2022年11月15日火曜日

お馬津゛くし(堤吉兵衛) その4

P3 国立国会図書館蔵

P2P3

(読み)

「おふさい\/

 おおさいおおさい


よろこび

よろこび


阿りや本可ゑハ

ありやほかえは


やらしとおもう

やらじとおもう


(大意)

「おおさえおさえ 喜びありや( 喜びありや 我がこの所より)外へは遣らじとぞ思ふ 


(補足)

 昨日のその3に引き続き舌出三番叟の歌の最初の部分です。昨日の歌はこの続きになります。

「おぉなんとも喜ばしいことだ。この喜びをほかにはやるまいとおもう」のような感じでしょうか。

背景の立派な松はこの三番叟の歌に出てくる「常磐の枝ものほんよえ 木の葉も茂る えいさらさら」「牡丹に唐獅子 から松を」を意識したものか。

左の裃姿の武者は、これも歌の「頭(かしら)に重き立烏帽子」を描いたものかもしれません。 

そして肝心の「お馬津゛くし」ですから、ここでは歌に出てくる「栃栗毛」二頭を描いたものでしょう。「馬の毛色のひとつ。主毛が暗い褐赤色でやや灰白色、たてがみと尾が黒みがかった褐赤色または灰白色」。たしかにそのような色合いになっています。

 左の馬の目が笑顔になっていてとてもかわいい。右の馬も切れ長の目ながら笑っていそうです。

とにかくめでたさいっぱいよろこびいっぱいの絵であります。

「よろこび」、「よ」はどちらかというと変体仮名「与」っぽい。

「阿りや」「やらし」、変体仮名「阿」(あ)。ふたつの「や」のかたちがちがうことに注意です。

「本可ゑハ」、変体仮名「本」(ほ)、変体仮名「可」(か)、変体仮名「恵」(ゑ)。

「おもう」、ここの「も」は、「し」のように書きはじめて下端でクルッと左回りに逆S字にさかのぼって上端で右回りに下がってゆくようなかたち。

 

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