表紙 国立国会図書館蔵
(読み)
さ留かに合 戦
さるかにがっせん
(大意)
略
(補足)
変体仮名は「留」(る)だけで、頻繁に使われる変体仮名「可」(か)、変体仮名「尓」(に)は意識的に平仮名を用いているようにおもえます。
とても見事な表紙絵です。額に臼印をつけた武士が猿顔の男をこらしめているところの錦絵です。
手のひらにのるようなちいさな豆本の表紙にここまでの情熱をこめるていることに感激します。明治十八年に出版されているのですが、まださがせば腕のよい絵師・彫師・摺師がいたことがわかります。この構図とまったく同じで最終頁も描かれています。
阿吽の構図はここでも守られています。猿顔の「阿」は右手も広げ、この手もササッと描いているように見えますがうまい。「吽」の臼、こちらの右手は口と同じようにギュッと握ってます。
臼の頭部を拡大します。
表情の力強さ、髪の鬢(びん)の細さ、眉毛の両端、目尻の端、口角など、この小ささの中にこめている力量の大きさにしびれます。
猿顔も拡大しましょう。
北島三郎にそっくりです。サブちゃん本人もこれをみれば喜ぶこと間違いありません。
髪の生え際や髷の丁寧な描き方と髪の毛の端まで一本一本を描ききっています。眉毛を見てください。眉毛の両端です。なんと細かい仕事をしていることでしょうか。
そして一番驚かされるのが、右上の臼を見上げる仕草は目が右上をむいているほかは、顔をほぼ対称に描いているもののほんの少しの顔の線だけでそのバランスをくずし、懲らしめられて自由がきかないながらも臼の方を見返している動きを表現しているところです。
髪の毛の生え際などの細かいところは絵師の仕事ではなく、彫師や摺師の仕事でしたからかれらの腕の良さが目立ちます。
豆本はその小ささゆえ、書店に並べて手にとってもらうためには表紙がある意味、命でした。手にした子どもや親たちは裏表紙をすぐにめくって価格を確かめたことでしょう。定價壱銭でした。
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