P30P31 国立国会図書館蔵
P31
(読み)
〽さて女 本う人 魚 も
さてにょうぼうにんぎょも
王可ひてやい可゛
わかいてあいが
手を付 多り
てをつけたり
あしをつけ多可゛りし
あしをつけたが りし
一 袮ん尓て
いちねんにて
者可まを
はかまを
ぬき多るごとく
ぬぎたるごとく
一 可ハむけ
ひとかわむけ
あし手可゛
あしてが
できて本んとうの
できてほんとうの
人 間 と奈り
にんげんとなり
个るこそ
けるこそ
も川とも
もっとも
あまり
あまり
こじつけ尓て
こじつけにて
うま春き多る
うますぎたる
本どふしぎ奈り
ほどふしぎなり
〽平 次ハ人 魚 と
へいじはにんぎょと
中 む川ましく
なかむつまじく
うとくの
うとくの
ミと奈り
みとなり
さ可い丁 へんへ
さかいちょうへんへ
ぢ う多くを
じゅうたくを
引 こし个る此 所 を人 魚 丁
ひっこしけるこのところをにんぎょちょう
といひし可゛今 ハ人 形 丁 と
といいしが いまはにんぎょうちょうと
あやまり个る
あやまりける
(大意)
さて女房の人魚も、若い連中が手をつけたい足をつけたいという一念が
通じたのか、袴を脱いだかのように一皮むけて手足ができて本当の人間になった
というのは、はなはだあまりのこじつけで出来すぎた不思議なことである。
平次は人魚と仲睦まじく金持ちの身となり、堺町あたりに住宅を建て、引っ越した。
ここを(もと人魚が住むというので)人魚町というのだが、いまは訛って人形町と
言い伝えられている。
(補足)
人形町は現東京都中央区日本橋の町名。人形師が多く住んでいたので俗称でそう呼ばれていた。近くの十軒店に「面屋(めんや)」という屋号の人形屋が実際にあった。その面屋と人形が箱入りで売られていたことから本作の書名「箱入娘面屋人魚」とした、とものの本にはありました。
0 件のコメント:
コメントを投稿