2023年7月21日金曜日

箱入娘面屋人魚 その49

P26P27 国立国会図書館蔵

P27

(読み)

人 魚 を奈めさせて大 金

にんぎょをなめさせてたいきん


をもうけ連バその

をもうければその


と奈りのていし由

となりのていしゅ


よくしんもの尓て

よくしんものにて


や可゛てあんじ付

やが てあんじつき


女  本うの山 の可ミ可゛

にょうぼうのやまのかみが


ふくらすゝめのやう奈

ふくらすずめのような


つらへおしろいをこて\/とぬらせむ年可ら

つらへおしろいをこてこてとぬらせむねから


下 へうちのこぞう可゛五月 のこいのふき

したへうちのこぞうが さつきのこいのふき


奈可しをとり出して者可満尓者可せ

ながしをとりだしてはかまにはかせ


尓多山 尓ん魚 尓志多て天こと\/しく

にたやまにんぎょにしたててことごとしく


可ん者゛んを出し一 奈め二百  文 川ゝのやす

かんば んをだしひとなめにひゃくもんづつのやす


うりを出し可け个れどもこいつハさぎを

うりをだしかけけれどもこいつはさぎを


可らすよ多可をち うさん奈ん本゛

からすよたかをちゅうさんなんぼ


こけ奈俗物(ぞくふつ)でもその手ハ

こけな   ぞくぶつ でもそのては


く王須゛多れひとり奈め尓

くわず だれひとりなめに


こぬ由へていし由やけをおこして

こぬゆえていしゅやけをおこして


ふうふけんく王をおつ者しめる

ふうふけんか をおっぱじめる

(大意)

人魚をなめさせて大金を儲ければ、

その隣の亭主は強欲者で、しばらく考え思い付き

山の神である女房のおたふくのような顔に

白粉をコテコテと塗りたくり、

胸から下は、うちの子どもが五月の鯉のぼりを取り出してきて

袴のようにはかせ、人魚に似た山人魚に仕立て上げた。

大げさに看板まで出し、ひとなめ二百文ずつと安売りにしたけれども、

これは、鷺を烏、夜鷹を昼三とするような嘘っぱち。いくらなんでも

愚かな俗物といっても、こんな手にだまされることもなく、

誰一人としてなめに来るものはいなかった。

亭主はやけを起こして、夫婦喧嘩をおっぱじめてしまった。

(補足)

「山の可ミ可゛」、「山」と気づくまでにちと時間がかかりました。

「ぬらせ」、「ら」のかたちはありませんが、ながれから「ら」。

「こと\/しく」、「こと」は合字。大げさに。

「こぬ由へていし由やけを」、変体仮名「由」と平仮名「や」はまちがえやすい。当時の「や」の形が現在の「ゆ」にそっくり。変体仮名「由」(ゆ)は縦棒が「口」のなかでゆらぎます。

 どこかの長屋で実際にありそうな夫婦喧嘩の光景で、おかしくもあるがちとこわい。

 

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