P20 国立国会図書館蔵
(読み)
あるきやく魚人(うをんど)可゛
あるきゃく うおんど が
志よ尓ち尓き多り
しょにちにきたり
とこ可゛おさまると
とこが おさまると
びやうぶの
びょうぶの
うちをまつ
うちをまっ
くら尓し可の
くらにしかの
く路ごをき多
くろごをきた
るものうしろ可ら
るものうしろから
手を出し
てをだし
多者゛こをすいつけて
たば こをすいつけて
出しいろ\/志うちハ春川ハり
だしいろいろしうちはすっぱり
人 間 のとをり尓てぐら可し个れども
にんげんのとおりにてぐらかしけれども
と可く王る奈まぐさき由へこ多へ可年
とかくわるなまぐさきゆへこたえかね
きやくハ尓げ出春を尓んぎよつ可ひハ
きゃくはにげだすをにんぎょつかいは
可へ春満じとそてをひ可へつゞひて
かえすまじとそでをひかへつづいて
可け出し个る可゛かんじんの本んぞんの
かけだしけるが かんじんのほんぞんの
(大意)
ある客が魚人の初日に来た。床の支度がすむと
屏風の内を真っ暗にし、あの黒衣を着た者が
屏風の後ろから手を伸ばして、煙草を吸い付けて出し
客へのいろいろな振る舞いは何から何まで人間の通りにして
ごまかしたのだが、あのひどい生臭い臭いには我慢ができず
客が逃げ出すのを、人魚遣いは帰すまじと袖をつかみつつ
追い駆けすがったが、肝心の本尊の
(補足)
「とこ可゛おさまると」、「る」は変体仮名「留」ですが、ここのように小さな「っ」のような形も多い。
「まつくら尓し」、ここの変体仮名「尓」は英筆記体小文字「y」のようなかたち。
「春川ハり」、スッパリ。濁点「゛」半濁点「゜」は付いたり付かなかったりなので、ながれから判断するしかありません。
突き出しの初日には「敷初(しきぞめ)」の祝いの儀式がありました。三つ蒲団や五つ蒲団などの重ね敷蒲団があったそうです。ここでは四つですけど。枕元には香をたく香台がありますがこれっぽっちでは生臭さは消えなかったみたい。敷布団の片隅にお客さんの抽斗付きの枕がころがっています。
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