P1 国立国会図書館蔵
(読み)
む可し\/ ぢゝい
むかしむかしじじい
と者゛ゝあ可゛あり阿る
とば ばあが ありある
ひたぬきをし者゛り
ひたぬきをしば り
おきぢゝいハやまへ
おきじじいはやまへ
ゆきける可゛あと尓て
ゆきけるが あとにて
者゛ゝあハむきを
ば ばあはむぎを
つきゐ多るところ
つきいたるところ
たぬきハ者゛ゝア尓
たぬきはば ばあに
む可ひ王れらの
むかいわれらの
なわをとき由る
なわをときゆる
てくれ候 ハゝ
てくれそうらわば
(大意)
むかしむかしじじいと
ばばあがおりました。
ある日たぬきをしばっておいて、
じじいは山へ行ってしまいましたが
ばばあはのこって、麦をついていたところ
たぬきはババアにむかって
「おれの縄をといてくれたなら
(補足)
出だしの文字が「お」にみえます。拡大してみるとちゃんと「む」になってました。
「者゛ゝあ可゛あり」、「可゛」が「ら」のようにみえます。小さな「可」に「゛」です。
(豆)本ごとにやはり字にくせがありますので、なれるまでは苦労します。
「あと尓て」、「尓」は頻繁にでてきますが、ここの「尓」のかたちはほとんど英語筆記体小文字の「y」。この3行後の「尓」はほぼそのままのかたちです。
「くれ候ハゝ」、「候ハゝ」(そうらわば)は定型文というか決り文句です。古文書ではよくでてきます。
前回の「猫の芝居」の絵師は人の体幹を想像させるまでには描く腕がともなっていませんでしたが、ここのたぬきがばばあに馬乗りになって殺そうとしている場面では、脚をばたつかせるばばあとそれを必死に抑え込むたぬきの動きが見えてくるようです。
うしろの筒状のものは麦搗きの臼でしょうけど、あまり丁寧に描く気がなかったようです。
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