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2022年11月22日火曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その11

P10 国立国会図書館蔵

(読み)

このむまハ三 七

このむまはさんしち


のぶた可ゞつれて

のぶたかがつれて


由きそう奈り

ゆきそうなり


者るごまハ

はつごまは


めで多いもの

めでたいもの


たといゝます

だといいます


價  二銭

あたいにせん


御届明治廿年二月廿一日

日本橋区吉川町五バンチ

編輯兼出版人 堤 吉兵エ

(大意)

この馬は三七

信孝がつれて

ゆきそうです


春駒は

めでたいもの

だといいます


(補足)

 三七はなんだろうと調べてみると、「織田信孝、通称三七(さんしち)または三七郎」のことだろうとわかりました。信長の息子です。どうしてこの張り子の馬を信孝が連れてゆきそうなのかを調べましたがわかりませんでした。

 馬の鞍に「全壬駒」のように読めるものをまいていますが、これも不明です。

車付きのは武者姿の子どもを乗せて引っ張ったりして遊んだのでしょうか。上のはかぶっておどったのでしょう。上手に描けています。

 

2022年11月21日月曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その10

P9 国立国会図書館蔵

P8P9

(読み)

まこ

まご


「だん奈ゆんへハ

 だんなゆんべは


とこへおとまりで

どこへおとまりで


ごさいます

ございます


アニくま可へで

あにくまがえで


よび可へされ多ッてへ

よびかえされたってえ


あつもりイ

あつもりい


くひ奈すツ多こ

くびなすったこ


おしつくらと

おしつくらと


くミうちでも

くみうちでも


志奈すツたんべい

しなすったんべい


馬 「ヒイゝー

うま ひいぃー


(大意)

馬子

「旦那昨夜はどこへおとまりでございます。

なに、熊谷まで呼び返されたってぇ。

敦盛の首???

取っ組み合いでもしなすったんべ

馬「ひいぃー


(補足)

「おしつくらと」がわかりません。

悲鳴を上げている馬は一日の仕事ですっかり疲れたようで目も悲しげであります。

 

2022年11月20日日曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その9

P8 国立国会図書館蔵

P8P9

(読み)

まごう多

まごうた


「おい王けヱー

 おいわけえー


ま春可゛多でナァー

ますが たでなぁー


本ろと奈い多を

ほろとないたを


王春れ多可

わすれたか


ハイ\/\/\/

はいはいはいはい


(大意)

馬子唄

「追分 枡形で ホロと泣いたを 忘れたか


(補足)

 追分馬子唄は全国にたくさんのかたちがあって、調べるとこの歌詞に近いのが見つかりました。

「追分 枡形の茶屋で ホロと泣いたが 忘らりょか」。

この頁に記されている内容だけでは意味がさっぱりだったところです。

 馬の背に半畳ほどの座面を乗せ、そこにお客さんを座らせて運びます。尻尾には糞袋、蹄には馬草鞋を履かせているようです。

 

2022年11月19日土曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その8

P7 国立国会図書館蔵

P6P7

(読み)

いまハうへの

いまはうえの


いけの者多

いけのはた


九多゛ん坂

くだ んざか


せ うこん

しょうこん


社 尓も

しゃにも


このま奈び

このまなび


とし\゛/

としど し


阿り

あり


(大意)

今は上野池之端の九段坂にある

招魂社でこのまねごとが

毎年行われている。


(補足)

「せうこん社」、「こ」が変体仮名「王」(わ)にみえますがやはり「こ」。

 招魂社はのちの靖国神社。九段坂招魂社で調べると、当時ここに競馬場があったそうです。錦絵や写真などで見ることができます。

 乗馬している人はぶすっとしていますが、馬は元気でニコニコ笑っているようでかわいらしい。

 あとから追いかける馬を前の頁におさめることもできたでしょうけど、二頭を並べて追いつ追われつを描くためにはこのような絵わりにしなくてはならなかったのだとおもいます。なので首部分が分かれてしまっても見開きで見ごたえある「打毬」のいち場面となってます。

 

2022年11月18日金曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その7

P6 国立国会図書館蔵

P6P7

(読み)

者つ者るの

はつはるの


御志 うぎと

ごしゅうぎと


して

して


はい者゛

はいば


だき うの

だきゅうの


おんもよふし

おんもよおし


あり

あり


しも

しも


(大意)

初春のご祝儀として

拝馬

打毬の

お催しがあります


(補足)

後半部分がさっぱりで調べてみると

『だきゅう ―きう【打毬】

二組みの騎馬に分かれ,馬上から毬杖(ぎつちよう)で毬(まり)をすくい取って自分の毬門に投げ込むのを競う古代の遊戯。大陸から伝わったもの。平安以降,庶民の間では徒歩で行われた。まりうち』

がありました。なるほど、馬二頭でそれらしき催しをしている絵にみえます。

「はい者゛」を調べるもわかりません。適当に漢字を「拝馬」とあてはめました。

 

2022年11月17日木曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その6

P5 国立国会図書館蔵

P4P5

(読み)

「それ尓王多らせ

 それにわたらせ


たまふ盤へいけ

たもうはへいけ


が多のおん大 将  と

がたのおんたいしょうと


見多てまいる

みたてまいる


王れこそハ熊

われこしはくま


可゛への次郎 奈本

が えのじろうなお


ざねひつ可へして

ざねひっかえして


志やうぶ阿れ

しょうぶあれ


ヲイ\/\/

おいおいおい


(大意)

「そこで渡ろうといらっしゃるは

平家方の御大将とお見受けした。

われこそは熊谷次郎直実、

引っ返して勝負あれぇ

ハイハイハイ


(補足)

 最後の「ヲイ\/\/」が読めません。「ヲ」or「ハ」?

「たまふ盤」、変体仮名「盤」(は)としました。「は」の変体仮名のほとんどは「者」ですが、「盤」も使われます。

 ここまでの豆本に出てきている「熊谷次郎直実」は、なぜか「くまがい」ではなく「くまがへ」となっています。

 直実の背中にも敦盛とおなじように丸いものがあります。矢ではなかったのかも。

 豆本の複製を10冊ほどつくりました。小さいことは承知していましたが、できあがったものを実際に手にとるとその小ささにあらためて驚きました。こんな小さいものを木版で絵師・彫師・摺師の手をへて、そして製本しているのです。いまでは豆本の大きさより何倍も拡大して細かく見ることができるのですが、その精緻さにまたまた驚き感嘆してしまいます。

 この頁は色ズレもなく直実の緊迫した表情や馬の動き、ほんとにそのまま直実の名乗りを上げている声が聞こえてきそうです。

 

2022年11月16日水曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その5

P4 国立国会図書館蔵

P4P5

(読み)

「王れこそハ

 われこそは


むく王んの

むか んの


た由ふ阿つ

たゆうあつ


もり

もり


奈り

なり


(大意)

「われこそは

無官の大夫敦盛なり


(補足)

 源平盛衰記、敦盛と坂東武者熊谷次郎直実の出会いの場面。敦盛の様子は「紺の錦の直垂(ひたたれ)に、萌黄おどしの鎧をつけ、白星を打った甲の軍装である。背には滋籐弓と、護田鳥尾の矢を十八差して、白鵇毛(しらつきげ(白みがかった月毛))の馬に乗る」などと本などには記されています。敦盛の背中の紫の丸いものが矢の18差でしょうか。

 馬の右の沖に見える赤い船は敦盛が逃げめざす大将船。それを見つけ呼び止めた直実に向き合う敦盛を描いたのがこの頁です。波打ち際での戦いとなるのですが、ちゃんとそれらしく沖に浮かぶ船のところの波とかき分けています。

 変体仮名「王」(わ)のかたちはほとんど「已」(已然形の已)とおなじです。

 

2022年11月15日火曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その4

P3 国立国会図書館蔵

P2P3

(読み)

「おふさい\/

 おおさいおおさい


よろこび

よろこび


阿りや本可ゑハ

ありやほかえは


やらしとおもう

やらじとおもう


(大意)

「おおさえおさえ 喜びありや( 喜びありや 我がこの所より)外へは遣らじとぞ思ふ 


(補足)

 昨日のその3に引き続き舌出三番叟の歌の最初の部分です。昨日の歌はこの続きになります。

「おぉなんとも喜ばしいことだ。この喜びをほかにはやるまいとおもう」のような感じでしょうか。

背景の立派な松はこの三番叟の歌に出てくる「常磐の枝ものほんよえ 木の葉も茂る えいさらさら」「牡丹に唐獅子 から松を」を意識したものか。

左の裃姿の武者は、これも歌の「頭(かしら)に重き立烏帽子」を描いたものかもしれません。 

そして肝心の「お馬津゛くし」ですから、ここでは歌に出てくる「栃栗毛」二頭を描いたものでしょう。「馬の毛色のひとつ。主毛が暗い褐赤色でやや灰白色、たてがみと尾が黒みがかった褐赤色または灰白色」。たしかにそのような色合いになっています。

 左の馬の目が笑顔になっていてとてもかわいい。右の馬も切れ長の目ながら笑っていそうです。

とにかくめでたさいっぱいよろこびいっぱいの絵であります。

「よろこび」、「よ」はどちらかというと変体仮名「与」っぽい。

「阿りや」「やらし」、変体仮名「阿」(あ)。ふたつの「や」のかたちがちがうことに注意です。

「本可ゑハ」、変体仮名「本」(ほ)、変体仮名「可」(か)、変体仮名「恵」(ゑ)。

「おもう」、ここの「も」は、「し」のように書きはじめて下端でクルッと左回りに逆S字にさかのぼって上端で右回りに下がってゆくようなかたち。

 

2022年11月14日月曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その3

P2 国立国会図書館蔵

P2P3

(読み)

「い与\/

 いよいよ


きよく馬 の

きょくうまの


者じまり\/

はじまりはじまり


う多

うた


「尓せむらさ起の

 にせむらさきの


奈可\/尓およハぬ

なかなかにおよばぬ


ふて尓うつしゑも

ふでにうつしえも


いけぬみき王の

いけぬみぎわの


いしかめや

いしかめや


本ん尓うのまね

ほんにうのまね


からすとひ

からすとび


(大意)

「いよいよ

曲馬のはじまりはじまり~

うた

「にせ紫もなかなかに 及ばぬ筆に写し絵も いけぬ汀の石亀や 

ほんに鵜の真似からす飛び


(補足)

うたの部分が読めても意味がさっぱりで調べまくりました。以下のHPに詳しく説明されていました。

ほとんどすべて参照させていただきました。ありがとうございます。

http://www.tetsukuro.net/nagautaed.php?q=131


舌出三番叟(しただしさんばそう)(三番目に登場する老人)のうたのいち部分です。

「おおさえおさえ 喜びありや 喜びありや 

我がこの所より外へは遣らじとぞ思ふ 

にせ紫もなかなかに 及ばぬ筆に写し絵も いけぬ汀の石亀や 

ほんに鵜の真似からす飛び とっぱひとへに有難き 

花のお江戸の御贔屓を 頭(かしら)に重き立烏帽子 」


大意ではそのままでしたので、先程のHPから引用(無断でもうしわけありません)させていただきます。

「江戸紫をまねてはみれど、所詮にせもの、あの人の芸には到底及びもつかない。

本物そっくりの写し絵のはずが、絵師が下手だよ、ありゃいけないよ、どこの池にもいる石亀じゃ、

空など飛べるわけがない。おっしゃる通り、鵜の真似をするカラスのように、ばたつくだけの私のからす飛びでございます。」


 それにしても中身の濃いうたです。ひとつひとつの言葉に重みがあって、またひっかけもありひとつの言葉が次の言葉を引き出してゆきます。

「い与\/きよく馬の」、おなじ「よ」ですが一方は変体仮名「与」。

「およハぬふて尓」、濁点がついてないのでいっそう混乱してしまいます。

「いけぬみき王の」、ここも濁点がなくわかりにくい。変体仮名「王」(わ)が読みとれませんでした。

「うのまねからすとひ」、ことわざ「鵜の真似をするカラス水におぼれる」(身の程知らずに人の真似をする者は必ず失敗する意)というのがあるそうですが、知りませんでした。

 まわし飾りをつけた馬や武者の絵が少々荒いですが、動きはしっかりとらえていています。

ふぅ〜、うたが大変でした。

 

2022年11月13日日曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その2

P1 国立国会図書館蔵

(読み)

者しややの

ばしゃやの


むまのつめへ

むまのつめへ


かねを者める

かねをはめる


ところ

ところ


「そこのちく

 そこのちく


志やう

しょう


おと奈しく

おとなしく


志ろ

しと


(大意)

馬車屋の馬の蹄(ひずめ)へ

蹄鉄をはめるところ

「おいおまえ

おとなしくしろ


(補足)

 でだしの「者゛しややの」で悩んでしまいます。そのまま読みすすれば「馬車屋」と納得。

 馬の全体が無駄な線がなく的確に描かれています、うまいもんです。馬の頭が小さく見えるのはいやがって首を左側に振っているからでしょうか。尻尾がかるく結んであるようでかわいい。

 職人ふたりも馬と同様柔らかい線で輪郭だけで動きを出しています。左側の職人は右手に木槌、左手に蹄のかたちを整えるための包丁を持って、もうひとりは蹄鉄を用意しています。

 明治まであと少しの江戸後期に諸外国から外国人と一緒にかれらの馬も入ってきました。その馬が蹄に鉄をうってあるので当時の武士たちや馬をあつかっていた人々は驚いたそうです。すぐまねをする武士たちもいたというから今とそうかわりません。日本ではそれまでは馬に馬専用のわらじをはかせていました。その頃日本にやってきた外国人の日本見聞記などを読むと、日本人は馬を大切にしているが扱いがとても下手だとかかれています。

 

2022年11月12日土曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その1

表紙 国立国会図書館蔵

(読み)

表紙

お馬 津゛くし

おうまづ くし


(大意)

(補足)

「馬」のくずし字がやや図案化されていて「一」+「る」。

馬づくしですけど、表紙では二頭の馬の頭をちらっと見せているだけです。にくい演出。

乗馬している人の衣装が、左側のひとりは着物でもうひとりは陣羽織のようにも見えますがさて?

「價二銭 御届明治廿年二月廿一日」