2023年7月16日日曜日

箱入娘面屋人魚 その44

P24P25 国立国会図書館蔵

P24

(読み)

こゝ尓つり

ここにつり


ふ年の

ふねの


平 ニ可゛

へいじが


きんじよ尓

きんじょに


一 人の

ひとりの


者くぶつ

はくぶつ


あり个る可゛

ありけるが


平二可

へいじが


人 魚 を

にんぎょを


女  本う尓して

にょうぼうにして


もち尓つくときゝ

もちにつくときき


可れ尓志めしてい王く

からにしめしていわく


夫本艸(それ本んざう)尓人魚(尓んぎよ)と称(せ う)

    それほんぞう に   いんぎょ と  しょう


ずる者(もの)ニ種(し由)あり曰

ずる  もの に  しゅ ありいわく


魚亭魚(ていぎよ)曰  魚児魚(じぎよ)又 異物誌(いぶつし)尓

    ていぎょ いわく    じぎょ また    いぶつし に


人 の形(可多ち)尓似(尓)て長(奈可゛)さ尺(しやく)余(よ)

ひとの  かたち に  に て  なが  さ  しゃく   よ


頂(い多ゝき)乃うへ小穿(すこしきあ奈)ありとハ

  いただき のうえ   すこしきあな ありとは


志るせし可とかゝる本゛つ

しるせしがとかかるぼ っ


とりもの奈る事 を志ら須゛

とりものなることをしらず


ま多む可しよりいひ

またむかしよりいい


つ多ふる尓人 魚 を

つたうるににんぎょを


奈め多るものハ千歳 の

なめたるものはちとせの


志゛由ミやうを多も川といへハ

じ ゅみょうをたもつといえば


何 尓もせよ金 尓奈る志ろもの

なににもせよかねになるしろもの


しやとい王れて平 二大  尓よろこび

じゃといわれてへいじおおいによろこび

(大意)

 ここに釣り船平次の近所に一人の博学者がいた。

平次が人魚を女房にして持て余していると聞き、

彼にこのようなこと言った。

「『本草』という書物に人魚と称するものは二種類あり。

ひとつは魚帝魚(ていぎょ)、ひとつは魚児魚(じぎょ)。

また『異物誌』には人の形に似て長さは一尺余り、頭のてっぺんには

小さな穴があると記してあるが、このように愛くるしい美人であるとは知らなかった。

また昔よりの言い伝えに、人魚を嘗めたものは千歳の寿命を保つとあるが、

いずれにせよ、金になる代物じゃ」。

これを聞き平次はおおいに喜び

(補足)

「もち尓つく」、辞書で調べてもありませんでした。文章の流れから意味はもてあますでありましょう。

 安看板に「寿命薬 人魚御奈め(所)」とあります。

順番を待つ人々、当時は身分社会ですから、髪型・持ち物・喋る言葉・挙措動作・人との対応などでその身分をおしはかることができました。ここにもいろいろな方々がいらっしゃいます。

 

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