P24P25 国立国会図書館蔵
P25
(読み)
さ川そく門 口 へ志゛由ミやうのく春り人 魚 御奈め所 と
さっそくかどぐちへじ ゅみょうのくすりにんぎょおなめどころと
いふや春可ん者゛んを出し个れバ何 可゛むしやう尓
いうやすかんば んをだしければなにが むしょうに
よく者゛り天 めいのものさし尓者づ連て
よくば りてんめいのものさしにはずれて
奈可゛いきをし多可゛るぞくぶつとも千 年
なが いきをしたが るぞくぶつどもせんねん
いきるときゝ王れも\/ と奈め尓
いきるとききわれもわれもとなめに
来多り个るこそおろ可奈れ
きたりけるこそおろかなれ
〽多ゞし奈めちんハ一 人 まへ
ただしねめちんはいちにんまえ
金 一 両 一 分川ゝよび出しち うさんと
きんいちりょういちぶずつよびだしちゅうさんと
同 し袮多゛ん奈り
おなじねだ んなり
〽ぬしハいつそ
ぬしはいっそ
口 がくさひよ
くちがくさいよ
〽平 二そ者゛て
へいじそば で
者や春
はやす
〽飛やうし尓かゝ川て
ひょうしにかかって
奈めさつせへ
なめさっせい
〽ひやうし尓かゝ川て
ひょうしにかかって
奈めまんしよ
なめまんしょ
(大意)
早速門口へ「寿命の薬 人魚御なめ所」という安看板を出したところ、
天より与えられた寿命を無視してただ欲張り長生きしたがる俗物どもが
千年生きると聞いて、われもわれもと舐めに来ることこそ愚かなことである。
ただし舐め賃はひとり一両一分、「呼出し昼三(吉原の最高級の遊女の一昼夜)」と同じ値段である。
「あなたはほんとうに口が臭いよ」
平二がそばで囃(はや)す。
「拍子に合わせて舐めさっせい」
「拍子に合わせて舐めまんしょう」
(補足)
「志゛由ミやうのく春り」、変体仮名「也」(や)は現在の平仮名「ゆ」に形が似ているので、読み間違いやすい。変体仮名「由」(ゆ)は中の縦棒がゆらぎます。「く」がカタカナ「ム」のようになっています。
人魚の胸のあたりを舌を出して舐めているのは脇に刀と扇子があり、また身なりもからも武士でしょうが、他の身分の人ではなく武士を描いたところが山東京伝の京伝たるところでありましょう。
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