P18P19 国立国会図書館蔵
P18
P19
(読み)
P18
まいつるやの伝 三 ハ七 両 二分出して
まいずるやのでんぞうはしちりょうにぶだして
とん多゛や川可いものを引 づりこミ
とんだ やっかいものをひきずるこみ
可年て飛年川多あくあんじを志多可゛る男 由へ
かねてひねったあくあんじをしたが るおとこゆへ
うぬハぐ川とあん
うぬはぐっとあん
P19
じ多きて人 魚 の奈を魚人(うをんど)とあら多め
じたきでにんぎょのなを うおんど とあらため
ち可\/尓つき多しのおいらん尓するつもり奈り
ちかぢかにつきだしのおいらんにするつもりなり
〽多゛ん奈さんハ
だ んなさんは
けし可らぬあんじを
けしからぬあんじを
なさるぢき尓
なさるじきに
者多きさう奈
はたきそうな
こ川多と
こったと
女 可ミ由ひ
おんなかみゆい
口 の内 天゛
くちのうちで
いふ
いう
(大意)
舞鶴屋の伝三は七両二分を出して、とんだ厄介者を引きずり込んだ。
以前よりあれこれ考えていた悪いもくろみをしたがる男なので、
本人は考えあぐねたつもりで、人魚の名を「魚人(うおんど)」とあらたにして
近々に突出しの花魁にするつもりとした。
「だんなさんはけしからぬもくろみをなさる。
じきに失敗するだけさ」と女髪結いはブツブツ言う。
(補足)
「出して」、「出」と「て」のあいだが変体仮名「多」にもみえますけど。
「可年て飛年川多」、「て」以外はみな変体仮名。
「うぬ」、「う」「ら」変体仮名「可」はみなそっくりです。
伝三が股引をぶら下げています。よく見なくてもこの股引、指先の分かれた足袋までついている特注品でありました。お足がなければ始まらぬ、伝三は(苦)笑い。
そのうしろには、薦被(こもかぶ)りの四斗樽(四十升)の酒樽より酒を注いでいます。提子(ひさげ)からあふれてしまっても、こぼさぬように桶の中でしているところが実際の酒屋での所作。わたしが子どものころまでは、このようにしていました。お使いで酒屋にいくときは瓶をもち、豆腐屋へは鍋を持っていくのは当たり前でした。
「銘酒男山」そして「山本」とあるので調べてみました。現在では「男山」というと北海道旭川の酒を第一に思い浮かべます。どうやら本家である摂州伊丹の本家は廃業したようで、それを現在の北海道の蔵元が復活させたようです。
また、提子に入れている娘は、禿(かむろ)でしょう。薦被りが筵でくるまれているのを丁寧に描いていますが、禿もこれまたそれ以上に細かく描写されています。髪の襟足など手をぬいていません。右手に持っている細長い棒状のものはきっと、酒樽の注ぎ口の栓でしょう。裾からのぞいている足の向きがなんか変で、どんな座り方をしているのやら。
源氏名を魚人(うおんど)としたのは、当時、吉原では松原屋に松人(まつんど)、扇屋に花人(はなんど)といった名高い遊女がいたのをもじったものと、ものの本にはありました。
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