上P1 東京都立図書館蔵
(読み)
それ赤本(あ可本゛ん)ハ一 ツ趣向(し由可う)を種(多年)として萬(よろ川)の笑(わらひ)
それ あかぼ ん はひとつ しゅこう を たね として よろず の わらい
ひとぞ奈れ里个る竹(多け)尓鳴(奈く)
いとぞなれりける たけ に なく
雀(すゞめ)ハ糊(のり)の為(多め)尓舌(し多)を切(きら)連穴(あ奈)尓住(すむ)蟹
すずめ は のり の ため に した を きら れ あな に すむ
(可尓)ハ柿(可起)の多め尓甲(可う)を破(和ら)る悪老婆(あく者゛ゝ)
かに は かき のために こう を わら る あくば ば
のふさ\/志きハ力(ち可ら)をも以連ずし天重(おも)き葛籠(つゞら)をうごかし桃太郎(も
のふさふさしきは ちから をもいれずして おも き つづら をうごかし も
ゝ多らう)能
もたろう の
天んこち毛奈起ハ目(め)尓ミへ奴鬼神(お尓可ミ)もあ王れと思(おも)ハ寿
てんこちもなきは め にみえぬ おにかみ もあわれと おも わす
(大意)
子どもたちの読み物、赤本というものは古来伝わるひとつの童話をさらに創作工夫して、大人にまで笑いをとるものとなっている。
竹にとまって鳴く雀は糊をなめたために舌を切られ、穴に住む蟹は柿のために甲羅をわられた。「舌切雀」のふてぶてしい悪婆は、力もいれずに重い葛籠を運び(あんな重いものを痩せっぽちのババアが運べるわけがない)、「桃太郎」の途方もない活躍には(どうみたって大群の鬼どもを桃太郎と三匹で戦って勝てるわけがない)、おもわず鬼たちを哀れにおもうこともある。
(補足)
全体にふりがながかすれています。拡大して読んでいますので間違いがあるかもしれません。
「桃太郎能天んこち毛奈起ハ目尓ミへ奴鬼神も」、てんこちもなき、なんて辞書にないとおもって調べるとありました。『(形)〔「てんこつない」の転。近世語〕
思いもかけない。とんでもない。善悪両方にいう。「おや―・い,あんとして食はれべいぞ」〈咄本・鯛の味噌津〉』。変体仮名「毛」が「斗」のようにも「比」のようにもみえます。「ミへ奴」は何度かみなおしてようやくわかりました。
「思ハ寿」、最初「寿」は変体仮名「春」かとおもいましたが、よく見ると「春」ではありませんでした。
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