P26P27 国立国会図書館蔵
P27
(読み)
人 魚 を奈めさせて大 金
にんぎょをなめさせてたいきん
をもうけ連バその
をもうければその
と奈りのていし由
となりのていしゅ
よくしんもの尓て
よくしんものにて
や可゛てあんじ付
やが てあんじつき
女 本うの山 の可ミ可゛
にょうぼうのやまのかみが
ふくらすゝめのやう奈
ふくらすずめのような
つらへおしろいをこて\/とぬらせむ年可ら
つらへおしろいをこてこてとぬらせむねから
下 へうちのこぞう可゛五月 のこいのふき
したへうちのこぞうが さつきのこいのふき
奈可しをとり出して者可満尓者可せ
ながしをとりだしてはかまにはかせ
尓多山 尓ん魚 尓志多て天こと\/しく
にたやまにんぎょにしたててことごとしく
可ん者゛んを出し一 奈め二百 文 川ゝのやす
かんば んをだしひとなめにひゃくもんづつのやす
うりを出し可け个れどもこいつハさぎを
うりをだしかけけれどもこいつはさぎを
可らすよ多可をち うさん奈ん本゛
からすよたかをちゅうさんなんぼ
こけ奈俗物(ぞくふつ)でもその手ハ
こけな ぞくぶつ でもそのては
く王須゛多れひとり奈め尓
くわず だれひとりなめに
こぬ由へていし由やけをおこして
こぬゆえていしゅやけをおこして
ふうふけんく王をおつ者しめる
ふうふけんか をおっぱじめる
(大意)
人魚をなめさせて大金を儲ければ、
その隣の亭主は強欲者で、しばらく考え思い付き
山の神である女房のおたふくのような顔に
白粉をコテコテと塗りたくり、
胸から下は、うちの子どもが五月の鯉のぼりを取り出してきて
袴のようにはかせ、人魚に似た山人魚に仕立て上げた。
大げさに看板まで出し、ひとなめ二百文ずつと安売りにしたけれども、
これは、鷺を烏、夜鷹を昼三とするような嘘っぱち。いくらなんでも
愚かな俗物といっても、こんな手にだまされることもなく、
誰一人としてなめに来るものはいなかった。
亭主はやけを起こして、夫婦喧嘩をおっぱじめてしまった。
(補足)
「山の可ミ可゛」、「山」と気づくまでにちと時間がかかりました。
「ぬらせ」、「ら」のかたちはありませんが、ながれから「ら」。
「こと\/しく」、「こと」は合字。大げさに。
「こぬ由へていし由やけを」、変体仮名「由」と平仮名「や」はまちがえやすい。当時の「や」の形が現在の「ゆ」にそっくり。変体仮名「由」(ゆ)は縦棒が「口」のなかでゆらぎます。
どこかの長屋で実際にありそうな夫婦喧嘩の光景で、おかしくもあるがちとこわい。
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