上P1 東京都立図書館蔵
(読み)
可くて楚゛紅粉皿闕皿(べ尓さら可けざら)乃砕(く多゛)け多るを阿川め
かくてぞ べにさらかけざら の くだ けたるをあつめ
鉢被姫(者ち可つ起゛ひめ)の古(ふる)き越多づね天世(与)ゝ新(阿多ら)しく桜木(さくら
はちかつぎ ひめ の ふる きをたづねて よ よ あたら しく さくら
ぎ)尓の保゛せ花咲(者奈さ起)幾
ぎ にのぼ せ はなさき き
ぢゝの灰(者い)をあふぎ希ん登゛んぢゝを悪(尓くま)まざらめや
じじの はい をあおぎけんど んじじを にくま まざらめや
浦 嶋 太郎 月 山 東 京 傳 印
うらしまたろうつき さんとうきょうでん いん
(大意)
このようにして「紅皿欠皿」(紅皿は姉で実子で美人、欠皿は妹で継子で不美人。継子いじめの話)の破片をあつめるようにポツポツと出版され続け、「鉢かづき」(中世のシンデレラ日本版昔お伽噺)の古い昔話を訪ねてつぎつぎに新しく版木(桜の木)をおこし赤本とする。花咲爺を古い桜の木にのぼらせ(儲かるようにと)灰をまかせ満開にさせる。あぁなんとけちで欲の深い爺(出版人)であることか、憎まずにはいられない。
浦島 一月 山東京傳 印
(補足)
世にしれわたっている赤本、舌切雀・猿蟹合戦・桃太郎・鼠の嫁入り・猿の生肝・かちかち山とたくさんの赤本をあげてきて、そして紅皿欠皿・鉢かづき姫とつづき、最後に花咲爺をもってきて
「新しく桜木尓のぼせ」とこの洒落をいいたくていいたくてしょうがなかったような感じで締めくくります。そしてきっと山東京伝きっとこの洒落をいたく気に入っていて、人にほめられるとうんうんとうなずく姿が目にうかびます。
版木は桜の板でしたから、花咲爺が咲かせる桜の木に引っ掛けたわけで、さらにそれにのぼらせるという言葉も世に出す・印刷して出版するということに引っ掛けているわけです。
太郎月とは一月のこと。十二月を極月(ごくげつ)というのと同じで、それぞれの月に別名があります。
「彼善耳」、「鉢被姫」の「彼」と「被」の形は間違い探しにしてもよいくらいよくにています。
「多づね天」、変体仮名「多」はおおくは「さ」の横棒がないかたちですが、ここの変体仮名は「多」のかたちがいくらか感じられるくずし字になっています。「づ」はよくみると左側に短い縦棒があるので変体仮名「川゛」です。
「悪(尓くま)まざらめや」、振り仮名「ま」がダブっていますが、他の部分の振り仮名も同じような箇所がいくつもあります。「花咲(者奈さ起)幾」など。
「の保゛せ」、よくみたら変体仮名「保」(ほ)でした。
「希ん登゛ん」、変体仮名やくずし字を学んでいないと読めません。
さて物語はこの口上にあるように、なじみある日本昔噺をつなぎ合わせたような奇想天外のながれですすんでいきます。はじまりはじまり〜。
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