽しそう。

水色に紺の花模様、帯には梅の花模様、頭のテッペンにはお飾りがあります。

障子の桟も丁寧ですし下部の腰板部分も板目模様を描きいれてます。

大盆の上にはごちそうが、丸いのは煮物でしょう。

白い手の大きさと生々しさがきわだっています。


 三味線の糸巻き部分もしっかり描き、見開きのどの部分をながめまわしても手抜きなどは微塵もうかがえません。



2020年9月6日日曜日

豆本 舌切雀 その13

 


P.6後半


(読み)

あくるひ

あくるひ


ぢゞいハ

じじいは


可へらんと

かえらんと


いへバ春゛ゞめ可゛

いえばす ずめが


奈ごりを

なごりを


おしミ

おしみ



(大意)

あくる日

爺いは「帰ろう」と言えば

雀は名残をおしみ


(補足)

「可へらんと」、読みに悩む箇所です。

「おしミ」、平仮名「み」はめったにでてきません。ほとんどは「ミ」。



2020年9月5日土曜日

豆本 舌切雀 その12

 


P.6前半


(読み)

おゝ与ろこびで

おおよろこびで


春゛ゞめ可゛あつまり

す ずめが あつまり


ちゝいをもて奈し

じじいをもてなし


おどりつ

おどりつ


まいつきやう

まいつきょう


をつく

をつく


しける

しける


(大意)

大喜びで雀たちは集まりました。

爺いを踊りや舞でもてなし

つくしました。


(補足)

 この頁もすばらしい仕上がりです。

ふかふかのあたたかそうな座布団の柄も丁寧に描き、どっかと歓待をうける爺さんはニコニコ顔で楽しんでいます。しかし爺さんの着物の柄が来たときとは異なり、頭巾の色も変わりました。

 三味線を弾くお姉さん雀の声がピーチクパーチク聞こえてきそうな賑やかさ。

お姉さんたちの手の白さが引き立ちながらも、とてもリアルであります。


「春゛ゞめ」、ここでも「春゛」濁点がついています。何か意味がありそうなのですがわかりません。

「ちゝい」(じじい)、いろいろ言い換えて変化をもたせようとしているのでしょう。

「おどりつまいつきやうをつくしける」、踊りつ舞いつ興を尽くしける。

「しける」、「け」なのか変体仮名「个」なのか、少しにじんでしまっています。



2020年9月4日金曜日

豆本 舌切雀 その11

 


P.5下段

(読み)

そこへゆくと

そこへゆくと


うち

うち


与りも

よりも


いで

いで


ぢゞい

じじい


ミて

みて


これハゝ

これはこれは




(大意)

そこへ行くと

内からも出てきて

爺いを見つけ

これはこれは


(補足)

 母雀が両手を広げて「これはこれは」と歓待しているところです。

「うち与り」、「よ」は変体仮名「与」。「うち」は内側ですが「家」でも意味は通じます。

P4P5見開き

 この見開きの頁のつなぎも完璧であります。

子雀の両足の開きが180度で、左の裾の色抜けがちょっと気になりますけど、問題なしです。

隅々まで手を抜くことなくとても鮮明で良い仕上がりです。



2020年9月3日木曜日

豆本 舌切雀 その10

 


P.5上段


(読み)

やまを

やまを


多づね

たずね


けれバ

ければ


ひと

ひと


むら

むら


志げる

しげる


多けやぶ尓

たけやぶに


春ゞめのこへ可゛

すずめのこえが


志多りけれバ▲

したりければ



(大意)

山を尋ねたところ

こんもり茂った竹やぶに

雀の声が聞こえてきました。


(補足)

「ひとむら」は漢字にすると「一群」でしょうか。

変体仮名「春」は「す」+「て」のかたちににてますが、ここでは「十」+「て」です。


 雀の母娘、よく尋ねてきてくださいましたお爺さん、と母は手を振り広げ娘は手招くように歓待の様子です。でも母も娘もその手のなんと現実味あふれる大振りな描き方、ちょっとひきます。


 母の着物は縦縞模様、帯の丸柄、前掛けの格子、それにぽっくりのような上等の下駄を履いています。娘も母に負けじと三角格子の着物に赤い縮緬のような帯紐に渋黄の帯です。


 雀の母娘ともに頬の波横棒に黒丸がこだわりのよう、表紙でも描いています。



2020年9月2日水曜日

豆本 舌切雀 その9

 


P.4下段


(読み)

「志多きり

 したきり


春ゞめおや

すずめおや


どハ

どは


どこ多

どこだ


おやどはどこだ



(大意)

舌切雀

お宿はどこだ

お宿はどこだ



(補足)

 童謡で歌われる歌詞にもなっているので

ついつい節をつけて読んでしまいます。

 左端の着物姿はそのお宿のスズメさんです。



2020年9月1日火曜日

豆本 舌切雀 その8



P.4上段


(読み)

あさ者やく

あさはやく


おきて

おきて


志多くを

したくを


してむこうの

してむこうの


やまへ

やまへ


の本゛りて

のぼ りて


だんゞ と

だんだんと


さ可し

さがし


けれバやま

ければやま


ま多

また


(大意)

朝早く起きて支度をして

向こうの山へ登って

あちらこちらを探して

まわりました。

山また(山を)



(補足)

 この頁も色鮮やかくっきりであります。

爺さんの着ているちゃんちゃんこは前頁のものと色柄がにていますが、異なっています。

襟巻きもして暖かそう、フカフカちゃんちゃんこはお出かけ用なのでしょう。

あしもとは、白足袋に草鞋。

杖もしっかり握っています。


「だんゞと」、変体仮名「多」ではなく平仮名「た」を使っています。

現在では使わない言い回しですが、 次々に続くさま、あれこれ、かさねがさね、の意。