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2021年6月24日木曜日

豆本 新版猫の者那し その14

裏表紙

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

 前回の「昔噺し舌切すゞめ」の裏表紙は出版人亀吉にちなんで「亀」でした。今回のは猫にひっかけて「小判」に「鈴」、それと扇のおもてとあとひとつは何でしょうか?それらの配置をちらして柄にリズムを出さないようにしているのが気が利いています。

 次回からは「昔咄し婦゛んぶく茶釡」をはじめます。

 

2021年6月23日水曜日

豆本 新版猫の者那し その13

P13

(読み)

ごん本゛の春け多゛ち

ごんぼ のすけだ ち


尓て多いぢしゐん

にてたいじしいん


き与へも

きょへも


きさん可奈

きさんかな


ひふ多り

いふたり


めで多く

めでたく


ふう婦と

ふうふと


奈りける

なりける


めで多し

めでたし


\/\/

めでたしめでたし


\/\/

めでたしめでたし


日本橋区馬喰町二丁目十四番地

編輯兼

出版人 綱島亀吉


御届明治十九年九月廿日

定價壹銭

(大意)

ゴンボの助太刀にて

退治し、隠居(のところ)へも

帰参がかない

二人はめでたく

夫婦となったのでした。

めでたし

めでたしめでたし

めでたしめでたし

(補足)

文章に難しいところはなさそうです。

P12P13

 隠居のうしろの紅梅の屏風が引き立っています。福とおコマ夫婦、子猫も抱かれています。福の詫びをいれているニャァという声が聞こえてきそうです。

定価を壹銭としましたが、間違いかもしれません、安すぎます。今までの豆本だって壹銭五厘だったのですから。


 

2021年6月22日火曜日

豆本 新版猫の者那し その12

P12

(読み)

いる由へ

いるゆえ


ふ多り

ふたり


ともわし可゛

ともわしが


王びを春

わびをす


る由へ可い

るゆえかい


つ多ら与

ったらよ


可らんと

からんと


つれもど

つれもど


り福 ハ

りふくは


そのあら

そのあら


禰づミを

ねずみを


奈ん奈く

なんなく


(大意)

いるので

二人ともわたしが

詫びをするゆえ

帰ったらよかろうと

連れ戻りました。

福はその荒鼠を

なんなく


(補足)

 いいですねぇ〜、いかにも隠居然として。紫の羽織に黄色細い横縞着物、品と落ち着きがあります。火鉢は座布団を敷き、木目が目立った欅でしょうか。火箸に両手をのせて手焙しているような仕草もなかなか火鉢なれしている。絵になりますねぇ。

「ともわし可゛」、「わし」が重なっているので一文字かと見間違えました。ここでは平仮名「わ」ですけど、次行では「王びを」と変体仮名「王」(わ)を使っています。

「可いつ多ら与可らん」、一度読めてしまうとなんともないのですがあれこれ悩んだ箇所です。

 

2021年6月21日月曜日

豆本 新版猫の者那し その11

P11

(読み)

うちへいづれ与り可大 鼠  可゛

うちへいずれよりかおおねずみが


き多り

きたり


多いせつの箱物

たいせつのはこもの


を可ぢりこと

をかじりこと


ごとく奈んぎ

ごとくなんぎ


のよし

のよし


又 おこ満

またおこま


のし由志゛ん

のしゅじ ん


おミいさんも

おみいさんも


しん者゜いし天

しんぱ いして


(大意)

中へどこからか大きな鼠が

入ってしまい、

大切な箱物を

かじられ

ほとほと困っている

とのことだ。

またおコマの主人

おみいさんも

心配して


(補足)

変体仮名「与」(よ)がどうも「ふ」にみえてしまいます。

「多いせつの箱物」、現在なら「たいせつ(な)」でしょうけど、当時はこの表現が普通だったのでしょう。「箱物」と読みました。

「し由志゛ん」、変体仮名「志」(し)がわかりにくいですけど、「志」です。

「しん者゜いし天」、変体仮名「者」(は)に半濁点「゜」。変体仮名「天」(て)は「〃」+「く」のような形。

P10P11見開き

 P4P5のパノラマ歌舞伎舞台の再現です。両側に膝をピタリとつけて直立の立ち姿。もうひとりは膝立ちで白い大鼠を退治します。三者色とりどりでにぎやか。よぉっ! おコマとかフクとか掛け声がとんでるはず。

 

2021年6月20日日曜日

豆本 新版猫の者那し その10

P10

(読み)

可つお

かつ


ぶし

ぶし


さへ多べ

さえたべ


られぬ由へい満さら

られぬゆえいまさら


こうく王い奈しゐると

こうかい なしいると


ころへ可しらのごん本゛多づ年

ころへかしらのごんぼ たずね


き多りもと可ひぬしこの

きたりもとかいぬしこの


ごろゐんき与のくらの

ごろいんきょのくらの


(大意)

鰹節さえ

食べられないため今さら

後悔しているところへ

頭のゴンボが訪ねてきました。

(頭が言うには)

もとの飼い主が

隠居している蔵にこの頃


(補足)

 絵はまったくの歌舞伎舞台の一場面。それも勇ましく大立ち回りの姿です。左手に白いネズミをつかんでいるのはゴンボかフクか。

「こうく王い」、こうかい。旧仮名遣い。

「ころへ可しらの」、最初「ころ」を(くう)と読んでしまい意味がおかしい。前行から続いて「ところへ可しらの」でしたら意味がつながるので、「くう」は「ころ」とわかった次第。まだまだ超初心者なんです。「多づ年」、変体仮名「年」(ね)はおかしな形をしていますが、古文書では「◯」に「ヽ」になります。この豆本の「ねずみ」では変体仮名「禰」(ね)です。

「ごろ」、これはすなおに(ごろ)と読めました。2行前の「ころ」と同じ文字とはおもえません。くどいですが、5行目「こう」、6行目「ころ」、8行目「ごろ」を比較してみてください。

「ゐんき与の」、ここの「与」は最初「ふ」に見えてしまいました。


 

2021年6月19日土曜日

豆本 新版猫の者那し その9

P9

(読み)

ミもちと奈り

みもちとなり


や春\/子猫 を

やすやすこねこを


うミいとむつ

うみいとむつ


ましくゝらし

ましくくらし


ゐれどい満ハ可い

うれどいまはかい


ぬしとても奈起まぐ

ぬしとてもなきまぐ


れ禰こ由へおもふよふ尓

れねこゆえおもうように


(大意)

身ごもって

平穏に子猫を

生み、とても仲良く

暮らしていました。

しかし今は

飼い主もいない迷い

猫なので、おもうように

(補足)

親猫は着物を着てますが、おコマの膝に手をかけ甘える子猫は産着もなく猫そのまんまです。

P8P9見開き

フクの着物が淡黄色地に赤の縦縞とおしゃれです。画面全体の印象は明るく幸せな感じ。

 

2021年6月18日金曜日

豆本 新版猫の者那し その8

P8

(読み)

ところへ町  内 の

ところへちょうないの


可しらの可ゝへねこ

かしらのかかえねこ


ごん本゛といへる可゛

ごんぼ といへるが


とふり可ゝり王る猫 を

とおりかかりわるねこを


さん\゛/尓ころし両  猫 を

さんざ んにころしりょうねこを


尓可゛しやるさても二疋 禰

にが しやるさてもにひきね


こハさるい奈可へ立 の起

こはさるいなかへたちのき


ふうふと奈り王づ可尓

ふうふとなりわずかに


ひろいもの奈ぞして其

ひろいものなぞしてその


日をおくる間  おこ満ハ

ひをおくるあいだおこまは


(大意)

ちょうどそこへ町内の

頭(かしら)の飼っている猫

ゴンボというのが

通りかかり悪猫を

さんざんにこらしめ両猫を

逃してやりました。さてそれから

二匹の猫はさる田舎にたちのき

夫婦となりました。わずかに拾い物などをして

その日暮らしの生活を送りました。

そうするうちにおコマは

(補足)

2行目の「可ゝへ」が最初わかりませんでした。何度か繰り返して読んで「町内の頭が(飼っている)猫」と理解。誰々を「召しかかえる」などといいますけれど、これは人の場合なんですよね。家族同様にしているということでしょう。

「さん\゛/尓ころし」、「ころし」「こらし」「こかし」迷います。

「奈ぞして?日」、変体仮名「春」(す)に似てますけど違います。うーん、わかりません。

 貧しくとも縁側はとてもきれいです。庭をそれっぽく描くことなく単に文字の背景の柄にしているのはどことなく日本的です。

 上機嫌で語っているのはゴンボでしょうか。青地に紺と白(黄色にも見えます)の縞柄半纏、下の着物は緑地に黒でレンガ柄。煙草入れの箱は簡素ながらきちんと描いています。

<20221109記>

「奈ぞして?日」、「其」でした。古文書などよくでてくるのにどうしてわからなかったのでしょう。 

2021年6月17日木曜日

豆本 新版猫の者那し その7

P7

(読み)

いゝあ者せ可けおちを

いいあわせかけおちを


奈春とちう 天゛

なすとちゅうで


王る猫 らハ

わるねこらは


それと志つて

それとしって


ミち尓まち

みちにまち


ぶせ両  禰こを

ぶせりょうねこを


う多んと奈す

うたんとなす


(大意)

申し合わせ駆け落ちを

する途中で

悪猫たちが

それを聞きつけ

道に待ち伏せ

両猫を討とうとしました。

(補足)

「いゝあ(者)せ可けおちを」、現在の表記では「いいあ(わ)せ」。

変体仮名「奈」(な)、変体仮名「春」(す)、変体仮名「天」(て)、変体仮名「王」(わ)、変体仮名「志」(し)が続きます。

「両」のくずし字は下部で右回りに2周する感じ。

 フクは縦横縞の部屋着を着てすっかり亭主然、左手に持つは魚の開き中骨部分です。

P6P7見開き

左下隅に角火鉢をのぞかせているところが心憎い演出。

窓下薄赤色の土壁をそのまま白壁のほうへ斜めに延ばしてしまったのはご愛嬌。


 

2021年6月16日水曜日

豆本 新版猫の者那し その6

P6

(読み)

奈りとも

なりとも


立のいて

たちのいて


ふうふ尓

ふうふに


奈らんと

ならんと


ある与

あるよ


(大意)

どこでもよいから

ここを離れて

夫婦になろうと

ある夜


(補足)

 おこまが入っているのはザルではなく藁で編んだ籠でしょう。なかなか豪勢です。

ふすまの破れ、土壁の剥がれと竹で編んだ下地などは長屋住まいを描く定番です。

ふすまや屏風やおコマのひざ掛けの模様柄はどうしてもなんらかの模様を描かずにはいられない絵かきの性のような気がします。

 

2021年6月15日火曜日

豆本 新版猫の者那し その5

P5

(読み)

福禰古

ふくねこ


おこまを

おこまを


?れ天

?れ天


?の天

?のて


途(と)中悪(王る)

とちゅうわる


禰古に

ねこに


とりま可

とりまか


れる

れる


(大意)

福ねこおこまを

つれてたちのく

途中悪猫に

とりまかれる

(補足)

P4とP5は両開きにパノラマ広げて楽しむことができます。P5の説明書きの3,4行目がわかりません。

「津れ天真の天」(つれてまのて)かもとおもうのですが、意味のつながりがどうも・・・

P4P5パノラマ

 この豆本を買った人はきっと勝手なセリフをあてはめて歌舞伎の名場面のようにひとり語ってたのしんだはずです。もしくは数人で役割を決めてそばの手近なちゃぶ台などたたいて役者気分でえいやぁと演じたかもしれません。両側の脚をスッと伸ばした立ち姿がいいですねぇ。ふんどし丸出しのコケている猫や、頭を押さえてボケたような猫も笑えます。静もあり動もありあきません。

<20221109記>

読めずに不確かなところがわかりました。

津れ天

つれて

立 ちの久

 たちのく

です。

この頁の前後を再度読むと、「立」がありました。


2021年6月14日月曜日

豆本 新版猫の者那し その4

 

P3

(読み)

む可ふ

むこう


うらの

うらの


のら禰こ

のらねこ


可゛おうや

がおうや


きゝ天

ききて


さ王起゛

さわぎ


たてる

たてる


由へいつ

ゆえいっ


そ二疋で

そにひきで


いづれへ

いづれへ


(大意)

向こうの裏の野良猫が

大家が耳にして騒ぎ立てるので

いっそ二匹でどこかへ


(補足)

「む可ふ」、「ふ」が小さいのですが「ふ」だとおもいます。

「きゝ天」、変体仮名「天」(て)に濁点がついていますが、よくある間違いでしょう。

「さ王起゛」、変体仮名「王」(わ)は「已」のような形。変体仮名「起」(き)の濁点は正しい。

P3P4見開き

 おコマののる屋根は瓦のようですが、ふくのほうは色が赤なので銅葺きのよう、豪華です。きっと紺縦縞に暗い瓦の色では映えないので構図と色でバランスをとったのでしょう。左脇には蔵もあります。

2021年6月13日日曜日

豆本 新版猫の者那し その3

P2

(読み)

禰こ

ねこ


ふくと

ふくと


多可゛ひ尓

たがいに


いヽ奈可

いいなか


尓奈り

になり


猫 志れ

ねこしれ


づ多の

ずたの


しんで

しんで


いるを

いるを


きん志゛よ

きんじょ


のどら

のどら


禰こや

ねこや


(大意)

猫ふくと

互いにいい仲になり

ねこ知れず(人知れず)楽しんでいるのを

近所のどら猫や


(補足)

「猫志れづ(人知れず)」、誰にも知られないようにそっと。変体仮名「志」(し)がこのあとにもでてきます。

屋根の上で娘姿のおこまと次頁のふくがあいびきしている図。

 

2021年6月12日土曜日

豆本 新版猫の者那し その2

P1

(読み)

こゝ尓

ここに


志んミちの

しんみちの


かこゐものゝ

かこいものの


うちの可ひ

うちのかい


禰古おこま

ねこおこま


とと奈りの

ととなりの


ゐんきよ

いんきょ


のひそう

のひそう


(大意)

ここに新道(しんみち)の

囲いもの(妾)の家の

飼い猫おこまと

隣の隠居の

肥えた

(補足)

お妾さんの日本髪が色ズレかなにかで不細工になってしまってます。残念、他の部分はなんともないのに。

「禰古」、これじゃぁ、猫っていう感じがつたわりませんね。

「ひそう」、読み間違えかと辞書にあたると、「肥壮」がありました。文字通りの意味です。

 

2021年6月11日金曜日

豆本 新版猫の者那し その1

表紙

見返し

(読み)

新版 猫の者那し

しんぱん ねこのはなし


綱島藏版

つなしまぞうはん


明治二十年二月廿五日内務省交付2950

丸朱印 東京図書館印 TOKIO LIBRARY


(大意)

(補足)

 使い込まれた朱漆塗り漆器のような質感の縁取り。男の右手がのぞくのみで他は袂のふくらみで感じさせるという憎い構図。男の縦縞柄の色合いが渋い。女の縦横縞は庶民的な雰囲気。顔の描き方はごく簡単な線のみでいたって簡潔。お互いの視線はずれているもののホッとする安心感がある。

「な」の変体仮名はほとんどが「奈」ですが、ここでは「那」

 交付は明治20年2月の日付ですが御届は明治19年9月となってます。