P16P17 国立国会図書館蔵
P16
(読み)
此 又 うしろ可ら手を多し多男 ハ
これまたうしろからてをだしたおとこは
大 いその女 郎 や
おおいそのじょろうや
まひづるやの
まいずるやの
てゐし由傳 三といふ
ていしゅでんぞうとう
もの奈りさいぜんより
ものなりさいぜんより
もの可げ尓てこの
ものかげにてこの
やうすをミて
ようすをみて
ゐ多りし可゛めづらしき
いたりしが めずらしき
志ろもの由へ人 魚 を
しろものゆえにんぎょを
かゝゑんと思 ひ
かかえんとおもい
さてこそこの
さてこそこの
ところへ
ところへ
多ち出 し奈り
たちいだしなり
(大意)
また、うしろから手を出した男は
大磯の女郎屋舞鶴屋の亭主伝三というものだった。
先刻より物陰に隠れてこの様子を見ていたのだが
珍しき代物なので人魚を抱えようとおもい
だからこそ、ここに姿をあらわしたのであった。
(補足)
「うしろ可ら手を多し多男ハ」、看板や額装された有名人の書など左右どちらから読むのか迷います。右から読むのが以前の通例でした。ここのように一行一文字と見れば右から読むのが理にかなっているのが納得できます。
「大いその女郎や」、江戸時代のそのときの出来事でも、読み物や芝居などでは鎌倉時代に設定するのが暗黙の了解事項でした。取締を避けるためだったのでしょう。
「てゐし由」「ゐ多りし可゛」「かゝゑんと」、「ゐ」は「為」、「ゑ」は「恵」がもとです。
伝三が縁側に脚を組んで腰掛け、黒足袋。着崩した着方もいなせな女郎屋舞鶴屋の亭主というところか。
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