2023年8月30日水曜日

桃太郎発端話説 その7

P2P3 東京都立図書館蔵

P2

(読み)

〽奈んとお者゛ゝやけのゝきゞすよる能

 なんとおば ばやけののきぎすよるの


つる者多けのさといもむつの者ら

つるはたけのさといもむつのはら


こを思 王奴ものハ奈いこちらハ

こをおもわぬものはないこちらは


古のとし尓奈つてこの奈いといふハ

このとしになってこのないというは


てんとこゝろ本゛そいことでハお志゛やら奴可

てんとこころぼ そいことではおじ ゃらぬか


〽お者゛ゝや者奈しどり

 おば ばやはなしどり


奈らバそんをして

ならばそんをして


もうつてやる可゛

もうってやるが


与いぞや

よいぞや


〽され者゛いの

 されば いの


きぢ いぬ さる

きじ いぬ さる

(大意)

「なんとものぉ、お婆よ、焼野の雉は子をかばい、夜の鶴は子をかこう、

畑の親里芋だってたくさんの子いもを養う、鯥(むつ)のハラコもそうじゃ、

子をおもわぬものはない。うちらはこの歳になって子がないというのは

なんとも心細いことじゃのぉ」

「お婆や、放し鳥ならば、損をしてもよいから売ってやるがよいぞ」

「そうするのがよかろうのぉ」

(補足)

「やけのゝきゞすよる能つる」、一読して???。読み進めると親の子を思う気持ちと表現かなと。さらに調べると辞書にありました。

『焼け野の雉(きぎす)夜の鶴(つる )

巣のある野を焼かれると雉子(きじ)は身の危険を忘れて子を救い,寒い夜,巣ごもる鶴は自分の翼で子をおおう。子を思う親の情が非常に深いたとえ。』

 じじいになっても無教養なのがなさけない。

「こを思王奴」、「思」のくずし字はよくでてきますが、ここのはさらにくずされている感じ。この行から最後まで「こ」と「て」と「と」の区別がやっかい。「てんと」の「て」が「と」にもみえて、それでも意味が通じそうです。

 いぬがニコニコとかわいらしい。鳥かごや雉の入っている檻、その上の籠のような入れ物はなんの動物をおさめるのでしょう。

 

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